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アファーマティブアクションを解説。注目される背景や事例、取り組み方も

「アファーマティブアクションとは何のこと?」
「アファーマティブアクションを企業内で進めるにあたって、取り組み方や注意点を知りたい」

と思うことはありませんか。

アファーマティブアクションは、特定の集団に対する不平等や差別を改め、正すための取り組みです。約60年前のアメリカで始まり、日本においてもアファーマティブアクションの取り組みがおこなわれています。

本記事では、アファーマティブアクションの概要や海外・日本における事例などを解説します。これからアファーマティブアクションを企業へ導入する際の取り組み方や注意点も解説しますので、ぜひご一読ください。

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アファーマティブアクションとは?

地球のまわりに集まる人々
アファーマティブアクション(affirmative action)とは、特定の社会的集団に対する不平等や差別を積極的に改め、公平な機会均等を実現するための措置や政策のことです。

特定の社会的集団には、差別によって不利益を受けている有色人種・女性・障害者・少数民族などのマイノリティー(少数派)が挙げられます。世界中で、これらの人々が「マイノリティーだから」という理由で差別的な扱いを受け、雇用や昇進、教育、政治などにおいて不利益な状況に立たされている現状があります。

マイノリティーの人々に対する社会的差別を改め、積極的に登用・選抜することがアファーマティブアクションです。公平に活躍できる機会を提供するために、特定の集団に対する一定の特別枠や優遇措置を設けるなどの取り組みで対策します。

アファーマティブアクションは「積極的差別是正措置」「積極的格差是正措置」とも呼ばれます。「ポジティブアクション」と表現されることもありますが、意味はアファーマティブアクションと同じです。

多様性の推進と機会均等が実現された世界を求めて、アファーマティブアクションによって過去の不平等や差別を是正しようとする動きがあります。

アファーマティブアクションが注目される背景

多様な人々のイメージ
アファーマティブアクションの起源は、1961年のアメリカにあります。当時の大統領、ジョン・F・ケネディが大統領令で「アファーマティブアクション」の言葉を使ったのが始まりです。大統領令では人種差別の撤廃を目指し、公共の雇用における「肯定的行動」を命じました。

その後、1964年の公民権法で人種・肌の色・宗教・性別・国籍などに基づく差別が禁止になりました。差別が認められたときには、是正するためのアファーマティブアクションを裁判所が命ずることができるようになったのです。

これを機に、アファーマティブアクションが差別を是正する措置として法的に認められ、大学入試の際に人種を考慮した選考がおこなわれたり、女性を優先的に採用・昇進させたりする取り組みが導入されました。

しかし法の整備が進む一方、白人や男性などの多数派に対する逆差別にあたるという批判があるのも事実です。アファーマティブアクションの優遇措置について、アメリカでは幾度となく裁判が起こっており、違憲判決が出るたびに内容の見直しに迫られています。

2023年6月には、アファーマティブアクションの是非が争われた訴訟で、合衆国憲法修正14条に違反していると判断が下されました。これは、入試選考で黒人や中南米系などの志願者を優遇し、アジア系や白人が差別されているとして起こした訴訟です。1978年の判決で米国最高裁が容認してから、45年ぶりに判断を覆したことになります。

差別や不平等を改め、正すためのアファーマティブアクションですが、すべての人に公平な機会を与えるには課題も多く残されているのです。

アファーマティブアクションに取り組むメリット

てのひらの上に人型のピクトグラム
アファーマティブアクションの実施によって得られるメリットは以下のとおりです。
  • 多様性の促進
  • 公平な機会均等の実現
  • 組織の活性化
それぞれ見ていきましょう。

多様性の促進

アファーマティブアクションによって社会の多様性を高め、格差を縮小する効果が期待できます。外国人の雇用促進や女性の管理職比率を増やすなどが取り組みの一例です。

多様な人材を確保することで、労働力不足の課題を解決する一助にもなります。

公平な機会均等の実現

アファーマティブアクションに取り組む企業や組織が増えれば、差別や格差、不平等を改め、良い方向へ変えていこうとする傾向が高まり、社会全体で公平な機会の提供を実現しやすくなります。

組織の活性化

アファーマティブアクションによって多様な人材を雇用することで、組織の活性化が期待できます。

たとえば女性を積極的に雇用・昇進させると、社会で活躍できる場を増やすことができ、女性ならではのアイデアが生まれたり、働き方改革につながったりします。

外国人を雇用する場合には、組織に新たな価値観が入るため、イノベーション創出やメンバー間のモチベーション向上にも有効です。

アファーマティブアクションの海外での事例

広げたノートとボールペン
アメリカでは、公立大学の入試選考や採用試験などでアファーマティブアクションが実施されています。代表的な措置として挙げられるのが「クオータ制(割り当て制)」です。

クオータ制は、性別や人種など特定の集団に対して活躍の機会を与える制度です。たとえば、入試試験で定員300名のところ、マイノリティーの方のために一定の割合を割り当てるという取り組みが挙げられます。

社会的に不利な状況に置かれている人々が優先的に入れるようにすることで、大学への進学率向上や社会的地位の向上につながっています。しかし、前述のとおり逆差別が起こる懸念があるほか、自分の実力で入学したのに「アファーマティブアクションで優遇されたから入れた」などの偏見も出ているようです。

アメリカだけではなく、さまざまな国でアファーマティブアクションが実施されていますが、内容を検討する際には有利・不利になる人が出ないよう、慎重に議論を重ねなければなりません。

アファーマティブアクションの日本での事例

2人の女性ビジネスパーソン
日本でのアファーマティブアクションは、女性労働者の活躍に焦点を当てたものが多くあります。雇用における男女間の格差解消(男女比・待遇・職務内容)や、女性リーダーの登用などがその一例です。

日本のアファーマティブアクションは、主に「男女共同参画」の観点から進展しました。2003年に「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」と目標設定されましたが、20年以上経った現在でも達成に至っていない点が多く見られあります。

諸外国と比べても、日本の女性議員比率や女性管理職の割合は大きく劣っているのが現状です。

参考:第5次男女共同参画基本計画|内閣府男女共同参画局

女性が活躍しやすい場を提供するには、下記のような取り組みがあります。
  • 女性リーダー向けの研修や育成プログラムを実施する
  • 家庭や育児と両立しやすいフレックスタイム制度やテレワークを推進する
  • 家事代行などの補助を提供する
  • メンタルヘルスケアやワークライフバランスを推進する
  • 採用選考や人事考課の基準を男女平等にする
「女性だから」「子どもを出産したから」という理由で、採用や昇進などで不当な扱いをしてはなりません。これは、男女雇用機会均等法でも定められています。

アファーマティブアクションへの取り組み方

手順を解説するイメージ
企業でアファーマティブアクションに取り組む手順を解説します。手順は以下の4ステップです。
1. 取り組む目的を明確にする
2. 社内へ理解浸透させる
3. 施策を検討する
4. 進捗を確認する
ひとつずつ解説します。

1. 取り組む目的を明確にする

何のためにアファーマティブアクションに取り組むのか明確にします。たとえば、社内の多様性促進や女性社員比率の改善などが挙げられます。

目的が定まっていないと社内への理解浸透がしにくくなったり、施策の内容がブレてしまったりするため、自社が解決したい課題に沿って具体的に決めるようにしましょう。

2. 社内へ理解浸透させる

日本では「アファーマティブアクション」の言葉そのものの認知度は低い状態です。そのため、社内で取り組みをおこなう際には丁寧に説明し、社員から理解を得ることが大切です。
  • アファーマティブアクションとは何なのか
  • なぜ自社が取り組む必要があるのか課題や問題点
  • 具体的な目的や目標
これらの情報を社内で共有し、理解を促しましょう。理解が進まないまま具体的な施策を始めると、途中で頓挫したり、ないがしろになったりするため注意が必要です。

特に経営層や管理職に古い価値観が定着している場合は、格差解消や多様性に関する意識改革から始めるとよいでしょう。

3. 施策を検討する

具体的にどのような施策でアファーマティブアクションをおこなうのか検討・決定します。施策の一例は以下のとおりです。
  • 女性の管理職比率を増やす
  • 男女共通の人事評価基準を制定する
  • 育児中の女性や障害者などマイノリティーの方を雇用する
  • 性別にとらわれない採用選考をする など
アファーマティブアクションを実施する代表的な手法には、下記の3つがあります。
クオータ制定員のうち、一定数をマイノリティーに割り当てる手法。
ゴール・アンド・タイムテーブル方式具体的な目標(ゴール)と、その目標を達成する期限(タイムテーブル)を設定する手法。数値目標とスケジュールを明確に定めるため、計画的に進められる。
基盤整備を推進する方式マイノリティーが能力を発揮し、活躍できるように基盤を整備する手法。教育や研修プログラムの実施、働きやすい環境の整備、キャリア支援などがある。
アファーマティブアクションを実施する目的にあわせて、手法を組み合わせた施策をするのも有効です。

4. 進捗を確認する

施策の開始後、定期的に進捗を確認します。目標に対する進み具合や成果、達成できていない部分を確認することで、現状の課題点や改善点が見えてきます。

明らかになった点を精査し、改善が必要な箇所は修正しましょう。場合によっては、現行の施策や制度の改定が必要になることもあります。

アファーマティブアクションに取り組む際の注意点

男女のビジネスパーソン5人
アファーマティブアクションに取り組む際、注意しておきたいポイントがあります。施策の内容や程度によって批判が集まったり、別の差別・格差を招いたりする可能性があるため、以下の点について留意して取り組むことが大切です。
  • 過度な優遇をしない
  • 多様性を押し付けない
  • 逆差別をしない
  • 個人の能力や適性で評価する

過度な優遇をしない

多様性の推進や格差の解消が求められているからといって、過度に優遇しすぎるのは禁物です。たとえば、女性が有利になるような取り組みばかり推進するなどです。特定の集団が優遇されすぎると、別のグループから不公平だと不満が出る可能性があります。

それぞれの個人が平等な機会を得られるように、公平な基準を設けて取り組むことが大切です。

多様性を押し付けない

「アファーマティブアクションは多様性の押し付けだ」という意見もあります。多様性の受け入れを強制するようなことがあると、組織内で反発する人も出てくるかもしれません。

反発する人がいる場合は、多様性のある組織にする利点や意義などを伝え、理解を促す取り組みも求められます。無理に押しつけるのではなく、自然な形で組織に多様性が定着するような働きかけが必要です。

逆差別をしない

アメリカなどで問題になっているように、アファーマティブアクションが逆差別を助長する可能性があります。マイノリティーへの救済や措置が、多数派への差別につながりかねないのです。

すべての人が公正な視点で評価され、不利益を受けることのないよう、全体のバランスを見ながら施策の計画・実行をしなければなりません。

個人の能力や適性で評価する

アファーマティブアクションで設けた優遇枠の人数を埋めるために、個人の能力や適性を無視して評価されることがあります。それぞれの人材が持つ能力や適性、実力ではなく、マイノリティーであるかどうかが合否の基準になってしまうのは避けなければなりません。

個人の能力や適性を考慮しないと、入学や採用後の環境があわず、活躍できないといったことも起こり得ます。

「特定の集団に属しているから」という理由だけではなく、個人の能力や適性に着目し、十分に評価することが重要です。公平な視点での評価基準を設定し、それぞれの人が能力を発揮し、活躍できるように環境を整えることが格差の解消につながります。

アファーマティブアクションで不平等を取り除いた組織づくりを

平等な社会のイメージ
アファーマティブアクションの概要や事例、取り組み方などを解説しました。社会全体で特定の集団に対する不平等や差別を改め、公平な機会均等を実現できるよう取り組む必要があります。

積極的にマイノリティーへの措置を実施することで、多様性を促進したり、公平な活躍の機会を与えたりできますが、一方の多数派が不利にならないように配慮しなくてはなりません。公平な視点での基準設定や評価が求められます。

また、アファーマティブアクションを実施する際、個人が持つ能力や適性を考慮することも忘れてはなりません。マイノリティーだからという基準ではなく、個人の内面まで見て評価することが重要になります。

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