アンカリング効果とは、最初に提示された情報(アンカー)が基準となって、その後の判断や評価に影響を与える心理現象です。人間の持つ認知バイアスの一つでもあり、とくにマーケティングや価格交渉にてお得感を演出するために活用されています。
本記事では、アンカリング効果の概要や身近な例、フレーミング効果などとの違いについて解説します。HR領域におけるアンカリング効果の活用方法や活用手順についても解説しますので、ぜひご一読ください。
また、「ミイダス」では認知バイアスの年代別の傾向を調査しました。調査結果は以下から無料でダウンロードできますので、こちらもぜひご一読ください。
本記事では、アンカリング効果の概要や身近な例、フレーミング効果などとの違いについて解説します。HR領域におけるアンカリング効果の活用方法や活用手順についても解説しますので、ぜひご一読ください。
また、「ミイダス」では認知バイアスの年代別の傾向を調査しました。調査結果は以下から無料でダウンロードできますので、こちらもぜひご一読ください。
▼この記事でわかること
アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、最初に提示された情報(アンカー)が基準となり、その後の判断や評価、意思決定に影響を与える心理現象です。
アンカリング効果は、フレーミング効果やサンクコスト効果といった人が持つ認知バイアスの一つで、船の「錨(いかり)」を意味する英語の「アンカー(Anchor)」に由来します。脳が新しい情報を処理する際、既知の情報が船の錨のように思考を引っ張る様子から、アンカリング効果と呼ばれるようになりました。
なお、アンカリング効果以外の認知バイアスについては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事:認知バイアスとは?身近にある認知バイアスの種類や対策について解説】アンカリング効果の身近な例
アンカリング効果は私たちの日常のさまざまなシーンで利用されています。身近な例をいくつか紹介します。【アンカーが数値情報の例】
数値情報(数字)によるアンカリング効果の身近な例として、以下が挙げられます。- セール商品の価格表示
商品の価格表示にて従来の価格を併記し、「セール期間につき今だけ50%OFF」のように提示すると、セール価格が安く感じられる - レストランなどのメニュー表
高い料理から順にメニューに載せると、後半の通常メニューやサイドメニューがお手頃価格に見える - テストや試験の平均点
難しいテストの際、受験者の平均点を先に知っていると、自分のテストの点数が悪くても「平均点が低いから仕方ない」「平均点付近だからマシだ」と感じられる - 見積書の割引欄
受け取った見積書に割引前の金額が書いてあると、得したように感じられる
複数の研究により、アンカリング効果は、アンカーが数値情報として提示されるときにより強く発生することがわかっています。【アンカーが数値情報以外の例】
アンカリング効果は数値以外の情報でも発生します。- 初対面の印象
第一印象が良い人は、その後も継続して良い印象を持ってもらいやすい。逆に初対面で失敗すると、あとから印象を覆すのは難しい - 学歴や前職の印象
良い学校を出た人や有名企業に務めた経歴のある人は、優秀な人に見える - 面接における面接官の感じ方
最初のほうで際立って優秀な人材を面接してしまうと、続く人材が平均以上に優秀でも物足りなく見えてしまう - ポジティブな声かけや高めの目標設定
上司やコーチ、教師といった指導的な立場にある人から「君は優秀だ」「できるはずだ」と声を掛け続けられると、実力以上の成果をあげることがある
フレーミング効果やプライミング効果との違いアンカリング効果と似ている認知バイアスとして「フレーミング効果」と「プライミング効果」が挙げられます。効果 定義 ポイントになるもの アンカリング効果 最初に提示された情報が後の判断基準となる心理現象 最初に提示するデータや情報 フレーミング効果 同じ情報でも提示方法によって判断や意思決定が変わる心理現象 情報の提示方法 プライミング効果 無意識に受けた刺激が後の判断や意思決定に影響する心理現象 直前に与える刺激や言葉
3つともよく似ていますが、何がポイントになり、どのように人の心理に影響するかはそれぞれ異なります。具体例を交えて解説します。アンカリング効果とフレーミング効果の違い
アンカリング効果は、先に得た情報が後に得た情報を判断する基準となる心理現象です。たとえば「定価1万円の服が、今なら70%オフの3,000円」と見ると、多くの人が「安い」と感じるはずです。この感覚は先に見た「定価1万円」という情報を基準にしているためであり、実際に服に1万円の価値があるかどうかは関係ありません。
一方、フレーミング効果は、同じ内容でも言い方や見せ方で受ける印象が変化する心理現象です。たとえば「定価の30%」と「定価から70%OFF」では実際の価格に違いはありませんが、受ける印象としては「後者のほうが安い」という人が多いでしょう。同様に「成功率90%」と「失敗率10%」では、前者がポジティブに、後者はネガティブに感じられるはずです。
アンカリング効果は情報を見せる順番がポイントになり、フレーミング効果は情報の見せ方がポイントになる、と覚えるとわかりやすいでしょう。いずれの効果も店頭やオンラインショップなどでよく使用されていますので、確認してみてください。アンカリング効果とプライミング効果の違い
プライミング効果は、直前に受けた刺激(画像、文字、音楽、言葉など)から、知らず識らずのうちに影響を受ける心理現象のことです。
たとえば「赤い花を見たあとは、赤を使った商品に目が留まりやすくなる」「レストランでゆったりしたクラシックが流れていると、食事のスピードが遅くなる」といった現象は、プライミング効果の代表例です。
意思決定よりも前に得た情報が影響する点はアンカリング効果と同じですが、アンカリング効果はあくまで知覚できる情報がポイントです。対してプライミング効果は、無意識に刷り込まれた情報がポイントになります。ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
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HR領域におけるアンカリング効果の活用方法
アンカリング効果はHR領域でも活用できます。具体的な活用方法について、以下の3つのシーンにわけて紹介します。- 採用活動
- 人材育成
- 組織開発
採用活動での活用
採用活動におけるアンカリング効果の活用事例として、募集要項の書き方が挙げられます。たとえば競合他社よりやや高めの想定年収を記載すると、それが手当などを含んだ金額だとしても、その年収の数値情報がアンカーとなって求職者の応募判断に影響します。他の求人と見比べた結果「こちらの企業も応募しておこう」となる可能性が高められるでしょう。
逆に採用面接においては、アンカリング効果が面接官の判断を歪める懸念があるため注意が必要です。直前に面接した候補者の評価や履歴書の内容、第一印象がアンカーとなって、次の候補者への適切な評価を妨げる可能性があります。完全にアンカリング効果を回避したい場合は、学歴や年齢、性別などの個人情報を排除して選考を行うブラインド選考を併用する必要があるでしょう。人材育成での活用
人材育成においては、たとえば従業員の目標設定にてアンカリング効果が活用できます。最初に高い目標を示したあとで、やや高めだが現実的な目標を提示すると、最初の目標がアンカーとなって「後者の目標ならやれそう」という感覚を生み、従業員のやる気を引き出せます。
また、業務における成功パターンを可視化するのも効果的です。たとえば成果を上げている社員の行動を推奨モデル(コンピテンシーモデル)として提示すると、それがアンカーとなり、他の社員の行動を理想に近づけることができます。
【関連記事:コンピテンシーモデルとは?5つのモデル化手順と注意点を徹底解説!】組織開発での活用
組織開発でアンカリング効果を活用する場合、たとえば経営目標を右肩上がりで設定して組織全体の基準を引き上げる、といった方法が考えられます。実際にその目標を達成できなくても、目標を設定しなかった場合より高い成果をあげる可能性が上げられます。
また、会議における意見誘導にもアンカリング効果が活用可能です。混乱が予想される会議において、最初にリーダー役がわざと先鋭的な意見を提示することで、それが基準となって議論が展開され、方向性を統一しやすくなります。アンカリング効果を活用する手順
ここからは、実際にアンカリング効果を活用する手順を紹介します。1. 活用目的を明確にする
2. 活用する情報(アンカー)を設定する
3. アンカーの提示方法を決める
4. 倫理的な問題がないか確認する
5. 効果測定と改善を繰り返す1. 活用目的を明確にする
最初にアンカリング効果の活用目的と対象者(ターゲット)を明確にします。
たとえば採用活動で活用する場合、活用目的は「中途採用における応募者数を増加したい」、ターゲットは「転職希望者」のように定義できます。ターゲットを「◯◯業界に転職したい未経験者」や「◯◯職を3年以上経験している転職希望者」のように細かく定義できると、より的確な戦略立案が可能です。2. 活用する情報(アンカー)を設定する
アンカーとして使用する情報を決めます。採用活動の例で考えると、ボーナスなどを含めた推定年収や年齢層ごとの年収例などがアンカーとして設定できるでしょう。
市場調査の結果などに基づき、数値情報を優先してアンカーを設定します。3. アンカーの提示方法を決める
ターゲットに対してアンカーをどのように提示するのか決めます。
採用活動の例では募集要項での提示が一般的ですが、ECサイトや店頭などでアンカリング効果を活用する場合は、カスタマージャーニーマップなどを参考に提示方法を考えます。
なお、ECサイトや店頭における効果的なアンカーの提示方法として、たとえば以下が考えられます。- 価格比較:従来価格や市場相場と比較して見せる
- 数量制限:「残り3点」「10点限り」など数の限定を付ける
- 時間制限:「本日限り」「◯月◯日まで」など時間の限定を付ける
4. 倫理的な問題がないか確認する
アンカリング効果の活用方法に倫理的に問題がないか確認します。
当然ながら、虚偽情報の提示や過度な印象操作は厳禁です。仮に法的に問題がなくても、ターゲットとの信頼関係を壊し、企業やブランドの看板を傷つけることにつながりかねません。
たとえば、現実的には不可能な働き方を前提とした想定年収をアンカーに設定したり、公平性の薄い比較によるアンカーの提示は、不適切な活用方法と言えます。5. 効果測定と改善を繰り返す
アンカリング効果が常に狙い通りに作用するとは限りません。測定指標を設定し、効果測定と改善を繰り返してアンカー設計を最適化することが重要です。
評価指標には、応募者数や平均購入単価といった数値データのほか、顧客満足度アンケートも利用できます。アンカリング効果を活用する際の注意点
アンカリング効果はさまざまなビジネスシーンで活用できますが、以下のような注意点もあります。- 景品表示法などの法的リスクがある
- やり過ぎは逆効果になる
- 倫理的な配慮が求められる
景品表示法などの法的リスクがある
価格表示でアンカリング効果を使う場合、二重価格表示(割引前と後の価格を併記すること)などが「優良誤認」と判定される可能性があります。優良誤認とは、以下に該当する表示を指します。事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示
(引用:消費者庁|優良誤認とは)たとえば実際に1万円で販売していた実績がない商品を「定価1万円が今なら5,000円」と表示すると、景品表示法に抵触するおそれがあるのです。やり過ぎは逆効果になる
アンカリング効果に限らず、人の心理現象を利用したマーケティング手法は、活用し過ぎると逆効果になるおそれがあります。
消費者の立場からすると、相場よりはるかに高額な金額を提示されたら、その後に割引額を提示されたとしても快くはありません。アンカリング効果において、相場から大きく乖離した数字の使用は避けるべきです。違和感から「消費者を騙そうとしている」というネガティブな印象を形成しかねません。倫理的な配慮が求められる
アンカリング効果の活用において、ただ法令に抵触しなければ良いわけではありません。企業倫理を踏まえ、ステークホルダーから失望されるような活用方法は避けるべきです。
企業が掲げている行動指針やクレドを確認し、企業の価値観に沿ったアンカリング効果の活用を心がけましょう。
【関連記事:企業における行動指針とは?有名企業の行動指針や作り方を解説】
【関連記事:クレドとは?作り方やメリット、注意点、実践方法をわかりやすく解説】アンカリング効果でビジネスを円滑に進めよう
アンカリング効果は、マーケティングや営業、採用といったさまざまなビジネスシーンで活用されている認知バイアスの1つです。アンカリング効果を詳しく知れば、ビジネスを円滑に進められるだけでなく、意思決定の歪みを正すことが可能になります。
とはいえ、人間が持っている認知バイアスの種類は多く、そのすべてを意識して日々を過ごすことは容易ではありません。そこで役立つのがアセスメント採用サービス「ミイダス」の「バイアス診断ゲーム」です。ミイダスの「バイアス診断ゲーム」とは
ミイダスのバイアス診断ゲームは、仕事に関する意思決定の質を歪める認知バイアスを計測できる世界初※の診断ゲームです。NTTデータ研究所とミイダスが共同開発したツールで、約30分×2回、計60分で求職者や社員の意思決定の癖を診断します。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断(特性診断)」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして(2023年5月 未来トレンド研究機構)
分析できる認知バイアスは全22項目。自身がどのような意思決定の癖を持っているか知ることで、意思決定の質を向上できます。
バイアス診断ゲームについては、以下のページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
バイアス診断ゲームの詳細はこちらから

アンカリング効果は、フレーミング効果やサンクコスト効果といった人が持つ認知バイアスの一つで、船の「錨(いかり)」を意味する英語の「アンカー(Anchor)」に由来します。脳が新しい情報を処理する際、既知の情報が船の錨のように思考を引っ張る様子から、アンカリング効果と呼ばれるようになりました。
なお、アンカリング効果以外の認知バイアスについては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事:認知バイアスとは?身近にある認知バイアスの種類や対策について解説】

アンカリング効果は私たちの日常のさまざまなシーンで利用されています。身近な例をいくつか紹介します。
【アンカーが数値情報の例】
数値情報(数字)によるアンカリング効果の身近な例として、以下が挙げられます。
- セール商品の価格表示
商品の価格表示にて従来の価格を併記し、「セール期間につき今だけ50%OFF」のように提示すると、セール価格が安く感じられる - レストランなどのメニュー表
高い料理から順にメニューに載せると、後半の通常メニューやサイドメニューがお手頃価格に見える - テストや試験の平均点
難しいテストの際、受験者の平均点を先に知っていると、自分のテストの点数が悪くても「平均点が低いから仕方ない」「平均点付近だからマシだ」と感じられる - 見積書の割引欄
受け取った見積書に割引前の金額が書いてあると、得したように感じられる
複数の研究により、アンカリング効果は、アンカーが数値情報として提示されるときにより強く発生することがわかっています。
【アンカーが数値情報以外の例】
アンカリング効果は数値以外の情報でも発生します。
- 初対面の印象
第一印象が良い人は、その後も継続して良い印象を持ってもらいやすい。逆に初対面で失敗すると、あとから印象を覆すのは難しい - 学歴や前職の印象
良い学校を出た人や有名企業に務めた経歴のある人は、優秀な人に見える - 面接における面接官の感じ方
最初のほうで際立って優秀な人材を面接してしまうと、続く人材が平均以上に優秀でも物足りなく見えてしまう - ポジティブな声かけや高めの目標設定
上司やコーチ、教師といった指導的な立場にある人から「君は優秀だ」「できるはずだ」と声を掛け続けられると、実力以上の成果をあげることがある
フレーミング効果やプライミング効果との違いアンカリング効果と似ている認知バイアスとして「フレーミング効果」と「プライミング効果」が挙げられます。効果 定義 ポイントになるもの アンカリング効果 最初に提示された情報が後の判断基準となる心理現象 最初に提示するデータや情報 フレーミング効果 同じ情報でも提示方法によって判断や意思決定が変わる心理現象 情報の提示方法 プライミング効果 無意識に受けた刺激が後の判断や意思決定に影響する心理現象 直前に与える刺激や言葉
3つともよく似ていますが、何がポイントになり、どのように人の心理に影響するかはそれぞれ異なります。具体例を交えて解説します。アンカリング効果とフレーミング効果の違い
アンカリング効果は、先に得た情報が後に得た情報を判断する基準となる心理現象です。たとえば「定価1万円の服が、今なら70%オフの3,000円」と見ると、多くの人が「安い」と感じるはずです。この感覚は先に見た「定価1万円」という情報を基準にしているためであり、実際に服に1万円の価値があるかどうかは関係ありません。
一方、フレーミング効果は、同じ内容でも言い方や見せ方で受ける印象が変化する心理現象です。たとえば「定価の30%」と「定価から70%OFF」では実際の価格に違いはありませんが、受ける印象としては「後者のほうが安い」という人が多いでしょう。同様に「成功率90%」と「失敗率10%」では、前者がポジティブに、後者はネガティブに感じられるはずです。
アンカリング効果は情報を見せる順番がポイントになり、フレーミング効果は情報の見せ方がポイントになる、と覚えるとわかりやすいでしょう。いずれの効果も店頭やオンラインショップなどでよく使用されていますので、確認してみてください。アンカリング効果とプライミング効果の違い
プライミング効果は、直前に受けた刺激(画像、文字、音楽、言葉など)から、知らず識らずのうちに影響を受ける心理現象のことです。
たとえば「赤い花を見たあとは、赤を使った商品に目が留まりやすくなる」「レストランでゆったりしたクラシックが流れていると、食事のスピードが遅くなる」といった現象は、プライミング効果の代表例です。
意思決定よりも前に得た情報が影響する点はアンカリング効果と同じですが、アンカリング効果はあくまで知覚できる情報がポイントです。対してプライミング効果は、無意識に刷り込まれた情報がポイントになります。ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
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HR領域におけるアンカリング効果の活用方法
アンカリング効果はHR領域でも活用できます。具体的な活用方法について、以下の3つのシーンにわけて紹介します。- 採用活動
- 人材育成
- 組織開発
採用活動での活用
採用活動におけるアンカリング効果の活用事例として、募集要項の書き方が挙げられます。たとえば競合他社よりやや高めの想定年収を記載すると、それが手当などを含んだ金額だとしても、その年収の数値情報がアンカーとなって求職者の応募判断に影響します。他の求人と見比べた結果「こちらの企業も応募しておこう」となる可能性が高められるでしょう。
逆に採用面接においては、アンカリング効果が面接官の判断を歪める懸念があるため注意が必要です。直前に面接した候補者の評価や履歴書の内容、第一印象がアンカーとなって、次の候補者への適切な評価を妨げる可能性があります。完全にアンカリング効果を回避したい場合は、学歴や年齢、性別などの個人情報を排除して選考を行うブラインド選考を併用する必要があるでしょう。人材育成での活用
人材育成においては、たとえば従業員の目標設定にてアンカリング効果が活用できます。最初に高い目標を示したあとで、やや高めだが現実的な目標を提示すると、最初の目標がアンカーとなって「後者の目標ならやれそう」という感覚を生み、従業員のやる気を引き出せます。
また、業務における成功パターンを可視化するのも効果的です。たとえば成果を上げている社員の行動を推奨モデル(コンピテンシーモデル)として提示すると、それがアンカーとなり、他の社員の行動を理想に近づけることができます。
【関連記事:コンピテンシーモデルとは?5つのモデル化手順と注意点を徹底解説!】組織開発での活用
組織開発でアンカリング効果を活用する場合、たとえば経営目標を右肩上がりで設定して組織全体の基準を引き上げる、といった方法が考えられます。実際にその目標を達成できなくても、目標を設定しなかった場合より高い成果をあげる可能性が上げられます。
また、会議における意見誘導にもアンカリング効果が活用可能です。混乱が予想される会議において、最初にリーダー役がわざと先鋭的な意見を提示することで、それが基準となって議論が展開され、方向性を統一しやすくなります。アンカリング効果を活用する手順
ここからは、実際にアンカリング効果を活用する手順を紹介します。1. 活用目的を明確にする
2. 活用する情報(アンカー)を設定する
3. アンカーの提示方法を決める
4. 倫理的な問題がないか確認する
5. 効果測定と改善を繰り返す1. 活用目的を明確にする
最初にアンカリング効果の活用目的と対象者(ターゲット)を明確にします。
たとえば採用活動で活用する場合、活用目的は「中途採用における応募者数を増加したい」、ターゲットは「転職希望者」のように定義できます。ターゲットを「◯◯業界に転職したい未経験者」や「◯◯職を3年以上経験している転職希望者」のように細かく定義できると、より的確な戦略立案が可能です。2. 活用する情報(アンカー)を設定する
アンカーとして使用する情報を決めます。採用活動の例で考えると、ボーナスなどを含めた推定年収や年齢層ごとの年収例などがアンカーとして設定できるでしょう。
市場調査の結果などに基づき、数値情報を優先してアンカーを設定します。3. アンカーの提示方法を決める
ターゲットに対してアンカーをどのように提示するのか決めます。
採用活動の例では募集要項での提示が一般的ですが、ECサイトや店頭などでアンカリング効果を活用する場合は、カスタマージャーニーマップなどを参考に提示方法を考えます。
なお、ECサイトや店頭における効果的なアンカーの提示方法として、たとえば以下が考えられます。- 価格比較:従来価格や市場相場と比較して見せる
- 数量制限:「残り3点」「10点限り」など数の限定を付ける
- 時間制限:「本日限り」「◯月◯日まで」など時間の限定を付ける
4. 倫理的な問題がないか確認する
アンカリング効果の活用方法に倫理的に問題がないか確認します。
当然ながら、虚偽情報の提示や過度な印象操作は厳禁です。仮に法的に問題がなくても、ターゲットとの信頼関係を壊し、企業やブランドの看板を傷つけることにつながりかねません。
たとえば、現実的には不可能な働き方を前提とした想定年収をアンカーに設定したり、公平性の薄い比較によるアンカーの提示は、不適切な活用方法と言えます。5. 効果測定と改善を繰り返す
アンカリング効果が常に狙い通りに作用するとは限りません。測定指標を設定し、効果測定と改善を繰り返してアンカー設計を最適化することが重要です。
評価指標には、応募者数や平均購入単価といった数値データのほか、顧客満足度アンケートも利用できます。アンカリング効果を活用する際の注意点
アンカリング効果はさまざまなビジネスシーンで活用できますが、以下のような注意点もあります。- 景品表示法などの法的リスクがある
- やり過ぎは逆効果になる
- 倫理的な配慮が求められる
景品表示法などの法的リスクがある
価格表示でアンカリング効果を使う場合、二重価格表示(割引前と後の価格を併記すること)などが「優良誤認」と判定される可能性があります。優良誤認とは、以下に該当する表示を指します。事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示
(引用:消費者庁|優良誤認とは)たとえば実際に1万円で販売していた実績がない商品を「定価1万円が今なら5,000円」と表示すると、景品表示法に抵触するおそれがあるのです。やり過ぎは逆効果になる
アンカリング効果に限らず、人の心理現象を利用したマーケティング手法は、活用し過ぎると逆効果になるおそれがあります。
消費者の立場からすると、相場よりはるかに高額な金額を提示されたら、その後に割引額を提示されたとしても快くはありません。アンカリング効果において、相場から大きく乖離した数字の使用は避けるべきです。違和感から「消費者を騙そうとしている」というネガティブな印象を形成しかねません。倫理的な配慮が求められる
アンカリング効果の活用において、ただ法令に抵触しなければ良いわけではありません。企業倫理を踏まえ、ステークホルダーから失望されるような活用方法は避けるべきです。
企業が掲げている行動指針やクレドを確認し、企業の価値観に沿ったアンカリング効果の活用を心がけましょう。
【関連記事:企業における行動指針とは?有名企業の行動指針や作り方を解説】
【関連記事:クレドとは?作り方やメリット、注意点、実践方法をわかりやすく解説】アンカリング効果でビジネスを円滑に進めよう
アンカリング効果は、マーケティングや営業、採用といったさまざまなビジネスシーンで活用されている認知バイアスの1つです。アンカリング効果を詳しく知れば、ビジネスを円滑に進められるだけでなく、意思決定の歪みを正すことが可能になります。
とはいえ、人間が持っている認知バイアスの種類は多く、そのすべてを意識して日々を過ごすことは容易ではありません。そこで役立つのがアセスメント採用サービス「ミイダス」の「バイアス診断ゲーム」です。ミイダスの「バイアス診断ゲーム」とは
ミイダスのバイアス診断ゲームは、仕事に関する意思決定の質を歪める認知バイアスを計測できる世界初※の診断ゲームです。NTTデータ研究所とミイダスが共同開発したツールで、約30分×2回、計60分で求職者や社員の意思決定の癖を診断します。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断(特性診断)」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして(2023年5月 未来トレンド研究機構)
分析できる認知バイアスは全22項目。自身がどのような意思決定の癖を持っているか知ることで、意思決定の質を向上できます。
バイアス診断ゲームについては、以下のページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
バイアス診断ゲームの詳細はこちらから
効果 | 定義 | ポイントになるもの |
---|---|---|
アンカリング効果 | 最初に提示された情報が後の判断基準となる心理現象 | 最初に提示するデータや情報 |
フレーミング効果 | 同じ情報でも提示方法によって判断や意思決定が変わる心理現象 | 情報の提示方法 |
プライミング効果 | 無意識に受けた刺激が後の判断や意思決定に影響する心理現象 | 直前に与える刺激や言葉 |
一方、フレーミング効果は、同じ内容でも言い方や見せ方で受ける印象が変化する心理現象です。たとえば「定価の30%」と「定価から70%OFF」では実際の価格に違いはありませんが、受ける印象としては「後者のほうが安い」という人が多いでしょう。同様に「成功率90%」と「失敗率10%」では、前者がポジティブに、後者はネガティブに感じられるはずです。
アンカリング効果は情報を見せる順番がポイントになり、フレーミング効果は情報の見せ方がポイントになる、と覚えるとわかりやすいでしょう。いずれの効果も店頭やオンラインショップなどでよく使用されていますので、確認してみてください。
たとえば「赤い花を見たあとは、赤を使った商品に目が留まりやすくなる」「レストランでゆったりしたクラシックが流れていると、食事のスピードが遅くなる」といった現象は、プライミング効果の代表例です。
意思決定よりも前に得た情報が影響する点はアンカリング効果と同じですが、アンカリング効果はあくまで知覚できる情報がポイントです。対してプライミング効果は、無意識に刷り込まれた情報がポイントになります。
ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
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アンカリング効果はHR領域でも活用できます。具体的な活用方法について、以下の3つのシーンにわけて紹介します。
- 採用活動
- 人材育成
- 組織開発
採用活動での活用
採用活動におけるアンカリング効果の活用事例として、募集要項の書き方が挙げられます。たとえば競合他社よりやや高めの想定年収を記載すると、それが手当などを含んだ金額だとしても、その年収の数値情報がアンカーとなって求職者の応募判断に影響します。他の求人と見比べた結果「こちらの企業も応募しておこう」となる可能性が高められるでしょう。
逆に採用面接においては、アンカリング効果が面接官の判断を歪める懸念があるため注意が必要です。直前に面接した候補者の評価や履歴書の内容、第一印象がアンカーとなって、次の候補者への適切な評価を妨げる可能性があります。完全にアンカリング効果を回避したい場合は、学歴や年齢、性別などの個人情報を排除して選考を行うブラインド選考を併用する必要があるでしょう。
逆に採用面接においては、アンカリング効果が面接官の判断を歪める懸念があるため注意が必要です。直前に面接した候補者の評価や履歴書の内容、第一印象がアンカーとなって、次の候補者への適切な評価を妨げる可能性があります。完全にアンカリング効果を回避したい場合は、学歴や年齢、性別などの個人情報を排除して選考を行うブラインド選考を併用する必要があるでしょう。
人材育成での活用
人材育成においては、たとえば従業員の目標設定にてアンカリング効果が活用できます。最初に高い目標を示したあとで、やや高めだが現実的な目標を提示すると、最初の目標がアンカーとなって「後者の目標ならやれそう」という感覚を生み、従業員のやる気を引き出せます。
また、業務における成功パターンを可視化するのも効果的です。たとえば成果を上げている社員の行動を推奨モデル(コンピテンシーモデル)として提示すると、それがアンカーとなり、他の社員の行動を理想に近づけることができます。
【関連記事:コンピテンシーモデルとは?5つのモデル化手順と注意点を徹底解説!】
また、業務における成功パターンを可視化するのも効果的です。たとえば成果を上げている社員の行動を推奨モデル(コンピテンシーモデル)として提示すると、それがアンカーとなり、他の社員の行動を理想に近づけることができます。
【関連記事:コンピテンシーモデルとは?5つのモデル化手順と注意点を徹底解説!】
組織開発での活用
組織開発でアンカリング効果を活用する場合、たとえば経営目標を右肩上がりで設定して組織全体の基準を引き上げる、といった方法が考えられます。実際にその目標を達成できなくても、目標を設定しなかった場合より高い成果をあげる可能性が上げられます。
また、会議における意見誘導にもアンカリング効果が活用可能です。混乱が予想される会議において、最初にリーダー役がわざと先鋭的な意見を提示することで、それが基準となって議論が展開され、方向性を統一しやすくなります。
また、会議における意見誘導にもアンカリング効果が活用可能です。混乱が予想される会議において、最初にリーダー役がわざと先鋭的な意見を提示することで、それが基準となって議論が展開され、方向性を統一しやすくなります。
アンカリング効果を活用する手順
ここからは、実際にアンカリング効果を活用する手順を紹介します。1. 活用目的を明確にする
2. 活用する情報(アンカー)を設定する
3. アンカーの提示方法を決める
4. 倫理的な問題がないか確認する
5. 効果測定と改善を繰り返す1. 活用目的を明確にする
最初にアンカリング効果の活用目的と対象者(ターゲット)を明確にします。
たとえば採用活動で活用する場合、活用目的は「中途採用における応募者数を増加したい」、ターゲットは「転職希望者」のように定義できます。ターゲットを「◯◯業界に転職したい未経験者」や「◯◯職を3年以上経験している転職希望者」のように細かく定義できると、より的確な戦略立案が可能です。2. 活用する情報(アンカー)を設定する
アンカーとして使用する情報を決めます。採用活動の例で考えると、ボーナスなどを含めた推定年収や年齢層ごとの年収例などがアンカーとして設定できるでしょう。
市場調査の結果などに基づき、数値情報を優先してアンカーを設定します。3. アンカーの提示方法を決める
ターゲットに対してアンカーをどのように提示するのか決めます。
採用活動の例では募集要項での提示が一般的ですが、ECサイトや店頭などでアンカリング効果を活用する場合は、カスタマージャーニーマップなどを参考に提示方法を考えます。
なお、ECサイトや店頭における効果的なアンカーの提示方法として、たとえば以下が考えられます。- 価格比較:従来価格や市場相場と比較して見せる
- 数量制限:「残り3点」「10点限り」など数の限定を付ける
- 時間制限:「本日限り」「◯月◯日まで」など時間の限定を付ける
4. 倫理的な問題がないか確認する
アンカリング効果の活用方法に倫理的に問題がないか確認します。
当然ながら、虚偽情報の提示や過度な印象操作は厳禁です。仮に法的に問題がなくても、ターゲットとの信頼関係を壊し、企業やブランドの看板を傷つけることにつながりかねません。
たとえば、現実的には不可能な働き方を前提とした想定年収をアンカーに設定したり、公平性の薄い比較によるアンカーの提示は、不適切な活用方法と言えます。5. 効果測定と改善を繰り返す
アンカリング効果が常に狙い通りに作用するとは限りません。測定指標を設定し、効果測定と改善を繰り返してアンカー設計を最適化することが重要です。
評価指標には、応募者数や平均購入単価といった数値データのほか、顧客満足度アンケートも利用できます。アンカリング効果を活用する際の注意点
アンカリング効果はさまざまなビジネスシーンで活用できますが、以下のような注意点もあります。- 景品表示法などの法的リスクがある
- やり過ぎは逆効果になる
- 倫理的な配慮が求められる
景品表示法などの法的リスクがある
価格表示でアンカリング効果を使う場合、二重価格表示(割引前と後の価格を併記すること)などが「優良誤認」と判定される可能性があります。優良誤認とは、以下に該当する表示を指します。事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示
(引用:消費者庁|優良誤認とは)たとえば実際に1万円で販売していた実績がない商品を「定価1万円が今なら5,000円」と表示すると、景品表示法に抵触するおそれがあるのです。やり過ぎは逆効果になる
アンカリング効果に限らず、人の心理現象を利用したマーケティング手法は、活用し過ぎると逆効果になるおそれがあります。
消費者の立場からすると、相場よりはるかに高額な金額を提示されたら、その後に割引額を提示されたとしても快くはありません。アンカリング効果において、相場から大きく乖離した数字の使用は避けるべきです。違和感から「消費者を騙そうとしている」というネガティブな印象を形成しかねません。倫理的な配慮が求められる
アンカリング効果の活用において、ただ法令に抵触しなければ良いわけではありません。企業倫理を踏まえ、ステークホルダーから失望されるような活用方法は避けるべきです。
企業が掲げている行動指針やクレドを確認し、企業の価値観に沿ったアンカリング効果の活用を心がけましょう。
【関連記事:企業における行動指針とは?有名企業の行動指針や作り方を解説】
【関連記事:クレドとは?作り方やメリット、注意点、実践方法をわかりやすく解説】アンカリング効果でビジネスを円滑に進めよう
アンカリング効果は、マーケティングや営業、採用といったさまざまなビジネスシーンで活用されている認知バイアスの1つです。アンカリング効果を詳しく知れば、ビジネスを円滑に進められるだけでなく、意思決定の歪みを正すことが可能になります。
とはいえ、人間が持っている認知バイアスの種類は多く、そのすべてを意識して日々を過ごすことは容易ではありません。そこで役立つのがアセスメント採用サービス「ミイダス」の「バイアス診断ゲーム」です。ミイダスの「バイアス診断ゲーム」とは
ミイダスのバイアス診断ゲームは、仕事に関する意思決定の質を歪める認知バイアスを計測できる世界初※の診断ゲームです。NTTデータ研究所とミイダスが共同開発したツールで、約30分×2回、計60分で求職者や社員の意思決定の癖を診断します。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断(特性診断)」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして(2023年5月 未来トレンド研究機構)
分析できる認知バイアスは全22項目。自身がどのような意思決定の癖を持っているか知ることで、意思決定の質を向上できます。
バイアス診断ゲームについては、以下のページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
バイアス診断ゲームの詳細はこちらから

2. 活用する情報(アンカー)を設定する
3. アンカーの提示方法を決める
4. 倫理的な問題がないか確認する
5. 効果測定と改善を繰り返す
たとえば採用活動で活用する場合、活用目的は「中途採用における応募者数を増加したい」、ターゲットは「転職希望者」のように定義できます。ターゲットを「◯◯業界に転職したい未経験者」や「◯◯職を3年以上経験している転職希望者」のように細かく定義できると、より的確な戦略立案が可能です。
市場調査の結果などに基づき、数値情報を優先してアンカーを設定します。
採用活動の例では募集要項での提示が一般的ですが、ECサイトや店頭などでアンカリング効果を活用する場合は、カスタマージャーニーマップなどを参考に提示方法を考えます。
なお、ECサイトや店頭における効果的なアンカーの提示方法として、たとえば以下が考えられます。
当然ながら、虚偽情報の提示や過度な印象操作は厳禁です。仮に法的に問題がなくても、ターゲットとの信頼関係を壊し、企業やブランドの看板を傷つけることにつながりかねません。
たとえば、現実的には不可能な働き方を前提とした想定年収をアンカーに設定したり、公平性の薄い比較によるアンカーの提示は、不適切な活用方法と言えます。
評価指標には、応募者数や平均購入単価といった数値データのほか、顧客満足度アンケートも利用できます。

アンカリング効果はさまざまなビジネスシーンで活用できますが、以下のような注意点もあります。
- 景品表示法などの法的リスクがある
- やり過ぎは逆効果になる
- 倫理的な配慮が求められる
景品表示法などの法的リスクがある
価格表示でアンカリング効果を使う場合、二重価格表示(割引前と後の価格を併記すること)などが「優良誤認」と判定される可能性があります。優良誤認とは、以下に該当する表示を指します。
事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示
(引用:消費者庁|優良誤認とは)
(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示
(引用:消費者庁|優良誤認とは)
たとえば実際に1万円で販売していた実績がない商品を「定価1万円が今なら5,000円」と表示すると、景品表示法に抵触するおそれがあるのです。
やり過ぎは逆効果になる
アンカリング効果に限らず、人の心理現象を利用したマーケティング手法は、活用し過ぎると逆効果になるおそれがあります。
消費者の立場からすると、相場よりはるかに高額な金額を提示されたら、その後に割引額を提示されたとしても快くはありません。アンカリング効果において、相場から大きく乖離した数字の使用は避けるべきです。違和感から「消費者を騙そうとしている」というネガティブな印象を形成しかねません。
消費者の立場からすると、相場よりはるかに高額な金額を提示されたら、その後に割引額を提示されたとしても快くはありません。アンカリング効果において、相場から大きく乖離した数字の使用は避けるべきです。違和感から「消費者を騙そうとしている」というネガティブな印象を形成しかねません。
倫理的な配慮が求められる
アンカリング効果の活用において、ただ法令に抵触しなければ良いわけではありません。企業倫理を踏まえ、ステークホルダーから失望されるような活用方法は避けるべきです。
企業が掲げている行動指針やクレドを確認し、企業の価値観に沿ったアンカリング効果の活用を心がけましょう。
【関連記事:企業における行動指針とは?有名企業の行動指針や作り方を解説】
【関連記事:クレドとは?作り方やメリット、注意点、実践方法をわかりやすく解説】
企業が掲げている行動指針やクレドを確認し、企業の価値観に沿ったアンカリング効果の活用を心がけましょう。
【関連記事:企業における行動指針とは?有名企業の行動指針や作り方を解説】
【関連記事:クレドとは?作り方やメリット、注意点、実践方法をわかりやすく解説】
アンカリング効果でビジネスを円滑に進めよう
アンカリング効果は、マーケティングや営業、採用といったさまざまなビジネスシーンで活用されている認知バイアスの1つです。アンカリング効果を詳しく知れば、ビジネスを円滑に進められるだけでなく、意思決定の歪みを正すことが可能になります。
とはいえ、人間が持っている認知バイアスの種類は多く、そのすべてを意識して日々を過ごすことは容易ではありません。そこで役立つのがアセスメント採用サービス「ミイダス」の「バイアス診断ゲーム」です。ミイダスの「バイアス診断ゲーム」とは
ミイダスのバイアス診断ゲームは、仕事に関する意思決定の質を歪める認知バイアスを計測できる世界初※の診断ゲームです。NTTデータ研究所とミイダスが共同開発したツールで、約30分×2回、計60分で求職者や社員の意思決定の癖を診断します。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断(特性診断)」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして(2023年5月 未来トレンド研究機構)
分析できる認知バイアスは全22項目。自身がどのような意思決定の癖を持っているか知ることで、意思決定の質を向上できます。
バイアス診断ゲームについては、以下のページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
バイアス診断ゲームの詳細はこちらから

とはいえ、人間が持っている認知バイアスの種類は多く、そのすべてを意識して日々を過ごすことは容易ではありません。そこで役立つのがアセスメント採用サービス「ミイダス」の「バイアス診断ゲーム」です。
※「バイアス診断ゲーム」(認知バイアスを測定するテスト)と「コンピテンシー診断(特性診断)」を使って人材の採用と配置・育成を可能にする無料のスマホアプリ診断サービスとして(2023年5月 未来トレンド研究機構)
分析できる認知バイアスは全22項目。自身がどのような意思決定の癖を持っているか知ることで、意思決定の質を向上できます。
バイアス診断ゲームについては、以下のページで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。