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コンピテンシー

コンピテンシーモデルとは?5つのモデル化手順と注意点を徹底解説!

人材管理の場面でコンピテンシーを有効活用するには、「コンピテンシーモデル」を作る必要があります。コンピテンシーモデルとは、成果を挙げる社員(ハイパフォーマー)の行動特性をもとに作成する「理想の社員像」のことです。

コンピテンシーモデルを作成するには、ハイパフォーマーへのヒアリングや分析、評価項目の選定など、あらゆる手順を踏まなければなりません。

この記事ではコンピテンシーモデルを作る方法を5ステップで解説します。
コンピテンシーモデルの作成方法に加えて、当記事では下記について合わせて解説します。
  • コンピテンシーモデルとは何か
  • どのようなシーンに活用できるのか
  • コンピテンシーディクショナリーとは
  • コンピテンシーモデルを作成する際の注意点
  • コンピテンシーに関するおすすめの本 など
コンピテンシーの自社活用をお考えの方は、簡単に社員のコンピテンシーを分析できるコンピテンシー診断について、関連記事とあわせてご参考ください。
< 関連記事>コンピテンシー診断とは?導入事例や使用方法も解説

コンピテンシーの意味と定義

そもそもコンピテンシーとは、会社で成果を上げる人(ハイパフォーマー)に共通する行動特性のことです。

ハイパフォーマーには共通して成果につながる思考や行動があります。例えば「1を聞いて10を知る姿勢」や「顧客の要望に根気強く耳を傾ける忍耐強さ」などが挙げられるでしょう。

コンピテンシーを評価基準に設定することで、下記のような効果を期待できます。
  • 採用面接の場面では…採用候補者が入社後活躍する可能性があるかを見極められる
  • 人事評価の場面では…成績が振るわない社員に対して、具体的な改善点をフィードバックできる
  • 配置転換の場面では…適材適所の人事が可能になる
多くの場合、能力を見る視点は「優秀かどうか」になっています。しかし、スキルや学歴がどれほど優秀でも、成果につなげられるかどうかは別問題。持っている能力を成果につなげる行動ができるかどうかが重要なのです。

コンピテンシーについては、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
<関連記事>コンピテンシーとは?4つの活用シーンや分析ツールの導入事例を紹介

コンピテンシーモデルとは

腕組みで自信を持つアジア人ビジネスマン<br>
コンピテンシーを実務に取り入れるには、実務ベースに概念を具体化した「お手本」を作る必要があります。それが「コンピテンシーモデル」です。

コンピテンシーモデルは他社や他部署で作成したモデルを使い回しても、あまり意味がありません。成果を上げる行動特性は、環境や条件によって異なるためです。

したがって企業や業種、職種に応じて、独自に作る必要があります。モデル作成には詳細な作り込みが求められますが、詳細に作り込んだ分、より精度の高い人材マネジメントを実現できるでしょう。

コンピテンシーモデルの種類

コンピテンシーモデルは以下3種類に分類されます。
  • 実在型
  • 理想型
  • ハイブリッド型(実在型+理想型)
それぞれの特徴を見ていきましょう。

実在型

実在型は、社内で成果を上げている人にヒアリングして作られるモデルです。実在する人物を対象にモデル化するため、実在型モデルには下記のようなメリットがあります。
  • 現実に即したモデル設計が可能になる
  • 成果を上げるために必要な行動特性をイメージしやすい
  • 評価を受ける社員の納得感を得やすい
ただし、モデル対象となった社員の行動特性がほかの社員にとって、再現が難しい場合はコンピテンシーモデルに設定できない場合もあります。そのため、ハイパフォーマーの行動特性を洗い出す際には、再現性の有無を検討する必要があるでしょう。

理想型

理想型は、企業が求める理想の人材像をベースに作成するモデルです。経営ビジョンや事業戦略から人材に求める条件を抽出し、モデル化します。自社にモデルとするべきハイパフォーマーがいないときに有効な作成方法です。

理想型モデルを作成する際に注意すべきなのは、理想を追求するあまり、現実離れしたモデルを作ってしまう点です。あまりに理想が高くなると、人事評価や採用の際に、合格点に達する対象者がいなくなってしまう心配もあります。

そのため、理想型モデルを作成する際は、達成可能な現実に即したモデル作りが求められるでしょう。

ハイブリッド型

実在型と理想型を合わせて作成されるのがハイブリッド型モデルです。実在型モデルを作成したのち、理想型モデルの要素を組み込んで評価項目を調整していきます。

3種のモデルの中で最も優れた作成パターンがこのハイブリッド型モデルだと言えるでしょう。2つのモデルパターンの良いとこどりで作成できるため、、ハイパフォーマーにとっても、さらに上を目指す機会になります。

というのも、ハイパフォーマーにとって実在型モデルは、すでに実践している項目ばかりで、学びが少ない面があるためです。

そのため、ハイパフォーマーを含め、あらゆるレベルの社員に向上を促せる点で、ハイブリッド型モデルが最も優れた評価モデルだと言えるでしょう。

コンピテンシーモデルの活用シーン

ミーティングをするビジネスパーソン<br>
では、コンピテンシーモデルは具体的にどのようなシーンで活用できるのでしょうか。以下3種の活用シーンについて、見ていきましょう。
  • 採用面接
  • 人事評価
  • 人材育成

採用面接

コンピテンシーモデルは採用面接時の評価基準として活用できます。コンピテンシーをもとにした評価基準によって、採用候補者が入社後に活躍する可能性を見極められます。

採用候補者のコンピテンシーを判断するには、「STAR型質問」が効果的です。STAR型質問とは、Situation(状況)Task(課題)Action(行動)Result(結果)に沿って、過去の行動を掘り下げて聞き出す質問手法です。

例えば以下のように質問します。
  • あなたは過去にどのような課題を抱えていましたか?(Situation)
  • なぜそのような課題を抱えていたのですか?(Task)
  • 課題解決のためにあなたが最初に起こした行動は何ですか?(Aciton)
  • あなたが起こした行動の結果、どのような結果を得られましたか?(Result)
行動の事実と意図を知れる手法のため、候補者のコンピテンシーを的確に拾うことができるでしょう。

コンピテンシー面接については下記の記事でより詳しく解説しています。詳しく知りたい方はぜひご参照ください。
<関連記事>コンピテンシー面接とは?やり方や質問例も紹介
<関連記事>コンピテンシー面接を導入するには?マニュアルや流れを紹介

人事評価

人事評価にコンピテンシーを導入している企業も多く見られます。従来の職能資格制度では、能力を評価する基準があいまいで、評価者によって評価にバラつきが見られる面がありました。

<関連記事>コンピテンシー評価とは?導入方法や評価項目を解説

評価に納得できず、会社に不信感を抱く社員も少なくなかった企業でも、コンピテンシーに基づいた評価を導入すれば「どのような行動が足りなかったのか」が具体的に分かるため、社員は深く納得して評価を受け止められます。

会社に対する信頼感が高まると同時に、社員が会社に定着する効果も期待できるでしょう。

人材育成

コンピテンシーは人材育成においても活用できます。

社員研修などでコンピテンシーを学び合う企業もあり、ハイパフォーマーに共通する行動特性を確認し合う中で、自身の課題が浮き彫りになるとともに、具体的な目標を見出すことができます。

<関連記事>コンピテンシーを人材育成に取り入れるメリットや導入方法、注意点を解説

コンピテンシーは役職によっても異なるため、階層別にコンピテンシーを確認する場を設けられるとより良いでしょう。

コンピテンシーモデル作りに入る前に

会議中の男女の手元<br>
コンピテンシーモデル作りに入る前に、モデル作りの目的や方針をしっかり固めることが大切です。モデル作りには複数人に協力を仰がなければなりません。

協力者には現場の仕事を離れてモデル作りに参加してもらうこともあるでしょう。そのため、モデル作りがなぜ必要か、どのようなゴールを目指して進めるべきなど、プロジェクトの方針について認識を共有し、賛同を得る必要があります。

モデル作りの前に下記事項を明確にし、プロジェクトに参加するメンバーと共有しましょう。
  • 何のためにコンピテンシーモデルを作成するのか?
  • どの組織のどの職務を対象としたモデル作りなのか? 
  • なぜ協力を求めるのか?
  • どのような作業が必要なのか?
  • プロジェクトにおいて誰が責任を負うのか?
  • いつまでに完了させるのか?
  • どのような結果が求められるのか? など
また、モデル作りの方向性が決まれば、目標達成に向けて、個人ベース、チームベースの具体的なアクションプランへと落とし込みやすくなります。まずは解決したい自社の課題や予算、期間などを洗い出し、プロジェクトの方針を固めましょう。

コンピテンシーモデルの作成方法【5ステップ】

階段を登るアジア人のビジネスウーマン<br>
コンピテンシーモデルの作成方法について解説します。ここで解説するのはハイブリッド型モデルの作成方法です。

作成手順は以下5ステップです。
  • パフォーマンスが高い社員にインタビューをする
  • 評価項目を設定する
  • 組織の方向性と調査結果をすり合わせる
  • モデル化したコンピテンシーをモデル分けする
  • コンピテンシー評価シートを作成する
順にわかりやすく解説します。

【STEP1】パフォーマンスが高い社員にインタビューをする

高業績を挙げている社員にヒアリング調査を行います。ハイパフォーマーの過去の行動を深掘りしましょう。複数のハイパフォーマーにヒアリングを実施し、共通する行動特性を見極めていきます。

例として下記の内容をヒアリングしていきます。
  • 普段どのようなことを意識して業務に取り組んでいるのか
  • 成果を上げるためにどのような行動を取ったか
  • なぜその行動が必要だと感じたのか
  • 失敗したときはどのように対処し改善したか など
手間はかかりますが、できればハイパフォーマー以外の社員にもヒアリングすることをおすすめします。双方にヒアリングすることによって、ハイパフォーマーと成果が上がらない社員と明確に判別できます。

ヒアリング作業は非常に手間と労力がかかりますが、精度の高いコンピテンシー項目を設定するためには根気強く進めることが大切です。

【STEP2】評価項目を設定する

ヒアリング結果をもとに、ハイパフォーマーに共通する行動特性を洗い出していきます。その際に参考になるのが「コンピテンシーディクショナリー」です。

コンピテンシーディクショナリーとは、コンピテンシーを6領域・21項目に分類しモデル化したもので、1993年にライルM.スペンサーとシグネM.スペンサーが提唱しました。

下図はコンピテンシーディクショナリーで定義されている項目です。コンピテンシーディクショナリーはどの業種でも活用できるよう、総括的に設定されています。

そのため、コンピテンシーディクショナリーの項目をそのまま評価項目にするのではなく、自社の企業戦略や経営方針に沿って適宜取捨選択する必要があります。

ヒアリングの結果から抽出した行動特性を、コンピテンシーディクショナリーから選び評価項目として設定しましょう。
Spencer & Spencer のコンピテンシーモデル

コンピテンシー

コンピテンシーの定義

達成・行動

達成思考

秩序・品質・正確性への関心

イニシアチブ

情報収集

援助・対人支援

対人理解

顧客支援志向

インパクト・対人影響力

インパクト・影響力

組織感覚

関係構築

管理領域

他者育成

指導

チームワークと協力

チームリーダーシップ

知的領域

分析的志向

概念的志向

技術的・専門職的・管理的専門性

個人の効果性

自己管理

自身 柔軟性 組織コミットメント

出典:Spencer&Spencer(1993年)

【STEP3】組織の方向性と調査結果をすり合わせる

作成した評価項目に組織の方向性をプラスして調整していきます。ヒアリング結果だけでコンピテンシー項目を作ると、現段階で有効とされる能力を反映するばかりで、企業がこれから目指すビジョンに合致しない可能性があります。

変革が必要な組織の場合には、現状良しとされる評価項目だけでなく、挑戦項目も含めたほうが今後ののびしろを期待できるでしょう。

具体的な手順としては、まず企業理念や戦略から求める人物像を定義し、その理想像から必要とされるコンピテンシー項目を定義します。ハイパフォーマーからヒアリングして作成した評価項目と比較して、足りない項目を追記して理想像を反映したコンピテンシー項目に仕上げていきましょう。

とはいえ、理想を追求するあまり、実現不可能なモデルにならないよう気を配ることも必要です。
  • 達成が難しすぎる評価項目になっていないか
  • 評価項目と組織のビジョンに乖離がないか
これらを経営者のチェックを受けながら、調整することをおすすめします。

【STEP4】モデル化したコンピテンシーをレベル分けする

作成したコンピテンシーモデルに評価基準を設定します。項目ごとに5段階でレベル分けしましょう。

採用面接や人事評価の際には下記の基準を参考に候補者の適性を見極めます。

レベル

内容

受動行動

言われたことを言われたときにやる

通常行動

やるべきことをやるべきときにやる

能動行動

いまある状況の中で、工夫を加えた行動、明確な意図や判断に基づく行動、明確な理由のもと選択した行動

状況変容行動

状況を変化させるため、独自の工夫を加えた行動、独創的行動。状況を変化させよう、打破しようという行動

状況創造行動

まったく新たな、周囲にとっても意味ある状況を作り出す行動

引用:川上真史・斎藤亮三『まんがでわかる コンピテンシー面接』P134より
コンピテンシーレベルの数値が大きくなるほど、能動的な行動を取れる人物だと推測できます。採用面接ではレベル3以上の人材を採用基準の目安と考えると良いでしょう。

【STEP5】コンピテンシー評価シートを作成する

コンピテンシーを採用面接や人事評価で運用する際には、結果を記録するコンピテンシー評価シートが必要です。記録するシートがあれば、時間の経過とともに面接での印象や知った事実を忘れるといった失敗を防げます。複数人で面接を行う場合も、共通のシートがあれば同じ評価軸で対象者を見ることができます。

コンピテンシー評価シートには、下記の項目を盛り込みましょう。
  • 求められるコンピテンシー評価項目
  • 各評価項目の具体的な評価軸
  • 評価レベル
下記サンプルは営業マンのコンピテンシーモデルに基づいて作成したコンピテンシー評価シートです。
『実戦コンピテンシーモデル アントワネット・D・ルシア/リチャード・レプシンガー』P161より一部抜粋
上記サンプルはあくまで一例です。コンピテンシーを有効活用するには、自社独自のコンピテンシー項目と評価軸の設定が必要です。

サンプルを参考に評価シートも作成しましょう。

コンピテンシーモデルの評価項目例

モデルの完成イメージを膨らませるために、コンピテンシーモデルの実例を確認したい方もいるでしょう。ここでは、とある企業の財務部門のコンピテンシーモデルを一部抜粋して紹介します。
<財務部門のコンピテンシー定義>
一部抜粋:『実践コンピテンシーモデル アントワネット・D・ルシア/リチャード・レプシンガー』 P210より
スペンサーのコンピテンシーディクショナリーと見比べてみると、ところどころコンピテンシーディクショナリーの項目を具体化して表現しているのが分かります。

コンピテンシーモデルを作成する際の注意点

注意点を見つけるアジア人ビジネスウーマン
コンピテンシーモデルを作成する際の注意点について解説します。下記3点に注意して、モデル作成を進めましょう。
  • ハイパフォーマーと同じ行動を取れば成果が出るとは限らない
  • 導入までに時間がかかる
  • 定期的に内容を更新する必要がある
順に解説します。

ハイパフォーマーと同じ行動を取れば成果が出るとは限らない

ハイパフォーマーの行動をそのまま真似るだけでは、成果に繋がりません。ハイパフォーマーは成果を得るために、その時々で最適な行動を取っているためです。

成果が出た時の行動をモデル化しても、状況が変われば通用しないことも多いでしょう。
「何をしたか」に着目するのではなく「どのような状況でなぜそのような行動を取ったのか」といったポイントに目を向けることが重要です。

コンピテンシーを導入するまでには時間がかかる

コンピテンシーを導入するまでには時間がかかります。ハイパフォーマーへのヒアリングや項目設定、評価項目の妥当性確認など多くの工程を経てようやく完成するためです。

会社の規模や導入する部署の数にもよりますが、導入を決めてから運用を開始するまで約2年かかった企業も存在します。

会社によって求める要件が異なるため、他社のコンピテンシーモデルをそのまま導入せず独自に試行錯誤しながら作る必要があります。

導入までには一定の時間がかかることを理解した上で、会社の状況と照らし合わせながら導入を検討すると良いでしょう。

定期的に内容を更新する必要がある

作成したコンピテンシーモデルは数年おきに見直す必要があります。

環境の変化に応じて、会社が目指す方向が変われば求める人材像も変わってきます。そのため会社が目指す方法に合わせて、コンピテンシーモデルも調整していかなければ、現場の実態にそぐわないものになってしまうでしょう。

事業戦略や経営戦略を練り直す際は、コンピテンシーモデルを再検討することをおすすめします。

コンピテンシーモデルについては、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
<関連記事>【簡単に解説】コンピテンシーとは?意味や使い方、活用事例を紹介

コンピテンシーに関するおすすめの本

コンピテンシーについて、より詳しく学びたい方は専門書を紐解いてみてはいかがでしょうか。コンピテンシーに関するおすすめの専門書を以下3冊ご紹介します。
  • 『実戦コンピテンシーモデル』
  • 『まんがでわかるコンピテンシー面接』
  • 『コンピテンシーマネジメントの展開』

『実戦コンピテンシーモデル』

アメリカでも評判のベストセラーである『実戦コンピテンシーモデル』。
外部のコンサルタントの手を借りずに、コンピテンシーモデルの作成から導入、モデルを活用した評価まで実行できるよう、実務的なアプローチが詳述されています。

巻末にはコンピテンシーモデルの実例が多数掲載されており、コンピテンシーモデルの完成形をイメージしたい方は巻末の実例を見るだけでも、有益に感じるでしょう。

コンピテンシーモデル作成のガイドブックとして、活用できます。

この本で分かること
  • コンピテンシーモデルを用いたHR活動にはどのようなメリットがあるのか
  • ヒアリング時の工夫や注意点
  • コンピテンシーモデルの開発方法
  • コンピテンシーモデルの適合性の確認方法
  • 会社内でのコンピテンシーモデルを共有・承認を得る方法
実戦コンピテンシーモデル

『まんがでわかるコンピテンシー面接』

コンピテンシーとは何か?という本質をまんがで分かりやすく解説しています。

就活で苦戦した主人公がようやく採用された会社で配属されたのは人事部。そこで出会ったのは採用のスペシャリストの夏城。

夏城は採用面接の刷新を求められ、他社から引き抜かれて人事部にやってきたと言います。面接制度刷新のため夏城が打ち出したのは「コンピテンシー面接」でした。

従来の面接における問題点を指摘しながら、コンピテンシー面接が採用を変えるためにいかに必要かを熱く語っていきます。

ストーリー仕立てで事例に基づいて解説されているため、文章だけでは理解しづらい概念や実践方法を具体的にイメージしながら読み進めることができます。

コンピテンシーモデルの作成方法については解説されていませんが、コンピテンシーとは何か、コンピテンシーに関する基礎知識や面接時の質問方法を一通り学びたい方におすすめです。

この本を読むとわかる内容
  • コンピテンシー面接とは何か?
  • コンピテンシーを活用した具体的な面接手法は?
  • 面接でよくある回答に対する面接官の対応の方法とは?
  • コンピテンシー面接の結果判断の方法は?
まんがでわかるコンピテンシー面接

『コンピテンシーマネジメントの展開』

コンピテンシー概念の提唱者マクレランドの弟子、スペンサーによるコンピテンシー経営の原典です。全456ページで、コンピテンシーに関して網羅的に解説されているため、辞書のように紐解けます。

実際にコンピテンシーモデルの作成に携わった読者から「事前にこの本を読んでおけば良かった」「職務別にコンピテンシーディクショナリーがまとめられている。コンピテンシーディクショナリーとして秀逸」といった声が寄せられています。

コンピテンシーマネジメントに携わる人事担当者に必読の書です。

この本から分かる内容は下記の通りです。
  • コンピテンシーとは何か
  • コンピテンシーディクショナリーとは
  • コンピテンシーモデルの開発方法
  • 職務別のコンピテンシー
  • 人事管理への展開方法  など
コンピテンシー・マネジメントの展開(完訳版)

コンピテンシーモデルの導入事例

コンピテンシーモデルは実際の現場ではどのように活用されているのでしょうか。ここではコンピテンシーモデルの導入事例をご紹介します。

コンピテンシーは一般企業だけでなく、病院や教育機関でも活用されています。
  • 虎の門病院
  • 中央大学
それぞれ見ていきましょう。
オフィスビルと青空

虎の門病院|看護管理者の質が向上

虎の門病院では、「患者がより満足できる看護を提供するためには、現場を管理する看護管理者層の質を向上させる必要がある」とコンピテンシーモデルの導入を決めたそうです。

2005年にコンピテンシーモデルの開発を始め、2年余の歳月をかけて看護管理者のコンピテンシーを抽出、2007年に運用を開始しました。

虎の門病院で活用されているコンピテンシーモデルは下表の通りです。
各コンピテンシーをレベル分けし、職位ごとに求められる力量を明確にしています。レベル0を主任の選出基準に、レベル1〜4を看護師長、主任の評価基準、レベル5を管理看護師長の評価基準として運用しているそうです。

コンピテンシーの導入により、評価者が対象者の行動に着目して評価を判断し、より具体的にフィードバックできるようになったと言います。これにより評価を受ける看護管理者は次の目標を立てやすくなり、虎の門病院では主任クラスの退職者が減少するといった効果も得られたそうです。
画像引用元:コンピテンシー・モデル活用術!(宗村美江子,別府千恵,武村雪絵)
参考:看護管理者のコンピテンシー・モデル事例集
参考:コンピテンシー・モデル活用術!(宗村美江子,別府千恵,武村雪絵)

中央大学|特色ある教育プログラムに採用

コンピテンシーは教育の現場でも活用されています。中央大学は学生が卒業後、社会で活躍できる能力を伸ばす目的で、コンピテンシーを取り入れた教育プログラムを採用しています。

「コミュニケーション力」「問題解決力」など、全学部共通のコンピテンシーを評価指標として7カテゴリー31キーワードを大学独自に設定。キーワードごとに5段階の評価を設けています。

学生はC-Compassと呼ばれるシステムを活用して、大学が定義するコンピテンシーのどの段階にいるのかを把握し自己評価を行います。
自己評価で見えた弱点を強化するには、どのような授業を選択するか、どのような課外講座や行事に取り組んでいくかを探らせるそうです。

参考:産学で注目され出した中央大学の「コンピテンシー コンピテンシー育成教育」システム 
参考:特色ある教育プログラム  コンピテンシー定義一覧|中央大学

コンピテンシーモデルを活用して成果を出せる人材を見極めよう

コンピテンシーモデルについて解説しました。コンピテンシーの概念を実務で活用するにはモデル化が必要です。

コンピテンシーモデルの作成は下記の手順で進めます。
  • パフォーマンスが高い社員にインタビューをする
  • 評価項目を設定する
  • 組織の方向性と調査結果をすり合わせる
  • モデル化したコンピテンシーをモデル分けする
  • コンピテンシー評価シートを作成する
モデル作成には時間と労力がかかります。部署・役職ごとにハイパフォーマーを特定するところから始まり、時間をかけてヒアリングをしなければなりません。

どのような行動や思考が成果に繋がるかを明確に見極められれば良いですが、人事担当者の分析力が問われる難しい面もあります。効率良く精度の高いコンピテンシーモデルを作成するには、コンピテンシー診断ツールの活用がおすすめです。

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