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リスキリングとは?用語の意味や必要とされる背景、企業事例などを解説

リスキリング(reskilling)とは、成長分野の仕事や業務に就くために、人材が新たなスキルを獲得することを指す用語です。政府もリスキリングを進める企業や人材を支援しており、注目が集まっています。

しかし、注目されてはいるものの「リスキリングとは、一体何なのか」「なぜ必要になるのか」といったように、社内で認知度が広がっていないケースもあるのではないでしょうか。

当記事では、リスキリングの基本となる用語の意味や類語との違い、必要とされる背景、導入方法やポイントなどを解説します。実際にリスキリングを導入している企業事例もお伝えするので、ぜひご一読ください。

なお、人材確保に課題のある方に向けたお役立ち資料もご用意しています。自社に合った従業員を採用し、定着させていきたいとお考えの方は、あわせてご活用ください。

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リスキリングとは?用語の意味や語源、使い方を解説

リスキリングのイメージ
リスキリングとは、技術革新やDX推進などの変化に対応するために、新しい知識やスキルを習得すること・させることです。

激しく時代が変化するなかで新しい職種に就くには、改めて学び直しが必要となります。また、業務上で必要となるスキルが変化している場合には、企業が主導して社員のスキルアップを支援しなくてはなりません。

株式会社manebiが日本企業に行った調査によると、2022年1月の時点でおよそ半数の企業が社員へのリスキリングに取り組んでいると回答しています。

参考:株式会社manebi「リスキリングを実施している国内企業は約5割。データ分析、セキュリティーなどDXの基礎教育が大半に」PR TIMES

企業として社員のリスキリングに取り組んでいればDX化の推進がしやすくなり、AIの台頭による業績低下などのリスクに備えられるのです。

なお、デジタルやITツールを用いて、採用業務の効率化や人材確保を行うことを「採用DX」と言います。概要やメリット、導入方法などを知りたい方は以下をご覧ください。

【関連記事:採用DXとは?導入するメリットやミイダスの事例を紹介】

リスキリングの語源

リスキリングの語源は、英語の「Re-skill」です。直訳すると「新しい技能を身に付ける」「再教育する」となります。

これまで従業員の持っていなかった知識やスキルを身に付けてもらうための取り組みなら、リスキリングに該当します。

リスキリングの使い方

リスキリングの言葉の使い方は下記の通りです。参考にしてみてください。
  • 急速にデジタル化が進むなか、従業員にリスキリングの機会を提供します。
  • リスキリングの取り組みによって新たなスキルを習得でき、事業の拡大に貢献しました。
  • 従業員の段階的なスキルアップを図るリスキリングプログラムを導入します。

リスキリングと類似語との比較

リスキリングと似た意味を持つ用語が存在します。
  • リカレント教育
  • アンラーニング
  • アップスキリング
大きく見て同義で使われることもありますが、厳密には別の用語です。それぞれの違いを見ていきましょう。

リスキリングとリカレント教育の違い

リカレント教育とは、一度社会に出た人材が、ふたたび大学などの教育機関に戻って学び、その後にまた就職する……というサイクルを繰り返すこと。「学び直し」とも呼ばれます。

学習と仕事を“リカレント=循環”させながら、生涯にわたってスキルを磨いていく社会人の学習の形とも言えるでしょう。

リカレント教育とリスキリングは、社会人のスキル獲得という点では同じですが、学びの方向性が異なります。

リカレント教育は、個人がそのときに必要だと感じたものを、幅広く自由に学びます。

対してリスキリングは、これから業務で必要とされるスキルや、新しく創出される職業へ就くために必要なスキルが対象です。実際の業務に活かせるスキルがメインとなるため、リカレント教育のように一度仕事を離れて学ぶといったケースは少ないでしょう。

なお、リカレント教育については、厚労省がガイドラインを定めているほか、文科省が「マナパス」というポータルサイトを用意しています。社会人の学びに役立つ情報がまとめられていますので、興味のある方はご覧ください。

リスキリングとアンラーニングの違い

アンラーニングとは、これまで培った仕事の知識やスキルのうち、古くなったものを捨て、新しいものへ変えていく「学習棄却」を指す用語です。

アンラーニングも、最終的に新しいスキルを取り入れる点はリスキリングと同じです。ただ、リスキリングがあくまで新しいスキルの獲得を主軸とするのに対し、アンラーニングは古くなったスキルや知識を棄却するという意味合いが強くなります。

とはいえ、新しいスキルを取り入れるには、古くなったスキルや固定観念を捨てる思考の転換が必要です。リスキリングとアンラーニングはセットで必要と言えるでしょう。

リスキリングとアップスキリングの違い

アップスキリングは、従業員が持つ既存のスキルをアップデートすること。すでに持っている能力や技能を現在の職業・職種のまま高める際には、アップスキリングとなります。

一方のリスキリングは、これまでに身に付けていない新しい知識・スキルを習得していくことです。リスキリングした内容は現在の業務のほか、別の職業や職種にも活かせます。

それぞれの用語には、既存の知識やスキルをアップデートするか、新たな分野を習得するかという違いがあります。

しかし企業の成長を見据えた人材育成をしていくには、どちらも必要な要素です。従業員の目指すキャリアによって、リスキリングかアップスキリングかを選択できるような仕組みが求められます。

リスキリングが必要とされる背景

リスキリングとビジネス環境のイメージ
なぜ近年になってリスキリングが注目されるようになったのでしょうか。これには次の3つが関係しています。
  • DXの浸透
  • 各国がリスキリングに注目
  • AIによる働き方や市場環境の変化

DXの浸透

リスキリングが注目される大きな理由の1つに、DX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)の促進があげられます。

DXとは、デジタル技術の活用により企業や組織全体の業務プロセス・フロー、ビジネスモデル、企業風土などが変容することです。たとえば下記のような変化はDXと言えます。
・対面指導の塾が、スマホで受講できるオンライン授業を始め、通学できなかった子どもにも授業ができるようになった
・保険サービスの申し込みに必要だった窓口手続や押印を電子処理・電子署名に変え、オンラインで完結できるようになったので遠隔地の顧客にも対応しやすくなった
企業がDXを進めるにあたり、ボトルネックになるのが従業員のスキル不足です。経費精算を電子化するにしても、実際にそのシステムを使用する従業員が最低限のPCスキルを保有していなければ、プロセスの効率化は実現できません。

キラメックス株式会社が発表した調査によると、リスキリングに注目する背景・課題として「従業員によってITスキル、リテラシーにばらつきがある」と回答した企業が最多になりました。64.2%もの企業でITスキルの差に課題を抱えています。

参考:キラメックス株式会社「企業のリスキリング実施に関する調査、 約8割の企業が『今後もリスキリングに取り組む予定』と回答」|valuepress

企業がDXを実現するには、まず従業員に対して必要とされるITスキルを教育、つまりリスキリングを促す必要があるのです。

各国がリスキリングに注目

国をあげてリスキリングを支援する動きが活発化しています。

2020年に行われたダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)において「第4次産業革命に対応した新たなスキルを獲得するために、2030年までに10億人をリスキリングする」という目標が掲げられました。また、そのためのプラットフォームの構築が宣言されたのです。

これにともない、各国や各企業がリスキリングに対して資金や教育プログラムの提供を開始。日本においても、経済産業省が社会人のスキルアップ支援制度として「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を立ち上げてリスキリングを後押ししています。

また2022年10月に岸田首相が、リスキリング支援に今後5年間で1兆円を投じる方針を打ち出しました。

各国が、まさに国策としてリスキリング支援に取り組んでいるのです。

AIによる働き方や市場環境の変化

日本人の仕事時間の多くを占めると言われるルーチンワークは、技術的にはAIで代替可能になると見られています。たとえば、下記の職業がAIで代替できると言われています。
  • 一般事務
  • 銀行員
  • 警備員
  • 小売店の店員
必ずしもなくなる職業というわけではありませんが、ルーチンワーク業務の一部がAIに変わりつつあるのが現状です。

このような環境変化に対応し、社会人として新しい価値を創造し続けるためには、企業のみならず個人もリスキリングを意識する必要があるのです。

リスキリングで何を学ぶべき?おすすめジャンルは?

従業員にリスキリングをしてもらう際、どのような内容で再教育すべきか悩むことがあるのではないでしょうか。下記でジャンルの一例を紹介します。
  • ITスキル・ITリテラシー
  • 語学
  • コミュニケーション
  • デジタルマーケティング
  • データ分析
  • AI関連
  • 情報セキュリティ
ITスキル・ITリテラシーの向上は、DX化や業務効率化の推進にもメリットがあります。「せっかくDXツールを導入したのに、ITスキルが低いために従業員が使いこなせない」という状況ではDX化は進みません。

多くの企業で課題感のある部分ですので、リスキリングで学んでもらうのがおすすめです。

とはいえ、企業の課題によってリスキリングすべきジャンルは異なります。自社の現状や課題を可視化したうえで、必要な内容のリスキリングを促進させていきましょう。

企業がリスキリングを推進する4つのメリット

メリットと書かれた積み木
個人レベルでリスキリングに取り組む人もいますが、全社的に従業員のリスキリング支援を行う企業も増えています。

企業がリスキリングに取り組むメリットは次の4つです。
  • 社内で人材調達ができる
  • 業務を効率化できる
  • 企業の成長と企業文化の継承を両立できる
  • イノベーションを創出しやすくなる
それぞれ見ていきましょう。

​社内で人材調達ができる

るスキルを保有する人材を、社内で調達することにつながります。

デジタル技術に精通したDX人材を新たに外部から調達するのは容易ではありません。デジタルスキルを保有する人材は、競合他社からも引く手あまたです。自社にマッチする人材が見つからず、採用活動が長期化する可能性もあるでしょう。

その点、リスキリングで既存社員のスキルアップができれば、採用コストをかけずに求める人材を獲得できるのです。

業務を効率化できる

DXで業務効率化を進めるにあたっては、「そもそも従業員に必要なデジタルスキルがない」「慣れたやり方の変更に現場から抵抗がある」という2つの壁があります。

リスキリングで従業員に必要なスキルが身に付けば、スキル不足が解決するだけでなく、「そうした方が効率良いよね」とDXの必要性が理解されやすくなるでしょう。

現場のDXが大幅に促進できるはずです。

また空いた時間を別の業務に注力できるようになるため、結果として従業員規模はそのままでも事業成長が期待できます。

企業の成長と企業文化の継承を両立できる

ビジネス環境が変化すると、ビジネスモデルや事業の変更を余儀なくされる企業も出てきます。しかし、その変化に対応するために新しい人材を大量に採用すると、それまで守ってきた企業文化や独自の“らしさ”が失われてしまうかもしれません。

リスキリングが成功すれば、既存の人材を新しい業務に移行できます。外部から調達する人材が少なくて済むため、企業文化の継承と企業の成長が両立しやすくなるでしょう。

イノベーションを創出しやすくなる

新しいスキルや知識を得ると、人はこれまでと違った角度で物事を見られるようになります。

グローバル化により競争が激化しているいまの時代、イノベーションの創出が起こりやすい組織への変容が企業の生き残りの鍵です。

リスキリングで社内に新たなスキル・知識を獲得した人材が増えれば、新しい製品アイデアやビジネスモデルを創出できる可能性が高まります。結果として、時代の変化に対応できる強い組織作りにつながるのです。

イノベーションについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

【関連記事:イノベーションとは?種類や成功事例をもとにわかりやすく解説

企業がリスキリング導入することで起こりうる3つのデメリット

頭を抱えるビジネスパーソン
リスキリングの実施によって得られるのはメリットだけではありません。デメリットになる部分は下記の通りです。
  • コストが増加する
  • 長期間にわたって取り組む必要がある
  • スキルを身に付けた従業員が転職する可能性がある
1つずつ解説します。

コストが増加する

リスキリングには、研修・育成プログラムの検討や導入に時間がかかります。従業員にどのような育成をするのかによって、導入する研修やプログラムは異なります。

社内で研修や講習をする場合には、講師を担当できる従業員の育成や準備も必要です。社内で内製化が難しいときには、外部のプログラムを導入したり、最適な研修講師を探したりする手間も発生するでしょう。

いずれにせよ、導入に必要な時間的コストは大きくなります。

また、リスキリングには費用面のコストも発生します。研修を担当する従業員の人件費や外部プログラムの利用料など、リスキリングの導入前と比較したらコストが増えるでしょう。

従業員のリスキリングに投資できる予算を明確にしたうえでの導入が大切です。

なお、リスキリングの導入に必要となった経費の一部を補助金でまかなえる国の支援もあります。詳細は記事後半で解説していますので、気になる方はあわせてご覧ください。

長期間にわたって取り組む必要がある

リスキリングをして従業員に新しい知識やスキルを身に付けてもらうには、長期的なスパンで考えなくてはなりません。たった1日の研修や講習ではスキルが定着せず、リスキリングの成果があったとは言えないのです。

リスキリングした内容を従業員に定着させ、業務でも実践できるように支援していくことが企業に求められます。長期的に継続して取り組める土台やモチベーションを維持させる工夫が必要です。

スキルを身に付けた従業員が転職する可能性がある

「リスキリングを推進したら、優秀な従業員が他社へ流出してしまうのではないか」と懸念している企業もあります。新たなスキルを身に付けた従業員が転職するリスクはゼロではありません。

しかし、労働市場全体で見ると従業員の転職は避けては通れない道になりつつあります。政府が発表した「こども未来戦略方針」では下記の記述がされました。
労働者の主体的な選択による職業選択、労働移動が、企業と経済の更なる成長につながり、構造的賃上げに資するものとなるよう、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化という三位一体の労働市場改革を加速する。
引用:こども未来戦略方針

今後も少子高齢化が進むと予測されるなかで、労働力が成長分野に移動することによって企業と経済の成長につなげていくのが国の方針です。

また、求職者が転職先を選ぶ際、リスキリング制度の充実度が志望度合いに影響するといった調査もあります。リスキリングのできる企業が選ばれるなら、導入しない場合は人材確保が不利になる可能性もあるでしょう。

つまり、リスキリング支援の充実によって従業員や求職者から選ばれる企業になっていく必要があるのです。従業員の流出を恐れず、企業としての魅力になるようなリスキリング体制の構築が求められます。

日本企業におけるリスキリングの課題

日本でも、大企業をはじめ多くの企業がリスキリングに取り組んでいます。しかし、海外に比べれば日本のリスキリングは遅れていると言われているのです。

自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』の著者である後藤宗明氏は、LinkedInのインタビュー記事のなかで、日本企業におけるリスキリングの課題に下記の2つをあげています。
  • 経営者層の意識改革が追いついていない
  • スキル獲得を評価する仕組みが作れていない
参考:LinkedIn News編集部.蛯谷 敏「日本人が「リスキリング」の前にすべきこと」|LinkedIn

経営者層の意識改革が追いついていない

リスキリングは全社的な取り組みです。よって、リスキリングおよびDX推進に対する経営者層の理解が不可欠になります。

しかし、中小企業基盤整備機構の調査によると、DXの必要性について「理解している」と回答した中小企業はわずか37%。逆に「理解していない」「あまり理解していない」が46.8%と半数近くを占めています。
出典:中小企業基盤整備機構「​中小企業のDX推進に関する調査」2022年5月
DXの重要性を経営者層がわかっていなければ、デジタルスキルを獲得した従業員の価値も理解できません。後藤氏のインタビューでも「従業員がデジタルスキルを身に付けると、他社へ転職してしまう」として、リスキリングに消極的な考えを示す経営者がいると語られています。

日本の企業がリスキリングに取り組むには、まずは経営者層の意識改革が必要なのです。

スキル獲得を評価する仕組みが作れていない

リスキリングした従業員を正当に評価する仕組みが作れていない点も、日本企業の課題です。

せっかくリスキリングに取り組む体制を作れても、
  • スキル獲得によって給与や処遇を改善する
  • スキルが活かせる部署・ポジションへ異動させる
などのインセンティブがなければ、従業員のモチベーションは維持できません。

しかし平等性や年功序列の風土が残る企業では、新たなスキルを獲得した従業員を評価する仕組み作りが困難なのです。

結果的に「スキル獲得によって仕事の量や難易度は上がったものの、給与や待遇は変わらない」という、従業員にとって転職に気持ちが傾きやすい状況になってしまいます。

成長分野のスキルを保有する人材の価値を正しく認識・評価する社内制度の改革も、リスキリングの導入と同時に検討していく必要があると言えるでしょう。

【6ステップ】リスキリング導入の流れ

リスキリングの導入ステップのイメージ
企業がリスキリングを導入する手順は、次の通りです。
1. 経営戦略から必要なスキルを選定する
2. スキルを可視化して現状分析を行う
3. リスキリングを促す部署・従業員を決める
4. 教育プログラムを決定する
5. 環境を整えて教育プログラムに取り組んでもらう
6. 業務で実践する

1. 経営戦略から必要なスキルを選定する

まずは経営戦略から、どのようなスキルが必要なのかを洗い出しましょう。
  • 現状の経営課題は?
  • 課題の解決策は?
  • そのために必要なスキルは?
上記3つを分析し、リスキリングにより実現したい状態を明確にします。たとえば次のような形です。

<例>
・現状の経営課題:社内の申請書類をペーパーレス化し、申請処理を効率化したい
・課題の解決策:申請・承認システムを導入する
・そのために必要なスキル:初歩的なPCスキル

もし従業員のなかにPC操作が苦手な人が一定数いるならば、まずはその人たちに最低限のPCスキルを獲得してもらうことになるでしょう。

リスキリングで習得すべきスキルは、企業によって異なります。まずはどのようなスキルが必要なのかを具体的に設定しましょう。

2. スキルを可視化して現状分析を行う

必要なスキルが具体的になったら、次にいまの従業員のスキルを可視化します。
  • 従業員が現在保有しているスキル
  • そのスキルの習熟度
スキルの可視化により、必要なスキルに対してどれだけ不足しているかのギャップが明確になります。また、従業員が自分のスキルを棚卸しするのにも役立つでしょう。

リスキリングの習熟度は、おおよそ次の3段階に分けられます。

レベル1:そのスキルを使用する新しい業務に対応できる
レベル2:そのスキルを使って業務課題を解決できる
レベル3:そのスキルで新しい仕事に取り組める

自社で働く人材のスキルや習熟度を正しく把握することで、リスキリングの段階に応じた適切な教育プログラムが選定できるはずです。

3. リスキリングを促す部署・従業員を決める

リスキリングを行って欲しい対象の部署や従業員を選定します。たとえば次のような状況にいる従業員は、リスキリングの対象候補と言えるでしょう。
  • DXを促進したい職種・業務プロセスに就いている従業員
  • 成長分野の事業部署に属している従業員
  • 新たな事業分野・業務でのキャリア形成を希望している従業員
経営者層や管理職層にデジタル技術の知識がない場合は、優先してリスキリングに取り組んでもらう必要があります。意思決定を下す層がデジタル技術の有用性や必要性を説明できなければ、従業員にもリスキリングの重要性が伝わりません。

しかし、なかにはリスキリングの対象が経営者層や管理職層止まりとなってしまい、本当にスキルの習得が必要な若年層に施策が行きわたらないケースもあります。リスキリングを必要としている層を対象にして支援していきましょう。

4. 教育プログラムを決定する

教育プログラムを選定し、対象者に受講してもらいます。教育方法については、外部の研修サービスや有料の学習動画サービスを活用する企業が多いようです。

また、国や自治体などでも中小企業や個人向けに無料・安価でリスキリングの支援を行っています。下記は、支援機関やサービスの例です。

<研修・訓練を受けたい>
・生産性向上支援訓練(クラウド活用やAI活用などの訓練を、全国の生産性向上人材育成支援センターで実施)

<リスキリングやDXに関する相談をしたい>
よろず支援拠点
商工会議所
商工会

<講座を探したい>
マナビDX(旧:巣ごもりDXステップ講座情報ナビ)
第四次産業革命スキル習得講座
日本リスキリングコンソーシアム

5. 環境を整えて教育プログラムに取り組んでもらう

選定した教育プログラムを対象者に受講してもらいます。とはいえ「就業時間外に各々が取り組んでください」と伝えるだけでは、なかなかうまく進みません。

従業員の間に“やらされている感”が出ると、スキル獲得に時間がかかったり、職場の空気が悪くなったりといった弊害が生まれてしまいます。
  • 業務時間内に学習の時間を設ける
  • チームで励ましあいながら学べるような環境を作る
  • 今後のキャリアに対するリスキリングのポジティブな影響を説明する
スキル獲得へのモチベーションを高めるような環境整備が大切です。従業員が主体的にリスキリングに取り組めてこそ、高い成果が期待できます。

6. 業務で実践する

学んだ内容を実際の業務に活かしてこそスキルは定着します。

教育プログラムを終えた従業員が、日々の業務のなかで実践する場を提供することが重要です。「教育プログラムを受講したものの、仕事のなかで使い所がない」「何のために勉強したのかわからない」とならないよう、最初の必要スキルの分析はきちんと行いましょう。

また、新しいスキルの獲得を進めるなかで、少なからず従業員に負荷がかかるはずです。リスキリングがきっかけで離職とならないよう、従業員のモチベーションには注意を払う必要があるでしょう。

中途採用サービスのミイダスが提供する「働きがいサーベイ」では、従業員の働きがいを満足度と重要度の両面から可視化します。従業員が会社に対して求めるものを確認できるため、課題を把握しやすくなるところが特徴です。

リスキリング施策が働きがいにつながっているか、モチベーションアップに貢献しているかといった目には見えない部分を可視化できますので、ぜひお役立てください。

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リスキリングを成功につなげる6つのポイント

チェックポイントのイメージ
リスキリングを推進するうえでポイントとなるのは、下記の6つです。
  • 個人レベルではなく、企業が取り組むこととして展開する
  • 自社の課題にマッチする内容をリスキリングする
  • 従業員のキャリア構築に役立つプログラムを提供する
  • リスキリングの目的やメリットを社員に理解してもらう
  • 従業員への負担をかけすぎないようにする
  • 長期的なサポート体制を準備する
それぞれ見ていきましょう。

個人レベルではなく、企業が取り組むこととして展開する

従業員が個人的にリスキリングに取り組むこともできます。しかし、従業員の主体性に任せてしまうと、企業が期待するような成果につながりません。従業員の個人的な意欲にゆだねてしまうと、学習する内容が業務とは関係なくなったり、途中で学びの手を止めたりすることがあります。

得られる成果を高めるには、企業が取り組むべきこととして積極的にリスキリングに関わっていきましょう。企業主導での推進が前提として大切です。企業主導でのリスキリングなら、教育の方向性を企業側が定めることができ、継続的なサポートで学習の途中離脱を防ぎやすくなります。

自社の課題にマッチする内容をリスキリングする

リスキリングの内容を決める際には、自社の課題にマッチするものを選択しましょう。従業員のITリテラシー向上を目指したい企業が、英語の習得を推進させるようなことがあっては、課題とリスキリングの内容が合致しません。

課題に合わないリスキリング内容を選択すると、結果的にかけたコストが無駄に終わってしまうこともあるでしょう。

自社の課題を洗い出したうえで、最適なリスキリングを提供する必要があります。

また複数の課題があり、従業員の教育が必要となる分野が多岐にわたる場合は、優先順位の高いものから着手することが大切です。

従業員のキャリア構築に役立つプログラムを提供する

企業の課題だけではなく、従業員のキャリア構築も見据えたプログラムを提供します。キャリア構築につながるリスキリング体制のある企業は、従業員や求職者から注目を集め、定着率を高めやすいからです。

キャリア構築に役立つリスキリングは、下記のような取り組みが挙げられます。
  • マネージャーを目指す人向け・業務の専門性を高めたい人向けなど、キャリアにあわせてリスキリングの内容を選択できるようにする
  • グローバル視点でのスキルや業務を身に付けたい人は英語を学べる
  • 従業員ごとではなく、チームで学びを深めるプログラムを導入する
チームでのリスキリングに取り組む場合は、コミュニケーション力やチームワークも高めやすくなります。部署を越えたつながりづくりにも有効です。

リスキリングの目的やメリットを従業員に理解してもらう

リスキリングは新しく出てきた言葉の1つです。社会的に注目されているワードではありますが、まだリスキリングが何であるのかを知らない従業員もいる可能性があります。

リスキリングの認知度が社内で上がらないまま推進すると、従業員からは「何のためにやるのか」「なぜ教育を受ける必要があるのか」といった反発の声につながりかねません。

特に社歴の長い従業員がいる場合は、これから改めて新しいスキルを学ぶことに対して疑問を持つ可能性があります。疑問があるままの状態ではリスキリングを受け入れてもらえず、社内でうまく展開できない原因になるため、丁寧な説明が大切です。

従業員に対してリスキリングをする目的やメリットをしっかり伝え、当事者意識を持ってもらうことで社内の認知度も高まっていきます。

従業員への負担をかけすぎないようにする

リスキリングによって、従業員に負担がかかる状況にならないようにコントロールが必要です。たとえば「本来すべき業務が滞ってしまう」「残業や持ち帰ってまでリスキリングをしなければならない」といったことがあってはなりません。

リスキリングの環境は企業主導で整備していくものです。できるだけ従業員の負担が最小限になるよう、体制を整えていきましょう。

長期的なサポート体制を準備する

リスキリングは長期で取り組んでこそ、高い成果につながります。短期間でのリスキリングでは、思うような成功につながりません。

長く続けていくには、従業員のモチベーションを下げない工夫や長期的なサポートが必要です。
  • 定期的なメンタリングやコーチングで、モチベーションを維持する
  • OJTで、リスキリングした内容を実践できる場を用意する
メンタリングやコーチングを有効に行うには一定のスキルが必要になるため、外部の専門家へ依頼するのがおすすめです。

OJTのポイントは、下記の記事にて解説しています。あわせてご一読ください。

【関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など

日本企業のリスキリング導入事例

リスキリングに取り組む日本企業のイメージ
リスキリングを導入している企業は多数ありますが、ここでは3社の取り組み事例を紹介します。

株式会社NTTデータ

システムインテグレーション事業などを展開するNTTデータでは、DXを推進するデジタル人材の育成を目的にリスキリングに取り組んでいます。

NTTデータでは、就業時間の一部をデジタルスキルの強化などにあてる『セルフ・イノベーションタイム』を実施。全社員が年間で90時間以上を学びにあてられるようにし、社員自らがリスキリングに取り組む文化を形成しています。

また選抜した社員をデジタル組織へ2年間異動させ、基礎的なデジタルスキルを身に付けさせる“留職”により、次世代のデジタル事業を担う人材の育成も進めています。

参考:株式会社NTTデータ「デジタル人財化計画~#1 学び合いで全社員育成へ~」|DATA INSIGHT

久野金属工業株式会社

自動車などのプレス部品を製造する久野金属工業は、リスキリングで生産能力の向上に成功しました。

久野金属工業のリスキリングのポイントは、“スモールスタート”。久野金属では、まず数人の社員に新しいスキルやツールに触れてもらい、使えそうだと判断したら周囲の社員にも使ってもらうという手順を重視しています。これなら、リスクを最小限におさえた状態でDXが進められます。

この方法で、久野金属工業は社内にソフト開発の知識を持つ人材がいない状態から、製造ラインの稼働状況をモニタリングするクラウドサービスの開発に成功。生産能力の向上を実現しました。

参考:久野金属工業株式会社「久野金属工業株式会社:『自分の仕事を自動化できる』可能性が、社員の提案力を高める」|リクルートワークス研究所

株式会社ワークマン

ワーキングウエアなどを展開するワークマンも、リスキリングにより企業成長を実現した企業です。

かつてのワークマンは、店舗の在庫数すら把握できない、DXやデータドリブン経営とは無縁の会社でした。

そこで、データ活用ができる組織に変革するため、社員全員に対して表計算ソフトExcelの操作を習得する研修を実施。現場で社員自らがデータ分析できる体制を構築しました。

またデータ活用の失敗事例を共有したり、Excelのツールを制作すると表彰したりする環境整備を徹底。

この変革で、社員がデータを根拠に挑戦する企業へと生まれ変わりました。

参考:株式会社ワークマン「ワークマンを支える『Excel経営』とは?土屋専務に聞く」|ICT Business Online

リスキリングに関するよくある質問

付箋に書かれたはてなマーク
リスキリングの取り組みに充当できる補助金や、おすすめの資格を紹介します。

リスキリングの補助金で経済産業省が実施しているものは?

リスキリングの推進を支援する補助金は「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金」です。

「キャリア相談対応」「リスキリング提供」「転職支援」「フォローアップ」を一体的に実施する体制を整備するのが目的です。企業が実施する取り組みに必要な経費、転職を希望する求職者のリスキリング費用を国が補助します。

リスキリングにかかる経費が導入のネックになることがありますが、補助金の対象になれば一部の負担が軽減するため、活用しない手はありません。

詳しい申請条件や対象となる経費などは、最新の公募要領にてご確認ください。

参考:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業|経済産業省

リスキリングにおすすめの資格は?

リスキリングの際、資格取得を目指したい従業員もいるのではないでしょうか。社内でニーズが高ければ、資格取得を支援する方法も選択できます。

下記は、リスキリングにおすすめしたい資格の一例です。
業務によっては、下記の資格を目指してもらうのも良いでしょう。
▼専門職系
▼不動産系
▼プログラミング系
業務内容に合わせて、目指す資格を選択できるようにしましょう。

リスキリングで従業員の活躍幅を広げられる

活躍する従業員のイメージ
デジタル技術の発展にともなうビジネス環境の変化に対応するには、従業員のリスキリングが不可欠です。従業員の成長が見込まれる分野の新しいスキルを獲得できれば、活躍幅が広がり、企業の人材活用を最大化できます。

リスキリングは、第四次産業革命を生き残るための人材戦略とも言えるのです。

しかし、いざ企業がリスキリングを進めようとすると、一部の従業員から抵抗を受けるケースも珍しくありません。「慣れたやり方で仕事をしたい」と考える従業員からすれば、新しいスキルの習得はストレスに感じるためです。

また、リスキリング促進のためにいきなり高額な研修や学習プログラムの導入は「ハードルが高い」と感じる企業もあるでしょう。

そこでおすすめなのが、まずは少人数でリスキリングを試してみる方法です。
  • すでに近い分野のスキルを保有している
  • 新しい挑戦や変化に前向きな性格
上記のような従業員を選抜し、少しずつリスキリングを展開していけば、現場との摩擦を最小限におさえられます。

また従業員の選抜にあたっては、「ミイダス」のようなアセスメントツールの活用が有効です。

【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説

「ミイダス」ならリスキリングに前向きな人材が把握できる

ミイダス画面
ミイダス」は人材の特徴や適性を分析できる、42万4,950社(2022年12月時点)導入のアセスメントリクルーティングサービスです。

独自の活躍要因診断で、下記の分析が可能です。
  • 自社の組織としての現状を客観的に把握できる
  • 全41項目からなる「コンピテンシー(行動特性)診断」により、社風やいまのチームにフィットしやすい人材を分析
  • 「バイアス診断ゲーム」で仕事の意思決定の質を歪める認知バイアスを計測
コンピテンシー診断では、チャレンジングな行動特性を持つ人材が把握できるため、リスキリングをポジティブに捉える従業員の選抜が可能になります。

ミイダスでは、コンピテンシー診断で表示される結果を業務や人材育成に活かしていただくために「コンピテンシー活用講座」をご用意しています。ミイダスをご契約いただく法人様限定で視聴できる動画コンテンツです。ぜひお役立てください。



また思考や意思決定の癖を客観的に把握できる「バイアス診断ゲーム」は、リスキリングで重要になる従業員のアンラーニングに活用できるでしょう。

バイアス診断ゲームについても、結果項目ごとに活用方法を学べる「バイアス診断ゲーム研修講座」をご視聴いただけます。コンピテンシー活用講座とあわせてご覧ください。


さらに「ミイダス組織サーベイ」では、定期的なアンケートを実施し、一人ひとりの従業員の状態を把握できます。リスキリングによってストレスを抱えている従業員や、エンゲージメントが下がってしまった従業員をデータで検知できるため、素早く適切な対応ができます。

リスキリングに前向きな従業員の人選や意思決定の癖を可視化したい方は、ぜひ下記からミイダスにご登録ください。

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