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ハラスメントとは?定義と判断基準、発生した場合の対応方法を紹介

令和4年(2022年)4月からパワーハラスメント防止措置が、すべての事業主に対して義務化されました。措置が適切に講じられていない場合には是正指導の対象となり、対応が悪質な企業は企業名を公表する規定が設けられています。

ハラスメントに対する世間の目が、今後一段と厳しくなるのは間違いないでしょう。

ハラスメントに該当する言動の中には、無意識に加害者本人の言葉や行動に表れてしまう場合も少なくありません。そのため、企業側でしっかり社員を教育していくことが大切です。

この記事では、ハラスメントの定義や判断基準、予防策について解説します。実際にハラスメントが発生した場合の対応手順についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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ハラスメントとは

ハラスメント(harassment)とは、相手に不快感を与える嫌がらせやいじめ全般を指す言葉です。人格を否定する言葉を浴びせたり、集団で無視したりといった行為が例として挙げられます。

ハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為です。ハラスメントが起きると職場の秩序が乱れ、業務への支障も生じます。深刻な場合、企業が被害者から訴えられ、社会的信用が失墜するなどの恐れも。

ハラスメント対策は、雇用管理上の危機管理であるとの認識を持ち、こうした問題を未然に防いでいくことが重要です。

ハラスメント加害者の意図は不要

ハラスメントの認定に加害者の意図は基本的には不要です。加害者に嫌がらせの意図がなくても、受け取る側が不快に感じれば「ハラスメント」は成立します。

加害者の意図を基準に判断すると、加害者が否定する限り、ハラスメントは成立しません。そうすると、被害者は泣き寝入りせざるを得なくなってしまいます。

そのためハラスメント認定は、加害者の意図よりも受け手の主観を重視した判断になります。とはいえ、個人の受け止め方の違いもあるため、受け手の主観を重視しつつ、一定の客観性が必要となるでしょう。

ハラスメントに該当しないケース

不快に思った行為でも、ハラスメントに該当しないケースもあります。客観的に見て、業務上必要とされる言動はハラスメントに該当しません。

例として下記のようなケースが挙げられます。
  • 有給休暇の申請が、業務上の必要性に基づき承認されなかった
  • 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦検診は、この日を避けてほしいので調整できるか」と確認すること
  • 長時間労働している妊婦に対して、母体への負担を考慮し、業務量の調整を提案すること など
参考:職場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省 8ページ

上記のようなケースでも、労働者の意を汲まない一方的な通告になる場合は、ハラスメントに該当する可能性があります。そのため、管理職の方はとくに注意が必要です。

職場で多い3大ハラスメント

セクハラ・パワハラ・マタハラと刻印された木製ブロックと人型の模型
職場のハラスメントには、パワーハラスメント(パワハラ)・セクシャルハラスメント(セクハラ)・マタニティハラスメント(マタハラ)があり、これらは「3大ハラスメント」とも呼ばれています。それぞれの定義と判断基準を確認しましょう。

パワハラ

パワハラとは、上司や先輩といった職場での優位性を背景に、身体的・精神的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為です。
厚生労働省では、職場におけるパワハラ行為を以下の6類型に定義しています。
1.身体的な攻撃(暴行や傷害)
例:ファイルで頭を叩く、殴る・蹴る。

2.精神的な攻撃(脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言)
例:職場の全員が見ている前で叱責する。長時間にわたり繰り返し執拗に叱る。

3.人間関係からの切り離し(仲間外れや無視、隔離)
例:部署の歓送迎会に参加させない。一人だけ席を離す。

4.過大な要求(遂行不可能な業務の強制や妨害など)
例:新人に必要な教育や支援をしないまま、到底対応できないレベルの業務を命じる。

5.過小な要求(能力や経験と、かけ離れたレベルの低い業務命令や仕事を与えない行為)
例:自主退職させるために、管理職に新人レベルの仕事をさせる。嫌がらせのために仕事を与えず、業務から遠ざける。

6.個の侵害(プライベートへの過度な立ち入り)
例:交際相手について執拗に詮索する。性的指向や治療中の病気などのプライバシーを本人の了解を得ずに周囲に暴露する。
参考:あかるい職場応援団|「ハラスメント基本情報」 ハラスメントの類型と種類

上記の6つはあくまで代表的な類型であり、職場におけるパワハラ行為のすべてを網羅するものではありません。

パワハラの判断基準
労働施策総合推進法30条の2(後述)に、パワハラの成立要件が定義されています。下記3つの要素をすべて満たす場合にパワハラが成立します。

1.優越的な関係を背景とした言動がある
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3.労働者の就業環境が害されるもの

それぞれ見ていきましょう。

【要件①】優越的な関係を背景とした言動
「優越的な関係」とは、抵抗や拒絶が難しい関係を指します。下記がその例です。
  • 地位が上の者による言動である場合
  • 同僚または部下による言動で、ハラスメント行為をする者が業務上必要な知識や経験があり、その者の協力を得なければ、円滑な業務を行うことが困難である場合
  • 集団による行為で、抵抗や拒絶が困難であるもの
【要件②】業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは、具体的に下記の言動を指します。
  • 業務上、明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適切な言動
  • 行為の回数など、許容される範囲を超える など
裏を返すと、業務上必要な指導であればパワハラに該当しないことになります。ミスをした部下に上司が注意すること自体は、業務の遂行上、妥当な範囲であれば許容されるでしょう。

厳しい注意や指導がどこまで正当なものであるか、「業務上必要かつ相当な範囲」の基準に明確な線引きはありません。その行為があった状況や継続性によってもパワハラ成立の有無が変わってきます。

そのため、同じような注意や指導でも、事例ごとに判断が異なることがほとんどです。

【要件③】労働者の就業環境が害されるもの
「労働者の就業環境が害されるもの」とは、行為の受け手である労働者が身体的もしくは精神的に苦痛を感じ、職場での能力発揮に支障をきたしている状態のことです。

同じようなことが起きた時に、他の者も就労が害されたと感じる言動かどうかが、この要件の線引きになります。言い換えれば、被害を訴える者の主観だけで判断されるわけではないということです。

不適切な人格否定的発言も、1回きりであれば「労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じる」とまでは言えないケースもあります。
(雇用管理上の措置)
第30条の2
1 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)|e-GOV

セクハラ

セクハラを受けて悩む女性のイメージ
セクハラとは、加害者本人の意に反する性的な言動で、相手に不快感や不利益、傷などを与えたり、就業環境を害したりする行為です。相手に性的な関係を要求する、しつこく食事やデートに誘う、性的な噂を流すなどの行為が該当します。

異性に対するものだけではなく、同性に対する性的な言動もセクハラになるため、同性同士でも注意が必要です。

セクハラ行為に該当する「性的な言動・行動」の例を見てみましょう。

【性的な言動の例】
  • 「彼氏はいるの?」…性的な事実関係を尋ねること
  • 「あの人、遊んでるらしいよ」…性的な噂を流す
  • 「今晩、食事行かない?」…執拗に食事やデートに誘う
【性的な行動の例】
  • 性的な関係を強要すること
  • 必要なく体に触れること
  • わいせつな図画を配布・掲示すること
セクハラには「対価型」と「環境型」があります。対価型は、労働者の意に反する性的な言動を拒否した結果、解雇・降格・減給などといった不利益を被るタイプのセクハラです。

それに対して環境型は、性的な言動により職場環境が不快なものとなったため、労働者の就業に悪影響が出るタイプのセクハラを指します。

セクハラの判断基準
「平均的な労働者の感じ方」がセクハラ該当性の基準となります。男女の認識によっては捉え方の違いもあるため、性差を意識した判断が必要です。

被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当でしょう。

人によって受け取り方が異なる場合もあります。相談者の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要です。

男女雇用機会均等法11条1項には、次のように定義されています。
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)|e-GOV

マタハラ

マタハラとは妊娠・出産・育児をきっかけに、女性労働者が嫌がらせを受けることを指します。妊娠や産休取得を申し出た女性労働者に対して、一方的に解雇を通告したり、妊娠を迷惑がる言動を繰り返したりといった行為がマタハラの例です。

マタハラは「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」に分類されます。制度等の利用への嫌がらせ型は、出産・育児に関する社内制度の利用に際し、当事者の制度利用を阻害する行為のこと。

例えば、下記のような言動がマタハラに該当します。
  • 産休の取得を上司に相談したところ、「休みを取るなら辞めてもらう」と言われた
  • 母体の負担を軽減させるため、時間外労働の免除について相談したところ、「次の査定では昇進しないと思え」と言われた。
引用:妊娠・出産・育児休業・介護休業等に 関するハラスメント対策や セクシュアルハラスメント対策は 事業主の義務です!|厚生労働省
「状態への嫌がらせ型」は、妊娠・出産したことで就業環境が悪化したり、周囲から嫌がらせを受けたりすることを指します。

「忙しい時期に妊娠するなんて」「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」などと継続的に言い続け、女性労働者の就業に看過できない程度の支障を生じさせるのが「状態への嫌がらせ型」です。

マタハラは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法において、下記のように禁止されています。
<男女雇用機会均等法第9条第3項(抄)>
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
引用:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)|e-GOV
<育児・介護休業法第10条>
事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第九条の五第二項の規定による申出若しくは同条第四項の同意をしなかったことその他の同条第二項から第五項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
引用:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)|e-GOV

産前・産後も安心して働ける職場作りは企業の成長に必要不可欠です。女性採用に関しては下記の記事で詳しく解説しています。興味がある方は合わせてお読みください。

<関連記事>「女性を採用したくない」は時代遅れ?女性採用の必要性とメリット
<関連記事>女性採用のメリット8つ!成長する企業は女性を採用している理由

ハラスメントの実態

民事上の個別労働紛争に関する折れ線グラフ
出典:令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況 5ページ|厚生労働省
厚生労働省が発表した「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、職場における「いじめ」や「嫌がらせ」の相談件数は右肩上がりで増加しています。令和3年度の「いじめ」「嫌がらせ」に関する相談件数は86,034件と過去最多記録を更新しました。

自己都合退職や解雇等、ほかの相談内容に比べて圧倒的に件数が多いことがわかります。

続いて、パワハラ・セクハラ・マタハラそれぞれの発生件数を見てみましょう。

厚生労働省が令和2年10月に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、労働者の3人に1人が「過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがある」と回答しています。
ハラスメントを受けた経験に関するアンケート調査結果の横棒グラフ
出典:令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)16ページより

各ハラスメントの具体的な数値は下記の通りです。
  • パワハラを一度以上経験した者の割合は31.4%
  • 顧客等から著しい迷惑行為を受けた者は15.0%
  • セクハラを受けた者は10.2%
同調査において、過去5年間の就業中に妊娠・出産した女性労働者の中で「マタハラを受けた」と回答した者の割合は26.3%。過去5年間に育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者の中で「育児休業に関するハラスメントを受けた」と回答した者の割合は26.2%でした。

「いじめ」や「嫌がらせ」を受ける人の数は年々増加していますが、2016年度に行われた同様の調査結果と比較してみると、パワハラやセクハラを受けた人の割合自体はさほど変わっていません。

しかし、同じハラスメントでも時代とともに内容が変わっている点に特徴があります。パワハラにおいては、殴る蹴るといった暴力的な行為が多かったのに対して、近年では精神的な攻撃や過大な要求といった、一見ハラスメントと判断しづらいケースが増えています。

そのため、ハラスメントかどうかの判断が難しいと悩む企業担当者も少なくないのです。

ハラスメントが及ぼす影響

ネットの誹謗中傷に傷ついた心のイメージ
社内でハラスメントが発生すると、被害者・加害者・企業それぞれに深刻な影響が及びます。

企業

ハラスメントが横行すると、企業には以下の悪影響が生じるでしょう。
  • 職場全体の生産性低下
  • 貴重な人材の流出
  • 法的責任を問われる
生産性低下・人材の流出
ハラスメントは職場の雰囲気を悪化させます。居心地の悪い職場に見切りをつける人が増えて人材の流出が進めば、優秀な人材も失うかもしれません。その結果、社内全体の生産性低下につながります。

また「ハラスメントが横行する企業だ」と悪い評判が広まれば、新卒採用や中途採用がうまく行かなくなる可能性も。人材の獲得が難しくなると、企業の中長期的な成長は望めません。

法的責任
ハラスメントがあった場合、加害者だけでなく企業も「使用者責任」や「不法行為責任」といった法的責任を問われる可能性があります。例えば、雇用する労働者が職場においてパワハラを行い、被害者が精神的な苦痛を受けたり病気になったりした場合、会社はパワハラ行為について、使用者として責任を負います。これが使用者責任です。

また、労働者が会社の意思に基づいてパワハラ行為をした場合には、会社は不法行為責任を問われるでしょう。ハラスメントがあったと証明されれば、被害者に対して企業が賠償しなければなりません。

ハラスメントをきっかけに民事紛争が生じるのは、会社にとって大きなリスクです。企業イメージや風評などの側面からも、会社の信用と信頼を揺るがす事態を引き起こす問題となります。

加害者

ハラスメント加害者は、以下の不利益を被る可能性があります。
  • 加害者自身の評判を落とす
  • 社会的地位を失う
  • 懲戒処分を受ける
  • 被害者から損害賠償請求を受ける可能性がある など
ハラスメントが発覚した場合、加害者は「ハラスメントをした人」として、社会的ダメージを受けます。被害者や会社に及ぼした影響によって、けん責・減給・出勤停止・解雇などの実質的なペナルティが課せられるでしょう。

被害者から訴えられた場合には、民事では損害賠償(民法709条)を、刑事では傷害罪などの刑事罰を受けるリスクを負います。

被害者

被害者が受ける影響は深刻です。ハラスメントを受けて、メンタルヘルスを損ねる被害者は少なくありません。うつ病や不安障害といった精神疾患を発症し、中には自殺へとつながるケースもあるのです。

ハラスメントが発生する原因

「WHY??」と書かれたピンク色の付箋紙
では、なぜハラスメント行為が発生するのでしょうか?原因として広く指摘されているのは下記の内容です。
  • コミュニケーション不足
  • アンコンシャス・バイアス
  • 性別役割分担意識
  • 業務量の配分が不適切
  • 倫理観の欠如
それぞれ見ていきましょう。

【原因①】コミュニケーション不足

コミュニケーション不足に起因して、ハラスメントが発生するケースが多いようです。令和2年10月に実施された「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメントが発生しやすい職場の特徴として最も多く挙げられたのは「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」といった声でした。
パワハラ・セクハラに関する実態調査結果の横棒グラフ
出典:令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点

コミュニケーションが不足すると、相手の言動を悪く捉えがちです。例えば、部下がミスした場合、上司はまず現状を把握し、問題点と改善点を指示する必要があります。

しかし、そういったコミュニケーションを飛ばして、ただ叱責するだけでは、部下は上司の言動をパワハラと捉えてしまうかもしれません。もちろん、部下もまた厳しい指導とハラスメントの違いをきちんと理解した上で、コミュニケーションスキルを上げる努力も必要でしょう。

【原因②】アンコンシャス・バイアス

アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込みや偏見のこと。人は無意識にこれまでの経験や、見聞きしたことに照らし合わせて物事を判断しているのです。

「普通はそうだ」
「どうせダメ」
「こうあるべきだ」

などと、あらゆるものを自分なりに解釈します。アンコンシャス・バイアスは誰にでもあり、持っていること自体が悪いわけではありません。

しかし「無自覚」のために、気づかぬうちに相手の尊厳を傷つけてしまう恐れがあるのです。良かれと思った配慮も、時にはハラスメントの原因になってしまうこともあります。

そのため、自身のアンコンシャス・バイアスを意識し行動することが大切です。

以下の記事で、バイアスについて詳しく解説しています。こちらも合わせてお読みください。

<関連記事>バイアスとは?ビジネスでの意味や種類・企業に与える影響について解説【図解あり】

【原因③】性別役割分担意識

性別役割分担意識とは、性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)のこと。「男性は仕事」「女性は家庭」などと、個人の能力とは関係なく性別を理由に役割を捉える考え方です。

性別役割分担意識に基づいた言動は、セクシャルハラスメントの原因となる可能性があります。とくに高齢に差し掛かった男性労働者の間では、性別役割分担意識を持っている傾向が高いため注意が必要です。

【原因④】業務量の配分が不適切

妊娠・出産・育児休業を取得する場合、周囲の社員に負担をかけてしまうのは起こりえる事実です。

とくに人手が足りない職場では、休暇取得者がいることによって社員一人あたりの業務負担が増えてしまいます。そのため、業務が増える不満から嫌がらせにつながるケースも少なくありません。

しかし、出産育児に伴う休暇取得は労働者に認められた権利です。休む人がいても業務が回る体制を事業主や管理職がつくるべきであり、休暇を取得する人に不満をぶつけるのは筋違いと言えるでしょう。マタハラが許される理由にはなりません。

【原因⑤】倫理観の欠如

ごく単純に、社員の良心や倫理観が欠如しているために、ハラスメントが生まれる場合もあります。性格の合わない部下を無視したり悪いうわさを広めたりといった行為を、悪びれることなくしてしまう人もいるのです。

事業主に義務づけられているハラスメント対策

労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)では、職場におけるハラスメント防止のために、事業主に対して雇用上必要な措置を講じるよう義務づけています。措置が適切に講じられていない場合には是正指導の対象となり、態度が悪質な企業には、企業名の公表といった規定も設けています。

2020年6月に大企業を対象に施行され、2022年4月には中小企業も含めたすべての企業で防止措置が義務づけられました。

労働施策総合推進法の規定に基づき、厚生労働省は事業主に求める措置として下記4項目の措置を事業主に求めています。
・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 
・職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
・併せて講ずべき措置(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止等)
それぞれわかりやすく解説します。

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主として、ハラスメントを一切許さない方針を明確にし、社員に向けて周知するよう求めています。具体的な取り組み例は下記の通りです。
  • 社内報やパンフレットに事業主の方針を記載し、配布する。
  • 現行の就業規則や服務規律に、ハラスメントは懲戒規定の適用対象となる旨を記載し、周知する

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

ハラスメントに関する相談窓口の設置や体制づくりを義務づけています。

取り組み例としては、
  • 相談対応をする担当者をあらかじめ決める
  • 相談を受ける際の対応マニュアルを用意する
  • 外部機関に相談対応を委託する など
面談だけではなく、電話やメールなど複数の方法で相談を受けられるようにしましょう。また、あらゆるハラスメント相談に一元的に対応できる体制づくりも大切です。

職場におけるハラスメントは、セクシャルハラスメントやマタニティハラスメント、パワーハラスメントなど、それぞれ発生する場合もあれば、数種類のハラスメントが複合的に生じることもあります。

そのため、あらゆるハラスメントに対する認識を深め、相談に対応できるようにしなければなりません。

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

職場でハラスメントが生じた場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者に対して配慮措置を行うよう命じています。

例えば、以下のような対応が挙げられます。
  • 被害者と加害者を引き離すための配置転換
  • 被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等
  • 加害者の謝罪
  • 被害者の労働条件上の不利益を回復 など

併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

当事者が安心して相談できるよう、以下2点について社員に周知することを求めています。
  • 相談者と行為者等のプライバシー保護に必要な措置を講じること
  • 相談したこと・事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定めていること

ハラスメントの予防策

青空に向かって両手を広げる女性のシルエット
ここではハラスメントを予防する取り組みを3つご紹介します。

研修の実施

ハラスメントに対する認識を深める研修を実施しましょう。自覚なくハラスメント行為をしている社員も少なくないためです。入社時に行い、その後も定期的に実施するのが効果的です。

研修内容の具体例としては、下記が挙げられます。
  • ハラスメントの発生要因
  • 管理職の役割と求められる対応
  • 職場におけるハラスメントの事例
  • ハラスメントが及ぼす影響
  • ハラスメントと適正な業務指導の区別 など
研修内容は階層別に分けるとより良いでしょう。管理職として部下を指示する立場と、部下として上司の指示を受ける立場とでは、ハラスメントに対して知っておくべき知識が異なるためです。

サーベイで定期観察

サーベイを定期的に実施しましょう。サーベイとは、簡単なアンケートを定期的に実施することで、社員のコンディションを測定する調査手法です。サーベイの実施により、ハラスメントの早期発見が期待できます。

サーベイでは、例えば下記のような様子を把握可能です。
  • モチベーションの変化
  • ストレスの状態
  • 人間関係がうまくいっているか
  • 離職の兆候
  • 周囲から適切なサポートを受けられているか など
ハラスメント対策としてサーベイを活用するときは、匿名での実施をおすすめします。何か不利益を被るのではないかと、正直な回答を躊躇う労働者も少なくないためです。

ハラスメントに関する情報を広く集めるためにも、労働者が安心して回答できるよう配慮が求められます。

ミイダスの組織サーベイでは、簡単なアンケートを実施することで社員やチームのコンディションを測定できます。定期的に社員の心の状態をチェックできるため、フォローするタイミングを見逃しません。

測定したデータは自動でレポート化されるため、測定結果をまとめる手間は不要です。ハラスメント対策に、ミイダスの組織サーベイをぜひご活用ください。

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経営者自身が理解を深める

経営者自身がハラスメントに対する認識を深める姿勢も重要です。経営者の意識や姿勢は組織全体に大きな影響を及ぼすためです。

経営者の意向は社員の行動に反映されやすく、企業文化の形成につながる特徴があります。
ハラスメント防止においても、経営者がはっきりとしたメッセージを発信していくことで、社内への浸透が進んでいくでしょう。

単なるスローガンで終わらせないように、会社側には具体的な取り組みが求められます。
人事・管理職とともにハラスメントマニュアルの整備を進めたり、定例会議で周知したりといった取り組みが効果的です。

ハラスメントが発生した場合の対応方法

×印が書かれた道具を持つ女性の手
では、実際にハラスメントが発生した場合、どのように対応したら良いでしょうか?
ここではハラスメントが発生した場合に、企業が取るべき対応手順について解説します。

下記3つの手順で対応しましょう。
【手順①】事実関係の確認
【手順②】関係者に対する措置
【手順③】再発防止措置
順番に解説します。

【手順①】事実関係の確認

まず事実関係を確認しましょう。被害者→行為者→(必要に応じて)周囲の社員の順にヒアリングを実施します。質問内容の例は下記の通りです。

【質問例】
  • 誰が・どこで・どのように行われたか
  • 「NO」と示したか
  • 周りの人にも同様のことがあったか
  • 今もその状態が続いているのか
  • 心の状態はどうか
  • 今後どのような対応を望むか
  • どのように解決していきたいか
※最後にヒアリングで得られた情報を復唱し、確認します。

ヒアリングにあたっては、当事者の不安を理解し、配慮する必要があります。下記のポイントに注意して対応しましょう。

【被害者に対して】
  • 当事者が所属する部署とは無関係の管理職・顧問弁護士等・外部の専門家がヒアリングする
  • ヒアリングの冒頭で「お話の内容は外部に漏れることは一切ないので安心してお話ください」と伝える
  • 事前に被害者の了解を得てから、加害者へのヒアリングを実施する など
【加害者に対して】
  • 言い分を穏やかに聞き、中立な立場で聴取する。
  • 加害者の言い分に矛盾や不合理な点があった場合のみ、厳しく追及する
相談担当者が対応を誤り、問題がこじれることがあります。担当者側にも相談の受け方やカウンセリング手法といったスキルが必要です。

人事部や総務部の社員が担当する場合には、相談対応に向けた研修などを受けるなどして、適切な対応を行えるようにしましょう。

参考:社員からハラスメントの相談があったときの対応マニュアル|社会保険労務士法人ローム
参考:職場におけるセクシャルハラスメント対策マニュアル|厚生労働省

【手順②】関係者に対する措置

ヒアリングの結果、ハラスメントが事実であると確認できたら、ハラスメント行為の内容や深刻度に応じて措置を講じましょう。

加害者に対しては、就業規則に則って処分を検討します。懲戒処分を行うか否か、行う場合の懲戒処分の種類・程度を決める必要があるでしょう。行為の内容・程度に対して処分が軽すぎても、重すぎてもいけません。公平な判断が必要です。

ハラスメントは許されない行為ですが、場合によっては加害者にやり直しの機会を与えるべきかもしれません。行為の内容や程度によりますが、あらゆる要素を考えて総合的に判断する必要があります。

被害者に対しては、被害者と加害者を離すための配置転換や加害者による謝罪、不当な降給を元に戻すなどといった不利益の回復に努めます。また、産業医と連携したメンタルケアが必要になる場合もあるでしょう。

【手順③】再発防止措置

ハラスメントの問題は、解決すれば終わりではありません。同じことが起こらないよう、再発を防ぐ取り組みが必要です。

再発防止策の具体例を下記に挙げます。
  • 社内報やトップメッセージに「事例」として共有する
  • 加害者にハラスメントに関する社外研修を実施する
  • 管理職登用の条件に「適切なコミュニケーションを取れる人物か」といった基準を盛り込む など
ハラスメントはコミュニケーション不足に起因しているケースが多いため、職場内のコミュニケーションを活性化させる工夫や長時間労働を是正する工夫も求められるでしょう。

さまざまなハラスメント16種

職場で問題になりやすいハラスメントを16種類、紹介していきます。
スメルハラスメント口臭や体臭、香水、柔軟剤など、ニオイの強さが原因で相手に不快感を与えること
音ハラスメント耳障りな音を立てること
ロジカルハラスメント相手に強く正論を突きつけてミスなどを指摘し、追い詰めること
ケアハラスメント働きながら介護をする人に対して行われる嫌がらせや、不利益を与える行為のこと
パーソナルハラスメント身体的な特徴をあだ名にしてからかったり、相手の口ぐせや仕草の物まねをしたりする行為から不快感を与えること
リストラハラスメントリストラ対象者に対して嫌がらせ行為をしたり、不当な配置転換をしたりして、労働者を自主退職に追い詰めること
ラブハラスメント恋愛に関する話題で、相手に不快な思いをさせるハラスメントのこと
マリッジハラスメント単身者に対して「早く結婚しないの?」「いい人紹介しようか?」と
本人が望んでいない交際や婚姻を迫ること
時短ハラスメント企業側が具体策を講じることなく、時短勤務を強要すること
アルコールハラスメント飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為、人権侵害
エイジハラスメント年代や世代の違いを理由にした嫌がらせ
ジェンダーハラスメント「女性社員だからお茶くみをさせる」「男性だから営業担当にする」など、性別によって社会的役割が異なるという固定化された概念に基づく嫌がらせ
リモートハラスメントリモートワーク中に起こるパワハラやセクハラなどの人権侵害行為
ソーシャルハラスメントSNS(ソーシャル・メディア・ネットワーク)を通して行われる職場の人間関係に関連した嫌がらせ
例:写真や動画の無断投稿、友達申請をしつこく迫る
スモークハラスメント職場内の受動喫煙によって、喫煙者が非喫煙者に対して健康被害や健康不安を与えること
パタニティハラスメント男性が育児時短や育休を請求したり取得したりすることで、不利益な扱いや嫌がらせを受ける行為・言動

ハラスメントに関する相談窓口

ハラスメントにお悩みの方は、下記の相談窓口を活用すると良いでしょう。ここでは3箇所の窓口をご紹介します。

厚生労働省都道府県労働局・労働基準監督署「総合労働相談コーナー」
労働問題に関するあらゆる分野について、労働者・事業主どちらからの相談も受け付けています。面談あるいは電話で相談でき、予約は不要です。

ハラスメント悩み相談室
職場におけるハラスメント全般に対応した相談窓口です。電話相談・メール相談・SNS相談があり、いずれも携帯電話・スマートフォンから受け付けています。

法テラス
問題を解決するための法制度や手続き、適切な相談窓口を無料で案内するサービスです。

ハラスメント対策にも「ミイダス」

ミイダスで表示される画面の例
ハラスメント対策にミイダスのコンピテンシー診断をご活用ください。同じ言動でも受け止め方には個人差があるものです。精神的な苦痛を感じても、その場で明確な意思表示をするとは限りません。

コンピテンシー診断では、上下関係適性やストレス要因などを分析できます。社員がストレスに感じやすいポイントをあらかじめコンピテンシー診断で知っておくことで、ハラスメントが発生しうる組織体制を避けることにもつながります。

ハラスメントがなくなれば、職場の心理的安全性は高まり、チームや組織として結果を出せる環境が整っていくでしょう。「ミイダス」を活用して、心理的安全性の高いチームビルディングを効率良く進めていきましょう。

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