面接シーンにおいて無意識に「この人はこういう人」と決めつけてしまう「アンコンシャス・バイアス」が働いている恐れがあります。アンコンシャス・バイアスを認知していないまま面接を実施すると、入社後のミスマッチにつながるリスクが高まります。
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面接に潜むバイアスとは

面接は感情を持つ人間が行うため、ある程度の先入観を抱いてしまうのは仕方ありません。しかし、自身の持っている先入観を自覚しないまま面接を実施してしまうと、採用ミスマッチのリスクが高まります。あらかじめ、面接に潜むバイアスを理解しておくことが重要です。
アンコンシャス・バイアスとは?
過去の経験や日々接する情報、思い込みをもとに無意識に「この人はこういう人」と決めつけてしまう先入観をアンコンシャス・バイアスと言います。アンコンシャス・バイアスは、職場や日常生活のあらゆる身近な場面に潜んでいます。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
「B型だからマイペース」
「高学歴だから仕事ができる」
「女性なのにボーイッシュな洋服を着ている」
「筋肉質の体型だから、力作業が向いてそう」
「男性は外回り、女性は事務でお茶を出す」
アンコンシャス・バイアスの影響

- 1.公平性を保ちにくい
- 2.入社後のギャップ、ミスマッチ
- 3.企業イメージ
- 4.ハラスメント
1.公平性を保ちにくい
また面接の第一印象に限らず、履歴書など事前に得た情報から先入観にとらわれ、その印象に応じた評価をすることで、面接の精度を下げてしまうリスクも高まります。アンコンシャス・バイアスによる不公平感は昇進においても生じる可能性があります。
2.入社後のミスマッチが起こりやすい
採用ミスマッチが起きると、採用費用や研修費用など、企業に大きな負担がかかります。企業の予算を考えてもアンコンシャス・バイアスを防ぎ、入社後のミスマッチをなくす必要があるでしょう。
3.企業のイメージが下がる
このような発言が続いてしまうと「あの企業は差別的だ」といった口コミが広がってしまうリスクもゼロではありません。一人のアンコンシャス・バイアスが企業のイメージを変えてしまう場合もあると意識しておく必要があるでしょう。
4.ハラスメントにつながる可能性がある
ハラスメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:ハラスメントとは?定義と判断基準、発生した場合の対応方法を紹介】
採用シーンで面接官が陥りやすいアンコンシャス・バイアス
- 確証バイアス
- 類似性バイアス
- ハロー効果
- ホーン効果
- ジェンダーバイアス
- コントラストバイアス
- 同調バイアス
確証バイアス
面接官のアンコンシャス・バイアス | |
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第一印象が良い | 面接での対応が苦手そうだったけど、誰にでも得意・不得意はある |
第一印象が悪い | 話すのが苦手なうえに、ミスもしている |
また、人が第一印象で判断してしまうことを「即時的決定」と言い、面接の現場でも当たり前のように発生してしまいます。即時的決定自体は脳のしくみであり、悪いことではありません。しかし、第一印象が採用の合否に影響してしまうことは問題視する必要があります。
第一印象は「この人は〇〇かもしれない」という人物像の仮説が構築されるだけであり、それが事実とは限らないのです。
確証バイアスについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:【具体例あり】確証バイアスとは?発生原因から弊害、対策を解説】
類似性バイアス
面接官のアンコンシャス・バイアス | |
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求職者が面接官と同じ地元だった | 地元には悪い人はいない |
面接で話していくうちに、求職者が面接官と似たような苦労をしていた | 自分と同じような苦労をしているならば、きっと会社に入っても頑張ってくれるはず |
ハロー効果
面接官のアンコンシャス・バイアス | |
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履歴書の経歴を見たら偏差値の高い大学だった | 高学歴だから入社後も活躍してくれるだろう |
挨拶がしっかりできるし、清潔感がある | 仕事ができそう |
ハロー効果について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:ハロー効果とは?人事・採用における意味や事例・対策をわかりやすく解説】
ホーン効果
面接官のアンコンシャス・バイアス | |
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寝癖を直していないし、スーツにもしわがついたまま | だらしないから仕事ができなそうだな |
履歴書の経歴を見たら偏差値の低い大学だった | 勉強を頑張ってきていないなら、仕事も中途半端になりそうだな |
ジェンダーバイアス
面接官のアンコンシャス・バイアス | |
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男性社員の割合が多い企業で、求職者は女性 | 体力勝負だから女性が働くのは難しい |
事務志望の男性 | 事務は細かい作業だから女性のほうがいい。男性は営業だろう |
実際に母子家庭で育ったことを理由に不採用にするという事例も発生しています。このようなアンコンシャス・バイアスは、一刻も早くなくしていく必要があるでしょう。
コントラストバイアス
ハーバード・ビジネス・レビューによると、ある面接のケースでは求職者10人中、男性が9人、女性が1人のとき、女性が採用される確率は統計上ゼロでした。一方で、女性と男性の割合が5:5であった際は、女性採用率が50%まで上がったというデータが出ています。
参考:ハーバード・ビジネス・レビュー
同調バイアス
自身が良いと思っていた求職者について、上司があまり良い印象を受けていなかった場合に「自分の見方が良くなかったのかな?」と考えてしまうのが同調バイアスです。
面接に潜むバイアスを防ぐためには

- 1.構造化面接を導入する
- 2.コンピテンシー診断を活用する
- 3.ブラインド採用を導入する
- 4.面接官の育成に力を入れる
- 5.面接官のバイアスを認知する
1.構造化面接を導入する
求職者によって質問内容を適宜変える「非構造化面接(自由面接)」では、アンコンシャス・バイアスが起きやすい傾向にあります。一方、構造化面接であれば面接官が変わっても、あらかじめ準備しておいた質問に沿って対応すればよいため、担当者による評価のムラが発生しにくい点がメリットです。
デメリットとしては、雑談などから求職者の意外な面を発見しにくい点が挙げられます。構造化面接・非構造化面接について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:構造化面接は採用に有効?導入される理由やメリット、質問例をまとめて解説】
【関連記事:非構造化面接(自由面接)のメリット・デメリットとは?】
2.コンピテンシー診断を取り入れる
コンピテンシー診断は、まず自社で良い成績を収めている従業員の行動特性を洗い出すために、あらかじめ決められた質問に答えてもらいます。優秀な従業員の行動特性を把握すれば、自社にほしい人材が明確になり今後の採用に活かすことができます。
コンピテンシーについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:【簡単に解説】コンピテンシーとは?意味や使い方、活用事例を紹介】
【関連記事:コンピテンシー診断とは?ツールの使用方法や導入事例も解説】
3.ブラインド採用
ブラインド採用は、1980年ごろから海外で導入され始めていますが、日本の企業でブラインド採用を導入している企業はまだ少ないのが現状です。
客観的な採用をしたい場合は、ブラインド採用の導入がおすすめです。
4.面接官の育成に力を入れる
そのような状況に陥らないためにも、面接官自身が実施した面接を録音して行動傾向を把握したり、上司や同僚と一緒にロールプレイングを繰り返したりすることが大切です。面接官トレーニングについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事:初めての面接官!やり方や注意点、質問例を徹底解説】
【関連記事:面接官トレーニングのメリットと強化したいスキルは?具体的な方法も紹介】
5.面接官のバイアスを認知する
とはいえ、面接官それぞれにいきなりバイアスを認知してもらう時間をつくっても、戸惑ってしまうでしょう。そんなときに役立つのがミイダスのバイアス診断ゲームです。
バイアス診断ゲームとは、仕事に関する意思決定の質を歪める認知バイアスを計測できる世界初※の診断ゲームです。自身の認知バイアスの強さを把握することで、バイアスをコントロールできるようになります。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして
(2023年5月 未来トレンド研究機構)
バイアス診断ゲームで分析できるバイアスの一例は以下のとおりです。
認知バイアス | 詳細 |
フレーミング効果 | 表現方法によって判断が変わりにくいかどうか |
現状維持 | 未知のものや未体験のものを受け入れたくないと思い現状維持をしたいかどうか |
サンクコスト効果 | 一度リソースを投資したものの回収できないと分かったとしても投資し続けてしまうかどうか |
現在志向 | 将来の利益よりも目の前の利益に価値を置くかどうか |
衝動制御 | 自分の衝動をコントロールし集中力を持続させるかどうか |
予測態度 | 不確かで見通しが悪い状態でも冷静に規則性や法則性を判断しようとするかどうか |
リスク許容度 | リスクを取ることに対する許容度 |
協力行動 | 集団内で行動する時の利益の考え方 |
全体注意 | 多くの情報から必要な情報を選択するときに俯瞰的に考えて意思決定するかどうか |
焦点注意 | 多くの情報から必要な情報を選択するときに全体よりも細部の情報にこだわって意思決定するかどうか |
否定的感情 | 物事に対するネガティヴな感情の抱きやすさ |
面接で起こりやすいバイアス対策を行った企業事例

構造化面接を導入したGoogle社
Google社は、アンコンシャス・バイアスを防ぐために「構造化面接」を導入しています。
構造化面接は臨床心理学が取り入れられた面接手法で、自社で成果を出せる人材を見つけやすいとGoogle社は報告しています。Google社では主に4つの項目に重きを置くことにしました。
1. 職務に関連のあるクオリティの高い質問をする
2. 評価を担当する人が簡単に審査できるように、応募者の回答に対する総合的なフィードバックを文書にする
3. すべての評価担当者が共通の認識を持てるように標準化されたプロセスを行う
4. 面接担当者が自信をもって面接を行えるようにトレーニングを行う
実際に、構造化面接を取り入れたことで1回の面接平均時間が短縮できています。非構造化面接より構造化面接のほうが不採用者の満足度が高かったというデータも。構造化面接はアンコンシャス・バイアスを回避できるがゆえに、メリットも大きいといえます。
参考:Google re:Work - ガイド: 構造化面接を実施する
ブラインド採用を導入したユニリーバジャパン株式会社
ユニリーバでは、従業員のアンコンシャス・バイアスが採用に大きく影響していることが判明し、ブラインド採用での選考を決定しました。
参考:Unilever Japan
コンピテンシー診断を導入した株式会社桝屋ビジネスサービス
コンピテンシー診断を導入する前は、人材紹介サービスを利用し人事部長で面接を行ったうえで採用していました。求職者をしっかり観察し見極めるように心がけていたものの、社員の退職理由を聞いて、社員の想いを本当に理解することの難しさを痛感し採用方法の見直しを考えたそうです。
コンピテンシー診断を取り入れてから、以下のような点を把握できたと言います。
- 求める人材と実際に活躍している従業員の行動特性の違い
- 従業員のストレス要因
- それぞれの従業員がどのような上司・部下になるのか
面接シーンにおけるバイアスを理解して自社の対策を考える

しかし「私は無意識に判断したかもしれない」と理解しているか、していないかで状況は大きく異なってきます。特に採用に携わる方は、バイアスをしっかり理解して対策を考える必要があるでしょう。自社にあった方法を話し合って考えてみましょう。
もし何から始めたら良いかわからない方は、コンピテンシー診断や、構造化面接の事例をもとに社内で検討してみるのをおすすめします。