経理部門は企業の財務を支える重要なポジションです。しかし、経理人材は専門性が高く、幅広いスキルが求められるため、即戦力となる人材の採用に難しさを感じている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、経理人材の採用に関する課題と対策について詳しく解説します。自社に適した採用基準の設定から、具体的な採用手法、選考時の重要ポイントを紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

なお、自社にフィットする人材を見つける具体的な方法をまとめた資料を提供していますので、採用に悩む人事担当の方は、下記よりぜひダウンロードしてご活用ください。

そもそも、経理職の有効求人倍率はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省が毎月発表している有効求人倍率のデータによると、令和6年4月の経理職が含まれる「会計事務従事者」の有効求人倍率は0.68倍です。また、全体の有効求人倍率は1.26倍（季節調整値）のため、経理求人の倍率は全体と比較すると低いと言えます。

有効求人倍率が1よりも低い場合、求人に対して求職者の数が多いことを意味します。経理の有効求人倍率は1よりも低いため、採用市場では求人に対して「経理職を求める人材のほうが多い」という状態です。つまり、採用する企業側にとっては、一見採用は難しくないと言えます。

しかし、自社の条件に合った経理人材を採用するとなると必ずしも容易ではありません。具体的な理由は次の章で解説します。

参考：厚生労働省｜「一般職業紹介状況(令和6年4月分)について」　参考統計表 7ページより

自社にフィットした経理人材の採用は、容易ではないと考えられます。ここでは、採用が難しい具体的な理由について解説します。

経理人材の採用が難しい理由の1つは、専門性の高さと多岐にわたるスキルや適性が求められることです。企業によって求められるスキルは異なりますが、例えば簿記や財務諸表、税務申告の仕組みや法律などの専門知識が不可欠です。

加えて、経理担当者は会社の機密情報を扱うことから、高い倫理観や責任感など人間性も重視されます。経理処理のミスは会社の信頼性に関わるため、慎重さや正確さも重要です。

つまり、経理に関する知識やスキルだけでなく、人格面での適性も問われるため、採用基準は多岐にわたります。このように、専門性と人間性を求められることが、経理人材の採用を難しくしている理由と言えます。

企業が即戦力となる経理人材を求める傾向にあることも、採用が難しい理由の1つと考えられます。先述した通り、経理業務は専門性が高く、適切な人間性も求められる職種です。

そのため、企業は経理を重要なポジションと位置づけ、魅力的な待遇や福利厚生を用意して優秀な経理人材の流出を防ぎ、優秀な人材の確保に努めるでしょう。その結果、採用市場で経理人材が市場に出回りにくくなり、たとえ市場に出回った場合でも、すぐに魅力的な条件の求人に応募が集中する可能性が考えられます。

加えて、近年の少子高齢化による人材不足の影響もあり、即戦力の経理人材の採用難易度はより高まっていると言えます。

自社に合った経理人材を採用するためには、採用要件を明確にすることが欠かせません。ここでは、経理人材の採用要件を設定する際のポイントを詳しく解説します。

経理人材の採用要件を設定する際、自社の経理担当者に必要なスキルや知識を明確にしましょう。具体的な業務内容を洗い出し、それぞれの業務に求められる経理のスキルや知識のレベルを確認していきます。

一般的に経理業務の範囲は多岐にわたるため、具体的に自社の経理人材に求める範囲やレベル感を明確にすることで、採用要件の項目や効果的な採用手法を検討しやすくなります。よくある例として経験年数や財務・会計関連の資格保有を要件とする場合がありますが、一般的な経験や資格だけで自社が求めるレベルを満たしているかわかるとは言い切れません。採用する財務会計システムや法人格、規模などによって経理業務には大きな違いがあるからです。スキルや経験を厳格な要件とするべきかどうかも確認すると良いでしょう。

また、将来的に経理の管理職となる人材を採用したい場合は、マネジメント資質も視野に入れる必要があるでしょう。

【関連記事：マネジメントとは？意味や業務内容、求められるスキル、向いている人の特徴を紹介】

自社で活躍している経理人材の特徴や価値観を把握することは、人材の採用要件を考える際に欠かせません。自社の価値観や社風に合った人材を採用することで、入社後の活躍が期待でき、早期離職の防止にもつながります。

そのため、現在活躍している経理人材の特徴や傾向を分析しましょう。自社の経理人材に欠かせない資質に共通項がある場合、採用要件に含めると自社にフィットする確率が高まります。

加えて自社の価値観や社風を明確に言語化することで、採用ミスマッチ防止に効果的です。例えば、自社の社風が「チームワークを重視する風土」である場合、協調性の高い人材の採用が効果的でしょう。

なお、自社で活躍する人材のことを「ハイパフォーマー」と言います。ハイパフォーマーの特徴や分析方法は下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

【関連記事：ハイパフォーマーとは？特徴や分析方法、離職を防ぐ方法を徹底解説】

経理人材の採用要件は、求める人物像と業務内容をもとに、スキル別に設定することが大切です。経理は専門性の高い職種であるため、スキルに見合った給与や待遇を用意しなければ、応募につながらない可能性があります。

求める人物像と業務内容を明確にし、それに見合った採用要件を設定することで、優秀な経理人材の獲得に効果を発揮するでしょう。

具体的な採用要件の作り方のポイントは、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

【関連記事：採用要件・人材要件の作り方とは？定義方法からペルソナの設計例まで解説】

優秀な経理人材を獲得するには、魅力的な求人を作成することが効果的です。ここでは、応募につながる経理求人を作成するポイントを紹介します。

優秀な経理人材を獲得するには、求人に魅力的な給与と福利厚生を提示することが重要です。求められる業務内容やスキルに応じた正当な給与・待遇は、採用の大きなアピールポイントとなります。特に専門性の高い経理業務では、他社の条件に劣ってしまうと応募者の関心を得ることが難しくなるでしょう。

株式会社MS-Japanが経理部門人材144人に実施した「経理の仕事とキャリアの意識調査」によると、経理人材の「働くモチベーション」の回答1位は「報酬や給与面（49.3％）」でした。約半数の経理人材が収入を重視していることがうかがえます。

参考：PRTIMES｜「MS-Japanが3/31「経理の日」にあわせ「経理の仕事とキャリア」を調査！ 「いまの仕事に満足」20・30代では半数に留まる」

なお、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、経理人材の平均年収は下記の通りです。

※上記の年収は、厚生労働省が令和5年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成

参考：厚生労働省｜「経理事務 - 職業詳細」｜ job tag（職業情報提供サイト 日本版O-NET）
参考：厚生労働省｜「経理課長 - 職業詳細」｜ job tag（職業情報提供サイト 日本版O-NET）

経理職に適した年収や給与、福利厚生を設定し、求人に明記することで応募数の向上が期待できるでしょう。

自社の強みや価値観のアピールも、応募者の入社意欲を高めます。自社ならではの強みや価値観を明確に伝えることで、採用ミスマッチの防止につながります。また、入社後の満足度や長期的な活躍に効果を発揮するでしょう。

例えば、社内の雰囲気が伝わる社員インタビュー記事を自社のホームページや求人サイトに掲載することも一案です。具体的な仕事内容や入社の動機など、実際に働く社員の声を紹介することで自社の社風や強みが伝わり、応募者は入社後のイメージが持ちやすくなるはずです。

自社の魅力を積極的に発信することで、求職者の共感を得て、応募につなげられるでしょう。

求人に適切な募集要項を明記することは、企業の信頼性を高め、応募率の向上や採用ミスマッチの防止につながります。募集要項とは、業務内容や給与、求める経験や資格など求人の詳細を記載した項目です。法律で明示を求められている項目もあるため、適切な記載は会社の信頼性に大きく影響します。

募集要項をわかりやすく記載することで、応募者は具体的な業務内容や条件、求められるレベルや役割を把握できます。応募者は自分の経理スキルや経験がマッチするかどうかを判断しやすくなるため、採用ミスマッチ防止にも効果的です。また、求人条件の相違によるトラブル防止にもつながるでしょう。

適切な募集要項は応募者の安心感を与え、応募への後押しになります。募集要項の作成方法や注意点は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事：【記入例あり】募集要項の書き方とは？必須項目や注意点など解説】
【関連記事：求人票の役割・内容とは？募集要項との違いや記載事項、求職者が見るポイントを解説】

ここでは、経理人材の採用面接で、確認すべきポイントを紹介します。面接時に確認するポイントを面接官に共有すれば、採用基準の認識のズレを防ぎ、採用ミスマッチ防止につながるでしょう。

経理人材に求められるスキルや適性をふまえて、面接時に確認すべき項目を以下にまとめました。

こうした項目を面接時に確認することで、自社への適合度や経理業務への適性、将来性を確認できます。自社の経理人材に重要な項目を検討し、チェック事項を明確にしましょう。

【関連記事：コミュニケーション能力とは？高い人の特徴・鍛え方と採用時の見極め方】
【関連記事：論理的思考とは？ビジネスで求められる理由や注意点、鍛え方まで解説】

とはいえ、面接だけでは応募者の資質や適性を正確に判断するのは難しいものです。そのため、経理人材の見極めには応募者の資質や適性を可視化する「適性検査」や「コンピテンシー診断」の併用をおすすめします。

【関連記事：【適性検査とは？】30種類の検査の特徴と選び方を一挙解説】

ミイダスでは、面接では見極めが難しい人材の資質や適性を可視化する「コンピテンシー診断」を提供しています。経理人材に求められる「問題解決力」や「オーガナイズ能力」、管理部門専門職への適性などが数値で可視化できるため、人材の見極めに役立つはずです。

経理業務は専門性が高く、向き不向きが分かれる仕事のため、資格や経験に加えて実務スキルや適性を総合的に判断することが、ミスマッチ防止のカギです。

ここでは、経理人材の採用ミスマッチを防ぐための注意点を詳しく解説します。

即戦力を期待する場合の経理人材の採用では、資格の有無だけでなく、実務経験を重視することが大切です。資格を取得していても、実務経験がなければ業務でのスキル不足やミスマッチを生む可能性があります。

自社の経理求人で求めるスキルレベルと、応募者の資格と実務経験のバランスを考慮し、適切に見極めることが、ミスマッチ防止につながります。

経理は適性が求められる仕事であるため、未経験者の採用には慎重な見極めが欠かせません。例えば、細かなお金の計算が苦手な人を採用してしまうと、会社の大きなミスや信頼失墜にもつながるリスクがあります。

また、パソコン操作が苦手な人は経理業務に不向きかもしれません。経理業務ではパソコンや専用の会計ソフトを使用することが多く、正確な数字の入力が求められるからです。

目に見える成果を重視する人や、変化を求める傾向の高い人は、ルーチンワークが中心の経理業務ではモチベーションが低下するリスクも考えられます。

そのため、未経験者の経理人材採用においては、適性を重視しましょう。適性検査やコンピテンシー診断（テスト）などを活用すれば、未経験であっても経理への適性の高い人材を見つけられる可能性が高まります。

【関連記事：コンピテンシーテストとは？例題や無料診断ツール・導入のコツを紹介】

優秀な経理人材を確保するには、自社に適した採用手法を選択することがポイントです。経理人材に役立つ採用手法を下記の表にまとめました。

こうした採用手法を、求める人材の特徴やコストなどを考慮して使い分けることで、自社に適した優秀な経理人材が見つけやすくなるでしょう。

なお、ミイダスはダイレクトリクルーティング機能を搭載した採用プラットフォームです。自社にフィットした人材へ効率的にスカウトを送信できる自動スカウト機能も備えています。また、1,733種類もの検索項目から人材を検索し、正社員から業務委託まで、適合する人材をピンポイントに探すことが可能です。

このようなサービスを活用すれば、効率良く経理人材を採用できる可能性が高まるでしょう。ミイダスの機能について気になる方は、下記より機能一覧をご確認ください。

動画で確認したい方は、下記をご覧ください。

本記事では、経理人材の採用が難しい理由や、採用要件の設定方法、応募につながる求人の作成ポイント、おすすめの採用手法などを解説しました。

経理人材の採用は、専門性の高さや即戦力を求める傾向などにより、難易度が高くなりがちです。そのため、自社の経理人材に適した採用要件を設定し、魅力的な求人を作成することがポイントです。また、複数の採用手法を組み合わせることで、幅広い求職者にアプローチでき、効率的に求める人材を見つけられるでしょう。

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