少子高齢化が進む日本では、人手不足が深刻化しています。日本商工会議所が2023年に実施したアンケート調査によれば、中小企業の約70%が「人手不足」と回答。うち約60%以上は事業に影響する状態と回答しています。
企業で人材不足が起こる理由には、少子高齢化や人材の需給のアンバランス、地方からの人口流出などさまざまな要因が絡んでいるのです。
本記事では、日本が直面している人手不足について、現状や原因、企業への影響などについて解説します。「人手不足を解消しなければ、今後の事業継続が難しい」「自社に合った人手不足対策が知りたい」とお悩みの方はぜひ参考にしてください。
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▼この記事でわかること
人手不足と人材不足の違い人手不足とよく混同される表現に「人材不足」があります。まずはこの2つの違いを確認しておきましょう。- 人手不足:働く人の数が足りていない状況
- 人材不足:社内に求めるスキルを持つ人が足りていない状況
おもに上記の意味で使い分けられます。よって「人材不足」の企業では、人手、つまりマンパワーが足りている場合もあります。
しかし、実際には「人手が足りないから即戦力になる経験者を採用したい」「資格保有者が足りない」など、人手不足と人材不足が明確に切り離せないことのほうが多いでしょう。医療や福祉業界のように、採用市場にスキルや資格を持った人材が多数いても、求職者が求める雇用条件を企業が提示できないために人手不足が慢性化しているケースもあります。
今回は「人手不足」で話を進めていきますが、2つの用語がほぼ同義で語られることも多い点に留意してください。日本における人手不足の現状とは日本における人手不足の状況は深刻化しています。
(独)労働政策研究・研修機構が公表している雇用人員判断D.I.の2024年6月見通しは、大企業で−27%ポイント、中堅企業で-40%ポイント、中小企業で-43%ポイント。マイナスの数字が大きいほど人手不足の企業が多いことを示しており、2020年のコロナ禍以降、数字は悪化の一途を辿っています。
また大企業の雇用人員判断D.I.を産業別に見ると、建設業や運輸業を含む非製造業のほうが、製造業よりも人手不足が深刻な状況です。さらに業界別、職業別、都道府県別に人手不足の状況を確認してみましょう。【業界別】人手不足がとくに深刻な業界
人手不足の深刻さは業界によって濃淡があります。厚生労働省が発表している労働経済動向調査から、人手不足に陥っていると見られるのが以下の業界です。<正社員が不足している業界>
・建設業
・運輸業・郵便業
・医療・福祉
・情報通信業
・学術研究,専門・技術サービス業
<パートタイム労働者が不足している業界>
・宿泊業・飲食サービス業
・生活関連サービス業・娯楽
・サービス業(他に分類されないもの)
参考:厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年5月)正社員不足となっている「建設業」「運輸業・郵便業」「医療・福祉」の3つはコロナ禍でも他の業界より人手不足感が強かった業界であり、改善の兆しが見えない状況です。
一方、社会情勢や環境変化によって人手不足が発生している業界もあります。たとえば宿泊業・飲食サービス業は、2020年5月〜11月のコロナ禍において不足感が大幅に下がっているものの、その3年後の2023年3月〜11月では人手不足感が強まっています。
また、情報通信業界では、近年のニーズに対するIT人材の不足が原因とみられる正社員の人手不足感が目立っていることが見て取れます。
【関連記事:【難しい?】IT人材を中途採用する方法は?ポイントや注意点を解説】
【関連記事:ホテルスタッフを採用するには?離職率が高い理由や採用成功のポイントも解説】
参考:厚生労働省|労働経済動向調査【職業別】人手不足が続いている職業
続いて職業別の人手不足の状況を見てみましょう。
各職業の有効求人倍率(有効求職者数に対する有効求人数の割合)について、倍率が2以上のものと、1未満のものを抜き出してみます。
<有効求人倍率が高い職業(含むパート)>職業 有効求人倍率 サービス職業従事者
(生活支援・介護を含む) 2.81 保安職業従事者 5.70 輸送・機械運転従事者 2.04 建設・採掘従事者 4.77
<有効求人倍率が低い職業(含むパート)>職業 有効求人倍率 管理的職業従事者 0.95 事務従事者 0.42 運搬・清掃・包装等従事者 0.72
出典:一般職業紹介状況(令和6年4月分)|参考統計表 数値が大きいほど求人に対して人手が足りていないことを示します。
この結果から、建設業界や保安関係は仕事内容によらず職業として人手不足である一方、事務や運搬・清掃・包装などは人手余りの状況であることがわかります。【都道府県別】地方企業と人手不足の状況
中小企業を中心に地方圏での人手不足も深刻化しています。厚生労働省の発表によると、地方圏の人手不足感は三大都市圏の水準を上回って推移している状況です。地方圏と三大都市圏のギャップ値については中小企業、とくに小規模企業が最も高くなっています。正社員と非正社員のグラフを比較してみても、正社員の人手不足が深刻であることがわかります。
この理由として、地方から都心への労働力人口の流出が挙げられるでしょう。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)都道府県別結果」で2023年の労働力人口の対前年増減を確認してみると、東京、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏および、愛知、大阪といった都市部の労働力人口の増加が目立ちます。
その一方で、周囲の東北地方や中部地方では働き手が減少しており、都市部が近隣のエリアから労働力を流入させている状況が見てとれます。人手不足が起きている5つの原因日本の人手不足の原因について、大きく以下の5つが考えられます。- 少子高齢化の加速
- DX推進の遅れ
- 需要と供給のアンバランス
- 人材の流動化
- 労働者の海外流出
厚生労働省が発表した高齢化の推移と将来推計によると、2023年10月時点で総人口は1億2,435万人。2060年には1億人を切り、9,615万人にまで落ち込むと予測されています。
このように人口は減少していく一方で、65歳以上の人口割合は増加を続け、2070年には人口の約40%を占めると予想されています。
日本社会を支えている15〜64歳の生産年齢人口は先細りになるため、人材の不足がますます深刻化することは疑いようがありません。働き方のバリエーションを増やしたり、高齢者の雇用を増やしたりするといった、人口動態に合わせた現実的な対策が求められます。DX推進の遅れ
企業のDX化が遅れているのも、人手不足の原因の1つです。
「人手不足がとくに深刻な業界」でも書いたとおり、正社員の人手不足が発生している業界として近年は「情報サービス」が目立ちます。その背景には企業のDX推進が活発になっていることが挙げられるでしょう。経済産業省も、日本で使用されている古く複雑なシステム(レガシーシステム)を使い続けると、2025年には大きな経済損失が発生すると警鐘を鳴らしています。
しかし「古いシステムを見直して業務を効率化しよう」と思っても、社内にIT技術がなければ、外注するかIT人材を採用するしかありません。システム開発は専門性が高い作業のため、スキルを持った人材の確保が難しい職種です。それなりの予算や人件費がかかってくるうえに、企業全体を支えている基幹システムの入れ替えとなれば、失敗したときの損失は計り知れません。
中小企業ほど「そこまでコストは出せないし、リスクも負えないから、安い人材と既存のシステムを使ってマンパワーで頑張ろう」となってしまいやすく、結果としてDXによる人手不足解消が遅れてしまうのです。
参考:厚生労働省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~需要と供給のアンバランス
業界・職業ごとの需要と供給があっていない点も原因の1つです。
「職業別の人手不足の状況」で紹介したとおり、事務職などが人手余りの状況にある一方、建設や保安、輸送・機械運転などの仕事は慢性的な人手不足が続いています。つまり、求職者と企業のニーズが合っていないのです。
とはいえ、ニーズをすり合わせれば良いとは簡単には言えません。人手不足の業界や職業を見ると、その多くは以下のいずれかに当てはまります。- 肉体労働に近い
- 夜勤や休日出勤がある
- 景気悪化で職を失うリスクがある
- 仕事に専門性が必要な一方で、給与水準は高くない
これらの条件で働ける人材は限られるでしょう。
給与や待遇を高水準に引き上げたり、従業員の事情に合わせた柔軟な働き方の導入といった対策が必要になりますが、すでに人手不足の状況に陥ってしまっている企業には難しいのが現実です。人材の流動化
採用市場の売り手有利な状況が続き、人材の流動化が進んでいることも人手不足を発生させる原因の1つと考えられます。
人材が流動化すると、同業種への転職のほか、これまでの経験やスキルにもとづいた別業界への転職もしやすくなります。より待遇の良い業界や企業に人材が集まる一方で、不人気の業界や待遇改善で後れを取っている企業はますます人が集まりにくくなってしまうのです。
【関連記事:人材の流動化とは?雇用市場の活性化によるメリット・デメリット】労働者の海外流出
人材の海外流出もじわじわと増加しています。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2023年10月時点は推計で129万3,565人。そのうち「永住者」は57万4,727人と発表されています。
2020年のコロナ禍以降、長期滞在者(いずれ日本に戻る予定の人)の人数は減少傾向にありますが、永住者数はゆるやかに増加し続けています。
外務省の統計では永住者の年齢層はわかりません。しかし海外へ移住・永住となると、その国で仕事があることを条件とする国が多いため、少なくとも労働可能な年齢の人が海外へ出ていると推測できます。
日本の若者のなかで海外へ挑戦する魅力が上がれば、日本企業が優秀な若手人材を獲得することが難しくなる可能性があるでしょう。人手不足による企業への悪影響人手不足が進むと、企業にとって以下のような悪影響が懸念されます。- 労働環境や働きがいが悪化する
- 事業縮小や倒産に追い込まれる
- 組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
労働環境や働きがいが悪化する
人手不足が進むと職場の従業員一人ひとりが担う業務量が増加します。- 残業時間が増加する
- 有給などの休暇取得が難しくなる
- 職場のコミュニケーションが減少する
結果として、殺伐としたストレスフルな職場環境となってしまいます。企業や職場に対する愛着や信頼も失われてしまうため、従業員の働きがいも減少してしまうでしょう。
働き難い職場が出来上がってしまうと、新しい人材を採用しても早期離職されるなど、人手不足の悪循環に陥ってしまいます。
【関連記事:働きがいとは?意味と具体例、高める方法や職場での取り組みを紹介】事業縮小や倒産に追い込まれる
人手不足による事業縮小や倒産も考えられます。帝国データバンクの発表によると、2024年1月〜6月において人手不足を原因とした倒産件数は182件と過去最多を記録しています。
とくに多いのが、人手不足の業界としても知られる建設業と物流業です。働き方改革法案による労働時間の制限、いわゆる2024年問題が直撃し、人手を確保できないまま倒産を余儀なくされたと推測できます。
「求人募集を出せばとりあえず人が来る」という時代は終わり、求職者が希望する労働条件を提示できなければ事業継続が危ぶまれるシビアな時代となっているのです。組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
倒産まで追い込まれなくても、人手不足の状況が続くと、組織の人材育成や新陳代謝において長期的な悪影響が懸念されます。
日本企業の人材育成方法は、実際の業務のなかで仕事を覚えてもらうOJTが主流です。とくに新入社員に対しては、先輩社員が二人三脚で教育する形を取っている企業が少なくありません。
しかし、人手不足が原因で従業員に余裕がなくなると、OJTのような教育に割ける物理的な時間が減ってしまいます。教育が不十分となって新入社員の戦力化が遅れたり、離職されたりといった問題にもつながるでしょう。
また若手の採用や定着に失敗すれば、組織の新陳代謝が途切れ、組織の高齢化も進んでしまいます。
【関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など】ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
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人手不足に陥りやすい企業の特徴人手不足になりやすい業界や職業を前項で紹介しましたが、それに当てはまらなくても、次のような特徴がある企業は人材の流出や採用難からの人手不足に陥りやすくなります。- 労働負荷と賃金・待遇が見合っていない
- 業務の効率化に消極的
- 人事評価が不公平
労働負荷と給与・待遇が見合っていない
労働負荷に対して給与や待遇といった見返りが少なすぎる、いわゆる「割に合わない仕事内容」の会社は、新しい人材を採用しても離職されやすくなります。
労働負荷というと長時間労働や休日出勤の常態化のように「業務の絶対量」が過剰なケースを思い浮かべがちですが、「質の側面」も見過ごせません。たとえば業務に必要なスキルや知識のアップデートが常に求められるような仕事では、従業員の心身にかかる負担も大きくなります。
その結果、いまの給与や待遇に対して不満を感じて、転職へ気持ちが傾きやすくなります。業務の効率化に消極的
デジタル技術の活用で業務効率化を推進する企業が増えています。さまざまな業務効率化ツールが登場しているなかで、頑なに紙の資料や対面会議にこだわる企業は、従業員からすると時代遅れな体質に映ります。
モチベーションやエンゲージメントの低下、将来性への不安から離職されやすい状態を作ってしまうでしょう。人事評価が不公平
不公平な人事評価が横行している企業も人がなかなか定着しません。具体的には、コネのある人材に甘い評価をつけたり、「いま退職されると人が足りないから」と問題のある従業員を放置したりするといった不公平なマネジメントが挙げられます。
その結果、他よりも仕事のできる従業員にしわ寄せが行ったり、職場内の雰囲気が悪くなったりするといった悪影響が発生します。とくに年功序列が残っている職場の場合、若い優秀な人材ほど不利な状況になるでしょう。
「優秀な人から辞めていく」「新しい人が定着しない」状態となり、人手不足が慢性化してしまうのです。
【関連記事:年功序列とは?意味や制度のメリット・廃止する際のポイントを解説】日本の人手不足における2つの誤解日本の人手不足の理由として「働き手そのものが減っているから」や「海外と比べて働き方の効率が悪いから」といった話を聞いたことがないでしょうか。
しかし、データを確認するとそうは言い切れない事実が見えてきます。人手不足を正しく把握するためにも、よく言われる2つの誤解について見てみましょう。誤解1「働き手そのものが減っている」
少子高齢化の影響で生産年齢人口として定義される「15〜64歳」の減少が加速しているのは事実であり、とくに若い世代の不足は深刻です。
しかし「働き手」、つまり就業者に限って見ると、少子高齢化に反して就業者数は増加しています。下図は日本の就業者数と就業率の推移のグラフです。日本の就業者数は2012年から増加に転じています。その要因となっているのが、65歳以上のシニア層と女性就業者の増加です。「生産年齢の男性」の人数は減少していますが、トータルでみれば「働きたい人」は増えていると言えるでしょう。
つまり、企業がこれまで正社員として採用してきた層は減少している一方で、企業が非正規で採用してきた層や、そもそも採用のターゲットにしてこなかった層は増えているのです。
とはいえ生産年齢人口の女性に限れば、全体の人数が減少傾向であることは変わりません。上図は女性の年齢階級別労働力率を示したグラフです。
20代後半〜40代前半にかけて女性の就業率が低下する通称「M字カーブ」は年々改善しているのが見て取れます。働きたい女性の割合が上限に達すれば、就業者数のうち生産年齢人口の女性が占める割合はいずれ減少に転じると推測されます。誤解2「海外と比べて非効率的な働き方をしている」
日本の労働環境を語る際によく揶揄されるのが、ハンコ文化に代表されるような非効率な働き方です。そして非効率さの根拠としてよく挙げられるのが、就業者1人当たりのGDP、いわゆる労働生産性です。
(公財)日本生産性本部の発表によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)でした。主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
一見すると、日本の労働生産性は海外よりも低く、非効率的な働き方をしているように思われます。
しかし、ランキング1位となったアイルランドは、法人税の軽減策で世界中の多国籍企業を呼び込むことに成功している国です。また2位のノルウェーは天然ガスや石油を主要な輸出産品としています。
労働生産性は、国の産業・市場構造や経済政策に強く影響されます。労働生産性が低いからといって、日本の労働者が著しく非効率的な働き方をしているとは言い切れません。
とはいえ、日本の労働生産性が高くないことは事実です。
下図は日本の一人当たりの実質GDP成長率を要因分解した図です。少子高齢化の影響を除いても、1990年以降、一人当たり実質GDP成長率の押し下げ要因に労働生産性が絡んでいることが見て取れます。人手不足解消のために実施したい7つの対策人手不足を解消するには、自社に合った対策を講じる必要があります。ここでは7つの対策を紹介します。- 自社の定着率を上げる
- 雇用方法のバリエーションを増やす
- 従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
- 採用方法を見直す
- シニア層の雇用環境を整える
- 外国人の雇用を増やす
- AIやITの力を借りる
自社の定着率を上げる
人手不足解消にまず必要なのが、自社の定着率の向上です。人材を採用してもすぐに辞めてしまうようでは、穴の空いたバケツで水を汲むのと同じであり、いつまでも人手不足はなくなりません。
下のグラフは、厚生労働省が発表した2022年の職種別の入職率・離職率を表したものです。とくに「宿泊業、飲食サービス業」については、入職率とともに離職率も高い傾向が見てとれます。
また離職した理由は、男女とも「定年・契約期間終了」を除くと「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が目立ちます(「個人的な理由」を除く)。人材の定着率に課題のある企業は、まず働き方改革に着手すべきと言えそうです。
ただし、働き方改革を行ううえで注意すべきは、働く人の価値観の多様化です。
雇用動向調査を見ると、とくに30代前半以下の男性で「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」を離職理由に挙げている割合が高いことがわかります。また女性全体では、前年度よりも「仕事の内容に興味を持てなかった」を選ぶ人が増加しています。
自社の定着率改善を考えるにあたって「男性はやりがいを重視するだろう」「女性は仕事内容より働きやすさを重視するだろう」と従来の固定観念で考えないようにすべきと言えるでしょう。
【関連記事:定着率を上げるには?定着率を上げる方法を紹介します】
参考:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要雇用形態のバリエーションを増やす
雇用形態のバリエーションを増やすのも、人手不足の解消につながります。
かつては雇用が安定した正社員が一般的でした。しかし、近年は働く曜日や、時間に柔軟なパートやアルバイト、業務委託などの雇用形態を希望する人も増えてきています。
正社員や契約社員しか受け入れていない企業は、貴重な人手を逃している可能性もあるのです。
また雇用形態のバリエーションを増やすことで、シニア層や再就職を希望する主婦層の確保にもつながります。
国土交通省の調査にあるように近年の日本では女性とシニアの就業者数が増加していますが、ブランクのある主婦やシニアの場合、より柔軟な働き方を求める傾向があります。- 育児や介護があるため時間に融通がきく仕事でないと就業できない
- 急な休みも受け入れてくれる職場でないと難しい
- 業務内容は魅力的だが週5日の働き方は体力に自信がない
- 在宅勤務も可能な仕事が良い
上記のような事情から、募集要項を見て諦めるケースも少なくありません。
コアタイムを9〜17時からずらしたり、短時間労働を広く適用したりするだけでも、採用の間口は広がります。時代に合わせて雇用形態の幅を増やすことで、人手不足対策につながるでしょう。
業務委託や女性の採用について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:業務委託契約とは?契約書作成の流れや注意点も合わせて紹介】
【関連記事:「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット】従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
自社の状況が人手不足よりも人材不足に近い場合は、従業員のリスキリングやリカレント教育の推進も効果的です。- リスキリング:新しいスキルや知識の習得を後押しすること
- リカレント教育:社会人が再び大学などで学び直し、就労と教育のサイクルを回すこと
たとえばIT人材が不足している企業が、従業員のITスキルや知識の習得を後押しや、社内でIT人材を確保するといった取り組みが考えられます。
もちろん新しい分野を学ぶとなれば一時的に従業員のパフォーマンスが低下する可能性はあります。しかし、企業文化を熟知した人材から人員調達できる仕組みが作れるため、長期的には人手不足の改善が期待できるでしょう。
【関連記事:リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説】
【関連記事:リカレント教育とは?企業における必要性、日本の現状、事例など】採用方法を見直す
採用方法を見直してみるのも、大切な人手不足対策です。
採用活動においては、エージェントまたは求人情報サイトに募集要項を送り、応募してきた人材を選考するのが一般的です。しかし、売り手有利の採用市場においては、従来の「待ち」の採用方法ではうまく母集団を形成できないケースも増えています。
応募が集まらない場合は、以下のように企業側から求職者へアピールする採用方法を試してみるのも一案です。- ダイレクトリクルーティング
- アルムナイ採用
- リファラル採用
とくにアルムナイ採用やリファラル採用のように自社への理解が深い人材を採用する方法は、ミスマッチからの離職防止にも効果的です。
また、選考段階でミスマッチを避ける方法として、コンピテンシー診断や構造化面接も有効です。とくにこれまでとは異なる層からの採用を考えている場合に、業務への適性や社風とのマッチ度などを客観的な視点で評価する際に役立ちます。
採用方法についてお悩みの担当者様は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
【関連記事:アルムナイとは?採用のメリット・デメリット、導入企業の事例を解説】
【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】
【関連記事:構造化面接は採用に有効?効果やメリット、質問例をまとめて解説】シニア層の雇用環境を整える
シニア層(高齢者)が働けるよう雇用環境を整えることも重要です。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けるほか、70歳までの就業機会の確保も努力義務としています。
厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると65歳までの雇用確保措置を実施した企業は23万6,815社で、そのうち定年制を廃止した企業は9,275社(3.9%)、定年を引き上げた企業は6万3,772社(26.9%)、継続雇用制度を導入した企業は16万3,768社(69.2%)です。
また、マイナビの2024年企業調査によると、シニア採用を実施したことがあると回答した企業は62.8%にも上り、とくに警備業界がシニア採用に積極的な様子が伺えます。
シニア採用への姿勢は業界によって差があるものの、少子高齢化が進むなかで人手不足に対応するには、シニア層の雇用環境整備が不可欠です。外国人の雇用を増やす
外国人の雇用も視野に入れてみましょう。文化や言語が異なる外国人の雇用を増やすことで人手不足の解消だけではなく、日本の人材だけではカバーしきれない課題を補ってくれるメリットもあります。
下図は厚生労働省が発表した産業別外国人労働者数の推移を示したグラフです。2023年10月末、外国人労働者数は初めて200万人を超えました。産業別で見ると「製造業」が全体の 27.0%を占め、対前年増加率では建設業がトップとなっています。外国人の雇用を増やすことで、英語や他の言語を話せる人材の確保にもつながります。ビジネス商圏拡大のチャンスになるほか、ダイバーシティの推進にも良い影響が期待できるでしょう。
【関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説】AIやITの力を借りる
AIを活用して、人手不足の解消を図るのも1つの方法です。最近では、人手不足の課題や接触を減らすためにレストランチェーンやホテルなどでAIロボットが導入されています。
介護や医療の現場でも実験が行われています。人間にしかできない業務もありますが、煩雑な作業に追われて重要な業務を先延ばしにしている人も少なくありません。
「入れ替わりが激しく、人件費がかさんで困っている」のであれば、「人ではなくてAIに任せられるかも」と視点を変えると良いでしょう。人手不足解消に成功した企業事例を3つ紹介人手不足の解消に向けて、アクションを起こしている企業も多く存在します。ここでは、3社の企業事例を紹介します。興南(こうなん)設計株式会社
1961年創業の岡山県倉敷市にある興南設計株式会社は、機械設計事業を行っている企業です。
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集大起産業株式会社
三重県に拠点を置く大起産業株式会社は、新卒採用者の早期離職に頭を抱えていました。
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】株式会社オハラ
石川県金沢市にある株式会社オハラは、食品製造業を行っている企業です。
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページミイダスを活用して人手不足解消を目指す人手不足にはさまざまな要因が絡んでいますが、多くの企業で意識したいポイントは採用した人材の定着率向上と、在籍している人材の離職率低下です。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
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しかし、実際には「人手が足りないから即戦力になる経験者を採用したい」「資格保有者が足りない」など、人手不足と人材不足が明確に切り離せないことのほうが多いでしょう。医療や福祉業界のように、採用市場にスキルや資格を持った人材が多数いても、求職者が求める雇用条件を企業が提示できないために人手不足が慢性化しているケースもあります。
今回は「人手不足」で話を進めていきますが、2つの用語がほぼ同義で語られることも多い点に留意してください。
日本における人手不足の状況は深刻化しています。
(独)労働政策研究・研修機構が公表している雇用人員判断D.I.の2024年6月見通しは、大企業で−27%ポイント、中堅企業で-40%ポイント、中小企業で-43%ポイント。マイナスの数字が大きいほど人手不足の企業が多いことを示しており、2020年のコロナ禍以降、数字は悪化の一途を辿っています。
また大企業の雇用人員判断D.I.を産業別に見ると、建設業や運輸業を含む非製造業のほうが、製造業よりも人手不足が深刻な状況です。
(独)労働政策研究・研修機構が公表している雇用人員判断D.I.の2024年6月見通しは、大企業で−27%ポイント、中堅企業で-40%ポイント、中小企業で-43%ポイント。マイナスの数字が大きいほど人手不足の企業が多いことを示しており、2020年のコロナ禍以降、数字は悪化の一途を辿っています。
また大企業の雇用人員判断D.I.を産業別に見ると、建設業や運輸業を含む非製造業のほうが、製造業よりも人手不足が深刻な状況です。
さらに業界別、職業別、都道府県別に人手不足の状況を確認してみましょう。
【業界別】人手不足がとくに深刻な業界
人手不足の深刻さは業界によって濃淡があります。厚生労働省が発表している労働経済動向調査から、人手不足に陥っていると見られるのが以下の業界です。
<正社員が不足している業界>
・建設業
・運輸業・郵便業
・医療・福祉
・情報通信業
・学術研究,専門・技術サービス業
<パートタイム労働者が不足している業界>
・宿泊業・飲食サービス業
・生活関連サービス業・娯楽
・サービス業(他に分類されないもの)
参考:厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年5月)
・建設業
・運輸業・郵便業
・医療・福祉
・情報通信業
・学術研究,専門・技術サービス業
<パートタイム労働者が不足している業界>
・宿泊業・飲食サービス業
・生活関連サービス業・娯楽
・サービス業(他に分類されないもの)
参考:厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年5月)
正社員不足となっている「建設業」「運輸業・郵便業」「医療・福祉」の3つはコロナ禍でも他の業界より人手不足感が強かった業界であり、改善の兆しが見えない状況です。
一方、社会情勢や環境変化によって人手不足が発生している業界もあります。たとえば宿泊業・飲食サービス業は、2020年5月〜11月のコロナ禍において不足感が大幅に下がっているものの、その3年後の2023年3月〜11月では人手不足感が強まっています。
また、情報通信業界では、近年のニーズに対するIT人材の不足が原因とみられる正社員の人手不足感が目立っていることが見て取れます。
【関連記事:【難しい?】IT人材を中途採用する方法は?ポイントや注意点を解説】
【関連記事:ホテルスタッフを採用するには?離職率が高い理由や採用成功のポイントも解説】
参考:厚生労働省|労働経済動向調査
一方、社会情勢や環境変化によって人手不足が発生している業界もあります。たとえば宿泊業・飲食サービス業は、2020年5月〜11月のコロナ禍において不足感が大幅に下がっているものの、その3年後の2023年3月〜11月では人手不足感が強まっています。
また、情報通信業界では、近年のニーズに対するIT人材の不足が原因とみられる正社員の人手不足感が目立っていることが見て取れます。
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参考:厚生労働省|労働経済動向調査
【職業別】人手不足が続いている職業
続いて職業別の人手不足の状況を見てみましょう。
各職業の有効求人倍率(有効求職者数に対する有効求人数の割合)について、倍率が2以上のものと、1未満のものを抜き出してみます。
<有効求人倍率が高い職業(含むパート)>
各職業の有効求人倍率(有効求職者数に対する有効求人数の割合)について、倍率が2以上のものと、1未満のものを抜き出してみます。
<有効求人倍率が高い職業(含むパート)>
職業 | 有効求人倍率 |
サービス職業従事者 (生活支援・介護を含む) | 2.81 |
保安職業従事者 | 5.70 |
輸送・機械運転従事者 | 2.04 |
建設・採掘従事者 | 4.77 |
<有効求人倍率が低い職業(含むパート)>
職業 | 有効求人倍率 |
管理的職業従事者 | 0.95 |
事務従事者 | 0.42 |
運搬・清掃・包装等従事者 | 0.72 |
数値が大きいほど求人に対して人手が足りていないことを示します。
この結果から、建設業界や保安関係は仕事内容によらず職業として人手不足である一方、事務や運搬・清掃・包装などは人手余りの状況であることがわかります。
この結果から、建設業界や保安関係は仕事内容によらず職業として人手不足である一方、事務や運搬・清掃・包装などは人手余りの状況であることがわかります。
【都道府県別】地方企業と人手不足の状況
中小企業を中心に地方圏での人手不足も深刻化しています。
厚生労働省の発表によると、地方圏の人手不足感は三大都市圏の水準を上回って推移している状況です。地方圏と三大都市圏のギャップ値については中小企業、とくに小規模企業が最も高くなっています。正社員と非正社員のグラフを比較してみても、正社員の人手不足が深刻であることがわかります。
この理由として、地方から都心への労働力人口の流出が挙げられるでしょう。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)都道府県別結果」で2023年の労働力人口の対前年増減を確認してみると、東京、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏および、愛知、大阪といった都市部の労働力人口の増加が目立ちます。
その一方で、周囲の東北地方や中部地方では働き手が減少しており、都市部が近隣のエリアから労働力を流入させている状況が見てとれます。
この理由として、地方から都心への労働力人口の流出が挙げられるでしょう。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)都道府県別結果」で2023年の労働力人口の対前年増減を確認してみると、東京、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏および、愛知、大阪といった都市部の労働力人口の増加が目立ちます。
その一方で、周囲の東北地方や中部地方では働き手が減少しており、都市部が近隣のエリアから労働力を流入させている状況が見てとれます。
人手不足が起きている5つの原因日本の人手不足の原因について、大きく以下の5つが考えられます。- 少子高齢化の加速
- DX推進の遅れ
- 需要と供給のアンバランス
- 人材の流動化
- 労働者の海外流出
厚生労働省が発表した高齢化の推移と将来推計によると、2023年10月時点で総人口は1億2,435万人。2060年には1億人を切り、9,615万人にまで落ち込むと予測されています。
このように人口は減少していく一方で、65歳以上の人口割合は増加を続け、2070年には人口の約40%を占めると予想されています。
日本社会を支えている15〜64歳の生産年齢人口は先細りになるため、人材の不足がますます深刻化することは疑いようがありません。働き方のバリエーションを増やしたり、高齢者の雇用を増やしたりするといった、人口動態に合わせた現実的な対策が求められます。DX推進の遅れ
企業のDX化が遅れているのも、人手不足の原因の1つです。
「人手不足がとくに深刻な業界」でも書いたとおり、正社員の人手不足が発生している業界として近年は「情報サービス」が目立ちます。その背景には企業のDX推進が活発になっていることが挙げられるでしょう。経済産業省も、日本で使用されている古く複雑なシステム(レガシーシステム)を使い続けると、2025年には大きな経済損失が発生すると警鐘を鳴らしています。
しかし「古いシステムを見直して業務を効率化しよう」と思っても、社内にIT技術がなければ、外注するかIT人材を採用するしかありません。システム開発は専門性が高い作業のため、スキルを持った人材の確保が難しい職種です。それなりの予算や人件費がかかってくるうえに、企業全体を支えている基幹システムの入れ替えとなれば、失敗したときの損失は計り知れません。
中小企業ほど「そこまでコストは出せないし、リスクも負えないから、安い人材と既存のシステムを使ってマンパワーで頑張ろう」となってしまいやすく、結果としてDXによる人手不足解消が遅れてしまうのです。
参考:厚生労働省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~需要と供給のアンバランス
業界・職業ごとの需要と供給があっていない点も原因の1つです。
「職業別の人手不足の状況」で紹介したとおり、事務職などが人手余りの状況にある一方、建設や保安、輸送・機械運転などの仕事は慢性的な人手不足が続いています。つまり、求職者と企業のニーズが合っていないのです。
とはいえ、ニーズをすり合わせれば良いとは簡単には言えません。人手不足の業界や職業を見ると、その多くは以下のいずれかに当てはまります。- 肉体労働に近い
- 夜勤や休日出勤がある
- 景気悪化で職を失うリスクがある
- 仕事に専門性が必要な一方で、給与水準は高くない
これらの条件で働ける人材は限られるでしょう。
給与や待遇を高水準に引き上げたり、従業員の事情に合わせた柔軟な働き方の導入といった対策が必要になりますが、すでに人手不足の状況に陥ってしまっている企業には難しいのが現実です。人材の流動化
採用市場の売り手有利な状況が続き、人材の流動化が進んでいることも人手不足を発生させる原因の1つと考えられます。
人材が流動化すると、同業種への転職のほか、これまでの経験やスキルにもとづいた別業界への転職もしやすくなります。より待遇の良い業界や企業に人材が集まる一方で、不人気の業界や待遇改善で後れを取っている企業はますます人が集まりにくくなってしまうのです。
【関連記事:人材の流動化とは?雇用市場の活性化によるメリット・デメリット】労働者の海外流出
人材の海外流出もじわじわと増加しています。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2023年10月時点は推計で129万3,565人。そのうち「永住者」は57万4,727人と発表されています。
2020年のコロナ禍以降、長期滞在者(いずれ日本に戻る予定の人)の人数は減少傾向にありますが、永住者数はゆるやかに増加し続けています。
外務省の統計では永住者の年齢層はわかりません。しかし海外へ移住・永住となると、その国で仕事があることを条件とする国が多いため、少なくとも労働可能な年齢の人が海外へ出ていると推測できます。
日本の若者のなかで海外へ挑戦する魅力が上がれば、日本企業が優秀な若手人材を獲得することが難しくなる可能性があるでしょう。人手不足による企業への悪影響人手不足が進むと、企業にとって以下のような悪影響が懸念されます。- 労働環境や働きがいが悪化する
- 事業縮小や倒産に追い込まれる
- 組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
労働環境や働きがいが悪化する
人手不足が進むと職場の従業員一人ひとりが担う業務量が増加します。- 残業時間が増加する
- 有給などの休暇取得が難しくなる
- 職場のコミュニケーションが減少する
結果として、殺伐としたストレスフルな職場環境となってしまいます。企業や職場に対する愛着や信頼も失われてしまうため、従業員の働きがいも減少してしまうでしょう。
働き難い職場が出来上がってしまうと、新しい人材を採用しても早期離職されるなど、人手不足の悪循環に陥ってしまいます。
【関連記事:働きがいとは?意味と具体例、高める方法や職場での取り組みを紹介】事業縮小や倒産に追い込まれる
人手不足による事業縮小や倒産も考えられます。帝国データバンクの発表によると、2024年1月〜6月において人手不足を原因とした倒産件数は182件と過去最多を記録しています。
とくに多いのが、人手不足の業界としても知られる建設業と物流業です。働き方改革法案による労働時間の制限、いわゆる2024年問題が直撃し、人手を確保できないまま倒産を余儀なくされたと推測できます。
「求人募集を出せばとりあえず人が来る」という時代は終わり、求職者が希望する労働条件を提示できなければ事業継続が危ぶまれるシビアな時代となっているのです。組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
倒産まで追い込まれなくても、人手不足の状況が続くと、組織の人材育成や新陳代謝において長期的な悪影響が懸念されます。
日本企業の人材育成方法は、実際の業務のなかで仕事を覚えてもらうOJTが主流です。とくに新入社員に対しては、先輩社員が二人三脚で教育する形を取っている企業が少なくありません。
しかし、人手不足が原因で従業員に余裕がなくなると、OJTのような教育に割ける物理的な時間が減ってしまいます。教育が不十分となって新入社員の戦力化が遅れたり、離職されたりといった問題にもつながるでしょう。
また若手の採用や定着に失敗すれば、組織の新陳代謝が途切れ、組織の高齢化も進んでしまいます。
【関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など】ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
「アセスメントリクルーティング」採用ツールです。
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人手不足に陥りやすい企業の特徴人手不足になりやすい業界や職業を前項で紹介しましたが、それに当てはまらなくても、次のような特徴がある企業は人材の流出や採用難からの人手不足に陥りやすくなります。- 労働負荷と賃金・待遇が見合っていない
- 業務の効率化に消極的
- 人事評価が不公平
労働負荷と給与・待遇が見合っていない
労働負荷に対して給与や待遇といった見返りが少なすぎる、いわゆる「割に合わない仕事内容」の会社は、新しい人材を採用しても離職されやすくなります。
労働負荷というと長時間労働や休日出勤の常態化のように「業務の絶対量」が過剰なケースを思い浮かべがちですが、「質の側面」も見過ごせません。たとえば業務に必要なスキルや知識のアップデートが常に求められるような仕事では、従業員の心身にかかる負担も大きくなります。
その結果、いまの給与や待遇に対して不満を感じて、転職へ気持ちが傾きやすくなります。業務の効率化に消極的
デジタル技術の活用で業務効率化を推進する企業が増えています。さまざまな業務効率化ツールが登場しているなかで、頑なに紙の資料や対面会議にこだわる企業は、従業員からすると時代遅れな体質に映ります。
モチベーションやエンゲージメントの低下、将来性への不安から離職されやすい状態を作ってしまうでしょう。人事評価が不公平
不公平な人事評価が横行している企業も人がなかなか定着しません。具体的には、コネのある人材に甘い評価をつけたり、「いま退職されると人が足りないから」と問題のある従業員を放置したりするといった不公平なマネジメントが挙げられます。
その結果、他よりも仕事のできる従業員にしわ寄せが行ったり、職場内の雰囲気が悪くなったりするといった悪影響が発生します。とくに年功序列が残っている職場の場合、若い優秀な人材ほど不利な状況になるでしょう。
「優秀な人から辞めていく」「新しい人が定着しない」状態となり、人手不足が慢性化してしまうのです。
【関連記事:年功序列とは?意味や制度のメリット・廃止する際のポイントを解説】日本の人手不足における2つの誤解日本の人手不足の理由として「働き手そのものが減っているから」や「海外と比べて働き方の効率が悪いから」といった話を聞いたことがないでしょうか。
しかし、データを確認するとそうは言い切れない事実が見えてきます。人手不足を正しく把握するためにも、よく言われる2つの誤解について見てみましょう。誤解1「働き手そのものが減っている」
少子高齢化の影響で生産年齢人口として定義される「15〜64歳」の減少が加速しているのは事実であり、とくに若い世代の不足は深刻です。
しかし「働き手」、つまり就業者に限って見ると、少子高齢化に反して就業者数は増加しています。下図は日本の就業者数と就業率の推移のグラフです。日本の就業者数は2012年から増加に転じています。その要因となっているのが、65歳以上のシニア層と女性就業者の増加です。「生産年齢の男性」の人数は減少していますが、トータルでみれば「働きたい人」は増えていると言えるでしょう。
つまり、企業がこれまで正社員として採用してきた層は減少している一方で、企業が非正規で採用してきた層や、そもそも採用のターゲットにしてこなかった層は増えているのです。
とはいえ生産年齢人口の女性に限れば、全体の人数が減少傾向であることは変わりません。上図は女性の年齢階級別労働力率を示したグラフです。
20代後半〜40代前半にかけて女性の就業率が低下する通称「M字カーブ」は年々改善しているのが見て取れます。働きたい女性の割合が上限に達すれば、就業者数のうち生産年齢人口の女性が占める割合はいずれ減少に転じると推測されます。誤解2「海外と比べて非効率的な働き方をしている」
日本の労働環境を語る際によく揶揄されるのが、ハンコ文化に代表されるような非効率な働き方です。そして非効率さの根拠としてよく挙げられるのが、就業者1人当たりのGDP、いわゆる労働生産性です。
(公財)日本生産性本部の発表によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)でした。主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
一見すると、日本の労働生産性は海外よりも低く、非効率的な働き方をしているように思われます。
しかし、ランキング1位となったアイルランドは、法人税の軽減策で世界中の多国籍企業を呼び込むことに成功している国です。また2位のノルウェーは天然ガスや石油を主要な輸出産品としています。
労働生産性は、国の産業・市場構造や経済政策に強く影響されます。労働生産性が低いからといって、日本の労働者が著しく非効率的な働き方をしているとは言い切れません。
とはいえ、日本の労働生産性が高くないことは事実です。
下図は日本の一人当たりの実質GDP成長率を要因分解した図です。少子高齢化の影響を除いても、1990年以降、一人当たり実質GDP成長率の押し下げ要因に労働生産性が絡んでいることが見て取れます。人手不足解消のために実施したい7つの対策人手不足を解消するには、自社に合った対策を講じる必要があります。ここでは7つの対策を紹介します。- 自社の定着率を上げる
- 雇用方法のバリエーションを増やす
- 従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
- 採用方法を見直す
- シニア層の雇用環境を整える
- 外国人の雇用を増やす
- AIやITの力を借りる
自社の定着率を上げる
人手不足解消にまず必要なのが、自社の定着率の向上です。人材を採用してもすぐに辞めてしまうようでは、穴の空いたバケツで水を汲むのと同じであり、いつまでも人手不足はなくなりません。
下のグラフは、厚生労働省が発表した2022年の職種別の入職率・離職率を表したものです。とくに「宿泊業、飲食サービス業」については、入職率とともに離職率も高い傾向が見てとれます。
また離職した理由は、男女とも「定年・契約期間終了」を除くと「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が目立ちます(「個人的な理由」を除く)。人材の定着率に課題のある企業は、まず働き方改革に着手すべきと言えそうです。
ただし、働き方改革を行ううえで注意すべきは、働く人の価値観の多様化です。
雇用動向調査を見ると、とくに30代前半以下の男性で「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」を離職理由に挙げている割合が高いことがわかります。また女性全体では、前年度よりも「仕事の内容に興味を持てなかった」を選ぶ人が増加しています。
自社の定着率改善を考えるにあたって「男性はやりがいを重視するだろう」「女性は仕事内容より働きやすさを重視するだろう」と従来の固定観念で考えないようにすべきと言えるでしょう。
【関連記事:定着率を上げるには?定着率を上げる方法を紹介します】
参考:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要雇用形態のバリエーションを増やす
雇用形態のバリエーションを増やすのも、人手不足の解消につながります。
かつては雇用が安定した正社員が一般的でした。しかし、近年は働く曜日や、時間に柔軟なパートやアルバイト、業務委託などの雇用形態を希望する人も増えてきています。
正社員や契約社員しか受け入れていない企業は、貴重な人手を逃している可能性もあるのです。
また雇用形態のバリエーションを増やすことで、シニア層や再就職を希望する主婦層の確保にもつながります。
国土交通省の調査にあるように近年の日本では女性とシニアの就業者数が増加していますが、ブランクのある主婦やシニアの場合、より柔軟な働き方を求める傾向があります。- 育児や介護があるため時間に融通がきく仕事でないと就業できない
- 急な休みも受け入れてくれる職場でないと難しい
- 業務内容は魅力的だが週5日の働き方は体力に自信がない
- 在宅勤務も可能な仕事が良い
上記のような事情から、募集要項を見て諦めるケースも少なくありません。
コアタイムを9〜17時からずらしたり、短時間労働を広く適用したりするだけでも、採用の間口は広がります。時代に合わせて雇用形態の幅を増やすことで、人手不足対策につながるでしょう。
業務委託や女性の採用について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:業務委託契約とは?契約書作成の流れや注意点も合わせて紹介】
【関連記事:「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット】従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
自社の状況が人手不足よりも人材不足に近い場合は、従業員のリスキリングやリカレント教育の推進も効果的です。- リスキリング:新しいスキルや知識の習得を後押しすること
- リカレント教育:社会人が再び大学などで学び直し、就労と教育のサイクルを回すこと
たとえばIT人材が不足している企業が、従業員のITスキルや知識の習得を後押しや、社内でIT人材を確保するといった取り組みが考えられます。
もちろん新しい分野を学ぶとなれば一時的に従業員のパフォーマンスが低下する可能性はあります。しかし、企業文化を熟知した人材から人員調達できる仕組みが作れるため、長期的には人手不足の改善が期待できるでしょう。
【関連記事:リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説】
【関連記事:リカレント教育とは?企業における必要性、日本の現状、事例など】採用方法を見直す
採用方法を見直してみるのも、大切な人手不足対策です。
採用活動においては、エージェントまたは求人情報サイトに募集要項を送り、応募してきた人材を選考するのが一般的です。しかし、売り手有利の採用市場においては、従来の「待ち」の採用方法ではうまく母集団を形成できないケースも増えています。
応募が集まらない場合は、以下のように企業側から求職者へアピールする採用方法を試してみるのも一案です。- ダイレクトリクルーティング
- アルムナイ採用
- リファラル採用
とくにアルムナイ採用やリファラル採用のように自社への理解が深い人材を採用する方法は、ミスマッチからの離職防止にも効果的です。
また、選考段階でミスマッチを避ける方法として、コンピテンシー診断や構造化面接も有効です。とくにこれまでとは異なる層からの採用を考えている場合に、業務への適性や社風とのマッチ度などを客観的な視点で評価する際に役立ちます。
採用方法についてお悩みの担当者様は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
【関連記事:アルムナイとは?採用のメリット・デメリット、導入企業の事例を解説】
【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】
【関連記事:構造化面接は採用に有効?効果やメリット、質問例をまとめて解説】シニア層の雇用環境を整える
シニア層(高齢者)が働けるよう雇用環境を整えることも重要です。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けるほか、70歳までの就業機会の確保も努力義務としています。
厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると65歳までの雇用確保措置を実施した企業は23万6,815社で、そのうち定年制を廃止した企業は9,275社(3.9%)、定年を引き上げた企業は6万3,772社(26.9%)、継続雇用制度を導入した企業は16万3,768社(69.2%)です。
また、マイナビの2024年企業調査によると、シニア採用を実施したことがあると回答した企業は62.8%にも上り、とくに警備業界がシニア採用に積極的な様子が伺えます。
シニア採用への姿勢は業界によって差があるものの、少子高齢化が進むなかで人手不足に対応するには、シニア層の雇用環境整備が不可欠です。外国人の雇用を増やす
外国人の雇用も視野に入れてみましょう。文化や言語が異なる外国人の雇用を増やすことで人手不足の解消だけではなく、日本の人材だけではカバーしきれない課題を補ってくれるメリットもあります。
下図は厚生労働省が発表した産業別外国人労働者数の推移を示したグラフです。2023年10月末、外国人労働者数は初めて200万人を超えました。産業別で見ると「製造業」が全体の 27.0%を占め、対前年増加率では建設業がトップとなっています。外国人の雇用を増やすことで、英語や他の言語を話せる人材の確保にもつながります。ビジネス商圏拡大のチャンスになるほか、ダイバーシティの推進にも良い影響が期待できるでしょう。
【関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説】AIやITの力を借りる
AIを活用して、人手不足の解消を図るのも1つの方法です。最近では、人手不足の課題や接触を減らすためにレストランチェーンやホテルなどでAIロボットが導入されています。
介護や医療の現場でも実験が行われています。人間にしかできない業務もありますが、煩雑な作業に追われて重要な業務を先延ばしにしている人も少なくありません。
「入れ替わりが激しく、人件費がかさんで困っている」のであれば、「人ではなくてAIに任せられるかも」と視点を変えると良いでしょう。人手不足解消に成功した企業事例を3つ紹介人手不足の解消に向けて、アクションを起こしている企業も多く存在します。ここでは、3社の企業事例を紹介します。興南(こうなん)設計株式会社
1961年創業の岡山県倉敷市にある興南設計株式会社は、機械設計事業を行っている企業です。
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集大起産業株式会社
三重県に拠点を置く大起産業株式会社は、新卒採用者の早期離職に頭を抱えていました。
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】株式会社オハラ
石川県金沢市にある株式会社オハラは、食品製造業を行っている企業です。
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページミイダスを活用して人手不足解消を目指す人手不足にはさまざまな要因が絡んでいますが、多くの企業で意識したいポイントは採用した人材の定着率向上と、在籍している人材の離職率低下です。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
ミイダスでは、フィッティング人材分析(活躍要因診断)を社員に受験してもらうことで、自社で定着・活躍する人材の特徴などをデータで可視化。社内の実態を明らかにできるとともに、ミスマッチの少ない採用を実現します。はたらきがいサーベイや組織サーベイで従業員のエンゲージメントを向上
ミイダスには「組織サーベイ」や「はたらきがいサーベイ」という機能もあり、従業員に簡単なアンケートを実施することで、従業員が感じている仕事へのモチベーションや働きがいを定量的に評価できます。
会社への不満や離職の兆候をいち早く感知することで、必要な対応がスピーディーに実施できるでしょう。自社の組織改善にも役立てられます。
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このように人口は減少していく一方で、65歳以上の人口割合は増加を続け、2070年には人口の約40%を占めると予想されています。
日本社会を支えている15〜64歳の生産年齢人口は先細りになるため、人材の不足がますます深刻化することは疑いようがありません。働き方のバリエーションを増やしたり、高齢者の雇用を増やしたりするといった、人口動態に合わせた現実的な対策が求められます。
「人手不足がとくに深刻な業界」でも書いたとおり、正社員の人手不足が発生している業界として近年は「情報サービス」が目立ちます。その背景には企業のDX推進が活発になっていることが挙げられるでしょう。経済産業省も、日本で使用されている古く複雑なシステム(レガシーシステム)を使い続けると、2025年には大きな経済損失が発生すると警鐘を鳴らしています。
しかし「古いシステムを見直して業務を効率化しよう」と思っても、社内にIT技術がなければ、外注するかIT人材を採用するしかありません。システム開発は専門性が高い作業のため、スキルを持った人材の確保が難しい職種です。それなりの予算や人件費がかかってくるうえに、企業全体を支えている基幹システムの入れ替えとなれば、失敗したときの損失は計り知れません。
中小企業ほど「そこまでコストは出せないし、リスクも負えないから、安い人材と既存のシステムを使ってマンパワーで頑張ろう」となってしまいやすく、結果としてDXによる人手不足解消が遅れてしまうのです。
参考:厚生労働省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
「職業別の人手不足の状況」で紹介したとおり、事務職などが人手余りの状況にある一方、建設や保安、輸送・機械運転などの仕事は慢性的な人手不足が続いています。つまり、求職者と企業のニーズが合っていないのです。
とはいえ、ニーズをすり合わせれば良いとは簡単には言えません。人手不足の業界や職業を見ると、その多くは以下のいずれかに当てはまります。
給与や待遇を高水準に引き上げたり、従業員の事情に合わせた柔軟な働き方の導入といった対策が必要になりますが、すでに人手不足の状況に陥ってしまっている企業には難しいのが現実です。
人材が流動化すると、同業種への転職のほか、これまでの経験やスキルにもとづいた別業界への転職もしやすくなります。より待遇の良い業界や企業に人材が集まる一方で、不人気の業界や待遇改善で後れを取っている企業はますます人が集まりにくくなってしまうのです。
【関連記事:人材の流動化とは?雇用市場の活性化によるメリット・デメリット】
2020年のコロナ禍以降、長期滞在者(いずれ日本に戻る予定の人)の人数は減少傾向にありますが、永住者数はゆるやかに増加し続けています。
外務省の統計では永住者の年齢層はわかりません。しかし海外へ移住・永住となると、その国で仕事があることを条件とする国が多いため、少なくとも労働可能な年齢の人が海外へ出ていると推測できます。
日本の若者のなかで海外へ挑戦する魅力が上がれば、日本企業が優秀な若手人材を獲得することが難しくなる可能性があるでしょう。
人手不足が進むと、企業にとって以下のような悪影響が懸念されます。
- 労働環境や働きがいが悪化する
- 事業縮小や倒産に追い込まれる
- 組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
労働環境や働きがいが悪化する
人手不足が進むと職場の従業員一人ひとりが担う業務量が増加します。
- 残業時間が増加する
- 有給などの休暇取得が難しくなる
- 職場のコミュニケーションが減少する
結果として、殺伐としたストレスフルな職場環境となってしまいます。企業や職場に対する愛着や信頼も失われてしまうため、従業員の働きがいも減少してしまうでしょう。
働き難い職場が出来上がってしまうと、新しい人材を採用しても早期離職されるなど、人手不足の悪循環に陥ってしまいます。
【関連記事:働きがいとは?意味と具体例、高める方法や職場での取り組みを紹介】
働き難い職場が出来上がってしまうと、新しい人材を採用しても早期離職されるなど、人手不足の悪循環に陥ってしまいます。
【関連記事:働きがいとは?意味と具体例、高める方法や職場での取り組みを紹介】
事業縮小や倒産に追い込まれる
人手不足による事業縮小や倒産も考えられます。帝国データバンクの発表によると、2024年1月〜6月において人手不足を原因とした倒産件数は182件と過去最多を記録しています。
とくに多いのが、人手不足の業界としても知られる建設業と物流業です。働き方改革法案による労働時間の制限、いわゆる2024年問題が直撃し、人手を確保できないまま倒産を余儀なくされたと推測できます。
「求人募集を出せばとりあえず人が来る」という時代は終わり、求職者が希望する労働条件を提示できなければ事業継続が危ぶまれるシビアな時代となっているのです。
とくに多いのが、人手不足の業界としても知られる建設業と物流業です。働き方改革法案による労働時間の制限、いわゆる2024年問題が直撃し、人手を確保できないまま倒産を余儀なくされたと推測できます。
「求人募集を出せばとりあえず人が来る」という時代は終わり、求職者が希望する労働条件を提示できなければ事業継続が危ぶまれるシビアな時代となっているのです。
組織の人材育成や新陳代謝を停滞させる
倒産まで追い込まれなくても、人手不足の状況が続くと、組織の人材育成や新陳代謝において長期的な悪影響が懸念されます。
日本企業の人材育成方法は、実際の業務のなかで仕事を覚えてもらうOJTが主流です。とくに新入社員に対しては、先輩社員が二人三脚で教育する形を取っている企業が少なくありません。
しかし、人手不足が原因で従業員に余裕がなくなると、OJTのような教育に割ける物理的な時間が減ってしまいます。教育が不十分となって新入社員の戦力化が遅れたり、離職されたりといった問題にもつながるでしょう。
また若手の採用や定着に失敗すれば、組織の新陳代謝が途切れ、組織の高齢化も進んでしまいます。
【関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など】
日本企業の人材育成方法は、実際の業務のなかで仕事を覚えてもらうOJTが主流です。とくに新入社員に対しては、先輩社員が二人三脚で教育する形を取っている企業が少なくありません。
しかし、人手不足が原因で従業員に余裕がなくなると、OJTのような教育に割ける物理的な時間が減ってしまいます。教育が不十分となって新入社員の戦力化が遅れたり、離職されたりといった問題にもつながるでしょう。
また若手の採用や定着に失敗すれば、組織の新陳代謝が途切れ、組織の高齢化も進んでしまいます。
【関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など】
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人手不足に陥りやすい企業の特徴人手不足になりやすい業界や職業を前項で紹介しましたが、それに当てはまらなくても、次のような特徴がある企業は人材の流出や採用難からの人手不足に陥りやすくなります。- 労働負荷と賃金・待遇が見合っていない
- 業務の効率化に消極的
- 人事評価が不公平
労働負荷と給与・待遇が見合っていない
労働負荷に対して給与や待遇といった見返りが少なすぎる、いわゆる「割に合わない仕事内容」の会社は、新しい人材を採用しても離職されやすくなります。
労働負荷というと長時間労働や休日出勤の常態化のように「業務の絶対量」が過剰なケースを思い浮かべがちですが、「質の側面」も見過ごせません。たとえば業務に必要なスキルや知識のアップデートが常に求められるような仕事では、従業員の心身にかかる負担も大きくなります。
その結果、いまの給与や待遇に対して不満を感じて、転職へ気持ちが傾きやすくなります。業務の効率化に消極的
デジタル技術の活用で業務効率化を推進する企業が増えています。さまざまな業務効率化ツールが登場しているなかで、頑なに紙の資料や対面会議にこだわる企業は、従業員からすると時代遅れな体質に映ります。
モチベーションやエンゲージメントの低下、将来性への不安から離職されやすい状態を作ってしまうでしょう。人事評価が不公平
不公平な人事評価が横行している企業も人がなかなか定着しません。具体的には、コネのある人材に甘い評価をつけたり、「いま退職されると人が足りないから」と問題のある従業員を放置したりするといった不公平なマネジメントが挙げられます。
その結果、他よりも仕事のできる従業員にしわ寄せが行ったり、職場内の雰囲気が悪くなったりするといった悪影響が発生します。とくに年功序列が残っている職場の場合、若い優秀な人材ほど不利な状況になるでしょう。
「優秀な人から辞めていく」「新しい人が定着しない」状態となり、人手不足が慢性化してしまうのです。
【関連記事:年功序列とは?意味や制度のメリット・廃止する際のポイントを解説】日本の人手不足における2つの誤解日本の人手不足の理由として「働き手そのものが減っているから」や「海外と比べて働き方の効率が悪いから」といった話を聞いたことがないでしょうか。
しかし、データを確認するとそうは言い切れない事実が見えてきます。人手不足を正しく把握するためにも、よく言われる2つの誤解について見てみましょう。誤解1「働き手そのものが減っている」
少子高齢化の影響で生産年齢人口として定義される「15〜64歳」の減少が加速しているのは事実であり、とくに若い世代の不足は深刻です。
しかし「働き手」、つまり就業者に限って見ると、少子高齢化に反して就業者数は増加しています。下図は日本の就業者数と就業率の推移のグラフです。日本の就業者数は2012年から増加に転じています。その要因となっているのが、65歳以上のシニア層と女性就業者の増加です。「生産年齢の男性」の人数は減少していますが、トータルでみれば「働きたい人」は増えていると言えるでしょう。
つまり、企業がこれまで正社員として採用してきた層は減少している一方で、企業が非正規で採用してきた層や、そもそも採用のターゲットにしてこなかった層は増えているのです。
とはいえ生産年齢人口の女性に限れば、全体の人数が減少傾向であることは変わりません。上図は女性の年齢階級別労働力率を示したグラフです。
20代後半〜40代前半にかけて女性の就業率が低下する通称「M字カーブ」は年々改善しているのが見て取れます。働きたい女性の割合が上限に達すれば、就業者数のうち生産年齢人口の女性が占める割合はいずれ減少に転じると推測されます。誤解2「海外と比べて非効率的な働き方をしている」
日本の労働環境を語る際によく揶揄されるのが、ハンコ文化に代表されるような非効率な働き方です。そして非効率さの根拠としてよく挙げられるのが、就業者1人当たりのGDP、いわゆる労働生産性です。
(公財)日本生産性本部の発表によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)でした。主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
一見すると、日本の労働生産性は海外よりも低く、非効率的な働き方をしているように思われます。
しかし、ランキング1位となったアイルランドは、法人税の軽減策で世界中の多国籍企業を呼び込むことに成功している国です。また2位のノルウェーは天然ガスや石油を主要な輸出産品としています。
労働生産性は、国の産業・市場構造や経済政策に強く影響されます。労働生産性が低いからといって、日本の労働者が著しく非効率的な働き方をしているとは言い切れません。
とはいえ、日本の労働生産性が高くないことは事実です。
下図は日本の一人当たりの実質GDP成長率を要因分解した図です。少子高齢化の影響を除いても、1990年以降、一人当たり実質GDP成長率の押し下げ要因に労働生産性が絡んでいることが見て取れます。人手不足解消のために実施したい7つの対策人手不足を解消するには、自社に合った対策を講じる必要があります。ここでは7つの対策を紹介します。- 自社の定着率を上げる
- 雇用方法のバリエーションを増やす
- 従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
- 採用方法を見直す
- シニア層の雇用環境を整える
- 外国人の雇用を増やす
- AIやITの力を借りる
自社の定着率を上げる
人手不足解消にまず必要なのが、自社の定着率の向上です。人材を採用してもすぐに辞めてしまうようでは、穴の空いたバケツで水を汲むのと同じであり、いつまでも人手不足はなくなりません。
下のグラフは、厚生労働省が発表した2022年の職種別の入職率・離職率を表したものです。とくに「宿泊業、飲食サービス業」については、入職率とともに離職率も高い傾向が見てとれます。
また離職した理由は、男女とも「定年・契約期間終了」を除くと「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が目立ちます(「個人的な理由」を除く)。人材の定着率に課題のある企業は、まず働き方改革に着手すべきと言えそうです。
ただし、働き方改革を行ううえで注意すべきは、働く人の価値観の多様化です。
雇用動向調査を見ると、とくに30代前半以下の男性で「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」を離職理由に挙げている割合が高いことがわかります。また女性全体では、前年度よりも「仕事の内容に興味を持てなかった」を選ぶ人が増加しています。
自社の定着率改善を考えるにあたって「男性はやりがいを重視するだろう」「女性は仕事内容より働きやすさを重視するだろう」と従来の固定観念で考えないようにすべきと言えるでしょう。
【関連記事:定着率を上げるには?定着率を上げる方法を紹介します】
参考:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要雇用形態のバリエーションを増やす
雇用形態のバリエーションを増やすのも、人手不足の解消につながります。
かつては雇用が安定した正社員が一般的でした。しかし、近年は働く曜日や、時間に柔軟なパートやアルバイト、業務委託などの雇用形態を希望する人も増えてきています。
正社員や契約社員しか受け入れていない企業は、貴重な人手を逃している可能性もあるのです。
また雇用形態のバリエーションを増やすことで、シニア層や再就職を希望する主婦層の確保にもつながります。
国土交通省の調査にあるように近年の日本では女性とシニアの就業者数が増加していますが、ブランクのある主婦やシニアの場合、より柔軟な働き方を求める傾向があります。- 育児や介護があるため時間に融通がきく仕事でないと就業できない
- 急な休みも受け入れてくれる職場でないと難しい
- 業務内容は魅力的だが週5日の働き方は体力に自信がない
- 在宅勤務も可能な仕事が良い
上記のような事情から、募集要項を見て諦めるケースも少なくありません。
コアタイムを9〜17時からずらしたり、短時間労働を広く適用したりするだけでも、採用の間口は広がります。時代に合わせて雇用形態の幅を増やすことで、人手不足対策につながるでしょう。
業務委託や女性の採用について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:業務委託契約とは?契約書作成の流れや注意点も合わせて紹介】
【関連記事:「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット】従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
自社の状況が人手不足よりも人材不足に近い場合は、従業員のリスキリングやリカレント教育の推進も効果的です。- リスキリング:新しいスキルや知識の習得を後押しすること
- リカレント教育:社会人が再び大学などで学び直し、就労と教育のサイクルを回すこと
たとえばIT人材が不足している企業が、従業員のITスキルや知識の習得を後押しや、社内でIT人材を確保するといった取り組みが考えられます。
もちろん新しい分野を学ぶとなれば一時的に従業員のパフォーマンスが低下する可能性はあります。しかし、企業文化を熟知した人材から人員調達できる仕組みが作れるため、長期的には人手不足の改善が期待できるでしょう。
【関連記事:リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説】
【関連記事:リカレント教育とは?企業における必要性、日本の現状、事例など】採用方法を見直す
採用方法を見直してみるのも、大切な人手不足対策です。
採用活動においては、エージェントまたは求人情報サイトに募集要項を送り、応募してきた人材を選考するのが一般的です。しかし、売り手有利の採用市場においては、従来の「待ち」の採用方法ではうまく母集団を形成できないケースも増えています。
応募が集まらない場合は、以下のように企業側から求職者へアピールする採用方法を試してみるのも一案です。- ダイレクトリクルーティング
- アルムナイ採用
- リファラル採用
とくにアルムナイ採用やリファラル採用のように自社への理解が深い人材を採用する方法は、ミスマッチからの離職防止にも効果的です。
また、選考段階でミスマッチを避ける方法として、コンピテンシー診断や構造化面接も有効です。とくにこれまでとは異なる層からの採用を考えている場合に、業務への適性や社風とのマッチ度などを客観的な視点で評価する際に役立ちます。
採用方法についてお悩みの担当者様は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
【関連記事:アルムナイとは?採用のメリット・デメリット、導入企業の事例を解説】
【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】
【関連記事:構造化面接は採用に有効?効果やメリット、質問例をまとめて解説】シニア層の雇用環境を整える
シニア層(高齢者)が働けるよう雇用環境を整えることも重要です。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けるほか、70歳までの就業機会の確保も努力義務としています。
厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると65歳までの雇用確保措置を実施した企業は23万6,815社で、そのうち定年制を廃止した企業は9,275社(3.9%)、定年を引き上げた企業は6万3,772社(26.9%)、継続雇用制度を導入した企業は16万3,768社(69.2%)です。
また、マイナビの2024年企業調査によると、シニア採用を実施したことがあると回答した企業は62.8%にも上り、とくに警備業界がシニア採用に積極的な様子が伺えます。
シニア採用への姿勢は業界によって差があるものの、少子高齢化が進むなかで人手不足に対応するには、シニア層の雇用環境整備が不可欠です。外国人の雇用を増やす
外国人の雇用も視野に入れてみましょう。文化や言語が異なる外国人の雇用を増やすことで人手不足の解消だけではなく、日本の人材だけではカバーしきれない課題を補ってくれるメリットもあります。
下図は厚生労働省が発表した産業別外国人労働者数の推移を示したグラフです。2023年10月末、外国人労働者数は初めて200万人を超えました。産業別で見ると「製造業」が全体の 27.0%を占め、対前年増加率では建設業がトップとなっています。外国人の雇用を増やすことで、英語や他の言語を話せる人材の確保にもつながります。ビジネス商圏拡大のチャンスになるほか、ダイバーシティの推進にも良い影響が期待できるでしょう。
【関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説】AIやITの力を借りる
AIを活用して、人手不足の解消を図るのも1つの方法です。最近では、人手不足の課題や接触を減らすためにレストランチェーンやホテルなどでAIロボットが導入されています。
介護や医療の現場でも実験が行われています。人間にしかできない業務もありますが、煩雑な作業に追われて重要な業務を先延ばしにしている人も少なくありません。
「入れ替わりが激しく、人件費がかさんで困っている」のであれば、「人ではなくてAIに任せられるかも」と視点を変えると良いでしょう。人手不足解消に成功した企業事例を3つ紹介人手不足の解消に向けて、アクションを起こしている企業も多く存在します。ここでは、3社の企業事例を紹介します。興南(こうなん)設計株式会社
1961年創業の岡山県倉敷市にある興南設計株式会社は、機械設計事業を行っている企業です。
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集大起産業株式会社
三重県に拠点を置く大起産業株式会社は、新卒採用者の早期離職に頭を抱えていました。
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】株式会社オハラ
石川県金沢市にある株式会社オハラは、食品製造業を行っている企業です。
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページミイダスを活用して人手不足解消を目指す人手不足にはさまざまな要因が絡んでいますが、多くの企業で意識したいポイントは採用した人材の定着率向上と、在籍している人材の離職率低下です。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
ミイダスでは、フィッティング人材分析(活躍要因診断)を社員に受験してもらうことで、自社で定着・活躍する人材の特徴などをデータで可視化。社内の実態を明らかにできるとともに、ミスマッチの少ない採用を実現します。はたらきがいサーベイや組織サーベイで従業員のエンゲージメントを向上
ミイダスには「組織サーベイ」や「はたらきがいサーベイ」という機能もあり、従業員に簡単なアンケートを実施することで、従業員が感じている仕事へのモチベーションや働きがいを定量的に評価できます。
会社への不満や離職の兆候をいち早く感知することで、必要な対応がスピーディーに実施できるでしょう。自社の組織改善にも役立てられます。
ミイダスでは無料トライアルを実施しています。アカウント登録は1分で完了しますので、ぜひ以下よりお試しください。
労働負荷というと長時間労働や休日出勤の常態化のように「業務の絶対量」が過剰なケースを思い浮かべがちですが、「質の側面」も見過ごせません。たとえば業務に必要なスキルや知識のアップデートが常に求められるような仕事では、従業員の心身にかかる負担も大きくなります。
その結果、いまの給与や待遇に対して不満を感じて、転職へ気持ちが傾きやすくなります。
モチベーションやエンゲージメントの低下、将来性への不安から離職されやすい状態を作ってしまうでしょう。
その結果、他よりも仕事のできる従業員にしわ寄せが行ったり、職場内の雰囲気が悪くなったりするといった悪影響が発生します。とくに年功序列が残っている職場の場合、若い優秀な人材ほど不利な状況になるでしょう。
「優秀な人から辞めていく」「新しい人が定着しない」状態となり、人手不足が慢性化してしまうのです。
【関連記事:年功序列とは?意味や制度のメリット・廃止する際のポイントを解説】
日本の人手不足の理由として「働き手そのものが減っているから」や「海外と比べて働き方の効率が悪いから」といった話を聞いたことがないでしょうか。
しかし、データを確認するとそうは言い切れない事実が見えてきます。人手不足を正しく把握するためにも、よく言われる2つの誤解について見てみましょう。
しかし、データを確認するとそうは言い切れない事実が見えてきます。人手不足を正しく把握するためにも、よく言われる2つの誤解について見てみましょう。
誤解1「働き手そのものが減っている」
少子高齢化の影響で生産年齢人口として定義される「15〜64歳」の減少が加速しているのは事実であり、とくに若い世代の不足は深刻です。
しかし「働き手」、つまり就業者に限って見ると、少子高齢化に反して就業者数は増加しています。下図は日本の就業者数と就業率の推移のグラフです。
しかし「働き手」、つまり就業者に限って見ると、少子高齢化に反して就業者数は増加しています。下図は日本の就業者数と就業率の推移のグラフです。
日本の就業者数は2012年から増加に転じています。その要因となっているのが、65歳以上のシニア層と女性就業者の増加です。「生産年齢の男性」の人数は減少していますが、トータルでみれば「働きたい人」は増えていると言えるでしょう。
つまり、企業がこれまで正社員として採用してきた層は減少している一方で、企業が非正規で採用してきた層や、そもそも採用のターゲットにしてこなかった層は増えているのです。
とはいえ生産年齢人口の女性に限れば、全体の人数が減少傾向であることは変わりません。
つまり、企業がこれまで正社員として採用してきた層は減少している一方で、企業が非正規で採用してきた層や、そもそも採用のターゲットにしてこなかった層は増えているのです。
とはいえ生産年齢人口の女性に限れば、全体の人数が減少傾向であることは変わりません。
上図は女性の年齢階級別労働力率を示したグラフです。
20代後半〜40代前半にかけて女性の就業率が低下する通称「M字カーブ」は年々改善しているのが見て取れます。働きたい女性の割合が上限に達すれば、就業者数のうち生産年齢人口の女性が占める割合はいずれ減少に転じると推測されます。
20代後半〜40代前半にかけて女性の就業率が低下する通称「M字カーブ」は年々改善しているのが見て取れます。働きたい女性の割合が上限に達すれば、就業者数のうち生産年齢人口の女性が占める割合はいずれ減少に転じると推測されます。
誤解2「海外と比べて非効率的な働き方をしている」
日本の労働環境を語る際によく揶揄されるのが、ハンコ文化に代表されるような非効率な働き方です。そして非効率さの根拠としてよく挙げられるのが、就業者1人当たりのGDP、いわゆる労働生産性です。
(公財)日本生産性本部の発表によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)でした。主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
一見すると、日本の労働生産性は海外よりも低く、非効率的な働き方をしているように思われます。
しかし、ランキング1位となったアイルランドは、法人税の軽減策で世界中の多国籍企業を呼び込むことに成功している国です。また2位のノルウェーは天然ガスや石油を主要な輸出産品としています。
労働生産性は、国の産業・市場構造や経済政策に強く影響されます。労働生産性が低いからといって、日本の労働者が著しく非効率的な働き方をしているとは言い切れません。
とはいえ、日本の労働生産性が高くないことは事実です。
下図は日本の一人当たりの実質GDP成長率を要因分解した図です。少子高齢化の影響を除いても、1990年以降、一人当たり実質GDP成長率の押し下げ要因に労働生産性が絡んでいることが見て取れます。
(公財)日本生産性本部の発表によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、OECD加盟38カ国中30位、52.3ドル(5,099円/購買力平価(PPP)換算)でした。主要先進7カ国で最も低い水準となっています。
一見すると、日本の労働生産性は海外よりも低く、非効率的な働き方をしているように思われます。
しかし、ランキング1位となったアイルランドは、法人税の軽減策で世界中の多国籍企業を呼び込むことに成功している国です。また2位のノルウェーは天然ガスや石油を主要な輸出産品としています。
労働生産性は、国の産業・市場構造や経済政策に強く影響されます。労働生産性が低いからといって、日本の労働者が著しく非効率的な働き方をしているとは言い切れません。
とはいえ、日本の労働生産性が高くないことは事実です。
下図は日本の一人当たりの実質GDP成長率を要因分解した図です。少子高齢化の影響を除いても、1990年以降、一人当たり実質GDP成長率の押し下げ要因に労働生産性が絡んでいることが見て取れます。
人手不足解消のために実施したい7つの対策人手不足を解消するには、自社に合った対策を講じる必要があります。ここでは7つの対策を紹介します。- 自社の定着率を上げる
- 雇用方法のバリエーションを増やす
- 従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
- 採用方法を見直す
- シニア層の雇用環境を整える
- 外国人の雇用を増やす
- AIやITの力を借りる
自社の定着率を上げる
人手不足解消にまず必要なのが、自社の定着率の向上です。人材を採用してもすぐに辞めてしまうようでは、穴の空いたバケツで水を汲むのと同じであり、いつまでも人手不足はなくなりません。
下のグラフは、厚生労働省が発表した2022年の職種別の入職率・離職率を表したものです。とくに「宿泊業、飲食サービス業」については、入職率とともに離職率も高い傾向が見てとれます。
また離職した理由は、男女とも「定年・契約期間終了」を除くと「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が目立ちます(「個人的な理由」を除く)。人材の定着率に課題のある企業は、まず働き方改革に着手すべきと言えそうです。
ただし、働き方改革を行ううえで注意すべきは、働く人の価値観の多様化です。
雇用動向調査を見ると、とくに30代前半以下の男性で「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」を離職理由に挙げている割合が高いことがわかります。また女性全体では、前年度よりも「仕事の内容に興味を持てなかった」を選ぶ人が増加しています。
自社の定着率改善を考えるにあたって「男性はやりがいを重視するだろう」「女性は仕事内容より働きやすさを重視するだろう」と従来の固定観念で考えないようにすべきと言えるでしょう。
【関連記事:定着率を上げるには?定着率を上げる方法を紹介します】
参考:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要雇用形態のバリエーションを増やす
雇用形態のバリエーションを増やすのも、人手不足の解消につながります。
かつては雇用が安定した正社員が一般的でした。しかし、近年は働く曜日や、時間に柔軟なパートやアルバイト、業務委託などの雇用形態を希望する人も増えてきています。
正社員や契約社員しか受け入れていない企業は、貴重な人手を逃している可能性もあるのです。
また雇用形態のバリエーションを増やすことで、シニア層や再就職を希望する主婦層の確保にもつながります。
国土交通省の調査にあるように近年の日本では女性とシニアの就業者数が増加していますが、ブランクのある主婦やシニアの場合、より柔軟な働き方を求める傾向があります。- 育児や介護があるため時間に融通がきく仕事でないと就業できない
- 急な休みも受け入れてくれる職場でないと難しい
- 業務内容は魅力的だが週5日の働き方は体力に自信がない
- 在宅勤務も可能な仕事が良い
上記のような事情から、募集要項を見て諦めるケースも少なくありません。
コアタイムを9〜17時からずらしたり、短時間労働を広く適用したりするだけでも、採用の間口は広がります。時代に合わせて雇用形態の幅を増やすことで、人手不足対策につながるでしょう。
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【関連記事:業務委託契約とは?契約書作成の流れや注意点も合わせて紹介】
【関連記事:「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット】従業員のリスキリングやリカレント教育を推進する
自社の状況が人手不足よりも人材不足に近い場合は、従業員のリスキリングやリカレント教育の推進も効果的です。- リスキリング:新しいスキルや知識の習得を後押しすること
- リカレント教育:社会人が再び大学などで学び直し、就労と教育のサイクルを回すこと
たとえばIT人材が不足している企業が、従業員のITスキルや知識の習得を後押しや、社内でIT人材を確保するといった取り組みが考えられます。
もちろん新しい分野を学ぶとなれば一時的に従業員のパフォーマンスが低下する可能性はあります。しかし、企業文化を熟知した人材から人員調達できる仕組みが作れるため、長期的には人手不足の改善が期待できるでしょう。
【関連記事:リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説】
【関連記事:リカレント教育とは?企業における必要性、日本の現状、事例など】採用方法を見直す
採用方法を見直してみるのも、大切な人手不足対策です。
採用活動においては、エージェントまたは求人情報サイトに募集要項を送り、応募してきた人材を選考するのが一般的です。しかし、売り手有利の採用市場においては、従来の「待ち」の採用方法ではうまく母集団を形成できないケースも増えています。
応募が集まらない場合は、以下のように企業側から求職者へアピールする採用方法を試してみるのも一案です。- ダイレクトリクルーティング
- アルムナイ採用
- リファラル採用
とくにアルムナイ採用やリファラル採用のように自社への理解が深い人材を採用する方法は、ミスマッチからの離職防止にも効果的です。
また、選考段階でミスマッチを避ける方法として、コンピテンシー診断や構造化面接も有効です。とくにこれまでとは異なる層からの採用を考えている場合に、業務への適性や社風とのマッチ度などを客観的な視点で評価する際に役立ちます。
採用方法についてお悩みの担当者様は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
【関連記事:アルムナイとは?採用のメリット・デメリット、導入企業の事例を解説】
【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】
【関連記事:構造化面接は採用に有効?効果やメリット、質問例をまとめて解説】シニア層の雇用環境を整える
シニア層(高齢者)が働けるよう雇用環境を整えることも重要です。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けるほか、70歳までの就業機会の確保も努力義務としています。
厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると65歳までの雇用確保措置を実施した企業は23万6,815社で、そのうち定年制を廃止した企業は9,275社(3.9%)、定年を引き上げた企業は6万3,772社(26.9%)、継続雇用制度を導入した企業は16万3,768社(69.2%)です。
また、マイナビの2024年企業調査によると、シニア採用を実施したことがあると回答した企業は62.8%にも上り、とくに警備業界がシニア採用に積極的な様子が伺えます。
シニア採用への姿勢は業界によって差があるものの、少子高齢化が進むなかで人手不足に対応するには、シニア層の雇用環境整備が不可欠です。外国人の雇用を増やす
外国人の雇用も視野に入れてみましょう。文化や言語が異なる外国人の雇用を増やすことで人手不足の解消だけではなく、日本の人材だけではカバーしきれない課題を補ってくれるメリットもあります。
下図は厚生労働省が発表した産業別外国人労働者数の推移を示したグラフです。2023年10月末、外国人労働者数は初めて200万人を超えました。産業別で見ると「製造業」が全体の 27.0%を占め、対前年増加率では建設業がトップとなっています。外国人の雇用を増やすことで、英語や他の言語を話せる人材の確保にもつながります。ビジネス商圏拡大のチャンスになるほか、ダイバーシティの推進にも良い影響が期待できるでしょう。
【関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説】AIやITの力を借りる
AIを活用して、人手不足の解消を図るのも1つの方法です。最近では、人手不足の課題や接触を減らすためにレストランチェーンやホテルなどでAIロボットが導入されています。
介護や医療の現場でも実験が行われています。人間にしかできない業務もありますが、煩雑な作業に追われて重要な業務を先延ばしにしている人も少なくありません。
「入れ替わりが激しく、人件費がかさんで困っている」のであれば、「人ではなくてAIに任せられるかも」と視点を変えると良いでしょう。人手不足解消に成功した企業事例を3つ紹介人手不足の解消に向けて、アクションを起こしている企業も多く存在します。ここでは、3社の企業事例を紹介します。興南(こうなん)設計株式会社
1961年創業の岡山県倉敷市にある興南設計株式会社は、機械設計事業を行っている企業です。
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集大起産業株式会社
三重県に拠点を置く大起産業株式会社は、新卒採用者の早期離職に頭を抱えていました。
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】株式会社オハラ
石川県金沢市にある株式会社オハラは、食品製造業を行っている企業です。
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページミイダスを活用して人手不足解消を目指す人手不足にはさまざまな要因が絡んでいますが、多くの企業で意識したいポイントは採用した人材の定着率向上と、在籍している人材の離職率低下です。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
ミイダスでは、フィッティング人材分析(活躍要因診断)を社員に受験してもらうことで、自社で定着・活躍する人材の特徴などをデータで可視化。社内の実態を明らかにできるとともに、ミスマッチの少ない採用を実現します。はたらきがいサーベイや組織サーベイで従業員のエンゲージメントを向上
ミイダスには「組織サーベイ」や「はたらきがいサーベイ」という機能もあり、従業員に簡単なアンケートを実施することで、従業員が感じている仕事へのモチベーションや働きがいを定量的に評価できます。
会社への不満や離職の兆候をいち早く感知することで、必要な対応がスピーディーに実施できるでしょう。自社の組織改善にも役立てられます。
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下のグラフは、厚生労働省が発表した2022年の職種別の入職率・離職率を表したものです。
また離職した理由は、男女とも「定年・契約期間終了」を除くと「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」が目立ちます(「個人的な理由」を除く)。人材の定着率に課題のある企業は、まず働き方改革に着手すべきと言えそうです。
ただし、働き方改革を行ううえで注意すべきは、働く人の価値観の多様化です。
雇用動向調査を見ると、とくに30代前半以下の男性で「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」を離職理由に挙げている割合が高いことがわかります。また女性全体では、前年度よりも「仕事の内容に興味を持てなかった」を選ぶ人が増加しています。
自社の定着率改善を考えるにあたって「男性はやりがいを重視するだろう」「女性は仕事内容より働きやすさを重視するだろう」と従来の固定観念で考えないようにすべきと言えるでしょう。
【関連記事:定着率を上げるには?定着率を上げる方法を紹介します】
参考:厚生労働省|令和4年雇用動向調査結果の概要
かつては雇用が安定した正社員が一般的でした。しかし、近年は働く曜日や、時間に柔軟なパートやアルバイト、業務委託などの雇用形態を希望する人も増えてきています。
正社員や契約社員しか受け入れていない企業は、貴重な人手を逃している可能性もあるのです。
また雇用形態のバリエーションを増やすことで、シニア層や再就職を希望する主婦層の確保にもつながります。
国土交通省の調査にあるように近年の日本では女性とシニアの就業者数が増加していますが、ブランクのある主婦やシニアの場合、より柔軟な働き方を求める傾向があります。
コアタイムを9〜17時からずらしたり、短時間労働を広く適用したりするだけでも、採用の間口は広がります。時代に合わせて雇用形態の幅を増やすことで、人手不足対策につながるでしょう。
業務委託や女性の採用について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:業務委託契約とは?契約書作成の流れや注意点も合わせて紹介】
【関連記事:「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット】
もちろん新しい分野を学ぶとなれば一時的に従業員のパフォーマンスが低下する可能性はあります。しかし、企業文化を熟知した人材から人員調達できる仕組みが作れるため、長期的には人手不足の改善が期待できるでしょう。
【関連記事:リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説】
【関連記事:リカレント教育とは?企業における必要性、日本の現状、事例など】
採用活動においては、エージェントまたは求人情報サイトに募集要項を送り、応募してきた人材を選考するのが一般的です。しかし、売り手有利の採用市場においては、従来の「待ち」の採用方法ではうまく母集団を形成できないケースも増えています。
応募が集まらない場合は、以下のように企業側から求職者へアピールする採用方法を試してみるのも一案です。
また、選考段階でミスマッチを避ける方法として、コンピテンシー診断や構造化面接も有効です。とくにこれまでとは異なる層からの採用を考えている場合に、業務への適性や社風とのマッチ度などを客観的な視点で評価する際に役立ちます。
採用方法についてお悩みの担当者様は、ぜひ下記の記事もご覧ください。
【関連記事:アルムナイとは?採用のメリット・デメリット、導入企業の事例を解説】
【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】
【関連記事:構造化面接は採用に有効?効果やメリット、質問例をまとめて解説】
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では企業に65歳までの雇用確保措置を講じることを義務付けるほか、70歳までの就業機会の確保も努力義務としています。
厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると65歳までの雇用確保措置を実施した企業は23万6,815社で、そのうち定年制を廃止した企業は9,275社(3.9%)、定年を引き上げた企業は6万3,772社(26.9%)、継続雇用制度を導入した企業は16万3,768社(69.2%)です。
また、マイナビの2024年企業調査によると、シニア採用を実施したことがあると回答した企業は62.8%にも上り、とくに警備業界がシニア採用に積極的な様子が伺えます。
シニア採用への姿勢は業界によって差があるものの、少子高齢化が進むなかで人手不足に対応するには、シニア層の雇用環境整備が不可欠です。
下図は厚生労働省が発表した産業別外国人労働者数の推移を示したグラフです。2023年10月末、外国人労働者数は初めて200万人を超えました。産業別で見ると「製造業」が全体の 27.0%を占め、対前年増加率では建設業がトップとなっています。
【関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説】
介護や医療の現場でも実験が行われています。人間にしかできない業務もありますが、煩雑な作業に追われて重要な業務を先延ばしにしている人も少なくありません。
「入れ替わりが激しく、人件費がかさんで困っている」のであれば、「人ではなくてAIに任せられるかも」と視点を変えると良いでしょう。
人手不足の解消に向けて、アクションを起こしている企業も多く存在します。ここでは、3社の企業事例を紹介します。
興南(こうなん)設計株式会社
1961年創業の岡山県倉敷市にある興南設計株式会社は、機械設計事業を行っている企業です。
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集
漠然と海外進出を考えていた矢先、知人を通じてカンボジアの留学生のホームステイを手伝ったのをきっかけとして、外国人留学生の採用を始めました。
その後、2011年タイ、2012年にインドネシアに展開。外国人社員は日本で3〜5年働いたのち、現地で活躍の場を設けているそうです。
こうした事例から、外国人雇用は単に人手不足を解消するだけでなく、企業の経営戦略を遂行するうえで大きな道筋になる可能性があるのです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集
大起産業株式会社
三重県に拠点を置く大起産業株式会社は、新卒採用者の早期離職に頭を抱えていました。
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】
新卒者の離職率は入社後1年以内に約17%、3年以内は約48%と高く、既存社員にも負担が大きくなっていたそうです。
離職率を下げるために導入したのはメンター制度(教育担当制度)です。新卒採用者や新卒の社員と年齢が近い社員が教育担当者となり、業務内容や悩み相談なども行いました。
教育担当者には担当者手当を支給し、モチベーションアップも図ったそうです。結果的に離職率は0%となり、コミュニケーションの重要性認識も大幅に向上しました。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集63ページ
【関連記事:メンター制度の導入で得られる効果やデメリット、制度を成功させるポイントを解説】
株式会社オハラ
石川県金沢市にある株式会社オハラは、食品製造業を行っている企業です。
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページ
商品の需要拡大にあわせて従業員を増やそうとハローワークや求人で募集しましたが、応募が来なかったそうです。
そのような矢先、経営者の友人から高齢者雇用を提案され、早朝5時〜午前9時半までの短時間勤務制で募集することに。すると労働に対して意欲の高い高齢者が集まり、若い人たちにも良い影響を与えているそうです。
参考:経済産業省|中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会 中小企業の人手不足対応事例集30ページ
ミイダスを活用して人手不足解消を目指す人手不足にはさまざまな要因が絡んでいますが、多くの企業で意識したいポイントは採用した人材の定着率向上と、在籍している人材の離職率低下です。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
ミイダスでは、フィッティング人材分析(活躍要因診断)を社員に受験してもらうことで、自社で定着・活躍する人材の特徴などをデータで可視化。社内の実態を明らかにできるとともに、ミスマッチの少ない採用を実現します。はたらきがいサーベイや組織サーベイで従業員のエンゲージメントを向上
ミイダスには「組織サーベイ」や「はたらきがいサーベイ」という機能もあり、従業員に簡単なアンケートを実施することで、従業員が感じている仕事へのモチベーションや働きがいを定量的に評価できます。
会社への不満や離職の兆候をいち早く感知することで、必要な対応がスピーディーに実施できるでしょう。自社の組織改善にも役立てられます。
ミイダスでは無料トライアルを実施しています。アカウント登録は1分で完了しますので、ぜひ以下よりお試しください。
そのためには、自社の組織としての特徴や、自社にあった人材の特徴を把握する必要があります。そこでおすすめなのが、アセスメントリクルーティングツール「ミイダス」です。
ミイダスでは、フィッティング人材分析(活躍要因診断)を社員に受験してもらうことで、自社で定着・活躍する人材の特徴などをデータで可視化。社内の実態を明らかにできるとともに、ミスマッチの少ない採用を実現します。
会社への不満や離職の兆候をいち早く感知することで、必要な対応がスピーディーに実施できるでしょう。自社の組織改善にも役立てられます。
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