4月の入社時期になると「超早期離職」や「退職代行」が話題になりますが、新人がすぐ離職してしまうのは、リアリティショックが原因かもしれません。
本記事では、リアリティショックの概要や原因などについて、例をまじえて詳しく解説します。企業ができるリアリティショック対策についても紹介しますので、新人の早期離職にお悩みの人事担当者の方はぜひご一読ください。
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リアリティショックとは?
リアリティショックは従業員の主観的感覚に基づくものですが、若手社員の約8割はリアリティショックを抱えているとの調査結果もあります。企業が「本人の問題だから」と従業員の悩みを放置していると、早期離職やモチベーションの低下など組織の不利益につながるでしょう。
リアリティショックを完全に防ぐことは難しいですが、企業としてもネガティブなギャップを小さくする努力が求められます。
参考:PRTIMES|入社前後に感じるイメージのギャップ「リアリティ・ショック」を抱える若手社会人は約8割にも及ぶことが判明
リアリティショックが起こりやすいタイミング
- 新卒や転職で入社したタイミング
- 昇進や異動したタイミング
- 休職から復帰したタイミング
多くの求職者は、採用活動を通して企業や仕事への期待を高めます。しかし、実際の職場が期待通りであることは珍しいでしょう。期待値が大きければ大きいほど、小さな違和感がやがて許容できないレベルのギャップにつながります。
そのままギャップを乗り越えられなければ、離職や転職へ気持ちが傾いてしまいます。
リアリティショックの具体例
・給与水準や福利厚生が想定より悪かった。
・社員のスキルアップに力を入れていると説明されたが、実際はそのような環境ではなかった
・予想より同僚のレベルが高く、ついていけないと思った。
・企業のブランドイメージと、実際の現場のイメージが大きく異なった。
・休職に入る前の職場の雰囲気と、復帰後の職場の雰囲気が違いすぎた。
リアリティショックの原因については別の項でより詳しく解説します。
従業員のリアリティショックが企業にもたらすデメリット
- 早期離職率の上昇
- 従業員のモチベーションの低下
- 組織に対するエンゲージメントの低下
リアリティショックが原因と思われるエンゲージメント低下や離職の兆候が見られるなら、企業は何らかの対応が必要になります。
【関連記事:エンゲージメントサーベイとは?効果的に行うポイントを解説】
リアリティショックの4つの原因

- 仕事ショック
- 組織ショック
- 同期同僚ショック
- 評価ショック
仕事ショック
・キャリアパスとはまったく無関係の部署に配属された。
・想像していたよりもきつい仕事だった。
とくに近年の20代社員は、仕事による成長やキャリア構築に関する部分を重視する傾向があります。新年度にSNSで飛び交う「配属ガチャ」という言葉からも、職種や勤務地に対して自分なりの理想を持っている新入社員が多いことがうかがえます。
新人の配属先は経営計画などに沿って決定されるものです。しかし、配属先に不満を抱えた新人のフォローは、昔よりも重要になっていると言えるでしょう。
参考:PRTIMES|転職サービス「doda」、「転職理由ランキング最新版」を発表
組織ショック
・事業の将来性に期待して入社したが、外からは見えない問題が多くあった。
・労働環境や職場の衛生環境が想像よりひどかった。
組織に関するネガティブなギャップは、組織全体の意識や社風などから発生することが多く、従業員一人の努力では改善できません。よって、組織ショックを抱えた社員は、とくに離職や転職の可能性が高まります。
同期同僚ショック
・OJTで指導担当になった先輩から邪険に扱われる。
・同期のレベルが高すぎて自信をなくしてしまった。
なかには、他人との能力差やコミュニケーションに関するギャップを、成長の機会にうまく転換できる人もいるでしょう。しかし、長期でギャップを乗り越えられないとメンタル不調の原因になりますし、ハラスメントなどのトラブルに発展するおそれもあります。
【関連記事:ハラスメントとは?定義と判断基準、発生した場合の対応方法を紹介】
評価ショック
・昇給額が期待していた金額よりも低かった。
・自分より能力が低いと思っていた人が先に昇進した。
評価基準や社内の人事制度は企業によって異なりますが、組織ショックと同様、個人の努力で変えられるものではありません。上司との面談を経ても社員が評価に対して納得感が得られない場合、転職や離職のリスクが高くなります。
【関連記事:【事例あり】中小企業の人事評価制度とは?導入率や作り方、人事課題などを紹介】
リアリティショックからの離職を加速させる3つの状況

しかし、リアリティショックが早期離職の原因になりやすいのはたしかでしょう。とくに組織が以下の状況に陥っているときは、離職を加速させやすいと言われています。
- 自助努力だけではギャップを埋められない状況
- 明らかに正当性を欠いている状況
- 業界や企業の将来性が見えない状況
自助努力だけではギャップを埋められない状況
たとえば「営業希望だったが、人事に配属になった。人事から営業への異動はほとんどないらしい」といった場合、「早いうちに営業職希望で転職しよう」と考える人がいても無理はないでしょう。
厚生労働省の発表によると、令和2年3月の新規学卒就職者(大学)の3年位内離職率は32.3%。売り手市場が続いて転職へのハードルが下がっていることもあり、前年よりも離職率は増加しています。転職しやすい状況は、裏を返せば「無理に我慢する必要がない状況」とも言えるのです。
参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
明らかに正当性を欠いている状況
極端な例ですが「グレーな対応を組織ぐるみでしている」「各種ハラスメントに対して意識が低い」といった組織は、環境改善を期待するより転職したほうが早いと判断されるでしょう。従業員の価値観と企業文化のズレはよくある採用ミスマッチのひとつですが、企業側に明らかな欠点がある場合のミスマッチは離職を加速させます。
【関連記事:採用ミスマッチはなぜ起こる?原因と対策を解説】
業界や企業の将来性が見えない状況
とくに業界全体に大きな課題がある場合、企業のなかで努力しても望みが薄いため、他業界への転職に気持ちが傾くのも仕方がありません。
また「尊敬できる上司がいない」「ロールモデルにしたいと思えるハイパフォーマーがいない」などの小さな同期同僚ショックも、企業の将来性が危ぶまれる状況では、転職への背中を押すきっかけになります。
【関連記事:ハイパフォーマーとは?特徴や分析方法、離職を防ぐ方法を徹底解説】
離職率が高まりやすい状況をまとめると、すべて従業員エンゲージメントが低下している状況と言えます。ミイダスの「組織サーベイ」は、簡単なアンケートにより従業員エンゲージメント低下をいち早く発見することが可能です。離職の予兆に気づき、早期に適切な対応をすることで、離職に傾いた従業員の気持ちを引き戻せる可能性があります。
企業ができる6つのリアリティショック対策

企業ができるリアリティショックの対策を6つ紹介します。
- 企業風土を伝えるリアルな情報発信
- 入社前のOB・OG訪問
- インターンシップの実施
- 学習やスキルアップ機会の提供
- 社内での人脈作りのサポート
- オンボーディング施策の充実
企業風土を伝えるリアルな情報発信
たとえば就活イベントや採用サイトなどでは、あえて先輩社員の“仕事で苦労したこと”に触れるのが効果的です。また採用面接でやりたい仕事を質問する場合、「必ず配属するとは約束できないけれど、参考までに教えてほしい」といった一言を付けるだけでも求職者が受ける印象は変わります。
企業として、求職者・内定者の期待値を過度に上げない配慮が求められます。
入社前のOB・OG訪問
とくに新入社員の場合、年齢の近い若手社員の声は安心感につながります。また採用サイトや広報活動からは得られないリアルな情報を得ることで、企業や社会人生活に対する過度な期待・理想を現実的なものへとチューニングできるでしょう。
インターンシップの実施
また内定者フォローの一つとしてインターンシップを実施する企業もあります。配属予定部署に近い部署で実施できると、入社後に大きなリアリティショックを発生させるリスクを軽減できるでしょう。同じく社内インターン制度も、異動後のギャップを小さくできます。
【関連記事:インターンシップとは?企業側のメリット・デメリットや給与体系、導入の流れを解説】
学習やスキルアップ機会の提供
- 新入社員研修、フォローアップ研修、管理職研修などの実施
- eラーニングシステムの導入
- リスキリングやリカレント教育の促進
なおミイダスの調査では、大企業社員の6割、中小企業社員の5割が、社内に教育制度があるとその企業で長く働きたいとの考えにつながると回答しました。調査結果の詳細は以下より無料でダウンロードいただけます。
社内での人脈作りのサポート
- メンター制度の導入
- 部署横断型のグループ研修
- 企業内サークルの促進
【関連記事:メンターとは?制度の導入で得られる効果やデメリット、成功のポイントを解説】
【関連記事:社員が仕事を辞める理由とは?離職する人の特徴や前兆、対策を紹介】
オンボーディング施策の充実
とくに中途採用者や休職からの復帰者、新任管理職は、新入社員と比較して研修やサポートが手薄になる傾向があります。復帰や異動時のリアリティショックを乗り越えてもらうためにも、新人向けとは別のオンボーディング施策が必要になるでしょう。
【関連記事:オンボーディングとは?目的や効果、具体例などをまとめて解説】
リアリティショックの低減にはコンピテンシー診断も有効

また、そもそも採用段階で「社風にあった定着しやすい人材」を採用することも重要です。とはいえ、自社の社風にあった人材の定義が曖昧で、面接官の勘頼みになっている企業も少なくないでしょう。
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ミイダスのコンピテンシー診断は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
【関連記事:コンピテンシー診断とは?ツールの使用方法や導入事例も解説】
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