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人事異動の決め方は?適材適所を実現するポイント、やってはいけないことを解説

人事異動で適材適所に社員を配置するには、どのように決めたら良いのでしょうか?

人事の采配がうまくいけば、社員の会社に対する帰属意識が高まり、定着へとつながります。一方、采配を誤ると離職やモチベーション低下につながる懸念もあります。

適材適所の人員配置は、まさに会社の命運を握る重大な責務と言えるでしょう。

この記事では、適材適所の人事異動を実現する方法や、人事異動でよくあるパターン、人事異動の効果などについて解説していきます。やってはいけない人事異動や注意点についても解説しますので、ぜひご一読ください。

また、人事異動・人員配置についてのお役立ち資料も下記から無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

適切な人事異動・配置をするための方法とは

記事を動画で解説

人事異動の目的

辞令の用紙
人事異動は、社員本人はもちろん、組織にも大きな影響を与えます。そもそも、なぜ人事異動が必要とされるのでしょうか?

人事異動の目的は、社内の人材活用の最大化です。

一般的に、人事異動は会社の事業計画に基づく要員計画に沿って行われます。要員計画には各部署で必要な人数と求める能力、従来の計画や定数と変化する場合の理由や目的が書かれており、計画から過不足がある場合に部署異動や配置転換、中途採用などが発生します。

したがって、企業が事業計画を実現して持続的な成長を維持するためには、人事異動は不可欠なのです。

なお、なかには人材育成や不正防止といった目的で人事異動が行われる場合もあります。詳しくはこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

【関連記事:人事異動の目的を解説!適材適所を実現する流れとポイントとは?

人事異動の決め方・適材適所を実現する5つの方法

異動対象になる社員たちのイメージ
では、どのようにして人事異動を決めれば良いのでしょうか?適材適所の人事異動を実現する方法を5つピックアップしてご紹介します。
  • 社員情報を集約・可視化する
  • アセスメントツールを活用する
  • ジョブローテーションを導入する
  • 異動の希望をできるだけ叶える
  • 現場の意向を汲み取る
一つひとつ詳しく解説します。

​​社員情報を集約・可視化する

適材適所の人員配置は、社内にどのような人材がいるかを把握するところから始まります。
全社員の保有資格や実務経験年数、業績などの情報を集約し、すぐ引き出せるように可視化しましょう。

従業員数が多い会社では、社員情報管理システムによって、
  • 社員のスキル
  • 保有資格
  • 実務経験年数
  • これまでの業績
  • 異動希望の有無
  • 現時点のキャリアプラン
などを入力し、一括管理しています。異動先の部署が求める人材要件に応じて、必要な情報を検索できるように整理することが大切です。

また、社員一人ひとりの情報を管理しておけば、突発的な人事異動が必要になった場合でも迅速に対応できます。

アセスメントツールを活用する

アセスメントツールを活用して、社員が配属先で能力を発揮できるか適性を見極めましょう。アセスメントツールとは、社員のスキルや思考、行動特性の傾向を客観的に評価するツールのことです。

たとえ社員に十分なスキルや経験があっても、異動先で活躍できる特性を備えていないケースは少なくありません。異動対象者の性格や特性と合わない部署へ配置し、その後に離職となれば、企業と社員の双方にとって不幸なことになります。

アセスメントツールを活用すると、異動先部署で求められる人材要件が客観的な数値でわかります。「率直に意見ができ、バイタリティのある人」が活躍する傾向が高い部署ならば、その特性を評価基準にして異動する社員を選定していくわけです。

このように仕事のパフォーマンスに寄与する思考傾向や行動特性をコンピテンシーと呼び、異動や採用時の判断基準の1つとして取り入れている企業が増えています。

社員の思考傾向や行動特性を把握するには、コンピテンシー診断ツールの活用をおすすめします。また、意思決定のクセを客観的に知るにはバイアス診断ツールの活用が最適です。業務の向き不向きが客観的なデータでわかるため、異動によるミスマッチを防ぐ効果が期待できます。

アセスメントツールに関する詳しい内容は、下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

【関連記事:アセスメントツールとは?5つの導入メリットと選び方・具体例を解説

また、コンピテンシー診断については、こちらの記事をご覧ください。

【関連記事:コンピテンシー診断とは?ツールの使用方法や導入事例も解説

ジョブローテーションを導入する

ジョブローテーションにより、適材適所の人事を実現する方法もあります。ジョブローテーションとは、定期的に職務や部署を変更し、社員にさまざまな経験をさせる人事制度のことです。人材教育の一環として、さまざまな商品・サービスを複数の部署で扱っているような企業で取り入れることが多い制度です。

実務に就かせながら適性を判断できるため、仮に社員本人や受け入れる部署側が「こんなはずじゃなかった」といった配属後のギャップを感じたとしても大きな心配はありません。ジョブローテーションの目的について事前に社内周知しておき、ありのままの成果や思いをフィードバックしてもらったり、合わない部署から早めに再配置転換したりする仕組みさえ作れば、社内マッチングの一手法として十分に活用できるでしょう。

幅広く仕事を任せる中で「向いていないと思っていた業務が実は向いていた」と社員本人が気づきを得る可能性もあります。

ジョブローテーションは適性を見極める場になるだけではなく、社員自身がキャリアの幅を広げる機会にもなるでしょう。さらに、部署を跨いだ人材ネットワークの構築にも役立ちます。

異動の希望をできるだけ叶える

社員自らが希望する部署に配属できないか検討することも大切です。

かつて、終身雇用や年功序列制度が主流だった時代は、会社主導の異動を受け入れて当たり前でした。しかし、人材の流動化が進むなか、社員自らがキャリアプランを考え、前向きに転職を検討するといった傾向が強まっています。自身のキャリアを無視した会社主導の異動ばかりでは、希望が叶う会社へ転職してしまう可能性があるでしょう。

自己申告制度など、本人の意思を直接表明できる仕組みを導入している企業もあります。会社の辞令で仕方なくいくよりも、自らの希望に沿った異動ならば、社員自身もモチベーションを高く保てるはずです。

現場の意向を汲み取る

人員配置を決める際には、人員を受け入れる現場の状況や意向もしっかり確認しましょう。
  • どのようなスキルを持った人材が必要か
  • 異動後、教育する社員はいるのか
このような確認をせずに、一方的に人員配置をすると、「仕事を教える余裕がない」「現場が求めるスキルを備えていない」といった声が上がり、現場の混乱を招きかねません。その結果、異動した社員が環境に馴染めず、離職してしまうこともあり得ます。

現場の声にもしっかりと耳を傾けて、適材適所に人員を配置しましょう。

会社の人事異動によくある3パターン

異なる視点で異動を考える各社の人事担当者たち
適材適所の人事異動は、上記で説明したように、アセスメントツールによる適性検査、本人の意向、現場の声など、さまざまなことを考慮したうえで決定されます。

とはいえ、「必ずこの流れで異動が決まる」といった型はありません。業界や社風によって、人事異動は大きく次の3パターンにわかれます。
  • 現場主義型
  • 人事主導型
  • 玉突き人事型

現場主導型

現場(店舗、工場など)が適切な配置を考えて申請し、その申請内容に基づいて配置転換や採用を行うパターンです。実際に現場にいる社員の声が反映されやすいため、サービス業のような人員配置にスピーディさと小回りが求められる業界で多く取り入れられています。

ただし、現場の発言力が強すぎると、目先の状況だけで配置を判断してしまったり、長期的な視点に立った人材育成が計画できなかったりといったリスクもあります。積極的に研修を行うなどの対策が必要になるでしょう。

人事主導型(中央集権型)

人事主導型とは、事業計画や経営方針に従って人事部門が人員配置を決定する方法です。中央集権型とも呼ばれます。

人事主導型は、人事部門の力が強い大企業で取り入れられることが多いパターンです。部門を跨いだ異動や抜擢人事などを行いやすいというメリットがあります。

一方で、現場の声や本人の意見が反映されがたく、不満や反感を抱かれやすい傾向があります。社員情報の可視化や現状把握には力を入れるべきでしょう。

玉突き人事型

玉突き人事とは、空きができるポジションを埋めるために後任を選出し、その後任が抜けた穴をさらに別の人で埋め……と玉突きのように異動を決めていく方法です。官公庁や銀行などで取り入れられることが多いパターンです。

前任が後任を推薦できる場合もありますが、人事主導で行われることが多いため、広い意味で人事主導型とも言えます。

計画的な玉突き人事は、組織の人材配置の調整や社員の長期的な育成につながります。

一方で、突発的な玉突き人事は、想定外の出来事としてネガティブに捉える社員も少なくありません。社員のモチベーションを低下させないよう、異動時の本人への説明には丁寧さが求められます。

適材適所の人事で得られる5つの効果とは?

笑顔の人事担当者
適材適所の人事異動を実現できると下記5つの効果を期待できます。
  • 離職率の低下
  • 業務の生産性向上
  • コスト削減
  • 組織・チームの活性化
  • 不正行為の防止
適材適所の人事異動を実現できると、会社と社員の双方に嬉しい効果をもたらします。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

離職率の低下

配属先と異動者のミスマッチが減るため、離職率を下げる効果が期待できます。

不向きな仕事を日々こなすのは辛いものです。思うように成果を出せずにいると、仕事に対する自信を失い、離職へとつながりかねません。

逆に、社員の得意とする業務が配属先でできるなら、最大限に強みを活かせます。強みを活かした結果が成果につながれば、仕事に対する充実感や達成感を得られるでしょう。

また、会社に対する帰属意識が芽生え、自社に定着する可能性が高まります。このように適材適所が実現すると、社内に良い循環が生まれ、離職に歯止めをかけることができるのです。

業務の生産性向上

適材適所の人員配置を徹底すれば、業務の生産性向上が見込めます。社員それぞれがパフォーマンスを発揮しやすくなり、効率良く業務を進められるからです。

コミュニケーション能力が高い社員は営業部に、コツコツ地道な作業を好む社員は経理部にといった具合に、社員の特性に合わせて配属します。

得意分野を任された社員は自信を持って業務に取り組むことができ、モチベーションを高く保てます。その結果、業務における生産性向上や業績アップの効果が期待できるのです。

コスト削減

適材適所の人員配置はコスト削減にもつながります。社員一人ひとりの業務効率を最大化できれば、必要以上の従業員を雇わずに済むからです。

通常2人で行っていた業務を1人でこなす能力を持つ社員を配置できれば、1人分の人件費を削減できます。そこまで極端ではなくとも、各社員が少しずつパフォーマンスを上げることで、全社で見たときにコストを低減できるでしょう。

くわえて社員が会社に定着してくれれば、離職に伴う採用コストも削減できます。

組織・チームの活性化

異動してくる社員を受け入れる組織・チームにとっても、良い影響が期待できます。

メンバーが固定化してしまうと、慣れや甘えから視野狭窄に陥りやすくなるものです。しかし、各部門が「自分の部署・チームさえ困らなければ」という考えでは、組織の成長は望めません。

人事異動は、異動先になる組織やチームに新風を吹き込み、部署同士の連携を強める効果が期待できます。部署間で知見やノウハウが交換され、社内全体の活性化につながるでしょう。

不正行為の防止

社員の不正行為を防止するため異動を行うケースもあります。

長期的に同じポジションに就くことで、その社員にしか把握できない仕事が生まれやすくなります。その結果、取引先との癒着や横領などの不正が発生しやすい環境が構築されてしまうのです。

業務の属人化が進みすぎる前に、あえて人事異動を行い、不正のリスクを回避する会社も少なくありません。とくに金銭を扱う金融業界では、コンプライアンスの観点から2〜4年おきに異動を行うのが一般的です。

人事異動を実施する際の注意点

✕印を掲げる人事担当者
人事異動は企業にとって必要不可欠なものですが、人事担当者として覚えておきたい注意点も存在します。
  • 人事異動に失敗すると早期離職につながる可能性がある
  • やってはいけない人事異動がある
それぞれ見ていきましょう。

人事異動に失敗すると早期離職につながる可能性がある

社員には、それぞれ個人的な事情があるものです。適材適所の人員配置を考慮し、社員の能力を最大限に発揮できる部署へ配属しようとしても、個人的な事情を無視した人事異動をすると早期離職を招くリスクがあります。

人事異動は該当の社員だけでなく、所属する組織のメンバーやその家族にも影響を及ぼす大きな問題です。
  • 「両親の介護のため、現在の住まいから離れられない」
  • 「地方の支社勤務になることを家族が同意してくれない」
  • 「自分が望むキャリアとは異なる異動を命じられた」
家族や自分を犠牲にしてまで辞令に従うべきか葛藤する社員もいるでしょう。とくに転居を伴う異動の可否は、あらかじめ社員の家庭環境や意向をヒアリングしておくなどの対策が重要です。

とはいえ、個人の事情ばかりを優先させていたら、会社としてあるべき姿を作れません。「個別の事情を考慮していては人事異動を進められない」と、あえて一切考慮せずに異動を決める会社もあるほどです。

人事の立場として、どの程度まで個人の事情を汲むかを経営陣とよく擦り合わせながら、慎重に進める必要があります。

やってはいけない人事異動がある

会社には社員の処遇を決める権利(人事権)が与えられています。社員はこれに従う義務があり、基本的に会社の人事異動は拒否できない仕組みです。

しかし、人事権は無条件に行使できるものではありません。人事として「やってはいけない人事異動」があることを覚えておく必要があります。

人事権の濫用にあたる異動に関しては、無効になる可能性があるので注意しましょう。では実際にどのようなことを「やってはいけない」のか、詳しく解説していきます。

やってはいけない人事異動とは?主なパターンを紹介

腕をクロスさせるビジネスパーソン
企業の人事をどうするか、誰に人事異動してもらうか決める権利は企業側にあります。人事異動は組織と従業員の成長を促すうえで重要な役割を果たすものです。

しかし不適切な人事異動を行ってしまうと、従業員のモチベーション低下や生産性の低下を招くだけでなく、違法と判断されてしまうリスクがあります。何が「避けるべき人事異動」なのか、主なパターンを紹介します。

1.必要性のない人事異動を行う場合
2.不当な理由で人事異動させる場合
3.従業員に与える不利益が著しい場合
4.労働契約から逸脱した人事異動をさせる場合
5.給与が少なくなってしまう場合

詳しく解説していきます。

【パターン1】必要性のない人事異動を行う場合

必要性のない人事異動とは、業務上の必要性がないにもかかわらず人事異動を命じることです。たとえば閉鎖が決まっている支店に、必要もないのに従業員を配置転換させることが挙げられます。

このような、報復人事ともとれるようなあからさまな人事異動は、人事権の濫用と見なされるケースがあり、違法となる恐れがあります。また、こうした人事異動を繰り返していると、従業員に不安を与えてしまいモチベーション低下や離職率アップにつながりかねません。

【パターン2】不当な理由で人事異動させる場合

不当な理由による人事異動とは、従業員の能力や実績を考慮するのではなく、人事の個人的な感情や偏見に基づいて行われる異動のことです。嫌がらせや見せしめ、報復人事とも受け取られてしまうような人事異動は避けるべきです。

たとえば内部告発を行った人を閑職に追いやったり、上司や会社に対して意見をした部下を退職に追い込んだりするようなやり方は、「不当な理由での人事異動」と見なされかねません。人事権の濫用と見なされるだけでなく、パワハラとして訴えられるリスクもあります。

このような人事を行っていると、法的リスクが発生するだけではありません。噂が世間に広まることで企業イメージが悪化し、人材を採用するときに応募が集まりにくくなるといったデメリットも考えられます。

【パターン3】従業員に与える不利益が著しい場合

従業員にやむを得ない理由がある場合、事情を考慮せずに異動を命じると「人事権の濫用」と見なされてしまう恐れがあります。たとえば家族の介護が必要で、転勤することによって介護をする人がいなくなってしまうケースが挙げられます。

このような状況にもかかわらず人事異動をすると、従業員が離職してしまうだけでなく会社の対応を巡って訴訟を起こされる場合もあります。。人事異動を行うかどうかは基本的に会社が決めることですが、従業員の事情をまったく無視した異動は無効となる恐れがあるので配慮が必要です。

人事異動の前に内示を出し、本人から意見がある場合は丁寧にヒアリングをしましょう。

【パターン4】労働契約から逸脱した人事異動をさせる場合

労働契約から大きく逸脱するような人事異動は、人事権の濫用となってしまう場合があります。

たとえばアルバイトやパートタイマー、働くエリアが限定されている正社員など、雇用契約で就業場所を限定する場合です。就業規則で異動に関する記載があったとしても、上記の従業員は異動の対象外となります。

異動を行う可能性がある職種については、採用時点で異動の可能性を伝えたり労働契約書に異動や転勤に関する記載を設けたりしましょう。

【パターン5】給与が少なくなってしまう場合

人事異動させた結果、従業員の給与が今より少なくなってしまう場合は大きなトラブルに発展する恐れがあります。人事異動であっても、従業員の給与は異動前より減少させてはなりません。

一方的に給与を引き下げてしまうと裁判に発展するリスクもあります。人事異動を行う場合でも、給与は下げないよう配慮しましょう。

できれば避けたい人事異動

人差し指を立てるビジネスパーソン
ここからは「やってはいけない」とまでは言えないものの、「できれば避けたい」人事異動について、具体例を挙げつつ解説します。
  • 転居を伴う転勤をさせる
  • 穴埋め要員として人事異動させる
  • 希望とかけ離れた人事異動をさせる
なぜ上記のことを「できれば避けたい」のか、詳しく解説していきます。

転居を伴う転勤をさせる

転居を伴う転勤は、業務上の必要性があれば実施されるべきですが、できれば避けたい人事異動の1つです。その理由は以下の通りです。
  • 従業員への負担が大きいから
  • 転居を嫌がり離職する恐れがあるから
  • 従業員満足度が下がる可能性があるから
転居を伴う転勤は、新しい環境への適応や家族の転校・転職、住宅の手配など、従業員に大きな精神的・経済的負担を与えます。「転勤先についていくつもりはない」とパートナーに言われてしまい、この機会に転職を考える恐れもあります。

単身赴任を受け入れてくれた場合でも、従業員は会社の対応にあまり良い気持ちは持たないでしょう。その結果、従業員満足度が低下し、生産性や愛社精神の低下を招きかねません。

転居を伴う転勤を行う際には、業務上の必要性を慎重に見極め、従業員の事情も十分に考慮することが重要です。また転勤の際には十分な猶予を設けて従業員に準備する時間を与えたり、必要な支援を提供したりすることが求められます。

穴埋め要員として人事異動させる

人員不足の部署を一時的にカバーするため安易に人事異動を行うことは、できれば避けたい人事異動と言えます。その理由は以下の通りです。
  • 「なにも考えずに人事を行っている」と不満を持たれやすいから
  •  今の部署でうまくいっている場合、成長をストップさせる恐れがあるから
  • 従業員のキャリア形成を行えないから
穴埋め要員として異動させると、従業員に「自分のキャリアや希望を会社はまったく考慮してくれない」と思われかねません。これは、従業員の不満や離職につながる可能性があります。

現在の部署で高いパフォーマンスを発揮している従業員を、安易に異動させてしまうと、その従業員の成長を阻害しかねません。また穴埋め要員としての異動を繰り返すと、従業員のキャリア形成を行えないため「さまざまな部署で色々な仕事をした経験はあるけど、これといった強みがない」人材になってしまいます。

従業員のキャリア形成を考慮して人事異動を行わないと、専門性を持った社内人材が育たず、会社全体の生産性が上がりにくくなります。穴埋めでの人事異動はできるだけ避けて、作業フローの見直しや業務効率化ツールの導入といった生産性の向上、外注の活用などを検討しましょう。

希望とかけ離れた人事異動をさせる

従業員の希望とかけ離れた人事異動も、できれば避けたい異動の1つです。モチベーションを下げてしまうだけでなく、人事異動をきっかけに転職してしまうリスクがあるからです。

たとえば営業職として入社したのに製造現場に異動させたり、逆に製造スタッフとして入社したのに営業や人事、経理などを行わせたりといったことが挙げられます。

本人の適性を考慮した結果、どうしても希望とかけ離れた人事を行う場合は、適切なフォローが必要です。異動の理由を丁寧に説明し、異動先の職種や部署がその従業員の適性に合っていると考えた理由を伝えることが重要です。

また異動後も定期的に面談をしたり、上司を通じて従業員の適応状況を確認したりするなど、必要なサポートを行うことも重要です。

人事異動を伝える順番

人事異動の内示を受けるビジネスパーソン
異動が決定したら、人事担当者または異動対象の社員の上司から本人へ異動になることを伝えます。これを「内示」と呼びます。

内示から正式な辞令が出るまでの期間は1〜2か月ほどを設定する場合が多いでしょう。この期間に業務の引き継ぎを行います。

なお内示の時点では、まだ正式に異動が確定したわけではありません。よって、業務に影響の出るチームメンバーや関係者を除いて、異動については秘密にするのが原則です。

正式な辞令は、イントラネットやグループウェア、メール等で社内へ通知されます。

内示のルールや注意点については、こちらの記事をご一読ください。

【関連記事:なぜ人事異動情報(内示)は秘密にしなければならないのか?仕組み作りのポイントも解説

独自の施策で適材適所の人員配置を目指す企業例

勢いのある企業のイメージ
適材適所の人員配置の実現に向けて、独自の人事施策を展開する企業を4社ご紹介します。人事異動制度の最適化をご検討中の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

手上げ式の社内公募で主体性を育てる「富士通」

富士通では社内公募(ポスティング制度)を以前から取り入れており、2022年時点ではグループ内の人事異動の7〜8割がポスティング制度経由で実施されているとのこと。富士通の社内公募は、新任管理職登用向けの「一斉募集」と人材が必要になったときに行う「随時募集」の2種類。専用のウェブページに社内の空きポジションが掲載され、チャレンジしたい人が応募できる仕組みです。

以前は上長が適任者を判断して任命していましたが、社員が自主性を持ってキャリアを築けるよう、自分でやりたい仕事に手を挙げる方法に変えたそうです。

入社2年目でマネージャーに就任するメンバーが現れるなど、会社の変化を実感しているといった声も上がっています。

参考:日経xwoman「富士通 ジョブ型で新卒入社2年目社員を課長級ポストに

独自のアンケートシステムで適材適所を実現する「サイバーエージェント」

サイバーエージェントでは社内にヘッドハンティングチームを設置し、適材適所の人事異動を実現しています。ヘッドハンティングチームで活用するのは、独自のアンケートシステム「GEPPO(ゲッポー)」です。

GEPPOを通じて毎月全社員にアンケートを実施し、社員のコンディションやキャリア志向、趣味や興味分野、課題などを徹底分析。GEPPOの分析結果をもとにヘッドハンティングチームが各所にいる優秀な人材を把握し、それぞれの社員の特性が活きるポジションを探索・提案します。

社内のエージェントチームという客観的な立場だからこそ、直属の上司には打ち明けられない社員の悩みや弱みをヒアリングでき、正確な現状把握が可能とのこと。適材適所の人事異動はもちろん、離職防止にも成果を上げているそうです。

参考:Geppo「サイバーエージェント流「社員がイキイキ働ける会社」のつくりかた。

組織横断の人材開発会議を設置する「リクルート」

リクルートでは年に2回、社員が強みを活かせる最適なポジショニングについて、組織全体で徹底議論するそうです。その名も「人材開発会議」。

人材開発会議では社員のキャリアについて、直属の上司だけでなく、社内全体の部長・課長クラスが一堂に会して話し合われます。1,000人を越える社員一人ひとりについて、成長できているか、強みを活かして課題を克服するためにどのような配属やミッションを付与すれば良いか、時間をかけて議論しています。

1人の社員に関して、部署の垣根を超えて議論が交わされる点が特徴的です。

参考:ICC「リクルートが人材育成を徹底議論する「人材開発委員会」とは?

社内FA制度で社員の挑戦を後押し「ソニー」

ソニーでは、仕事で高い評価を獲得した社員に対して、フリーエージェント(FA)権を与える制度を設けています。

FA権を獲得した社員には社内からさまざまなポスト・職種へのオファーが届き、そのなかで挑戦したいオファーがあれば、社員はFA権を行使して異動できます。

社員の積み重ねてきたキャリアを正当に評価し、社員自らがソニーのなかでキャリアを広げられるよう後押しするユニークな制度と言えるでしょう。

社内FA制度は2015年にスタートし、これまで1,000人以上がFA権を獲得しているとのことです。

参考:SONY「「社内FA制度」でキャリアアップ

社員の人事異動をするときによくある3つの質問

悩む人事担当者
社員の人事異動を検討する中で「人事異動を拒否されたら、どうしたらいい?」「部署のエースを異動させても良いものか……」と悩む人事担当者の方もいるのではないでしょうか。

ここでは、人事異動を考えるときによくある3つの質問について回答していきます。

1.人事異動を拒否された場合は?
2.部署のエースも人事異動させたほうがいい?
3.人事異動でモチベーションが低下した従業員にはどう対応すべき?

それぞれ詳しく解説します。

人事異動を拒否された場合は?

​​人事異動を従業員に拒否された場合、まずは冷静に話し合うことが大切です。会社の人事に対して基本的に従業員は従う必要があることを伝えつつ「なぜ今回あなたが異動する必要があるのか」「会社はあなたに何を期待しているのか」を丁寧に説明しましょう。

「やってはいけない人事異動」で紹介した事項に該当しないよう、必要に応じて従業員側の事情に配慮した措置を行うことも大切です。

それでも異動を拒否された場合は、「人事権は会社にある」と毅然とした対応を取ります。話し合いに納得してもらえず、異動を拒み続ける場合は懲戒処分も検討しましょう。ただし法律的なトラブルに発展しないよう、社内で十分検討したうえで、慎重な対応が求められます。

部署のエースも人事異動させたほうがいい?

部署のエース、つまり現時点で高い成果を上げている社員を異動させるか悩む人事担当者もいるでしょう。

結論を言うと、社内のエースは異動させたほうが会社内に良い効果をもたらすとされています。なぜなら、社内で次世代のエースが育つ可能性が高まるからです。

「余人をもっては代えがたい」とされる人材であっても、その社員がいなければ組織が成立しないというケースは、事業を行っている以上ありえません。エースが抜けて戸惑うのは初めだけです。

もちろん、現場からは「エースが抜けてどうしよう」「どうして異動させるんだ」と不満の声も出るでしょう。しかし、何とかして抜けた穴を埋めようと組織として必死になるはずです。

エースが抜けた後を埋める努力をするなかで、次世代のエースが誕生するのです。

とはいえ、異動したエースが配属先の部署で活躍できるかは別問題。業務の向き不向きもあるため、活躍している優秀な人材だからと安易に考えず、適正な見極めが重要です。

人事異動でモチベーションが低下した従業員にはどう対応すべき?

人事異動は、従業員のモチベーションに大きな影響を与える可能性があります。異動によってモチベーションが低下することもあるでしょう。このような従業員に対しては、適切なフォローを行うことが重要です。「適切なフォロー」とは、具体的には下記のことが挙げられます。
  • 上司との1on1
  • 異動先の部署全体でフォロー
  • 人事異動の理由や意図を説明
このような対応を行い、従業員のモチベーションが低下しないよう配慮しましょう。とはいえ従業員のモチベーションが低下しているかどうか把握するのは難しく、手間もかかります。そこでおすすめなのが、人材アセスメントツール「ミイダス」が提供する「はたらきがいサーベイ」です。

はたらきがいサーベイは、簡単なアンケートに答えてもらうだけで、従業員のはたらきがいを定期的に測定できるツールです。サービスの詳細は下記をご一読ください。

はたらきがいサーベイについて詳しく見る

人事異動の裏側!「なぜあの人は異動が多いのか?」を解説

人事対象に選ばれる社員のイメージ
これまで企業の人事担当者目線で解説してきました。ここから人事異動の裏側として「なぜ異動が多い人と少ない人がいるのだろう」という社員側の疑問にお答えします。

長く働いていると、入社時からまったく異動がない人がいる一方で、数年おきに異動を繰り返している人がいることに気がつくはずです。異動の多さには、次のような理由があります。
  • 出世コースに乗っている優秀な人材だから
  • 現在の業務に適性がないと判断されたから
  • 育成対象の若手社員だから
  • トラブルメーカーだから

出世コースに乗っている優秀な人材だから

よく「優秀な人は異動が多い」と言いますが、実際にその傾向はあります。とくに、20代後半〜40代にかけて異動が多い人で、海外赴任や地方の責任者を経験させられている人は、出世コースに乗っている可能性があります。

このケースでは、人事評価や賞与の査定などで高評価を得ているため、本人も出世コースに乗っている自覚があるのが特徴です。

ただし、「異動が少ないから出世しない」というわけではありません。職種によっては、入社以来ずっと同じ部署で、その道のエキスパートとして昇進を重ねるケースもあります。

いずれにせよ、それまでの仕事ぶりを評価されている実感があるなかでの異動命令は、前向きに捉えたほうが良いかもしれません。

現在の業務に適性がないと判断されたから

残念ながら、出世コースとは真逆の意味で異動が多い人もいます。

同じ部署内での異動が多かったり、まったく関連のない職種に異動させられたりといったケースでは、「業務に適性がない」と判断されている可能性があります。

とはいえ、適性がない仕事を続けるのは辛いものですし、異動した先で結果をだせる職種に出会えるかもしれません。

育成対象の若手社員だから

ジョブローテーション制度のある企業では、人材育成を目的として若手社員を積極的に異動させます。

このケースでは、4月と10月頃の定期異動のタイミングで辞令が下されるのが一般的です。また将来に向けた経験を積ませるという意味で、関連する部門・部署に異動させる傾向があります。

なお、ローテーションを行うなかで、仕事ぶりが評価されて出世コースに入る社員もいます。

トラブルメーカーだから

何らかの不祥事を起こした社員も異動対象です。とくに悪質なハラスメント行為などで懲戒処分の対象となった場合、被害者と同じ部署内で働かせることが難しいため、異動となります。

また、現場主導での人事異動が多い企業では、異動にかかわる上司の権限が強くなります。よって上司とトラブルを起こしがちな社員は、異動が多くなりやすいでしょう。

人事異動で従業員のモチベーションを上げるためのコツ

「POINT」と書かれたノート
人事異動は、従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。どうすれば従業員のモチベーションを上げるための人事異動を実施できるのか、コツを紹介します。
  • 従業員の希望を考慮した人事異動を行う
  • 人事異動する理由を伝える
  • 人事異動後もフォローを行う
  • モチベーションが下がっていないかツールを活用してチェックする
どういうことか、詳しく解説します。

従業員の希望を考慮した人事異動を行う

従業員の希望を考慮した人事異動は、モチベーションを上げるための重要なコツと言いえます。「希望していた仕事ができる」と従業員のモチベーションも高まり、前向きに仕事へ取り組んだり成果を上げようと行動したりすることが期待できるからです。

ただし従業員の適性を見極めるには、定期的な面談を行ったりツールを活用したりするなど、時間をかけて冷静な判断を下す必要があります。

人材アセスメントツール「ミイダス」では、従業員の特徴を可視化するコンピテンシー診断の活用で適材適所の人材配置を実現できます。詳しくは下記からダウンロードできる、無料のお役立ち資料をご確認ください。

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人事異動する理由を伝える

人事異動の理由を従業員に明確に伝えることは、モチベーションを上げるための重要なコツです。「なぜ自分が異動する必要があるのか」「会社は自分に何を期待しているのか」といったことがわかるため、不安が軽減されて人事異動への納得感が高まるからです。

「会社の将来戦略の一環として、あなたにスキルアップしてもらう必要があるため」など、従業員と個別に面談を行い、丁寧に人事異動の理由を説明することが重要です。異動後のフォローも欠かせません。従業員の適応状況を確認し、必要なサポートの提供が求められます。

人事異動後もフォローを行う

人事異動を行った後は、従業員に対するフォローを欠かさず行いましょう。新しい環境に入ったばかりのときは、多少なりともストレスを感じるものです。見ず知らずの環境で、心細い思いをしているかもしれません。

そこで人事が異動先部署の上司に対して、該当社員へのフォローや定期的な面談の実施、部署内の交流促進を求めましょう。

人事異動後のフォローを効果的に行うためには、人事と異動先の部署が連携し、従業員の状況を継続的に観察することが重要です。適切なフォローは、従業員エンゲージメントを高め、生産性の向上につながります。人事異動後のフォローを丁寧に行うことは、従業員の定着と、長期的な企業の発展に寄与するでしょう。

モチベーションが下がっていないかツールを活用してチェックする

人事異動後の従業員のモチベーションを定期的にチェックするには、ツールの導入もおすすめです。ツールを活用することで客観的に従業員を評価したり、どのような変化が起こっているのか観察したりできるからです。モチベーションが低下している兆候を察知すれば、離職してしまう前にフォローを行うこともできます。

従業員のモチベーションを確認するツールとしておすすめなのが、ミイダスの「はたらきがいサーベイ」です。はたらきがいサーベイとは、アンケートを通じて従業員の「はたらきがい」を可視化するツールです。

従業員のはたらきがいを可視化できるため、パフォーマンスが向上しているか、離職してしまいそうか、従業員が何を会社に求めているかがわかります。はたらきがいサーベイの詳細は下記をご一読ください。

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ミイダスを活用して適材適所の人事を実現しよう!

ミイダスのアプリイメージ
適材適所の人事異動を実現させるなら、スキルや業務経験といった目に見える部分だけでなく、社員の思考傾向や行動特性まで考慮した見極めが必要です。

そこで、アセスメントリクルーティングのミイダスでは、社員のスキルや特性を客観的に分析できるツールを多数ご用意しています。

適材適所の人事異動を実現させるなら「コンピテンシー診断」「活躍要因診断」「バイアス診断ゲーム」の3種をあわせてご活用ください。
コンピテンシー診断:「パーソナリティ」や「ストレス要因」「上下関係適性」など41項目を10段階で数値化。ビジネスシーンにおける社員の具体的な特徴を可視化できます。

活躍要因診断:組織や部署で活躍・定着しやすい人材のタイプが把握できます。

バイアス診断ゲーム:仕事における意思決定を歪める認知バイアスを計測。社員自身が自分の認知バイアスを把握し、意思決定の質を向上させられます。
3つのツールの診断結果を見れば、異動の対象となる社員が配属先の部署で活躍できるか否かを高い精度で予測できます。

活躍要因診断では、特定の部署で活躍する人材の思考傾向や行動特性(コンピテンシー)を分析可能です。コンピテンシー診断からその特性に近い人材を配置すれば、異動先の部署での活躍が期待できます。

バイアス診断ゲームでは、診断対象者の意思決定のクセを客観的な数値で見ることができます。認知バイアスの強さを知れば、活躍を期待できるか予測可能です。

適材適所の人事実現にお悩みの担当者の方は、ぜひこれらの診断ツールをご活用ください。今ならミイダスの無料アカウント登録で、15名までコンピテンシー診断(活躍要因診断)が追加料金なしでご利用いただけます。

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