そこで本記事では、現状維持バイアスのビジネスにおけるデメリットや克服方法について解説します。現状維持バイアスの意味や具体例、バイアスの有無を診断できるおすすめサービスなども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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現状維持バイアスとは?
本来であれば、現状維持か現状変更かの選択を迫られたとき、それぞれのメリットとデメリットを考慮して選択すべきです。しかし、人は現状を変えることで発生する損失や後悔を避けようとして、現状維持を選ぶ傾向があります。
現状維持バイアスは、合理的な意思決定を行えなくなる人間特有の行動として、心理学や行動経済学の先行研究でその存在が示されてきました。
現状維持バイアスの具体例や原因については、以降の章で詳しく解説していきます。
関連記事:バイアスとは?種類一覧とビジネスに与える影響、企業が取るべき対策について解説【専門家監修】
仕事や日常シーンでよくある、現状維持バイアスの具体例
【仕事編】現状維持バイアスの具体例
- 今までのルールを変えることをためらう
- 組織や業務の改善に消極的になる
- 新規事業へのチャレンジを怠る
問題を改善するために、既存のルールを廃止して新たなルールに変える必要があると分かっていても、抵抗感を持つ方は少なくありません。それは、慣れ親しんだルールの安心感が損なわれることを恐れる現状維持バイアスがはたらくからです。
また、組織改革や業務改善が必要だと分かっているものの、手間や時間がかかるため消極的になるのも、前例のないことに対する不安を強く感じる現状維持バイアスの特徴です。
現状維持バイアスが強くはたらいた結果、新規事業にチャレンジできず、市場ニーズに対応できなくなって競争力を失うケースも多く見られます。
【日常編】現状維持バイアスの具体例
- いつも同じメニューを注文する
- 飲食店やカフェでいつも同じ席に座る
- 使用していないサブスクリプションを解約しない
飲食店で毎回同じメニューを注文し、同じ席に座って食事をするのは、失敗を避けたい心理が表れて現状維持バイアスがはたらいている状態です。
また、使用していないサブスクリプションがあるものの解約しない状況は、現状の変化に対する抵抗感が強く、現状維持バイアスが作用した結果といえます。
現状維持バイアスが起こる原因
デフォルトの選択肢に従う
人は、選択肢を変えることでエネルギーを消費し、安定を失うのではないかと恐れた結果、現状維持を選択する傾向があります。デフォルト効果の有名な例が、ドナーカードの表記による同意率の違いです[注]。
「臓器提供の意思がある場合は○」と記載された国 → 同意率は10%前後
「臓器提供の意思がない場合は〇」と記載された国 → 同意率は90%超
[注]出典:Medical Decision Making: Johnson, E. J. & Goldstein, D. G. (2003). Do defaults save lives? Science, 302, 1338-1339.|Dan Goldstein
上記は、デフォルト設定が人々の選択に大きな影響を与えることを表す代表例として知られています。
損したくないと考える
人は、得をする喜びよりも損をする痛みのほうが強く感じる傾向があり、これを「損失回避」と呼びます。現状を変化させればメリットがある一方で、デメリットが生じる可能性もあります。デメリットを回避したいと強く考えるあまり、現状維持を選択してしまうのが現状維持バイアスです。
サンクコスト効果がはたらく
サンクコストとは埋没費用のことで、過去に負担し回収できなくなった費用です。たとえば、新規事業のために投資したお金や労力、時間などは回収できないため、サンクコストに該当します。サンクコストをもったいないと感じるあまり、不合理な意思決定をしてしまうのが、サンクコスト効果です。
サンクコスト自体はビジネスにおいてよくあるもので、大きな問題ではありません。しかし、サンクコストに囚われてこれまでの投資を正当化し、現状を変えない選択をすれば、事業に悪影響を及ぼしてしまいます。サンクコスト効果によって現状維持バイアスが発生している場合は、現状を変えなければなりません。
現状維持バイアスが引き起こすデメリット
組織へのデメリット
組織の成長が止まる
企業が生き残るためには、最新の技術やビジネス手法を取り入れ、市場ニーズに柔軟に対応する必要があります。しかし、現状維持バイアスが強い人が多い組織では、「今はうまくいっているから現状を変える必要はない」「挑戦して失敗するのが怖い」という心理がはたらきます。
その結果、成長が止まって市場ニーズを満たせなくなり、競争力に影響を及ぼす可能性があります。
コストがかかる
たとえば、業務効率化につながるツールを新たに導入するケースを考えてみましょう。新たなツールを導入すれば、作業時間の短縮やミス削減、残業代の削減が期待できます。
しかし、現状維持バイアスが強くはたらくと、ツールの導入に伴って発生する出費や使い方を覚える手間などの損失を恐れてしまいます。その結果、昔から変わらない方法で仕事を進めることになり、残業代やミスを修正する手間といったコストが増えやすいです。
従業員の離職につながる
経営層や上司の現状維持バイアスが強い組織では、積極的に提案を行う従業員の意見が受け入れられない傾向があります。業務改善や新規事業の提案をしても、変化を恐れて現状維持の選択ばかりする上司がいれば、提案をした従業員の不満は積み重なるでしょう。
自身の成長につながらないと感じた優秀な人材が離職してしまうと、企業は大きな損失を抱えることになります。
個人へのデメリット
キャリア成長の機会を逃す
せっかくキャリアチェンジのチャンスを得ても、新たな挑戦をするリスクを懸念して現状維持を選び続ける人は少なくありません。その結果、昇進や社内での役割拡大の可能性が狭まり、キャリアが停滞してしまうでしょう。
また、今のままで十分だと考える人は、新しい技術やトレンドを受け入れられなくなっていきます。学びを続けなければ専門性は深まらないため、現状維持の選択をし続けた結果組織内での評価につながらない事態に陥ってしまいます。
意思決定力と自己効力感が低下する
また、現状維持を続けていつまでも問題が解決しなければ、心理的ストレスが増大するでしょう。変化を恐れ続けることで慢性的なストレスを引き起こし、仕事のパフォーマンスに悪影響が出るケースも少なくありません。
現状維持バイアスの外し方・克服方法
- 個人や組織の現状維持バイアスを認知する
- 判断・分析は客観的データをもとに行う
- チーム構成員の多様化を進める
- バイアス対策研修を実施する
- コンサルタントなど専門家に相談する
- 小さな変化から始めてみる
個人で実践できるものから組織レベルで実践すべきものまでさまざまです。それぞれの詳細について解説します。
個人や組織の現状維持バイアスを認知する
経営層や従業員に現状維持バイアスを認知させたい場合は、ミイダスの「バイアス診断ゲーム」がおすすめです。ゲーム感覚で客観的にバイアスを測定できるため、現状維持バイアスがはたらいていると自覚して改善につなげやすくなります。
関連ページ:意思決定の質を高め、生産性を向上させるバイアス診断ゲーム
関連記事:ミイダスのバイアス診断ゲームとは?活用して優秀な人材を採用する方法を紹介
判断・分析は客観的データをもとに行う
以下のように現状維持と変化それぞれのメリットとデメリットを表に書き出して見比べる方法も、現状維持バイアスの克服に効果的です。ただし、現状維持バイアスが強い人は、メリットとデメリットを見比べても現状維持の選択をしてしまう傾向があります。だからこそ、客観的なデータを加え、定量的に優劣を判定することが重要です。
<現状維持と変化のメリット・デメリット:書き出し方の例(1)>
- 現状維持:既存ツールを使用する
- 変化:新しい業務改善ツールを導入する
| 観点 | 現状維持(既存ツール使用) | 変化(新ツール導入) |
|---|---|---|
| メリット | ・学習コストなし ・経験をもとに操作可能 | ・作業時間30%短縮 ・ミス発生率低減 |
| デメリット | ・作業時間の圧迫 ・機能不足 | ・移行に時間がかかる ・研修コスト増加 |
| 定量データ | 月間作業200時間 | 月間作業140時間 |
<現状維持と変化のメリット・デメリット:書き出し方の例(2)>
- 現状維持:現行の人事制度をそのまま運用する
- 変化:人事制度を見直す
| 観点 | 現状維持(現行制度) | 変化(新制度) |
|---|---|---|
| メリット | ・変更のストレスなし ・即時運用可能 | ・離職率10%低下 ・採用力向上 |
| デメリット | ・モチベーション低下 ・優秀人材流出 | ・説明会の実施や調整に時間がかかる ・従業員の抵抗感 |
| 定量データ | 離職率15% | 離職率5〜8% |
チーム構成員の多様化を進める
異なる背景や経験、視点を持つ人材を積極的に採用・登用し、チーム構成や意思決定グループの多様性を確保しましょう。たとえば、業界外の経験がある人材を採用したり、若手や中堅を交えたチームを編成したりすれば、新たな意思決定をしやすくなります。
ミイダスのコンピテンシー診断(特性診断)では、個人の資質を多角的に評価できます。診断結果をもとにチームを構成すれば、現状維持バイアスがはたらきにくい組織に導けるでしょう。
関連記事:ミイダス コンピテンシー診断(特性診断)の活用方法を解説【事例付き】
バイアス対策研修を実施する
現状維持バイアスは無意識にはたらくため、日常業務のなかでは気付きにくいものです。研修を通じてメカニズムを学び、自己認識を高めれば、現状維持バイアスを外した意思決定ができるようになります。
とはいえ、外部研修を従業員に受けさせるのは費用面のハードルが高いと感じることもあるでしょう。その場合は、ミイダスの「バイアス診断ゲーム研修講座」がおすすめです。ミイダス法人サービスをご利用いただいている企業の従業員であれば、認知バイアスに関するオンライン講座14本を無料で受講できます。
関連ページ:意思決定力を磨くバイアス診断ゲーム研修講座
コンサルタントなど専門家に相談する
現状維持バイアスは自身では気付きにくく、身近な人から意見をもらっても反発しやすいため、コンサルタントや専門家の意見を取り入れながら外していくことが大切です。外部からの意見やアドバイスを受け入れれば、自社の現状維持バイアスの強さに気付くことができます。
アドバイスによって現状の見直しや改善に役立つ情報を得られるかもしれませんので、現状維持バイアスについて悩みがある場合は、外部への相談を検討してみてください。
小さな変化から始めてみる
現状維持バイアスを外すために、いつもと違うお店でランチを食べたり、違う道を通って出勤したりしてみてください。ビジネスシーンでは、1日だけ新しいツールを使ったり、メールの書き方を変えたりすれば小さな変化を積み重ねられます。
ミイダスの「バイアス診断ゲーム」で自社にどんなバイアスがあるか診断しよう
ミイダスの「バイアス診断ゲーム」では、ゲーム感覚で簡単な質問に答えるだけで、受験者が自身のバイアスを測定できます。自身では気付いていなかったバイアスを認知できるため、克服につなげられるでしょう。
バイアス診断ゲームの詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。
関連ページ:意思決定の質を高め、生産性を向上させるバイアス診断ゲーム
関連記事:ミイダスのバイアス診断ゲームとは?活用して優秀な人材を採用する方法を紹介
まとめ
まずは個人や組織の現状維持バイアスを認知し、客観的なデータにもとづいて判断できるようにしましょう。チーム構成員の多様化やバイアス対策研修を行い、組織単位で現状維持バイアスを外すことも大切です。
・バイアスとは?種類一覧とビジネスに与える影響、企業が取るべき対策について解説【専門家監修】
・認知バイアスとは?種類一覧と具体例、対策についてわかりやすく解説【専門家監修】
・確証バイアスとは?発生する原因からデメリット、対処法を解説【専門家監修】
・正常性バイアスとは?ビジネスにもたらす影響と対処法について解説【専門家監修】
※本記事は2026年5月(監修時期)現在の内容に基づいて記載されたものです。

東京大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座所属/心理学博士・臨床心理士・公認心理師
早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了。専門は、産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、業種や企業規模を問わず、ストレスチェック制度や復職支援制度などのメンタルヘルス対策・制度の設計、職場環境改善・組織活性化ワークショップ、経営層・管理職・従業員それぞれに向けたメンタルヘルスに関する講演や執筆活動を行う。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)、『モチベーションの問題地図』(技術評論社)など。






