本記事では、オンボーディング施策の基本概念からメリット、成功に導くポイントまでを解説します。オンボーディング施策を導入し、高い定着率を実現している企業の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「欲しい人材の要件を定義するために分析をしたい……」
「でも、要件定義の方法がわからない……」という悩みを解決!
\適切な要件定義の手順がまるわかり!/
【ダウンロード特典:人材要件定義のステップごと作業例&解説付き】

オンボーディング施策とは
語源は英語の「on board(船や飛行機に乗り込む)」です。海外では、新しいメンバーを迎える際に「Welcome on board!(ようこそ、チームの一員へ!)」と声をかけることから、人事分野でも広く使われるようになりました。
オンボーディング施策の対象は、新卒採用者に限りません。中途採用者、部門異動者、海外赴任者、長期休職からの復職者など、環境が大きく変わるすべての従業員が含まれます。
オンボーディング施策を実施する目的
- 新入社員の成長を促すため
- 離職を防止するため
- 部署間の教育格差をなくすため
新入社員の成長を促すため
オンボーディングは数週間から数ヶ月にわたって、定期的な1on1ミーティング、配属先での役割共有など、さまざまな施策を行います。新入社員が職場の人間関係や社風にもスムーズに適応でき、早期に活躍しやすくなるのです。
関連記事:OJTとは?意味をわかりやすく解説!OFF-JTとの違いや研修の進め方など
離職を防止するため
厚生労働省の調査では、若年層の離職理由として「人間関係(26.4%)」が上位に挙がっていますが、さらなる分析で見えた現実はより切実です。入社3ヶ月に満たず会社を去る人のうち、実に52.3%が「人間関係」を最大の理由に挙げています[注]。まだ組織に馴染みきれない時期の「相談相手の不在」が、決定的な離職の引き金になっているのです。
この空白期間を埋めるオンボーディングは、もはや単なる「歓迎行事」ではなく、経営を守るための「定着戦略」といえるでしょう。
離職理由のいくつかは、オンボーディング施策によって対応できます。後述する「メンター制度」などにより入社初期の迷いや孤立を軽減でき、仕事における目標を与えることでモチベーションを向上させられるためです。
[注]出典:令和5年若年者雇用実態調査の概況 P18|厚生労働省
部署間の教育格差をなくすため
新しく職場に加わった従業員の教育を各部署に任せると、担当者の能力や資質によってクオリティに差が出たり、育成方針にバラつきが生じたりします。部署間で教育格差が生まれると、教育を受ける個人の成長に差が出るのみならず、企業としての成長にも悪影響を及ぼしかねません。
オンボーディングは、自社で必要なことを効率的に学べるように施策を企画できます。オンボーディング施策をどの部署でも行うことで、安定した質の教育を提供できるでしょう。
オンボーディング施策を実施するメリット
- 採用コストの削減につながる
- 組織全体の生産性を高められる
- エンゲージメントや満足度を高められる
- 人材の育成環境を整えられる
メリット1:採用コストの削減につながる
採用媒体の利用料などに目がいきがちですが、採用した人材が早期離職をすると、再募集や引き継ぎにかかるコストがふくらみます。「自社では採用コストの高さが課題だ」という場合、早期の離職率に注目すると、そこに原因があるのかもしれません。
早期離職の理由は前述したようにさまざまです。そのうちのいくつかは、オンボーディング施策によって、ある程度の防止ができます。早期離職をする従業員が減れば、結果的に無駄なコストが削減できるでしょう。
関連記事:採用コストを削減したい人事必見|ムダを省く7つの見直しポイント
メリット2:組織全体の生産性を高められる
さらに、オンボーディング施策によって離職率を低下させれば、採用や育成にかかる工数を削減できます。その分、ほかの業務に人的リソースを注げるので、組織運営全体の効率化を実現できます。
このような好循環の積み重ねが、最終的に組織全体の生産性を底上げする基盤となるのです。
メリット3:エンゲージメントや満足度を高められる
さらに、親身にサポートしてくれる存在への感謝は「この組織にいたい」という帰属意識を高めます。安心→自信→感謝→帰属という心理の連鎖が、従業員のエンゲージメントや満足度を高めてくれるのです。
オンボーディング施策の効果測定からエンゲージメント改善までの流れについては、ミイダスの「はたらきがいサーベイ」の活用事例もご参照ください。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?注目されている背景や取り組み方を紹介
【資料ダウンロード:従業員のエンゲージメントを向上させるサーベイ実施ガイド|お役立ち資料】
メリット4:人材の育成環境を整えられる
たとえば、社内ルールや企業理念の説明から、メンター制度やキャリア相談などのメンタル面のケア、配属先での役割共有やチーム目標のすり合わせ、OJTによるスキルの育成などの実務面をサポートする施策までが含まれます。
従来の新人研修では主に新卒採用者を対象としていました。しかし、オンボーディング施策であれば中途採用や部門異動、海外赴任や長期休職からの復職など多くのケースに対応できるでしょう。
オンボーディング施策の実施時に意識したいポイント
ほかにも、オンボーディング施策を効果的に行うためにはいくつかおさえておきたいポイントがあります。それぞれの詳細について見ていきましょう。
- 入社前から対象者とのコミュニケーションを積極的に取る
- メンター制度を導入する
- トレーナーを育成する
- スモールステップ法を取り入れる
入社前から対象者とのコミュニケーションを積極的に取る
<入社前のオンボーディング施策例>
- 歓迎メッセージを送る
- 必要な資料を事前に共有する
- 質問に素早く対応する……など
これらの小さな配慮が信頼を築く第一歩となり、同時にリアリティショックの防止になります。信頼の積み重ねは、その後のオンボーディング全体を成功に導くカギとなるでしょう。
関連記事:リアリティショックで早期離職?4つの原因や企業ができる予防策を解説
メンター制度を導入する
「メンター」とは、自身の経験やキャリアを手本としてアドバイスやフィードバックを行う存在を指します。「メンタリング(マンツーマンの対話)」によって積極的に指導対象とかかわります。他部署の先輩従業員をメンターとして配置するのが基本で、精神的なサポートをメインに行います。
メンター制度によって新人社員が抱える悩みをすくい上げ、問題解決や成長支援をできれば、早期離職やモチベーション低下を抑制できます。
関連記事:メンターとは?制度の導入で得られる効果やデメリット、成功のポイントを解説
トレーナーを育成する
トレーナーには、業務に必要なスキルや知識の指導力のほか、相手の話に傾聴し解決を促す面談力なども求められます。したがって、トレーナーの育成は企業にとって重要な取り組みといえます。。
ただし、自社でトレーナーを育成するのが困難なケースも少なくありません。外部の専門サービスによる研修を活用すると短期間で効率的に学べるでしょう。
スモールステップ法を取り入れる
オンボーディング施策も、一度に多くを学ばせると負担が大きく、大きな目標に向かうモチベーションが低下する恐れがあります。知識やスキルも定着しにくくなるため、スモールステップ法を取り入れるのがおすすめです。
簡単な業務から始めて成功体験を積んでいけば、「できる」という感覚が生まれ、学びも定着しやすくなります。成功体験の積み重ねが自信となり、長期的な成長につながっていくのです。
オンボーディングの成功事例
定着率97%を実現した日本新薬のメンター制度
また、採用過程での丁寧なコミュニケーションにより、入社後のギャップを最小化しています。取り組みの結果、募集ポジションはすべて充足し、入社3年後の定着率は96〜97%に達したそうです。
[注]出典:人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集~採用活動のコツ~|厚生労働省
定着率90%!客先常駐エンジニアを支えるエーエスエルの「ランチミーティング」
営業担当者がエンジニア一人ひとりと定期的にランチミーティングを行い、現場での課題や悩みを聞き取る仕組みを整えています。さらに、営業担当者以外にも相談できるよう、任意で提出できる週報制度も導入しました。
きめ細やかなサポートと、従業員の希望に配慮した職場環境の提供により、入社3年後の定着率は約90%という高水準を維持しています。
[注]出典:人材の確保・定着に成功した企業の取組事例集~採用活動のコツ~|厚生労働省
オンボーディング施策を実施する際の流れ
ここでは、オンボーディング施策を効果的に実施するための基本的な流れを紹介します。
- ステップ1:現状の課題をもとに目標設定を行う
- ステップ2:実施できる環境を整える
- ステップ3:計画を立てる
- ステップ4:施策を実施する
- ステップ5:効果測定と改善を行う
ステップ1:現状の課題をもとに目標設定を行う
従業員の定着率、現状の研修制度による効果、部署間の教育品質などを分析し、自社の課題や優先して改善すべき点を明らかにしていきましょう。改善点の洗い出しによりオンボーディング施策の方向性が定まってきます。
方向性をもとにオンボーディング施策の目標を設定します。「入社6ヶ月で主要業務を一人で遂行できるようにする」のように、期限と成果を明確に定めるのがコツです。目標が明確であれば、関係者の行動にも一貫性が生まれます。
ステップ2:実施できる環境を整える
次のように役割を定めると責任の所在が明確になり、効果的なサポートにつながるでしょう。
<オンボーディング施策の役割分担>
| 支援する人 | 役割 |
|---|---|
| 人事担当 | オンボーディング全体の設計・進行管理 |
| 上司 | 業務内容の指導や目標管理 |
| 先輩従業員(メンター) | 日常的な相談対応や心理的サポート |
ステップ3:計画を立てる
<オンボーディング施策の計画例>
| 時期 | 達成すべき目標 |
|---|---|
| 入社初日 | 社内環境を知る、ツールを整える |
| 入社1週間 | チーム内で面談を行い、人間関係を構築し始める |
| 入社1ヶ月 | 企業理念を理解する、担当業務は全体を把握し一部を担当する |
| 入社3ヶ月 | 主要業務を独力で進行する |
| 入社4ヶ月~ | 個人のキャリア目標を立てる |
ステップ4:施策を実施する
その後は1on1ミーティング、メンターとの面談などコミュニケーションの機会を設けながら、業務や面談を通じて少しずつ自立を後押しします。
大切なのは計画通りに進めることではなく、一人ひとりに合った形で支援する姿勢です。同じ時期に入社しても、人によって理解の早さや不安の内容は異なります。柔軟に対応することで、誰もが安心してより良いスタートを切れるようになるでしょう。
ステップ5:効果測定と改善を行う
PDCAサイクルで実行と改善を繰り返せば、オンボーディング施策は自社に合う形へと洗練され、長期的な成果へと結びつきやすくなるでしょう。
関連記事:PDCAサイクルとは?基本知識、古いと言われる理由、成功事例などを解説
【資料ダウンロード:「採用」から「育成」「定着」までの課題解決事例集|お役立ち資料】
はじめの一歩から、活躍できる環境を整えよう
- 入社前からの丁寧なコミュニケーション
- 期待する役割の明確化と伝達
- 段階的な目標設定
これらの取り組みを丁寧に積み重ねれば、新入従業員の不安が和らぎ、早期に力を発揮できる環境が整います。その結果、離職の抑制や組織全体の安定につながるでしょう。
ただし、制度を整えるだけでは不十分です。新入従業員の適応状況や施策の進み具合を可視化し、成果とあわせて改善につなげる仕組みが欠かせません。
ミイダスでは、オンボーディングを支援するために次のようなアセスメントツールを提供しています。
- コンピテンシー診断(特性診断)
従業員一人ひとりの強みや行動特性を把握し、育成を最適化 - はたらきがいサーベイ
はたらきやすさや意欲の変化を数値で確認し、職場改善に活用 - 組織サーベイ
従業員やチームのコンディションを可視化し、離職防止や生産性向上に活用
\1分で登録完了!まずは無料トライアル/
オンボーディングに関するよくある質問
- Q
オンボーディングとは?
- A
オンボーディングとは、新しく組織に加わった従業員が職場に馴染み、期待される役割を果たせるよう支援する施策のことです。
一般的には数週間から数ヶ月にわたって継続して進められます。 - Q
オンボーディングの進め方とは?
- A
オンボーディングは「現状の課題をもとに目標設定を行う」「実施できる環境を整える」「計画を立てる」「施策を実施する」「効果測定と改善を行う」の5つのステップで行います。
※本記事は2026年3月(監修時期)現在の内容に基づいて記載されたものです。

キャリコンリンク合同会社 代表/転職コンサルタント・心理カウンセラー
国家資格 2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、心理相談員など多数の資格を持つ。キャリアの専門家として職業訓練校での就職指導、大学講師、ハローワークや公共機関などの相談員を務めてきたほか、心理カウンセラーとして心の問題のケアにも従事。NHK総合の就活ドラマも監修。著書は『オンライン就活は面接が 9 割』(青春出版社)、『2026年度版 本気で内定!面接対策』(新星出版社)など。






