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育成

グリット(やり抜く力)とは?身につける方法と組織への影響を解説

「成功者に共通する力」として、近年話題を呼んだことのひとつに「グリット」があります。グリットは経営者やリーダーだけでなく、組織のメンバーそれぞれが身につけられる力です。一人ひとりのグリットを高めることでチーム全体の生産性を高め、優れた成果をもたらすでしょう。

本記事では、グリットの意味や身につける方法、さらに組織全体のパフォーマンスにおけるグリットの影響・活かし方を解説します。

組織を活性化させ、さらに業績を伸ばしたい方や従業員の能力を引き出したいと考えている方はぜひ最後までご覧ください。

グリットとは?意味とグリット理論を解説

拳を突き上げる人
グリット(grit)は、ペンシルベニア大学のアンジェラ・ダックワース教授によって提唱されました。困難が発生した局面で大きな意味を持つ力のことです。

まずはグリットの意味を確認しましょう。

「グリット」の意味

グリット(grit)は、ダックワース教授の著書『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』で、日本でも多くのビジネスパーソンから注目を集めるようになりました。日本語訳としてあてられることの多い「やりぬく力」は、同書の日本語版の訳語に影響を受けています。

グリットの意味は、個人がもつ「粘り強さ」のようなものです。困難や浮き沈みのあるなか、成功するまでやり抜くようなイメージの言葉だと捉えられるでしょう。

「やり抜く力」というと、なにがあってもやり遂げねばならないという精神論のようなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、グリットは単なる精神論を唱えるものではなく、ダックワース教授自身が研究の結果「グリット理論」としてまとめた学術理論に基づくものです。

「成功者には共通する」グリット理論とダックワース教授の研究とは

ダックワース教授は、コンサルティングファーム「マッキンゼー」やニューヨークの公立中学校で数学教師としてキャリアを積んだのち、心理学者として研究の道に転じました。

そんなダックワース教授が関心を持ち、研究テーマとして掲げたのは「人生における成功に関与する能力」です。

ダックワース教授は中学校教師時代に教え子たちを観察していると「IQの高さと成績には相関がないのではないか」という仮説にたどり着きます。そしてかかわり方を工夫して粘り強く学習をするように導いていると、もっとも成績の悪い生徒も理解度が向上したそうです。その経験から、「IQの数値に関係なく、諦めず勉強をすることで、誰でも基礎的な知識は必ず習得できる」と確信するようになりました。

その後、ダックワース教授は本格的な研究を開始します。現状から仮説を立て、検証するというプロセスはまさに、コンサルティングの経験と実践が大いに役立っている研究だと言えるでしょう。

ダックワース教授は、シカゴ大学の学生を対象に調査を行いました。すると、グリットを有する学生はIQに関係なく、卒業している割合が高いことが判明しました。逆に、高IQの学生でも卒業できない事例はたくさんあったようです。

アメリカの大学では、厳しい単位認定や進級試験などの制度があり、卒業することそのものが困難を極めると知られています。無事卒業できることは、困難に立ち向かってきた証拠でもあるのです。研究の結果、ダックワース教授は「成功を収めるためには、困難があってもやりぬく力が必要である」というグリット理論を提唱することになります。

グリットへの注目―グリット・ドラゴンとは

ダックワース教授の研究は公にも広く知られ、認められています。「天才賞」とも呼ばれ、権威ある賞・マッカーサー賞も受賞したダックワース教授のグリット理論には、多くのビジネスパーソンや著名人も注目しています。

ダックワース教授はたびたび「グリット・ドラゴン」という言葉で、すさまじいグリットをもつ人々を表現しています。グリット・ドラゴンともいえる世界的な成功者を4人紹介しましょう。
  • イチロー
  • ヒラリー・クリントン
  • マーク・ザッカーバーグ
  • 山中伸弥

イチロー

イチロー氏は、日本からアメリカのメジャーリーグに転じ、野球界で世界的に活躍した人物です。バッティングだけでなく守備でも大きな活躍を見せる彼のことを「天才」と評価する声もありますが、イチロー氏が世界の舞台で活躍し続けるには、並々ならぬ努力がありました。

子どもの頃から素振りやフィジカルトレーニングを欠かさず、小さなことをコツコツと積み重ね、困難にも負けない姿勢が発言としても残されています。

「結果が出ないとき、どういう自分でいられるか。決して諦めない姿勢が何かを生み出すきっかけをつくる」

これは、なかなかヒットが出ず苦しんだシーズンにも、結果的に200本の安打を達成した際のコメントです。グリットに満ちた言葉ではないでしょうか。

ヒラリー・クリントン

アメリカの政治家として有名なヒラリー・クリントン氏も、グリット・ドラゴンのひとりです。

夫であるクリントン元大統領のファーストレディを務め、保険制度の改革に尽力したことで知られています。クリントン元大統領のスキャンダル発覚や大統領選に立候補して敗れる経験など、ストレスのかかる場面においても諦めたり投げ出したりしなかった人物です。

ヒラリー・クリントン氏は弁護士資格を有しており、学生時代から真面目に勉強に取り組んできたそうです。社会的弱者の救済活動など、人々の信頼を集めている裏にはグリットがあったと言えるでしょう。

マーク・ザッカーバーグ

Meta Platforms創立者のひとりであるマーク・ザッカーバーグ氏は、ビジネス成功の鍵は「信念とグリットを持つ」ことだと述べています。

ザッカーバーグ氏は学生時代から、「人々は自由で公然とした情報を利用できるべきだ」と考えていました。Facebookのローンチまでにも、在学したハーバード大学に関連するサービスを立ち上げていますが、情報利用に関して大学側から処分を受けたこともあります。処分されても自らの信念を貫き、Facebookを立ち上げ、世界中の人々を巻き込む巨大なプラットフォームに育て上げるには、グリットがなければできません。

山中伸弥

iPS細胞の研究で有名な山中伸弥教授も、グリットで研究を実らせ、世界に大きな影響を与えた人物だと言えるでしょう。

誰も成功させていない研究に挑むとは、実験ひとつをとっても成功させるまでに幾度もの調整や試行錯誤を重ねるものです。「9回失敗しないと、なかなか1回の成功が手に入らない」と、粘り腰で研究に挑んだそうです。

研究以外の面でも壁が立ちはだかります。臨床医の道からキャリアチェンジをし研究者になった山中教授には、資金の問題や特許の争いなど、何度も困難が訪れたと言います。ここで諦めるわけにはいかない、と努力を続けた結果、iPS細胞が世の中を大きく変えるまでになったのです。

グリットの構成要素

NEVER GIVE UPと書かれた路面
グリットは、その構成要素の頭文字からできた言葉です。グリットの構成要素は以下の4つです。
  • Guts(ガッツ・度胸):何事にも立ち向かう
  • Resilience(レジリエンス・回復力/復元力):諦めずに継続する
  • Initiative(自発性):自らの意思で行う
  • Tenacity(粘り強さ):執念深くやり抜く
一つずつ見ていきましょう。

Guts(ガッツ・度胸)

"Guts" とは、困難があっても立ち向かう様子を指します。日本語でも「ガッツがある」と表現されるように、何事にも立ち向かう勇敢さや度胸をもつことがグリットには欠かせません。

ビジネスの場でガッツが発揮される場面として、たとえば以下の2つが想定されます。
  • 顧客から厳しい要求をされたとき
  • 納期直前で大掛かりな変更が回避できないとき
顧客からのレベルの高い要求を受ける場面は、どのようなビジネスパーソンも経験し得ることです。「大幅な値引きをしなければ買わない」「予算内でこの機能をつけてほしい」など、通常であれば受け付けられない要望も、可能な限り叶えることで満足につながります。また、明らかに無茶な要求をしてくる人物に対して毅然とした態度で向き合い、交渉するときにもガッツが発揮されるでしょう。

納期直前で大掛かりな変更があると、顧客だけでなく社内にも影響が及びます。その際の調整役を買って出たり、通常とは異なる対応を引き受けたりすることも、ガッツの表れです。

Resilience(レジリエンス・回復力/復元力)

失敗したときやストレスフルな状況に陥った際、意気消沈したままでは前に進めません。誰しも生きていれば壁にぶつかることはあるため、「いかにして失敗しないか」だけでなく「どのように回復するか」が重要です。その回復する力をレジリエンスと呼びます。

レジリエンスは、ストレス社会を生き抜くために必須の力だとして、近年おおいに注目されています。レジリエンスについては、以下の記事をあわせてご覧ください。

【関連記事:レジリエンスとは?高める・強化する方法や面接での見極め方を解説

Initiative(自発性):自らの意思で行う

"Initiative" とは、自発的に取り組む姿勢を指します。「イニシアチブをとる」と日本語にもなっているように、自ら進んで担当する様子のことです。

ビジネスの場での自発性は、日常業務の細かなところで表面化します。たとえば、文具やゴミ袋などのストックが切れそうだと気づいている場合、自ら発注したり、担当者に依頼したりする人とそうでない人がいます。気づいているにもかかわらず対応せず、誰かが動くのを待っている人ばかりの組織になると、モノがなくなって困ることもあるでしょう。

意思決定や業務そのものにおいても、自発性のある人とそうでない人とでは動きが異なります。上司の指示があるまで動かない人に比べ、自ら提案を行って動き出す人がいる場合、物事がスムーズかつ迅速に進みます。

それだけでなく、自らの意思で行動する人は、仮にうまくいかなかったとしても他人のせいにすることなく、軌道修正を行って立て直しを図れるのも強みです。「自分がAだと考えて取り組んだが、うまくいかなかったので目標達成のためにBに変更しよう」と、クヨクヨ悩むよりも成功させるための行動に意識を向けられるのです。

Tenacity(粘り強さ):執念深くやり抜く

"Tenacity" とは、執念深さや粘り強さを指す言葉です。やると決めたことを最後まで完遂するという強い意志を表します。

ビジネスの場で "Tenacity" が発揮される場面として考えられる例は、比較的高い目標を掲げられた場面や長丁場のプロジェクトにかかわる場合です。

高い目標がおかれると、到底実現できそうにないと感じたり、強いプレッシャーを感じたりして投げ出したくなる場面もあります。高い目標の前にもひるまず、取り組み続ける粘り強さが求められます。

長期間の取り組みになると、途中で状況が変化したり困難が訪れたりして、集中力が途切れたり、目標を見失ったりするかもしれません。"Tenacity" を発揮して長丁場を乗り切れる人は、成果をあげられるでしょう。

良いグリット・悪いグリットとは?

石を積む様子
グリットは前述の4つの構成要素を兼ね備えたものですが、それらが良い形で発揮される場合だけではありません。良い形で表れるのを「良いグリット」、悪い形で表れるのを「悪いグリット」と表現します。

良いグリット・悪いグリットについてそれぞれ確認しましょう。

良いグリット

良いグリットとは、以下の8つに裏打ちされたグリットです。
  • 情熱
  • 幸福感
  • 目標設定
  • 自制心
  • リスク・テイキング
  • 謙虚さ
  • 粘り強さ
  • 忍耐
良いグリットを発揮する人物の場合、なんらかの困難があっても「ここまではできた」と一定の成果を認めたり、「もっと悪い状況に陥らなくてよかった」と前向きに捉えたりすることができます。

前向きな気持ちで「きっとうまくいくだろう」と信じられることで、リスクを取ってチャレンジしたり、冷静に結果を見極めて軌道修正でき、最悪の事態を避けられるのです。

良いグリットをもつ人物には信頼も集まり、周囲の人が協力を申し出ることも少なくないため、資源が集まって結果的に成功につながることもあるでしょう。

悪いグリット

悪いグリットとは、良いグリットの備えているいずれかの要素(またはすべての要素)が欠けており、グリットが逆作用してしまう状態を指します。

悪いグリットの典型として「強情グリット」があります。人のアドバイスに耳を傾けず、方向転換ができずに進んでしまい、悪い循環が断ち切れなくなります。大きな戦争の際にリーダーとなって率いる人物やテロリストにも、強情グリットがみられることがあります。たとえば、アドルフ・ヒトラーは強情グリットで人々に大きなダメージを与えた人物だと言えるでしょう。

良いグリット・悪いグリットの例

ビジネスの場面で良いグリット・悪いグリットがどのようにあらわれるのか、ポジションごとに例を挙げて解説します。

経営者の場合

経営者の場合、経営に影響を及ぼす重要な意思決定の場面でグリットが表れます。そのため、良いグリットが発揮されると業績は向上し、悪いグリットが出てしまうと重大なダメージを受けてしまうことも少なくありません。

新しいプロジェクトを事業部長に任せる場合を想定して、経営者の良いグリットが発揮される場合、悪いグリットが出てしまう場合を見てみましょう。
【良いグリット】
「世代交代を視野に入れて、新しいプロジェクトについては自分が細かな指示をすることなく、A事業部長に任せよう。A事業部長は細かな指示をされるよりも自由な発想で強みを発揮してきた人だから、きっとそれでうまくいくだろう。A事業部長自身の不安を受け止めながら、私自身は伴走役に徹することで、学びにもなるだろう。もしも好ましくない事態が訪れたら軌道修正できることをA事業部長に伝え、いつでも相談してもらえるようにしよう。」
【悪いグリット】
「そろそろ世代交代を考えなければならない。仕方がないが後任にはB事業部長をあてがうしかないだろう。能力に不安はあるがやむを得ない。足りない部分はしっかり私が叩き込んで覚えさせよう。B事業部長にも進退を賭けて取り組んでもらうが、大きな成果は望めないので着実なプランを選ぶしかない。危なくなったら私が全て巻き取ることにしておこう。」
良いグリットの経営者のもとで働くA事業部長は、いつでも相談に乗ってくれ、自らに権限を委ねてくれる環境下でのびのびとプロジェクトを推進でき、成果につながるでしょう。経営者がA事業部長の強みを理解し、どのような状況で力を発揮できるのかわかったうえで任せているのも大きなポイントです。

悪いグリットの経営者のもとで働くB事業部長は、常に監視されているかのような状況で萎縮しながら業務を行うことになるかもしれません。「世代交代をしなければならない」と焦っていることと、B事業部長に引き継ぐという方法に固執しているのも問題です。経営者自身がネガティブな気持ちであり、リスクをとらず、B事業部長のことを信頼できていないため、結果的に成果があがらないばかりか、B事業部長が離職してしまう可能性も否定できません。

マネージャーの場合

マネージャーの場合、自らの業務においても、部下育成の場面でもグリットが発揮されます。マネージャー自身のグリットも重要ですが、その上司や経営者のグリットが色濃く投影されるポジションでもあるため、組織全体に広く影響が及びます。

今期の成果振り返りと来期に向けての目標設定の局面でマネージャーに表れる「良いグリット」「悪いグリット」を想定してみましょう。
【良いグリット】
「今期は立てた目標のうち7割が達成できた。残り3つは未達だが、◯◯と△△については課題が発見できたので、そこからの改善策も含めて報告しよう。来期は今期の目標のうち、達成できたものはさらに3%上回る目標を立てて、メンバーに投げかけてみよう。現状では想像できないかもしれないが、今期の厳しい目標をクリアできたメンバーと一緒なら大丈夫だろう。新人を多く迎え入れるうえで私自身チャレンジの年になるが、メンバーにフィードバックをもらいながらきっと成長できるだろう。」
【悪いグリット】
「今期の目標未達についてどのように報告するか悩ましい。詫びを添えて、来期の目標は少し下げた形で願い出るしかないか。来期は新人がいつも以上に多く入ってくるので、育成の手が取られることを理由にしよう。来期こそ目標達成しなければ自分の立場が危ないので、なんとしても達成するように部下を叱咤激励するしかない。未達が起きないように頻度を高めて毎日目標の達成状況を管理することにしよう。未達の場合の指導は直接私から面談することにし、新人育成についても担当者が対応できているか逐一確認して、適任でなければ交代させよう。」
良いグリットのマネージャーは、未達の事例についても前向きに捉え、「次はもっとよくしよう」と考えられています。部下への配慮も見られ、新人が入ってきてもチームで協力しながら大切に育てる様子が想像できます。

悪いグリットのマネージャーは、目標未達の現状に頭を抱え、良くない現状をどのように隠し、自らを守るのかで頭がいっぱいになっています。「目標を達成すること」がゴールになってしまい、目標設定に歪みが出ていることも問題です。この状態では部下に目配りすることもできず、部下のエンゲージメントの低下も危惧されます。

エンゲージメントについては、以下の記事でもくわしく解説しています。ぜひご一読ください。

【関連記事:従業員エンゲージメントとは?注目されている背景や取り組み方を紹介
【関連記事:エンゲージメント向上にはアセスメントツールが効果大!活用方法や事例を紹介

一般社員の場合

一般社員の場合、個人の成果とグリットが結びつくことが考えられます。しかし、一般社員においてもグリットが組織全体に影響を及ぼすことがないわけではありません。

病気で休んでいる同僚の業務の穴埋めをしながら自らの業務も担っている状況の一般社員の事例を想定してみましょう。
【良いグリット】
「少し業務が溜まっているので、休んでいるCさんの業務と自分自身の業務の優先順位を整理してみよう。優先順位の低いものの締め切りを延ばしてもらうか、仲間に協力してもらえないか、課長に相談してみよう。最短の締め切りまではあと1週間あるから、今のうちに相談しておけば間に合うだろう。ここで効率化できたり、未経験の業務にチャレンジしたりすれば、自分のスキルも高まるチャンスだ。」
【悪いグリット】
「どうして自分ばかりこんなに仕事を押し付けられるんだ。間に合わなくても仕方がない。締め切りまで1週間しかない。とにかく無心にやり切るしかない。そもそも無理なものを間に合わせろと言われているのだから、質なんか気にしていられない。最低限のことをして提出すればよいだろう。」
良いグリットの一般社員は、任されたことを成長の機会と捉え、ポジティブに取り組んでいます。早めに対策を行い、分担や締め切りの相談をすることで周囲への悪影響も避けられるでしょう。周囲の社員や休んだ同僚も安心感をおぼえ、積極的に手伝ったりお互いに感謝する気持ちが芽生え、チームワークが高まります。

悪いグリットの一般社員は、締め切りを守ることに執着をみせていますが、その目的に目を向けられていないのが問題です。任されたのではなく「押しつけられた」と捉えており、モチベーションも低下しています。周囲もネガティブな気持ちに影響を受けてチーム全体の士気低下も心配される状態です。

モチベーションについては、以下の記事でくわしく解説しています。

【関連記事:モチベーションとは?やる気を引き出す動機づけ要因とモチベーションマネジメントの手法を解説

グリットを高める方法・測定する方法

階段をのぼるビジネスパーソンのブロック
ダックワース教授によれば、グリットを高めることが可能です。ベースとなる現在のグリットの測定方法とグリットを育てる方法について確認しましょう。

グリットの測定方法

ダックワース教授は、グリットを測定する「グリット・スケール」を開発しています。次の10項目を5段階評価し、点数の合計値を10で割った数字(グリット・スコア)が大きいほどグリットが高いと判断できます。

ダックワース教授の調査によればグリット・スコアの全体平均値は3.21、アメリカ人の平均値は3.8でした。
非常に当てはまるかなり当てはまるいくらか当てはまるあまり当てはまらないまったく当てはまらない
1. 新しいアイデアやプロジェクトが出てくると、つい気を取られてしまう。12345
2. 私は挫折しても簡単には諦めない。54321
3. 目標を設定しても、すぐ別の目標に乗り換えることが多い。12345
4. 私は努力家だ。54321
5. 達成まで何ヶ月もかかるようなことに、ずっと集中して取り組むことができない。12345
6. 一度始めたことは、必ずやり遂げる。54321
7. 興味の対象が毎年のように変わる。12345
8. 私は勤勉だ。54321
9. アイデアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまうことがある。12345
10. 重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験がある。54321
参考:アンジェラ・ダックワース著・神崎朗子訳『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(ダイヤモンド社、2016年)
グリット・スケールを用いてグリットを測定しておけば、その後の成長度合いを確認できるでしょう。

グリットを高める方法

グリットは後天的に伸ばせるものです。グリットを高める方法として、以下の6つを紹介します。
  • 現在より難易度の高いことに挑む
  • 小さな成功体験を重ねる
  • グリットが高い人(グリッティーな人)の近くに身をおく
  • 上司・経営者がグリットを認め、褒める
  • 中長期的な取り組み・目標を共有する
  • 挑戦する内容を吟味する

現在より難易度の高いことに挑む

ルーティーンになっていることや普段なじみのあることだけを続けているのでは、グリットは向上しません。慣れてきたら、やや難易度の高いことやなじみのないことにチャレンジすることがグリットを高める近道です。

難易度の高いことに取り組む際の注意点は2つです。1つ目は、安心してチャレンジできるよう周囲が支えること。依頼された側は「こんなの無理だ」「あまりに急なことだ」と感じるようなことでも、周囲がサポートしながら「きっとできる」と思えるように導くことが大切です。2つ目は、難易度を急に上げすぎないことです。「少し努力すれば手の届きそうな目標」にしておくのがポイントです。

小さな成功体験を重ねる

グリットを育てるうえで、自信をもつこと・もたせることが非常に重要です。

グリットが高い人物は過去の成功体験をもっているものです。成功体験があるからこそ「きっとできる」と思えるのでしょう。成功体験を得たと本人が感じることも重要です。周囲も本人ができていることを伝え、どんなに小さなことでも成功したと実感できるよう寄り添いましょう。

自信がつくことで諦めにくくなるため、やり遂げようとする本人を周囲が応援してくれるようになります。

グリットが高い人(グリッティーな人)の近くに身をおく

グリットが高い人の近くに身をおくと、自然と影響を受けグリットが引き上げられます。些細な言動や考え方、取り組み方を真似ていくうちに、グリッティ―な人に近づけるでしょう。

グリットを育てたい人物の教育担当者やメンターとして、グリッティ―な人物を充てるのも一案です。

上司・経営者がグリットを認め、褒める

日本独特の文化として、自らの優れているところを公に認めず過剰に謙遜する傾向があります。

上司や経営者は部下・従業員のグリットをおおいに認めて褒めることで、「これは良いことなのだ」と本人も周囲も理解できます。粘り強く取り組む人を見かけたら仕事ぶりを認め、褒めたり感謝を伝えたりしましょう。

中長期的な取り組み・目標を共有する

グリットは短期間の取り組みだけでは身につきにくいものです。

中長期的な目標をつねに示しておくことで、日々の業務では短期的な目標に向かっていても、次の目標を適切に認識し、継続して努力できるようになります。短期目標で適宜区切りをもちながらも、取り組み続ける心を育てるためにも、中長期的な目標や方針を必ず部下に伝えましょう。

挑戦する内容を吟味する

グリットを高めるために挑戦する内容まで、一定である必要はありません。本人の希望だけでなく組織が要求することであっても、適性がみられないこともあり得ます。

本人の持ち味を確認し、適性や特性に合った内容に変えていくことも重要です。特性の把握には「行動特性」が有用です。ミイダスコンピテンシー診断(特性診断)では個々人の行動特性を可視化することが可能です。

自己申告である性格検査や適性検査で任せる仕事や配属を決めていると、実際の仕事場面での様子とズレが生じ、任せた業務にフィットしないことがあります。行動特性は起こり得るシチュエーションでの行動や思考の癖を可視化することで把握できます。

ミイダスはグリットを育てるのにも役立つ
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コンピテンシーについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【関連記事:【簡単に解説】コンピテンシーとは?意味や使い方、活用事例を紹介

グリットとコンピテンシーとの合わせ技で組織の力を高める

 手を合わせるビジネスパーソン
成功者に共通する力であるグリットは、個人の能力であるだけでなく、組織全体の力を引き出すうえでも大変重要です。

そして、ハイパフォーマーの特性であるコンピテンシーはグリットと同様に個々人が後天的に育むことのできる力です。グリットを高めるうえでもそれぞれの特性を把握することで、どのような部分を重点的に鍛えるべきかわかります。

グリットを高め、組織のパフォーマンスを最大化するためのポイントとコンピテンシーとの関係性を解説します。

組織のパフォーマンスとグリットの関係

組織のリーダーやメンバーのグリットが高まると、困難に直面しても相互に協力しあい、難局を乗り切れるようになります。

難しいことにチャレンジすることで、各々のスキルが高まり、さらに高い目標に挑めるようになるでしょう。ピンチに強くなり、協力関係が強まることで生産性も高まります。さらに、将来に向けたイノベーションも起こりやすい活発な組織になれるでしょう。

【関連記事:イノベーションとは?種類や成功事例をもとにわかりやすく解説

このように、グリットは単に個人の問題だけでなく、組織全体に良い影響を及ぼすのです。

グリットとコンピテンシーとの関係

グリットは、コンピテンシーと同様に、後天的に高められる特徴があります。ここで、ミイダスコンピテンシー診断(特性診断)で用いられるコンピテンシー項目を見てみましょう。
コンピテンシー項目コンピテンシー定義(5以上)コンピテンシー定義(5以下)
活力周囲と競いながらエネルギッシュに業務に取り組むほうが得意である。競争は好まず、自分のペースと効率を重視して業務に取り組むほうが得意である。
人あたり相手の意見を尊重し、好印象を与えるほうが得意である。相手が受ける印象を気にせず自己主張するほうが得意である。
チームワークチームに溶け込んで、メンバーと一緒に取り組む方が得意である。チームの一員として働くよりも、単独で取り組む方が得意である。
創造性これまでの発想や方法にとらわれず考え、行動するほうが得意である。これまで通りの発想や方法にならって行動するほうが得意である。
問題解決力自ら問題を見つけ、その解決に向けて取り組むほうが得意である。問題意識をあまり持たず、目の前の業務に取り組むほうが得意である。
対応力臨機応変な対応が必要となる業務のほうが得意である。一貫性のある考えや行動を求められる業務のほうが得意である。
プレッシャーへの耐性プレッシャーやストレスが多い業務のほうが得意である。プレッシャーやストレスが少ない業務のほうが得意である。
調整力周囲との調整が必要となる業務のほうが得意である。周囲との調整が少ない業務のほうが得意である。
リーダーシップ自分が先頭に立ってメンバーを牽引するほうが得意である。自分は先頭に立たず、誰かをフォローするほうが得意である。
グリット・スケールとコンピテンシー診断では、「プレッシャーへの耐性」など、把握できる内容に重複している点もみられます。異なる点は、グリット・スケールはあくまで自己申告の評価スケールだという点です。コンピテンシー診断の場合、実際の行動場面での判断や行動を問う設問で構成されているため、回答者の主観が入り込まず客観的なデータが得られる特長があります。

また、コンピテンシーは会社や部署ごとに設定でき、組織の状況によっても重視するポイントが異なります。重点的に鍛えたい部分についてはより細かく客観的なデータが得られるコンピテンシー診断であぶり出し、優先順位をつけて取り組むことで成長も実感できるため、結果的にグリットを伸ばすことにもつながります。

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