健康経営を実践している企業を評価・認定する制度が、「健康経営優良法人認定制度」です。健康経営優良法人として認定されると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、健康経営優良法人の特徴やメリット、取り組み事例を紹介するとともに、認定までの流れや申請方法について解説します。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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健康経営優良法人とは
そもそも健康経営とは
経済産業省が健康経営を推進しており、2016年には「健康経営優良法人認定制度」が創設されました[注]。
[注]出典:「健康経営優良法人2026」認定法人が決定しました|METI/経済産業省
健康経営優良法人とは
認定制度では、大規模の企業を対象とした「大規模法人部門」と中小規模の企業を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門が設けられています。
大規模法人部門で認定を受け、かつ上位500社に選ばれた企業は「ホワイト500」として認定されます。中小規模法人部門で認定を受け、かつ上位500社に選ばれた企業は「ブライト500」として認定されます。なお、中小規模法人部門で認定を受け、501~1500位の法人には、「ネクストブライト1000」の冠が日本健康会議より認定されます[注]。
[注]出典:健康経営優良法人認定制度|METI/経済産業省
健康経営が近年注目されている背景
では、なぜ健康経営が注目されるようになったのでしょうか。主な背景を見ていきましょう。
労働人口の不足
そこで、企業には従業員の健康を守り、定着率や満足度を向上させることが急務となり、健康経営の考え方が広まる要因のひとつとなっています。
医療費や社会保険料の増加
生産性向上の観点でいえば、近年は、欠勤による損失だけでなく、出勤していても心身の不調により本来のパフォーマンスを発揮できない「プレゼンティーイズム」による損失も注目されています。
健康経営は、こうした生産性低下リスクを防ぎ、組織全体のパフォーマンス向上につなげる取り組みとしても重要視されています。
リスク管理
従業員の休職・退職のリスクを防ぐ取り組みが、経営者や人事担当者に求められるようになっているのです。
社会的評価
従業員の健康に配慮した職場は、将来的に収益性が高まるとして投資家から高い評価を受けるだけでなく、求職者からも魅力的に受け止められるでしょう。
健康経営優良法人を目指すメリット
企業イメージの向上
「健康経営に積極的に取り組んでいる企業」として認知されれば、求職者や社内外からの評価が上がる可能性があります。
生産性の向上
また、健康に配慮された職場環境は、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。チーム全体の結束力が高まる効果や、新しいアイデアの創出への貢献も期待できます。
離職率の低減
健康促進に関する取り組み内容は企業によってさまざまですが、健康管理に配慮した職場環境や働き方が推進されれば、ライフステージの変化に応じた働き方が可能になり、優秀な人材を長期間にわたって確保しやすくなります。
特に近年は、若手社員の早期離職や、プレイングマネージャー化した管理職の負担増加が課題となっています。健康経営によってはたらきやすく相談しやすい環境を整えることは、人材定着の観点からも重要です。
アピールポイントができるので採用活動を強化できる
実際に採用市場では、応募先の企業に対して従業員の働き方や健康への配慮を求める就活者や転職者が多い傾向があります。応募先を選ぶ際の判断基準として、健康経営の実施の有無が影響しています。
CSRやSDGsを重視する取引先へのアピールになる
従業員はもちろん、消費者や投資家、取引先からの評価にも直結するため、健康経営をCSRやSDGsの取り組みとして掲げることで、特にリスク管理や人材確保の観点から高く評価されるでしょう。取引先からの信頼を獲得できれば、長期的な関係構築にもつながります。
自治体や金融機関からインセンティブが受けられる
<インセンティブの一例>
- 求人票に「健康経営優良法人」のロゴマークが利用可能
- 各自治体のホームページでの企業名の掲載
- 補助金申請時の加点等の優遇措置
- 融資における優遇利率の適用
- 補助金や助成⋯⋯など
なお、自治体や金融機関によって受けられるインセンティブが異なりますので、詳細については各機関へお問い合わせください。
[注]出典:地域の取り組み「ACTION!健康経営(日本経済新聞社)」|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営優良法人に認定された企業の取り組み事例
健康診断や特定検診の受診促進
<施策の一例>
- 受診しやすい環境づくり(閑散期に受診期間を設定する、など)
- 再検査・要治療の従業員への声がけ(メモを渡す、など)
- 再検査対象者への受診勧奨や、産業医と連携した就業上のしかるべき措置(配慮)の実施
- 社内会議室での集団検診の実施
- 従業員全員の大腸がん検診を企業が負担
- 有給が取得しやすい環境づくりによる受診促進
従業員同士のコミュニケーション促進
<施策の一例>
- 閑散期に交流のある企業の従業員も含めた交流会の実施
- 従業員とその家族による地域イベントへの参加
- 社内会議の後のおやつタイムの設定
- コミュニケーションや交流の促進を目的とした委員会の設置
- 月に1度、従業員と代表による面談の実施
ワークライフバランスの向上
<施策の一例>
- 有給取得等の活動状況をポイント制にし、半年ごとにQUOカードを進呈
- 1時間単位での有給取得を可能にする
- ノー残業デイ、アニバーサリー休暇の導入
- 20時以降の残業は17時までに申告することをルールで定める
- テレワーク・フレックスタイム制の導入
メンタルヘルスへの対応
メンタルヘルス不調は、本人の性格やストレス耐性だけで起きるものではありません。業務量、人間関係、役割の曖昧さ、将来不安など、組織環境との関係で発生するケースも少なくありません。
そのため近年では、個人へのケアだけでなく、管理職支援やコミュニケーション改善、心理的安全性の向上など、「組織全体へのアプローチ」を重視する企業も増えています。現場では、以下のようなことが絡み合ってストレス要因になっていることがあります。
△ 心理的孤立
△ 心理的安全性
△ 業務過多
△ キャリア不安
△ ハラスメント
△ 相談できない空気
<施策の一例>
- 健康セミナーの実施
- 部門長へのメンタルヘルス研修の実施
- ストレスチェックの実施
- 相談窓口の設置
- 個別面談の実施
- 専門医療機関との連携
喫煙率低下の取り組み
<施策の一例>
- 社内の隔離されたスペースに喫煙場所を設置
- 従業員の「禁煙宣言」の普及
- 禁煙ポスターの制作・社内提示
- 敷地内全面禁煙
- 禁煙外来の受診費用を企業が一部負担、禁煙達成者には報奨金を支給
感染症対策・不調改善施策
<施策の一例>
- 消毒液の設置
- 感染症の知識を得るための講習会の実施
- 予防接種の費用を企業が全額負担
- 健康アプリによる体調の把握
- 朝礼時のストレッチタイムやウェルネスタイムの実施
健康経営優良法人の認定要件
- 経営理念
- 組織体制
- 制度・施策実行
- 評価・改善
- 法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)
評価項目をいくつ満たすかは、会社の規模や業種などによって異なります。また、申請する年度によっても内容に変更があるため、詳細は「ACTION!健康経営」のポータルサイトで確認しましょう[注]。
知っておくべき基礎知識として、各項目で評価される取り組み例について解説します。
[注]出典:はじめよう!「健康経営」|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
(1)経営理念
大規模法人部門の場合は、トップランナーとして健康経営の普及に取り組むことが求められており、経営者が従業員の健康に配慮していることを可視化する必要があります。
(2)組織体制
中小規模部門では、求めに応じて40歳以上の従業員の検診データの提供も求められます。
(3)制度・施策実行
大きく分けると、次の3つの評価項目があります。
- 従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討:健康課題に基づいた目的の設定、健診・検診の活用
- 健康経営の実践に向けた土台作り:ヘルスリテラシーの向上、ワークライフバランスの推進、仕事と治療の両立支援、健康や体力の状況に応じた取り組みなど
- 従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策:食生活の改善や運動の増進などの健康推進のための施策、感染予防や喫煙対策
大規模法人部門では14項目以上、中小規模法人部門でも一定数の基準をクリアする必要があります。
(4)評価・改善
(5)法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)
経営者が誤解しやすいのが「企業全体で50人」ではなく「事業場(支店や工場、店舗などの単位)ごとに50人」という点です。また、会社全体で100人だけど、各拠点はすべて40人以下だから全社的に実施していなくて良い」は、法的には実施義務はありませんが、健康経営の評価としては実施しているかどうかが問われます。労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令に違反していないこと(重大な違反による送検や、是正勧告への未対応がないこと)が必須です。
健康経営優良法人の認定要件についての詳細は「ACTION!健康経営」のポータルサイトをご確認ください[注]。
[注]出典:申請について|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営優良法人の申請から認定までの流れ
申請から認定までの主な流れ
- 「ACTION!健康経営」ポータルサイトへアクセス
- ホームページから調査票または申請書をダウンロード
- ダウンロートした書類に必要事項を記載し、専用サイトにアップロード
- 申請内容に基づいて審査
- 健康経営優良法人の発表
中小規模法人の場合は、申請前に健康宣言をする必要があります。詳細は「ACTION!健康経営」のポータルサイトをご確認ください。
[注]出典:申請について|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
申請スケジュール
<健康経営優良法人認定 申請スケジュール(令和8年度)>
| 2026年8月17日(月)~10月9日(金)※17時締切 | 申請期間(大規模法人部門での申請) |
| 2026年8月17日(月)~10月16日(金)※17時締切 | 申請期間(中小規模法人部門での申請) |
| 2026年11月上旬頃 ※振込期限(12月31日) | 請求書送付~認定申請料の振込 |
| 2027年2月下旬頃 | 内定 |
| 2027年3月 | 健康経営優良法人発表 |
[注]出典:申請について|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
申請にかかる費用
[注]出典:認定申請料|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
健康経営優良法人を目指す際の4つのステップ
ステップ1:健康経営を経営理念として明文化する
企業の現状の課題をふまえたうえで、健康経営法人を目指す目的や将来達成したいことを決めていくと、社内外への発信時に説得力が生まれるでしょう。「なぜ取り組むのか」をはっきりさせていくと、組織としての社会的立場が明確になります。
[注]出典:はじめよう!「健康経営」|ACTION!健康経営(日本経済新聞社)ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)
ステップ2:組織体制の整備
現場での健康課題が見えづらい現状も少なくないため、従業員一人ひとりの声を拾える環境を整備することが求められます。
ステップ3:課題の把握・分析・施策の策定
「メンタルヘルスの不調を抱える従業員が増えている」「運動不足の従業員が多い」「健康診断の受診率が低い」など、具体的な課題が見えてきたら、数値化によって分析し、課題を解決するための施策の策定を行います。
施策の策定にあたっては、「健康診断の受診率を100%にする」「毎日従業員に○分間の運動習慣を提供する」など、こちらも具体的な数値で目標を設定すると、実践しやすいでしょう。
ステップ4:施策の実行、効果測定
施策が従業員の健康や企業利益に結びついているか、推進チームや組織体制に問題が発生していないかなど、多方面から分析し、効果測定を行うことが大切です。
健康経営優良法人の認定を目指す際の注意点
特に注意したいのが、コストがかかる点です。施策の内容にもよりますが、従業員の健康管理や職場環境の改善には、健康診断にかかる費用やメンタルヘルスケアのプログラムの導入、専門家のコンサルティング費用など、一定の費用が必要になります。
さらに、コストだけでなく時間と手間もかかるため、あらかじめ健康経営を目指す目的やメリットを周知したうえで、理解を求める必要があるでしょう。認定までの申請手続きでは時間を要するほか、認定を維持するためには毎年申請手続きを行う必要がある点にも注意が必要です。
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ミイダスでの支援内容は、以下のとおりです。
- 健康宣言を社内外に発信
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関連ページ:健康経営優良法人認定取得支援サービス | ミイダス
まとめ:健康経営優良法人の認定取得には計画的な進行が重要
認定されるためにはさまざまな施策が必要になりますが、認定を受けている企業は、自社ならではのアイデアでオリジナリティあふれるさまざまな施策を打ち出しています。
企業の持続的成長のためには、経営戦略(Organization)の中に健康経営が正しく組み込まれている必要があります。単なる「看板(ロゴマーク)集め」の制度対応(Strategy)になってしまうと、形骸化して現場が疲弊します。
これから健康経営を推進するという場合は、外部の専門家にも相談しながら、自社に合った施策を計画的に進めていきましょう。
※本記事内で紹介されているサービスに関して、記事監修の専門家は関与しておらず、またサービスの監修もしていません。
※本記事は2026年5月(監修時期)現在の内容に基づいて記載されたものです。

Officeまいとれいや代表/キャリアコンサルタント・産業カウンセラー
国家資格キャリアコンサルタントをはじめ、1級キャリアコンサルティング技能士や産業カウンセラーなどの資格を持つ。数々の企業で人材育成やキャリア開発を行い、2012年よりキャリアコンサルタントとして就職支援や就職後の定着支援を実施。2020年には「可能性を広げて納得できる働き方を!」を理念に60歳で起業。現在ではフリーで、就職・キャリア相談や研修講師などを行っている。






