変形労働時間制とは、通常の労働時間制とは異なる労働時間制度のことです。ライフスタイルの多様化によって、さまざまな労働時間の導入が進んでいます。
本記事では、変形労働時間制の定義や種類、導入する際のメリット・デメリット、自社で導入する際の流れなどをくわしく解説します。「積極的に自社で導入していきたい」とお考えの方はぜひ参考にしてください。
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▼この記事でわかること
変形労働時間制とは?定義を確認「変形労働時間制」とは、通常の労働時間制とは異なる労働時間制度のことです。
日本では労働基準法により、労働者が働く時間(法定労働時間)は1日8時間・週40時間が上限と定められています。これを超える場合には残業(時間外労働)となり、残業代(時間外勤務手当)の支給が必要となります。
一方で、業種によっては閑散期と繁忙期があり、タイミングによっては業務量が大きく異なる場合もあります。そのような場合に労使協定や就業規則で定めることによって「1日8時間・週40時間」の枠を柔軟に調整できるのが変形労働時間制です。
商業や接客娯楽業など一部業種で、常時10人未満の労働者(アルバイト等も含む)を使用する事業場については、週44時間の特例があります。本記事では便宜上、法定労働時間については1日8時間・週40時間と記載します。変形労働時間制とほかの労働時間制度との違い変形労働時間制以外の労働時間制度は以下のとおりです。- 通常の労働時間制(固定労働時間制)
- シフト制
通常の労働時間制(固定労働時間制)
通常の労働時間制は、労働基準法に原則として規定されている「1日8時間・週40時間以内」と「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」を守った勤務形態です。固定労働時間制という呼称もあります。
具体的には「1日8時間勤務・完全週休2日」や「平日7時間10分勤務・土曜4時間勤務・日曜休み(週39時間50分)」などの勤務時間が考えられます。
1日の労働時間が8時間を超えた場合、または1週間の労働時間が40時間を超えた場合は、その超過した時間について原則25%割り増しした残業代の支払いが必須です。シフト制
一般的に「シフト制」と呼ばれる働き方は、サービス業や製造業、医療現場、介護施設などで多く見られます。雇用契約では具体的な労働日・時間を定めず、「1カ月ごと」や「1週間ごと」など、一定期間内の勤務シフトをその都度決めます。
シフト制は勤務形態の1つに過ぎず、労働基準法に定められた労働時間制度にはあたりません。そのため、労働時間については「1日8時間・週40時間以内」の原則が適用されます。この枠を超えた分に関しては、通常どおり残業代として割り増しの賃金を支払う必要があります。
なおシフト制と変形労働時間制を同時に導入することは可能です。変形労働時間制の種類変形労働時間制は、一定期間(1カ月、1年、1週間)を平均して、1週間当たりの平均労働時間が原則40時間を超えない範囲で、特定の日または週に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて、本来割り増しとなる残業代の支給なしに労働させることができる制度です。
変形労働時間制の種類は以下のとおりです。- 1カ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- フレックスタイム制
それぞれの特徴を見ていきましょう。1カ月単位の変形労働時間制
2023年に厚生労働省が公開した「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」の調査によると、変形労働時間制のなかでもっとも適用されている労働者で多いのが「1カ月単位の変形労働時間制」です。「1日8時間、1週間40時間」の上限を取り払う代わりに、1カ月内で1週間ごとの平均労働時間を40時間に収めるというのがこの制度です。
たとえば月初が忙しい企業の場合は、ある月の1週目の労働時間を50時間、2週目を30時間、ほかの週を40時間にできます。1週目は40時間を超えていますが、月内で平均すると1週間の労働時間は40時間となります。
1カ月単位の変形労働時間制では、月ごとの法定労働時間が発生し、これを超えた場合は残業代を支給しなければなりません。たとえば1月や3月など、31日まである月の場合は、177.1時間(40時間÷7日×31日)が法定労働時間となります。
なお、この場合も休日については「週1日または4週4日」以上を厳守する必要があります。また1カ月単位の変形労働時間制の導入に、業種などの制限はありません。1年単位の変形労働時間制
「1年単位の変形労働時間制」は、対象期間が1カ月超・1年以内で「1日8時間、1週間40時間」の上限を取り払う労働時間制度です。「1カ月単位の変形労働時間制」との違いとして「週平均の労働時間」を計算する際、1カ月内の平均ではなく対象期間内の平均を見る点が挙げられます。
また「1カ月単位」の場合は日ごと・1週間ごとの労働時間(平均ではなく実数)に制限はありませんが、「1年単位」では「1日10時間・1週間52時間」という縛りがあります。
こちらも業種などの制限はないため、季節によって業務量の差が激しい業種で導入すると効果的でしょう。休日は最低でも「週1日」の制限があります。ただし、業務が特に繁忙な時期を「特定期間」に設定することで、最大12日まで連続して勤務日にすることも可能です。1週間単位の非定型的変形労働時間制
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、労働者数30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店でのみ導入が認められている制度です。1週40時間の制限はそのままに、1日の労働時間を10時間にまで延長できます。
「1カ月単位」では期間開始前に各日・各週の労働時間(シフト)をあらかじめ決め、1カ月の期間が始まる前に労働者に周知する必要があります。また、このシフトを会社側の都合で変更するのは原則認められていません。
一方で「1週間単位」ではシフトを1週間ごとに決めて周知できるため、業務の直前にならないと繁忙・閑散が分からない業種に適しています。フレックスタイム制
フレックスタイム制は、あらかじめ「清算期間」とその期間における総労働時間を決めたうえで、毎日の出退勤時刻や働く時間を労働者が⾃由に決定できる制度です。
たとえば清算期間を1カ月にした場合、総労働時間は最大で177.1時間(31日までの月の場合)に設定できます。これを超えた分は、残業代を支給しなければなりません。
休日は「週1日または4週4日」以上にする必要があります。必ず勤務しなければならない「コアタイム」を設定することも可能です。変形労働時間制を導入するメリット変形労働時間制を導入するメリットは、以下のとおりです。- 多様な働き方に対応できる
- 業務の効率化につながる
- 採用しやすくなる
- 残業代を減らせる
- 企業のイメージ向上につながる
- 従業員のモチベーションにつながる
それぞれのメリットを見ていきましょう。多様な働き方に対応できる
変形労働時間制の導入により、従業員は多様な働き方ができるようになります。
繁忙期は1日8時間以上働かなければならない日も出てきますが、閑散期のシーズンは短時間勤務や休日を設けて従業員のリフレッシュを図れます。
また、フレックスタイム制は自身の予定も考慮できるため、従業員が働きやすい環境を実現できます。たとえば子育て中の人であれば、子どもの予定に合わせて勤務時間を設定できます。それ以外の人も自身の予定に合わせて早く退勤したり、遅く出勤したりできるため、さまざまな働き方に対応できます。業務の効率化につながる
変形労働時間制は業務の効率化につながります。時期によって業務量に差がある業種で、年間を通じて労働時間が同じ通常の労働時間制度を採用した場合、業務が少ない閑散期にはいわゆる「暇な時間」が出てきてしまいがちです。
変形労働時間制を導入することで、閑散期の労働時間を減らすことができるため、無駄なくメリハリのある効率的な働き方を実現できます。採用しやすくなる
変形労働時間制、とくにフレックスタイム制は従業員にとってもメリットがあるため、採用時に会社の強みとしてアピールできます。残業代を減らせる
企業側にとって最大のメリットとも言えるのが、残業代(時間外勤務手当)のコスト削減です。
通常の労働時間制では「1日8時間・週40時間」を超えた分は、必ず25%以上割り増しの残業代を支給する必要があります。一方、変形労働時間制(フレックスタイム以外)では、繁忙期と閑散期で労働時間を調整するため、年間を通じた全体の残業代を削減できます。
またフレックスタイム制でも、導入後は総労働時間が減少する効果も期待できるため、企業として支出する残業代の削減につながります。企業のイメージ向上につながる
変形労働時間制のなかでも特にフレックスタイム制は、企業が従業員を大切にしている印象を与えることができ、企業イメージ向上につながります。
求職者の中には、仕事を探す際の条件の1つとしてフレックスタイム制を導入しているかどうかを見る人もいます。優秀な社員の獲得や引き留めに効果があると言えます。従業員のモチベーションにつながる
変形労働時間制を導入することで、閑散期には労働時間が短くなるほか、休暇が取得しやすくなるため、従業員の仕事に対するモチベーションにつながります。離職率の低下にも一役買うと考えられます。変形労働時間制を導入するデメリット一方、変形労働時間制にはデメリットもあります。
変形労働時間制のデメリットは以下のとおりです。- 人員やスケジュールの調整が大変
- 運用コストがかかる
- 導入には労使の合意が必要
- 従業員の残業代が減る
- 会議などを実施しにくくなる
人員やスケジュール調整が大変
変形労働時間制は、法で原則として定められた法定労働時間を柔軟に運用できる制度です。原則から外れる、いわば例外的な制度なため、労務管理上留意すべき点が増えます。
たとえば「1カ月単位の変形労働時間制」の場合、対象期間(1カ月)が始まる前までには勤務スケジュールを決めておかなければいけません。また残業代の計算も通常の労働時間制とは異なるため、より細かい対応が必要です。運用コストがかかる
労務管理が複雑になるため、会社の規模や対象従業員の人数によっては、スケジュール管理のために新たな人的リソースを割く必要が出てくる可能性もあります。また変形労働時間制に対応した勤怠管理システムを新たに導入したり、更新したりする必要もあります。
このように、導入や運用によりコストがかかるのはデメリットと言えます。導入には労使の合意が必要
変形労働時間制の導入には、原則として労使協定の締結が必要です。従業員側の合意なしでは取り入れることはできません。
また、就業規則や労使協定を労働者に周知することも義務付けられています。従業員の残業代が減る
企業側のメリットとして「残業代を減らせる」を挙げましたが、残業代の減少は従業員から見ればデメリットです。特に導入後に月々の手取りや年収が減ってしまう場合には、従業員が抱く不満は小さくないと言えます。
また、1日8時間以上働かなければならない日が出てくるため、体力面での不安を感じる従業員や、プライベートとの兼ね合いで不満を抱く従業員が出てくる可能性もあります。会議などを実施しにくくなる
フレックスタイム制では、必ず出勤を求める「コアタイム」以外の時間帯に会社が労働を命令することはできません。
そのため社員が必ず出勤している時間帯が限定され、会議など複数の社員が集まって進める業務の実施に支障が出る恐れがあります。自社で変形労働時間制を導入する際の流れここからは、自社で変形労働時間制(1カ月単位・1年単位・1週間単位非定型)の導入を検討している方向けに、導入までのフローをご紹介します。ここでご紹介するのは一般的な内容ですので、くわしくは社労士や管轄の労働基準監督署にご相談ください。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
3.対象期間・特定期間を決定する
4.労働時間・労働日を決定する
5.就業規則を整備する
6.労使協定を締結する
7.労働基準監督署に届出を提出する
8.従業員に周知する
9.適切な管理・経過観察を行う
なお、4形態ある変形労働時間制のうち「フレックスタイム制」は導入時の流れが大きく異なるため、次の章で説明します。1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
先述のとおり、変形労働時間制はメリットだけではなく、デメリットも多くあります。
まずは導入にあたってメリットのほうが大きいか確認するためにも、実態調査を行いましょう。
従業員の勤務時間などが記録された勤怠表をもとに、①どの部署の従業員が②どの時期に③どのくらい時間外労働をしているかを確認し、実態を把握します。
続いて、変形労働時間制を導入する場合としない場合での支出の差などを試算し、メリットが大きいことが確認できたら、導入に向けて本格的に動き出せます。2.対象者やどの制度を導入するか決定する
変形労働時間制は、全従業員に一斉に適用させる必要はありません。時期により業務量の偏りがある従業員のみ適用できます。ニーズに応じて対象範囲を確定させましょう。
また変形労働時間制は、先述のとおり4種類の制度に分かれています。どの制度を適用するかも、早い段階で確定させておくとよいでしょう。
なお、18歳以下の年少者や妊産婦に変形労働時間制を適用させる場合は、さらに厳しい条件があるため注意が必要です。3.対象期間、特定期間を決定する
変形労働時間制を適用させる対象期間※を決定します。「1カ月単位」と「1年単位」はいずれも、それぞれの単位期間以内を対象期間とすることができるため、必ずしも1カ月や1年にする必要はありません。
「1カ月単位」で対象期間を1カ月にする場合、開始日は月の途中にしても問題ありません。
「1年単位」では、とくに業務が忙しい時期に特定期間を設定できます。通常は週に1日以上の休日を設ける必要がありますが、特定期間では最大12日まで連続して勤務日にできます。
「1週間単位」はほかの2つと違い、対象期間を定める義務はありません。
※対象期間は「変形期間」という場合もあります。4.労働時間・労働日を決定する
具体的に、勤務を割り振る日や時間を決めます。勤怠表をもとに、繁忙期の労働時間は何時間にまで増やし、閑散期の労働時間を何時間まで減らせるかを検討します。
「1カ月単位」では各週・各日の労働時間をあらかじめ定めなければなりません。
「1年単位」では以下の内容を決めます。
1.最初の期間における労働日
2.労働日ごとの労働時間
3.最初の期間を除く各期間における労働日数
4.最初の期間を除く各期間における総労働時間
「1週間単位」では週ごとに労働時間を決定し、事前にシフトを従業員に通知します。通知後は、緊急のやむを得ない事由の場合のみ、前日までに通知すれば変更できます。この「緊急のやむを得ない事由」は台風など、天候の急変によるものに限られます。
労働時間と労働日は原則として後から変更することができません。現場の従業員とも相談し精査しましょう。
5.就業規則を整備する
対象者や適用制度、労働時間などが決まったら、就業規則への記載が必要です。就業規則への記載が必要な事項は制度により若干異なりますが、基本的には以下のとおりです。- 対象労働者の範囲
- 対象期間および起算日
- 労働日および労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間
なお「1カ月単位」の場合は、就業規則もしくは後述する労使協定のどちらかで必要事項を定めれば導入が可能です。6.労使協定を締結する
先述のとおり「1カ月単位」では就業規則か労使規定のどちらかで必要事項を定めれば、制度を導入できます。一方「1年単位」と「1週間単位」に関しては、必ず就業規則への記載と労使協定の締結の両方が必要です。
労使協定の労働者側の締結者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労組となります。労働者の過半数で組織する労組がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を立てます。
過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の締結に関わることになります。「変形労働時間制の導入に関わる労使協定の締結のために」代表者を選出することを明確に公示し、民主的な方法で決定しましょう。7.労働基準監督署に届出を提出する
就業規則や労使協定、事業所などの届出を管轄する労働基準監督署に提出します。また「変形労働時間制に関する協定届」も作成し、提出する必要があります。
「1年単位」では、対象期間中のカレンダーの提出が求められることもあるため、あらかじめ準備するか事前に問い合わせることをおすすめします。8.従業員に周知する
労働基準監督署への届出が済んだら、従業員に就業規則や労使協定で定めた内容を改めて周知しましょう。周知の方法は以下のように定められています。- 各事業所の見やすい場所に常時掲示、または備え付ける
- 書面を印刷し、交付する
- 電子データで保管する場合は、全従業員がいつでもアクセスし閲覧できるようにする
就業規則などの文面は難しいと感じられる場合もあるため、できるだけわかりやすく、丁寧に説明するとよいでしょう。書面に加え、研修や会議などで説明することも検討してください。9.適切な管理・経過観察を行う
運用開始後は、適切に運用されているかどうか確認することが大切です。勤務時間が設定どおりになっているか、とくに導入当初は細かく確認しましょう。
また、変形労働時間制を導入すると残業代の計算が煩雑になります。勤怠管理や給与計算のソフトが変形労働時間制に対応しているか確認し、非対応の場合は更新を検討してください。
従業員はもとより、給与や労務の担当者は制度を完璧に理解していないと、ミスが起きがちです。定期的に研修を行うなどして徹底しましょう。自社でフレックスタイム制を導入する際の流れ続いて、フレックスタイム制を導入する際のフローをご紹介します。
1.導入の目的やメリットを確認する
2.対象者を決定する
3.清算期間や労働時間を決定する
4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
6.従業員への周知、適切な管理を行う
こちらもそれぞれの工程を見ていきましょう。1.導入の目的やメリットを確認する
フレックスタイム制を導入すると、従業員は個々の実情に合わせてより柔軟な働き方ができるようになるというメリットがあります。求人の際に企業にとって大きなアドバンテージとなるうえに、従業員の満足度も高まる効果が期待できます。さらに時間外勤務を減らす効果もあります。
一方で、企業側にとっては労務管理がより複雑になるというデメリットがあります。またサービス業や製造現場など、フレックスタイム制の導入が向いていない業種もあります。
一度導入すると、制度を廃止する際には大きな反発が出ることが予想されます。フレックスタイム制の導入にあたっては、目的やメリットを整理してよく検討しましょう。2.対象者を決定する
フレックスタイム制は、全従業員に一斉に適用する必要はありません。フレックスタイム制に適した部署や業務内容の従業員に対象を絞って導入することもできます。あらかじめ対象の範囲をある程度確定しておくと、その後の流れがスムーズになります。
先輩からの指導が必要な新入社員なども、一定期間は制度の対象外とするのも有効です。3.清算期間や労働時間を決定する
フレックスタイム制は、あらかじめ働く時間(総労働時間)を決めたうえで、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定できる制度です。
この総労働時間は、就業規則で定める「清算期間」ごとの数字となります。そのためフレックスタイム制を導入するにあたっては、清算期間とその期間中の総労働時間を決定する必要があります。総労働時間は、法定労働時間の枠内に収める必要があります。清算期間は、最大3カ月です。
また総労働時間と関連して、年次有給休暇を計算する際などの基準となる1日の標準労働時間も確定させます。4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
フレックスタイム制では、いつ出社/退社してもよい時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず勤務しなければならない時間帯「コアタイム」を規定します。たとえば、以下のように設定します。
午前6時~午前10時:フレキシブルタイム
午前10時~午後3時:コアタイム(うち1時間休憩)
午後3時~午後8時:フレキシブルタイム
コアタイムを設定せず、全時間帯をフレキシブルタイムにすることも可能です。5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
フレックスタイムを導入する場合、就業規則への明記と労使協定の締結の両方が必要です。
記載が必要なのは、対象者の範囲や清算期間、総労働時間、1日の標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯です。
労使協定の労働者側の代表は、過半数の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を民主的な方法で立てます。
また清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定を届ける必要があります。1カ月以内の場合は提出不要です。6.従業員への周知、適切な管理を行う
導入が決まったら、できるだけ早い段階で従業員に周知します。フレックスタイム制は、従業員一人一人が労働時間や制度に対して高い意識を持つことが求められます。就業規則や労使協定で定めた内容を、掲示などの定められた方法で周知するのに加え、できるだけわかりやすい方法で説明するよう心掛けましょう。
またフレックスタイム制を導入すると、労務管理や残業代の計算が複雑になります。担当者が制度をしっかりと把握するとともに、対応した労務管理システムや給与計算システムの導入でミスを未然に防ぐのがおすすめです。変形労働時間制を導入する際の注意点変形労働時間制を導入する際の注意点は以下のとおりです。- 労働日数は年280日が限度である
- 労働時間に上限がある
- 連勤日数にも上限がある
- 時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
労働日数は年280日が限度である
「1年単位」で対象期間が3カ月を超える場合、労働日数に上限があります。対象期間が1年間なら、労働日数は最大で280日と定められています。3カ月超1年未満の場合は『280×対象期間中の日数÷365(閏年は366)』で計算します。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。労働時間に上限がある
変形労働時間制は1週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日や1週間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。ただし「1年単位」と「1週間単位」では、1日の労働時間は最大10時間に制限されています。さらに「1年単位」の場合はこれに加えて、1週間の労働時間も最大52時間の規定があります。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。連勤日数にも上限がある
連続で勤務できる日数にも制限があるため、注意が必要です。「1年単位」では原則として6日が上限で、特定期間に限り12日が上限となります。特定期間の長さや回数に定めはありませんが、「対象期間のうち相当部分を特定期間にする」のは法の趣旨に反するため認められません。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
変形労働時間制は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を弾力的に調整できる制度です。そのため労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、必ず残業代(時間外勤務手当)を支払わなければならないというわけではありません。
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」- 本来設定した1日の労働時間が8時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1日の労働時間が8時間以下の場合、8時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間以下の場合、40時間を超えた分
- 対象期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
「フレックスタイム制」- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
よくある質問最後に、変形労働時間制に関するよくある質問にQ&A形式でご紹介します。Q.36協定の締結は必要?
労働者に時間外労働や休日をさせる場合、労使間で「36協定」と呼ばれる協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。Q.1週間の法定労働時間は40時間?44時間?
1週間の法定労働時間は原則として40時間です。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。Q.「1週間単位」はどのような事業場が導入できる?
「1週間単位の非定型変形労働時間制」は、導入できる事業場が限定されています。①小売業、旅館、料理店および飲食店で、②労働者数30人未満であること─が条件です。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。変形労働時間制のメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。
日本では労働基準法により、労働者が働く時間(法定労働時間)は1日8時間・週40時間が上限と定められています。これを超える場合には残業(時間外労働)となり、残業代(時間外勤務手当)の支給が必要となります。
一方で、業種によっては閑散期と繁忙期があり、タイミングによっては業務量が大きく異なる場合もあります。そのような場合に労使協定や就業規則で定めることによって「1日8時間・週40時間」の枠を柔軟に調整できるのが変形労働時間制です。
商業や接客娯楽業など一部業種で、常時10人未満の労働者(アルバイト等も含む)を使用する事業場については、週44時間の特例があります。本記事では便宜上、法定労働時間については1日8時間・週40時間と記載します。
変形労働時間制以外の労働時間制度は以下のとおりです。
- 通常の労働時間制(固定労働時間制)
- シフト制
通常の労働時間制(固定労働時間制)
通常の労働時間制は、労働基準法に原則として規定されている「1日8時間・週40時間以内」と「毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日」を守った勤務形態です。固定労働時間制という呼称もあります。
具体的には「1日8時間勤務・完全週休2日」や「平日7時間10分勤務・土曜4時間勤務・日曜休み(週39時間50分)」などの勤務時間が考えられます。
1日の労働時間が8時間を超えた場合、または1週間の労働時間が40時間を超えた場合は、その超過した時間について原則25%割り増しした残業代の支払いが必須です。
具体的には「1日8時間勤務・完全週休2日」や「平日7時間10分勤務・土曜4時間勤務・日曜休み(週39時間50分)」などの勤務時間が考えられます。
1日の労働時間が8時間を超えた場合、または1週間の労働時間が40時間を超えた場合は、その超過した時間について原則25%割り増しした残業代の支払いが必須です。
シフト制
一般的に「シフト制」と呼ばれる働き方は、サービス業や製造業、医療現場、介護施設などで多く見られます。雇用契約では具体的な労働日・時間を定めず、「1カ月ごと」や「1週間ごと」など、一定期間内の勤務シフトをその都度決めます。
シフト制は勤務形態の1つに過ぎず、労働基準法に定められた労働時間制度にはあたりません。そのため、労働時間については「1日8時間・週40時間以内」の原則が適用されます。この枠を超えた分に関しては、通常どおり残業代として割り増しの賃金を支払う必要があります。
なおシフト制と変形労働時間制を同時に導入することは可能です。
シフト制は勤務形態の1つに過ぎず、労働基準法に定められた労働時間制度にはあたりません。そのため、労働時間については「1日8時間・週40時間以内」の原則が適用されます。この枠を超えた分に関しては、通常どおり残業代として割り増しの賃金を支払う必要があります。
なおシフト制と変形労働時間制を同時に導入することは可能です。
変形労働時間制の種類変形労働時間制は、一定期間(1カ月、1年、1週間)を平均して、1週間当たりの平均労働時間が原則40時間を超えない範囲で、特定の日または週に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて、本来割り増しとなる残業代の支給なしに労働させることができる制度です。
変形労働時間制の種類は以下のとおりです。- 1カ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- フレックスタイム制
それぞれの特徴を見ていきましょう。1カ月単位の変形労働時間制
2023年に厚生労働省が公開した「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」の調査によると、変形労働時間制のなかでもっとも適用されている労働者で多いのが「1カ月単位の変形労働時間制」です。「1日8時間、1週間40時間」の上限を取り払う代わりに、1カ月内で1週間ごとの平均労働時間を40時間に収めるというのがこの制度です。
たとえば月初が忙しい企業の場合は、ある月の1週目の労働時間を50時間、2週目を30時間、ほかの週を40時間にできます。1週目は40時間を超えていますが、月内で平均すると1週間の労働時間は40時間となります。
1カ月単位の変形労働時間制では、月ごとの法定労働時間が発生し、これを超えた場合は残業代を支給しなければなりません。たとえば1月や3月など、31日まである月の場合は、177.1時間(40時間÷7日×31日)が法定労働時間となります。
なお、この場合も休日については「週1日または4週4日」以上を厳守する必要があります。また1カ月単位の変形労働時間制の導入に、業種などの制限はありません。1年単位の変形労働時間制
「1年単位の変形労働時間制」は、対象期間が1カ月超・1年以内で「1日8時間、1週間40時間」の上限を取り払う労働時間制度です。「1カ月単位の変形労働時間制」との違いとして「週平均の労働時間」を計算する際、1カ月内の平均ではなく対象期間内の平均を見る点が挙げられます。
また「1カ月単位」の場合は日ごと・1週間ごとの労働時間(平均ではなく実数)に制限はありませんが、「1年単位」では「1日10時間・1週間52時間」という縛りがあります。
こちらも業種などの制限はないため、季節によって業務量の差が激しい業種で導入すると効果的でしょう。休日は最低でも「週1日」の制限があります。ただし、業務が特に繁忙な時期を「特定期間」に設定することで、最大12日まで連続して勤務日にすることも可能です。1週間単位の非定型的変形労働時間制
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、労働者数30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店でのみ導入が認められている制度です。1週40時間の制限はそのままに、1日の労働時間を10時間にまで延長できます。
「1カ月単位」では期間開始前に各日・各週の労働時間(シフト)をあらかじめ決め、1カ月の期間が始まる前に労働者に周知する必要があります。また、このシフトを会社側の都合で変更するのは原則認められていません。
一方で「1週間単位」ではシフトを1週間ごとに決めて周知できるため、業務の直前にならないと繁忙・閑散が分からない業種に適しています。フレックスタイム制
フレックスタイム制は、あらかじめ「清算期間」とその期間における総労働時間を決めたうえで、毎日の出退勤時刻や働く時間を労働者が⾃由に決定できる制度です。
たとえば清算期間を1カ月にした場合、総労働時間は最大で177.1時間(31日までの月の場合)に設定できます。これを超えた分は、残業代を支給しなければなりません。
休日は「週1日または4週4日」以上にする必要があります。必ず勤務しなければならない「コアタイム」を設定することも可能です。変形労働時間制を導入するメリット変形労働時間制を導入するメリットは、以下のとおりです。- 多様な働き方に対応できる
- 業務の効率化につながる
- 採用しやすくなる
- 残業代を減らせる
- 企業のイメージ向上につながる
- 従業員のモチベーションにつながる
それぞれのメリットを見ていきましょう。多様な働き方に対応できる
変形労働時間制の導入により、従業員は多様な働き方ができるようになります。
繁忙期は1日8時間以上働かなければならない日も出てきますが、閑散期のシーズンは短時間勤務や休日を設けて従業員のリフレッシュを図れます。
また、フレックスタイム制は自身の予定も考慮できるため、従業員が働きやすい環境を実現できます。たとえば子育て中の人であれば、子どもの予定に合わせて勤務時間を設定できます。それ以外の人も自身の予定に合わせて早く退勤したり、遅く出勤したりできるため、さまざまな働き方に対応できます。業務の効率化につながる
変形労働時間制は業務の効率化につながります。時期によって業務量に差がある業種で、年間を通じて労働時間が同じ通常の労働時間制度を採用した場合、業務が少ない閑散期にはいわゆる「暇な時間」が出てきてしまいがちです。
変形労働時間制を導入することで、閑散期の労働時間を減らすことができるため、無駄なくメリハリのある効率的な働き方を実現できます。採用しやすくなる
変形労働時間制、とくにフレックスタイム制は従業員にとってもメリットがあるため、採用時に会社の強みとしてアピールできます。残業代を減らせる
企業側にとって最大のメリットとも言えるのが、残業代(時間外勤務手当)のコスト削減です。
通常の労働時間制では「1日8時間・週40時間」を超えた分は、必ず25%以上割り増しの残業代を支給する必要があります。一方、変形労働時間制(フレックスタイム以外)では、繁忙期と閑散期で労働時間を調整するため、年間を通じた全体の残業代を削減できます。
またフレックスタイム制でも、導入後は総労働時間が減少する効果も期待できるため、企業として支出する残業代の削減につながります。企業のイメージ向上につながる
変形労働時間制のなかでも特にフレックスタイム制は、企業が従業員を大切にしている印象を与えることができ、企業イメージ向上につながります。
求職者の中には、仕事を探す際の条件の1つとしてフレックスタイム制を導入しているかどうかを見る人もいます。優秀な社員の獲得や引き留めに効果があると言えます。従業員のモチベーションにつながる
変形労働時間制を導入することで、閑散期には労働時間が短くなるほか、休暇が取得しやすくなるため、従業員の仕事に対するモチベーションにつながります。離職率の低下にも一役買うと考えられます。変形労働時間制を導入するデメリット一方、変形労働時間制にはデメリットもあります。
変形労働時間制のデメリットは以下のとおりです。- 人員やスケジュールの調整が大変
- 運用コストがかかる
- 導入には労使の合意が必要
- 従業員の残業代が減る
- 会議などを実施しにくくなる
人員やスケジュール調整が大変
変形労働時間制は、法で原則として定められた法定労働時間を柔軟に運用できる制度です。原則から外れる、いわば例外的な制度なため、労務管理上留意すべき点が増えます。
たとえば「1カ月単位の変形労働時間制」の場合、対象期間(1カ月)が始まる前までには勤務スケジュールを決めておかなければいけません。また残業代の計算も通常の労働時間制とは異なるため、より細かい対応が必要です。運用コストがかかる
労務管理が複雑になるため、会社の規模や対象従業員の人数によっては、スケジュール管理のために新たな人的リソースを割く必要が出てくる可能性もあります。また変形労働時間制に対応した勤怠管理システムを新たに導入したり、更新したりする必要もあります。
このように、導入や運用によりコストがかかるのはデメリットと言えます。導入には労使の合意が必要
変形労働時間制の導入には、原則として労使協定の締結が必要です。従業員側の合意なしでは取り入れることはできません。
また、就業規則や労使協定を労働者に周知することも義務付けられています。従業員の残業代が減る
企業側のメリットとして「残業代を減らせる」を挙げましたが、残業代の減少は従業員から見ればデメリットです。特に導入後に月々の手取りや年収が減ってしまう場合には、従業員が抱く不満は小さくないと言えます。
また、1日8時間以上働かなければならない日が出てくるため、体力面での不安を感じる従業員や、プライベートとの兼ね合いで不満を抱く従業員が出てくる可能性もあります。会議などを実施しにくくなる
フレックスタイム制では、必ず出勤を求める「コアタイム」以外の時間帯に会社が労働を命令することはできません。
そのため社員が必ず出勤している時間帯が限定され、会議など複数の社員が集まって進める業務の実施に支障が出る恐れがあります。自社で変形労働時間制を導入する際の流れここからは、自社で変形労働時間制(1カ月単位・1年単位・1週間単位非定型)の導入を検討している方向けに、導入までのフローをご紹介します。ここでご紹介するのは一般的な内容ですので、くわしくは社労士や管轄の労働基準監督署にご相談ください。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
3.対象期間・特定期間を決定する
4.労働時間・労働日を決定する
5.就業規則を整備する
6.労使協定を締結する
7.労働基準監督署に届出を提出する
8.従業員に周知する
9.適切な管理・経過観察を行う
なお、4形態ある変形労働時間制のうち「フレックスタイム制」は導入時の流れが大きく異なるため、次の章で説明します。1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
先述のとおり、変形労働時間制はメリットだけではなく、デメリットも多くあります。
まずは導入にあたってメリットのほうが大きいか確認するためにも、実態調査を行いましょう。
従業員の勤務時間などが記録された勤怠表をもとに、①どの部署の従業員が②どの時期に③どのくらい時間外労働をしているかを確認し、実態を把握します。
続いて、変形労働時間制を導入する場合としない場合での支出の差などを試算し、メリットが大きいことが確認できたら、導入に向けて本格的に動き出せます。2.対象者やどの制度を導入するか決定する
変形労働時間制は、全従業員に一斉に適用させる必要はありません。時期により業務量の偏りがある従業員のみ適用できます。ニーズに応じて対象範囲を確定させましょう。
また変形労働時間制は、先述のとおり4種類の制度に分かれています。どの制度を適用するかも、早い段階で確定させておくとよいでしょう。
なお、18歳以下の年少者や妊産婦に変形労働時間制を適用させる場合は、さらに厳しい条件があるため注意が必要です。3.対象期間、特定期間を決定する
変形労働時間制を適用させる対象期間※を決定します。「1カ月単位」と「1年単位」はいずれも、それぞれの単位期間以内を対象期間とすることができるため、必ずしも1カ月や1年にする必要はありません。
「1カ月単位」で対象期間を1カ月にする場合、開始日は月の途中にしても問題ありません。
「1年単位」では、とくに業務が忙しい時期に特定期間を設定できます。通常は週に1日以上の休日を設ける必要がありますが、特定期間では最大12日まで連続して勤務日にできます。
「1週間単位」はほかの2つと違い、対象期間を定める義務はありません。
※対象期間は「変形期間」という場合もあります。4.労働時間・労働日を決定する
具体的に、勤務を割り振る日や時間を決めます。勤怠表をもとに、繁忙期の労働時間は何時間にまで増やし、閑散期の労働時間を何時間まで減らせるかを検討します。
「1カ月単位」では各週・各日の労働時間をあらかじめ定めなければなりません。
「1年単位」では以下の内容を決めます。
1.最初の期間における労働日
2.労働日ごとの労働時間
3.最初の期間を除く各期間における労働日数
4.最初の期間を除く各期間における総労働時間
「1週間単位」では週ごとに労働時間を決定し、事前にシフトを従業員に通知します。通知後は、緊急のやむを得ない事由の場合のみ、前日までに通知すれば変更できます。この「緊急のやむを得ない事由」は台風など、天候の急変によるものに限られます。
労働時間と労働日は原則として後から変更することができません。現場の従業員とも相談し精査しましょう。
5.就業規則を整備する
対象者や適用制度、労働時間などが決まったら、就業規則への記載が必要です。就業規則への記載が必要な事項は制度により若干異なりますが、基本的には以下のとおりです。- 対象労働者の範囲
- 対象期間および起算日
- 労働日および労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間
なお「1カ月単位」の場合は、就業規則もしくは後述する労使協定のどちらかで必要事項を定めれば導入が可能です。6.労使協定を締結する
先述のとおり「1カ月単位」では就業規則か労使規定のどちらかで必要事項を定めれば、制度を導入できます。一方「1年単位」と「1週間単位」に関しては、必ず就業規則への記載と労使協定の締結の両方が必要です。
労使協定の労働者側の締結者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労組となります。労働者の過半数で組織する労組がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を立てます。
過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の締結に関わることになります。「変形労働時間制の導入に関わる労使協定の締結のために」代表者を選出することを明確に公示し、民主的な方法で決定しましょう。7.労働基準監督署に届出を提出する
就業規則や労使協定、事業所などの届出を管轄する労働基準監督署に提出します。また「変形労働時間制に関する協定届」も作成し、提出する必要があります。
「1年単位」では、対象期間中のカレンダーの提出が求められることもあるため、あらかじめ準備するか事前に問い合わせることをおすすめします。8.従業員に周知する
労働基準監督署への届出が済んだら、従業員に就業規則や労使協定で定めた内容を改めて周知しましょう。周知の方法は以下のように定められています。- 各事業所の見やすい場所に常時掲示、または備え付ける
- 書面を印刷し、交付する
- 電子データで保管する場合は、全従業員がいつでもアクセスし閲覧できるようにする
就業規則などの文面は難しいと感じられる場合もあるため、できるだけわかりやすく、丁寧に説明するとよいでしょう。書面に加え、研修や会議などで説明することも検討してください。9.適切な管理・経過観察を行う
運用開始後は、適切に運用されているかどうか確認することが大切です。勤務時間が設定どおりになっているか、とくに導入当初は細かく確認しましょう。
また、変形労働時間制を導入すると残業代の計算が煩雑になります。勤怠管理や給与計算のソフトが変形労働時間制に対応しているか確認し、非対応の場合は更新を検討してください。
従業員はもとより、給与や労務の担当者は制度を完璧に理解していないと、ミスが起きがちです。定期的に研修を行うなどして徹底しましょう。自社でフレックスタイム制を導入する際の流れ続いて、フレックスタイム制を導入する際のフローをご紹介します。
1.導入の目的やメリットを確認する
2.対象者を決定する
3.清算期間や労働時間を決定する
4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
6.従業員への周知、適切な管理を行う
こちらもそれぞれの工程を見ていきましょう。1.導入の目的やメリットを確認する
フレックスタイム制を導入すると、従業員は個々の実情に合わせてより柔軟な働き方ができるようになるというメリットがあります。求人の際に企業にとって大きなアドバンテージとなるうえに、従業員の満足度も高まる効果が期待できます。さらに時間外勤務を減らす効果もあります。
一方で、企業側にとっては労務管理がより複雑になるというデメリットがあります。またサービス業や製造現場など、フレックスタイム制の導入が向いていない業種もあります。
一度導入すると、制度を廃止する際には大きな反発が出ることが予想されます。フレックスタイム制の導入にあたっては、目的やメリットを整理してよく検討しましょう。2.対象者を決定する
フレックスタイム制は、全従業員に一斉に適用する必要はありません。フレックスタイム制に適した部署や業務内容の従業員に対象を絞って導入することもできます。あらかじめ対象の範囲をある程度確定しておくと、その後の流れがスムーズになります。
先輩からの指導が必要な新入社員なども、一定期間は制度の対象外とするのも有効です。3.清算期間や労働時間を決定する
フレックスタイム制は、あらかじめ働く時間(総労働時間)を決めたうえで、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定できる制度です。
この総労働時間は、就業規則で定める「清算期間」ごとの数字となります。そのためフレックスタイム制を導入するにあたっては、清算期間とその期間中の総労働時間を決定する必要があります。総労働時間は、法定労働時間の枠内に収める必要があります。清算期間は、最大3カ月です。
また総労働時間と関連して、年次有給休暇を計算する際などの基準となる1日の標準労働時間も確定させます。4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
フレックスタイム制では、いつ出社/退社してもよい時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず勤務しなければならない時間帯「コアタイム」を規定します。たとえば、以下のように設定します。
午前6時~午前10時:フレキシブルタイム
午前10時~午後3時:コアタイム(うち1時間休憩)
午後3時~午後8時:フレキシブルタイム
コアタイムを設定せず、全時間帯をフレキシブルタイムにすることも可能です。5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
フレックスタイムを導入する場合、就業規則への明記と労使協定の締結の両方が必要です。
記載が必要なのは、対象者の範囲や清算期間、総労働時間、1日の標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯です。
労使協定の労働者側の代表は、過半数の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を民主的な方法で立てます。
また清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定を届ける必要があります。1カ月以内の場合は提出不要です。6.従業員への周知、適切な管理を行う
導入が決まったら、できるだけ早い段階で従業員に周知します。フレックスタイム制は、従業員一人一人が労働時間や制度に対して高い意識を持つことが求められます。就業規則や労使協定で定めた内容を、掲示などの定められた方法で周知するのに加え、できるだけわかりやすい方法で説明するよう心掛けましょう。
またフレックスタイム制を導入すると、労務管理や残業代の計算が複雑になります。担当者が制度をしっかりと把握するとともに、対応した労務管理システムや給与計算システムの導入でミスを未然に防ぐのがおすすめです。変形労働時間制を導入する際の注意点変形労働時間制を導入する際の注意点は以下のとおりです。- 労働日数は年280日が限度である
- 労働時間に上限がある
- 連勤日数にも上限がある
- 時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
労働日数は年280日が限度である
「1年単位」で対象期間が3カ月を超える場合、労働日数に上限があります。対象期間が1年間なら、労働日数は最大で280日と定められています。3カ月超1年未満の場合は『280×対象期間中の日数÷365(閏年は366)』で計算します。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。労働時間に上限がある
変形労働時間制は1週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日や1週間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。ただし「1年単位」と「1週間単位」では、1日の労働時間は最大10時間に制限されています。さらに「1年単位」の場合はこれに加えて、1週間の労働時間も最大52時間の規定があります。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。連勤日数にも上限がある
連続で勤務できる日数にも制限があるため、注意が必要です。「1年単位」では原則として6日が上限で、特定期間に限り12日が上限となります。特定期間の長さや回数に定めはありませんが、「対象期間のうち相当部分を特定期間にする」のは法の趣旨に反するため認められません。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
変形労働時間制は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を弾力的に調整できる制度です。そのため労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、必ず残業代(時間外勤務手当)を支払わなければならないというわけではありません。
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」- 本来設定した1日の労働時間が8時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1日の労働時間が8時間以下の場合、8時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間以下の場合、40時間を超えた分
- 対象期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
「フレックスタイム制」- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
よくある質問最後に、変形労働時間制に関するよくある質問にQ&A形式でご紹介します。Q.36協定の締結は必要?
労働者に時間外労働や休日をさせる場合、労使間で「36協定」と呼ばれる協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。Q.1週間の法定労働時間は40時間?44時間?
1週間の法定労働時間は原則として40時間です。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。Q.「1週間単位」はどのような事業場が導入できる?
「1週間単位の非定型変形労働時間制」は、導入できる事業場が限定されています。①小売業、旅館、料理店および飲食店で、②労働者数30人未満であること─が条件です。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。変形労働時間制のメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。
変形労働時間制の種類は以下のとおりです。
たとえば月初が忙しい企業の場合は、ある月の1週目の労働時間を50時間、2週目を30時間、ほかの週を40時間にできます。1週目は40時間を超えていますが、月内で平均すると1週間の労働時間は40時間となります。
1カ月単位の変形労働時間制では、月ごとの法定労働時間が発生し、これを超えた場合は残業代を支給しなければなりません。たとえば1月や3月など、31日まである月の場合は、177.1時間(40時間÷7日×31日)が法定労働時間となります。
なお、この場合も休日については「週1日または4週4日」以上を厳守する必要があります。また1カ月単位の変形労働時間制の導入に、業種などの制限はありません。
また「1カ月単位」の場合は日ごと・1週間ごとの労働時間(平均ではなく実数)に制限はありませんが、「1年単位」では「1日10時間・1週間52時間」という縛りがあります。
こちらも業種などの制限はないため、季節によって業務量の差が激しい業種で導入すると効果的でしょう。休日は最低でも「週1日」の制限があります。ただし、業務が特に繁忙な時期を「特定期間」に設定することで、最大12日まで連続して勤務日にすることも可能です。
「1カ月単位」では期間開始前に各日・各週の労働時間(シフト)をあらかじめ決め、1カ月の期間が始まる前に労働者に周知する必要があります。また、このシフトを会社側の都合で変更するのは原則認められていません。
一方で「1週間単位」ではシフトを1週間ごとに決めて周知できるため、業務の直前にならないと繁忙・閑散が分からない業種に適しています。
たとえば清算期間を1カ月にした場合、総労働時間は最大で177.1時間(31日までの月の場合)に設定できます。これを超えた分は、残業代を支給しなければなりません。
休日は「週1日または4週4日」以上にする必要があります。必ず勤務しなければならない「コアタイム」を設定することも可能です。
変形労働時間制を導入するメリットは、以下のとおりです。
- 多様な働き方に対応できる
- 業務の効率化につながる
- 採用しやすくなる
- 残業代を減らせる
- 企業のイメージ向上につながる
- 従業員のモチベーションにつながる
それぞれのメリットを見ていきましょう。
多様な働き方に対応できる
変形労働時間制の導入により、従業員は多様な働き方ができるようになります。
繁忙期は1日8時間以上働かなければならない日も出てきますが、閑散期のシーズンは短時間勤務や休日を設けて従業員のリフレッシュを図れます。
また、フレックスタイム制は自身の予定も考慮できるため、従業員が働きやすい環境を実現できます。たとえば子育て中の人であれば、子どもの予定に合わせて勤務時間を設定できます。それ以外の人も自身の予定に合わせて早く退勤したり、遅く出勤したりできるため、さまざまな働き方に対応できます。
繁忙期は1日8時間以上働かなければならない日も出てきますが、閑散期のシーズンは短時間勤務や休日を設けて従業員のリフレッシュを図れます。
また、フレックスタイム制は自身の予定も考慮できるため、従業員が働きやすい環境を実現できます。たとえば子育て中の人であれば、子どもの予定に合わせて勤務時間を設定できます。それ以外の人も自身の予定に合わせて早く退勤したり、遅く出勤したりできるため、さまざまな働き方に対応できます。
業務の効率化につながる
変形労働時間制は業務の効率化につながります。時期によって業務量に差がある業種で、年間を通じて労働時間が同じ通常の労働時間制度を採用した場合、業務が少ない閑散期にはいわゆる「暇な時間」が出てきてしまいがちです。
変形労働時間制を導入することで、閑散期の労働時間を減らすことができるため、無駄なくメリハリのある効率的な働き方を実現できます。
変形労働時間制を導入することで、閑散期の労働時間を減らすことができるため、無駄なくメリハリのある効率的な働き方を実現できます。
採用しやすくなる
変形労働時間制、とくにフレックスタイム制は従業員にとってもメリットがあるため、採用時に会社の強みとしてアピールできます。
残業代を減らせる
企業側にとって最大のメリットとも言えるのが、残業代(時間外勤務手当)のコスト削減です。
通常の労働時間制では「1日8時間・週40時間」を超えた分は、必ず25%以上割り増しの残業代を支給する必要があります。一方、変形労働時間制(フレックスタイム以外)では、繁忙期と閑散期で労働時間を調整するため、年間を通じた全体の残業代を削減できます。
またフレックスタイム制でも、導入後は総労働時間が減少する効果も期待できるため、企業として支出する残業代の削減につながります。
通常の労働時間制では「1日8時間・週40時間」を超えた分は、必ず25%以上割り増しの残業代を支給する必要があります。一方、変形労働時間制(フレックスタイム以外)では、繁忙期と閑散期で労働時間を調整するため、年間を通じた全体の残業代を削減できます。
またフレックスタイム制でも、導入後は総労働時間が減少する効果も期待できるため、企業として支出する残業代の削減につながります。
企業のイメージ向上につながる
変形労働時間制のなかでも特にフレックスタイム制は、企業が従業員を大切にしている印象を与えることができ、企業イメージ向上につながります。
求職者の中には、仕事を探す際の条件の1つとしてフレックスタイム制を導入しているかどうかを見る人もいます。優秀な社員の獲得や引き留めに効果があると言えます。
求職者の中には、仕事を探す際の条件の1つとしてフレックスタイム制を導入しているかどうかを見る人もいます。優秀な社員の獲得や引き留めに効果があると言えます。
従業員のモチベーションにつながる
変形労働時間制を導入することで、閑散期には労働時間が短くなるほか、休暇が取得しやすくなるため、従業員の仕事に対するモチベーションにつながります。離職率の低下にも一役買うと考えられます。
変形労働時間制を導入するデメリット一方、変形労働時間制にはデメリットもあります。
変形労働時間制のデメリットは以下のとおりです。- 人員やスケジュールの調整が大変
- 運用コストがかかる
- 導入には労使の合意が必要
- 従業員の残業代が減る
- 会議などを実施しにくくなる
人員やスケジュール調整が大変
変形労働時間制は、法で原則として定められた法定労働時間を柔軟に運用できる制度です。原則から外れる、いわば例外的な制度なため、労務管理上留意すべき点が増えます。
たとえば「1カ月単位の変形労働時間制」の場合、対象期間(1カ月)が始まる前までには勤務スケジュールを決めておかなければいけません。また残業代の計算も通常の労働時間制とは異なるため、より細かい対応が必要です。運用コストがかかる
労務管理が複雑になるため、会社の規模や対象従業員の人数によっては、スケジュール管理のために新たな人的リソースを割く必要が出てくる可能性もあります。また変形労働時間制に対応した勤怠管理システムを新たに導入したり、更新したりする必要もあります。
このように、導入や運用によりコストがかかるのはデメリットと言えます。導入には労使の合意が必要
変形労働時間制の導入には、原則として労使協定の締結が必要です。従業員側の合意なしでは取り入れることはできません。
また、就業規則や労使協定を労働者に周知することも義務付けられています。従業員の残業代が減る
企業側のメリットとして「残業代を減らせる」を挙げましたが、残業代の減少は従業員から見ればデメリットです。特に導入後に月々の手取りや年収が減ってしまう場合には、従業員が抱く不満は小さくないと言えます。
また、1日8時間以上働かなければならない日が出てくるため、体力面での不安を感じる従業員や、プライベートとの兼ね合いで不満を抱く従業員が出てくる可能性もあります。会議などを実施しにくくなる
フレックスタイム制では、必ず出勤を求める「コアタイム」以外の時間帯に会社が労働を命令することはできません。
そのため社員が必ず出勤している時間帯が限定され、会議など複数の社員が集まって進める業務の実施に支障が出る恐れがあります。自社で変形労働時間制を導入する際の流れここからは、自社で変形労働時間制(1カ月単位・1年単位・1週間単位非定型)の導入を検討している方向けに、導入までのフローをご紹介します。ここでご紹介するのは一般的な内容ですので、くわしくは社労士や管轄の労働基準監督署にご相談ください。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
3.対象期間・特定期間を決定する
4.労働時間・労働日を決定する
5.就業規則を整備する
6.労使協定を締結する
7.労働基準監督署に届出を提出する
8.従業員に周知する
9.適切な管理・経過観察を行う
なお、4形態ある変形労働時間制のうち「フレックスタイム制」は導入時の流れが大きく異なるため、次の章で説明します。1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
先述のとおり、変形労働時間制はメリットだけではなく、デメリットも多くあります。
まずは導入にあたってメリットのほうが大きいか確認するためにも、実態調査を行いましょう。
従業員の勤務時間などが記録された勤怠表をもとに、①どの部署の従業員が②どの時期に③どのくらい時間外労働をしているかを確認し、実態を把握します。
続いて、変形労働時間制を導入する場合としない場合での支出の差などを試算し、メリットが大きいことが確認できたら、導入に向けて本格的に動き出せます。2.対象者やどの制度を導入するか決定する
変形労働時間制は、全従業員に一斉に適用させる必要はありません。時期により業務量の偏りがある従業員のみ適用できます。ニーズに応じて対象範囲を確定させましょう。
また変形労働時間制は、先述のとおり4種類の制度に分かれています。どの制度を適用するかも、早い段階で確定させておくとよいでしょう。
なお、18歳以下の年少者や妊産婦に変形労働時間制を適用させる場合は、さらに厳しい条件があるため注意が必要です。3.対象期間、特定期間を決定する
変形労働時間制を適用させる対象期間※を決定します。「1カ月単位」と「1年単位」はいずれも、それぞれの単位期間以内を対象期間とすることができるため、必ずしも1カ月や1年にする必要はありません。
「1カ月単位」で対象期間を1カ月にする場合、開始日は月の途中にしても問題ありません。
「1年単位」では、とくに業務が忙しい時期に特定期間を設定できます。通常は週に1日以上の休日を設ける必要がありますが、特定期間では最大12日まで連続して勤務日にできます。
「1週間単位」はほかの2つと違い、対象期間を定める義務はありません。
※対象期間は「変形期間」という場合もあります。4.労働時間・労働日を決定する
具体的に、勤務を割り振る日や時間を決めます。勤怠表をもとに、繁忙期の労働時間は何時間にまで増やし、閑散期の労働時間を何時間まで減らせるかを検討します。
「1カ月単位」では各週・各日の労働時間をあらかじめ定めなければなりません。
「1年単位」では以下の内容を決めます。
1.最初の期間における労働日
2.労働日ごとの労働時間
3.最初の期間を除く各期間における労働日数
4.最初の期間を除く各期間における総労働時間
「1週間単位」では週ごとに労働時間を決定し、事前にシフトを従業員に通知します。通知後は、緊急のやむを得ない事由の場合のみ、前日までに通知すれば変更できます。この「緊急のやむを得ない事由」は台風など、天候の急変によるものに限られます。
労働時間と労働日は原則として後から変更することができません。現場の従業員とも相談し精査しましょう。
5.就業規則を整備する
対象者や適用制度、労働時間などが決まったら、就業規則への記載が必要です。就業規則への記載が必要な事項は制度により若干異なりますが、基本的には以下のとおりです。- 対象労働者の範囲
- 対象期間および起算日
- 労働日および労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間
なお「1カ月単位」の場合は、就業規則もしくは後述する労使協定のどちらかで必要事項を定めれば導入が可能です。6.労使協定を締結する
先述のとおり「1カ月単位」では就業規則か労使規定のどちらかで必要事項を定めれば、制度を導入できます。一方「1年単位」と「1週間単位」に関しては、必ず就業規則への記載と労使協定の締結の両方が必要です。
労使協定の労働者側の締結者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労組となります。労働者の過半数で組織する労組がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を立てます。
過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の締結に関わることになります。「変形労働時間制の導入に関わる労使協定の締結のために」代表者を選出することを明確に公示し、民主的な方法で決定しましょう。7.労働基準監督署に届出を提出する
就業規則や労使協定、事業所などの届出を管轄する労働基準監督署に提出します。また「変形労働時間制に関する協定届」も作成し、提出する必要があります。
「1年単位」では、対象期間中のカレンダーの提出が求められることもあるため、あらかじめ準備するか事前に問い合わせることをおすすめします。8.従業員に周知する
労働基準監督署への届出が済んだら、従業員に就業規則や労使協定で定めた内容を改めて周知しましょう。周知の方法は以下のように定められています。- 各事業所の見やすい場所に常時掲示、または備え付ける
- 書面を印刷し、交付する
- 電子データで保管する場合は、全従業員がいつでもアクセスし閲覧できるようにする
就業規則などの文面は難しいと感じられる場合もあるため、できるだけわかりやすく、丁寧に説明するとよいでしょう。書面に加え、研修や会議などで説明することも検討してください。9.適切な管理・経過観察を行う
運用開始後は、適切に運用されているかどうか確認することが大切です。勤務時間が設定どおりになっているか、とくに導入当初は細かく確認しましょう。
また、変形労働時間制を導入すると残業代の計算が煩雑になります。勤怠管理や給与計算のソフトが変形労働時間制に対応しているか確認し、非対応の場合は更新を検討してください。
従業員はもとより、給与や労務の担当者は制度を完璧に理解していないと、ミスが起きがちです。定期的に研修を行うなどして徹底しましょう。自社でフレックスタイム制を導入する際の流れ続いて、フレックスタイム制を導入する際のフローをご紹介します。
1.導入の目的やメリットを確認する
2.対象者を決定する
3.清算期間や労働時間を決定する
4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
6.従業員への周知、適切な管理を行う
こちらもそれぞれの工程を見ていきましょう。1.導入の目的やメリットを確認する
フレックスタイム制を導入すると、従業員は個々の実情に合わせてより柔軟な働き方ができるようになるというメリットがあります。求人の際に企業にとって大きなアドバンテージとなるうえに、従業員の満足度も高まる効果が期待できます。さらに時間外勤務を減らす効果もあります。
一方で、企業側にとっては労務管理がより複雑になるというデメリットがあります。またサービス業や製造現場など、フレックスタイム制の導入が向いていない業種もあります。
一度導入すると、制度を廃止する際には大きな反発が出ることが予想されます。フレックスタイム制の導入にあたっては、目的やメリットを整理してよく検討しましょう。2.対象者を決定する
フレックスタイム制は、全従業員に一斉に適用する必要はありません。フレックスタイム制に適した部署や業務内容の従業員に対象を絞って導入することもできます。あらかじめ対象の範囲をある程度確定しておくと、その後の流れがスムーズになります。
先輩からの指導が必要な新入社員なども、一定期間は制度の対象外とするのも有効です。3.清算期間や労働時間を決定する
フレックスタイム制は、あらかじめ働く時間(総労働時間)を決めたうえで、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定できる制度です。
この総労働時間は、就業規則で定める「清算期間」ごとの数字となります。そのためフレックスタイム制を導入するにあたっては、清算期間とその期間中の総労働時間を決定する必要があります。総労働時間は、法定労働時間の枠内に収める必要があります。清算期間は、最大3カ月です。
また総労働時間と関連して、年次有給休暇を計算する際などの基準となる1日の標準労働時間も確定させます。4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
フレックスタイム制では、いつ出社/退社してもよい時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず勤務しなければならない時間帯「コアタイム」を規定します。たとえば、以下のように設定します。
午前6時~午前10時:フレキシブルタイム
午前10時~午後3時:コアタイム(うち1時間休憩)
午後3時~午後8時:フレキシブルタイム
コアタイムを設定せず、全時間帯をフレキシブルタイムにすることも可能です。5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
フレックスタイムを導入する場合、就業規則への明記と労使協定の締結の両方が必要です。
記載が必要なのは、対象者の範囲や清算期間、総労働時間、1日の標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯です。
労使協定の労働者側の代表は、過半数の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を民主的な方法で立てます。
また清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定を届ける必要があります。1カ月以内の場合は提出不要です。6.従業員への周知、適切な管理を行う
導入が決まったら、できるだけ早い段階で従業員に周知します。フレックスタイム制は、従業員一人一人が労働時間や制度に対して高い意識を持つことが求められます。就業規則や労使協定で定めた内容を、掲示などの定められた方法で周知するのに加え、できるだけわかりやすい方法で説明するよう心掛けましょう。
またフレックスタイム制を導入すると、労務管理や残業代の計算が複雑になります。担当者が制度をしっかりと把握するとともに、対応した労務管理システムや給与計算システムの導入でミスを未然に防ぐのがおすすめです。変形労働時間制を導入する際の注意点変形労働時間制を導入する際の注意点は以下のとおりです。- 労働日数は年280日が限度である
- 労働時間に上限がある
- 連勤日数にも上限がある
- 時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
労働日数は年280日が限度である
「1年単位」で対象期間が3カ月を超える場合、労働日数に上限があります。対象期間が1年間なら、労働日数は最大で280日と定められています。3カ月超1年未満の場合は『280×対象期間中の日数÷365(閏年は366)』で計算します。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。労働時間に上限がある
変形労働時間制は1週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日や1週間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。ただし「1年単位」と「1週間単位」では、1日の労働時間は最大10時間に制限されています。さらに「1年単位」の場合はこれに加えて、1週間の労働時間も最大52時間の規定があります。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。連勤日数にも上限がある
連続で勤務できる日数にも制限があるため、注意が必要です。「1年単位」では原則として6日が上限で、特定期間に限り12日が上限となります。特定期間の長さや回数に定めはありませんが、「対象期間のうち相当部分を特定期間にする」のは法の趣旨に反するため認められません。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
変形労働時間制は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を弾力的に調整できる制度です。そのため労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、必ず残業代(時間外勤務手当)を支払わなければならないというわけではありません。
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」- 本来設定した1日の労働時間が8時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1日の労働時間が8時間以下の場合、8時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間以下の場合、40時間を超えた分
- 対象期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
「フレックスタイム制」- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
よくある質問最後に、変形労働時間制に関するよくある質問にQ&A形式でご紹介します。Q.36協定の締結は必要?
労働者に時間外労働や休日をさせる場合、労使間で「36協定」と呼ばれる協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。Q.1週間の法定労働時間は40時間?44時間?
1週間の法定労働時間は原則として40時間です。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。Q.「1週間単位」はどのような事業場が導入できる?
「1週間単位の非定型変形労働時間制」は、導入できる事業場が限定されています。①小売業、旅館、料理店および飲食店で、②労働者数30人未満であること─が条件です。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。変形労働時間制のメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。
変形労働時間制のデメリットは以下のとおりです。
たとえば「1カ月単位の変形労働時間制」の場合、対象期間(1カ月)が始まる前までには勤務スケジュールを決めておかなければいけません。また残業代の計算も通常の労働時間制とは異なるため、より細かい対応が必要です。
このように、導入や運用によりコストがかかるのはデメリットと言えます。
また、就業規則や労使協定を労働者に周知することも義務付けられています。
また、1日8時間以上働かなければならない日が出てくるため、体力面での不安を感じる従業員や、プライベートとの兼ね合いで不満を抱く従業員が出てくる可能性もあります。
そのため社員が必ず出勤している時間帯が限定され、会議など複数の社員が集まって進める業務の実施に支障が出る恐れがあります。
ここからは、自社で変形労働時間制(1カ月単位・1年単位・1週間単位非定型)の導入を検討している方向けに、導入までのフローをご紹介します。ここでご紹介するのは一般的な内容ですので、くわしくは社労士や管轄の労働基準監督署にご相談ください。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
3.対象期間・特定期間を決定する
4.労働時間・労働日を決定する
5.就業規則を整備する
6.労使協定を締結する
7.労働基準監督署に届出を提出する
8.従業員に周知する
9.適切な管理・経過観察を行う
なお、4形態ある変形労働時間制のうち「フレックスタイム制」は導入時の流れが大きく異なるため、次の章で説明します。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
3.対象期間・特定期間を決定する
4.労働時間・労働日を決定する
5.就業規則を整備する
6.労使協定を締結する
7.労働基準監督署に届出を提出する
8.従業員に周知する
9.適切な管理・経過観察を行う
なお、4形態ある変形労働時間制のうち「フレックスタイム制」は導入時の流れが大きく異なるため、次の章で説明します。
1.実態を把握してメリットのほうが大きいか確認する
先述のとおり、変形労働時間制はメリットだけではなく、デメリットも多くあります。
まずは導入にあたってメリットのほうが大きいか確認するためにも、実態調査を行いましょう。
従業員の勤務時間などが記録された勤怠表をもとに、①どの部署の従業員が②どの時期に③どのくらい時間外労働をしているかを確認し、実態を把握します。
続いて、変形労働時間制を導入する場合としない場合での支出の差などを試算し、メリットが大きいことが確認できたら、導入に向けて本格的に動き出せます。
まずは導入にあたってメリットのほうが大きいか確認するためにも、実態調査を行いましょう。
従業員の勤務時間などが記録された勤怠表をもとに、①どの部署の従業員が②どの時期に③どのくらい時間外労働をしているかを確認し、実態を把握します。
続いて、変形労働時間制を導入する場合としない場合での支出の差などを試算し、メリットが大きいことが確認できたら、導入に向けて本格的に動き出せます。
2.対象者やどの制度を導入するか決定する
変形労働時間制は、全従業員に一斉に適用させる必要はありません。時期により業務量の偏りがある従業員のみ適用できます。ニーズに応じて対象範囲を確定させましょう。
また変形労働時間制は、先述のとおり4種類の制度に分かれています。どの制度を適用するかも、早い段階で確定させておくとよいでしょう。
なお、18歳以下の年少者や妊産婦に変形労働時間制を適用させる場合は、さらに厳しい条件があるため注意が必要です。
また変形労働時間制は、先述のとおり4種類の制度に分かれています。どの制度を適用するかも、早い段階で確定させておくとよいでしょう。
なお、18歳以下の年少者や妊産婦に変形労働時間制を適用させる場合は、さらに厳しい条件があるため注意が必要です。
3.対象期間、特定期間を決定する
変形労働時間制を適用させる対象期間※を決定します。「1カ月単位」と「1年単位」はいずれも、それぞれの単位期間以内を対象期間とすることができるため、必ずしも1カ月や1年にする必要はありません。
「1カ月単位」で対象期間を1カ月にする場合、開始日は月の途中にしても問題ありません。
「1年単位」では、とくに業務が忙しい時期に特定期間を設定できます。通常は週に1日以上の休日を設ける必要がありますが、特定期間では最大12日まで連続して勤務日にできます。
「1週間単位」はほかの2つと違い、対象期間を定める義務はありません。
※対象期間は「変形期間」という場合もあります。
「1カ月単位」で対象期間を1カ月にする場合、開始日は月の途中にしても問題ありません。
「1年単位」では、とくに業務が忙しい時期に特定期間を設定できます。通常は週に1日以上の休日を設ける必要がありますが、特定期間では最大12日まで連続して勤務日にできます。
「1週間単位」はほかの2つと違い、対象期間を定める義務はありません。
※対象期間は「変形期間」という場合もあります。
4.労働時間・労働日を決定する
具体的に、勤務を割り振る日や時間を決めます。勤怠表をもとに、繁忙期の労働時間は何時間にまで増やし、閑散期の労働時間を何時間まで減らせるかを検討します。
「1カ月単位」では各週・各日の労働時間をあらかじめ定めなければなりません。
「1年単位」では以下の内容を決めます。
1.最初の期間における労働日
2.労働日ごとの労働時間
3.最初の期間を除く各期間における労働日数
4.最初の期間を除く各期間における総労働時間
「1週間単位」では週ごとに労働時間を決定し、事前にシフトを従業員に通知します。通知後は、緊急のやむを得ない事由の場合のみ、前日までに通知すれば変更できます。この「緊急のやむを得ない事由」は台風など、天候の急変によるものに限られます。
労働時間と労働日は原則として後から変更することができません。現場の従業員とも相談し精査しましょう。
「1カ月単位」では各週・各日の労働時間をあらかじめ定めなければなりません。
「1年単位」では以下の内容を決めます。
1.最初の期間における労働日
2.労働日ごとの労働時間
3.最初の期間を除く各期間における労働日数
4.最初の期間を除く各期間における総労働時間
「1週間単位」では週ごとに労働時間を決定し、事前にシフトを従業員に通知します。通知後は、緊急のやむを得ない事由の場合のみ、前日までに通知すれば変更できます。この「緊急のやむを得ない事由」は台風など、天候の急変によるものに限られます。
労働時間と労働日は原則として後から変更することができません。現場の従業員とも相談し精査しましょう。
5.就業規則を整備する
対象者や適用制度、労働時間などが決まったら、就業規則への記載が必要です。就業規則への記載が必要な事項は制度により若干異なりますが、基本的には以下のとおりです。
- 対象労働者の範囲
- 対象期間および起算日
- 労働日および労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間
なお「1カ月単位」の場合は、就業規則もしくは後述する労使協定のどちらかで必要事項を定めれば導入が可能です。
6.労使協定を締結する
先述のとおり「1カ月単位」では就業規則か労使規定のどちらかで必要事項を定めれば、制度を導入できます。一方「1年単位」と「1週間単位」に関しては、必ず就業規則への記載と労使協定の締結の両方が必要です。
労使協定の労働者側の締結者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労組となります。労働者の過半数で組織する労組がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を立てます。
過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の締結に関わることになります。「変形労働時間制の導入に関わる労使協定の締結のために」代表者を選出することを明確に公示し、民主的な方法で決定しましょう。
労使協定の労働者側の締結者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労組となります。労働者の過半数で組織する労組がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を立てます。
過半数代表者は従業員全員にかかわる重要な労使協定の締結に関わることになります。「変形労働時間制の導入に関わる労使協定の締結のために」代表者を選出することを明確に公示し、民主的な方法で決定しましょう。
7.労働基準監督署に届出を提出する
就業規則や労使協定、事業所などの届出を管轄する労働基準監督署に提出します。また「変形労働時間制に関する協定届」も作成し、提出する必要があります。
「1年単位」では、対象期間中のカレンダーの提出が求められることもあるため、あらかじめ準備するか事前に問い合わせることをおすすめします。
「1年単位」では、対象期間中のカレンダーの提出が求められることもあるため、あらかじめ準備するか事前に問い合わせることをおすすめします。
8.従業員に周知する
労働基準監督署への届出が済んだら、従業員に就業規則や労使協定で定めた内容を改めて周知しましょう。周知の方法は以下のように定められています。
- 各事業所の見やすい場所に常時掲示、または備え付ける
- 書面を印刷し、交付する
- 電子データで保管する場合は、全従業員がいつでもアクセスし閲覧できるようにする
就業規則などの文面は難しいと感じられる場合もあるため、できるだけわかりやすく、丁寧に説明するとよいでしょう。書面に加え、研修や会議などで説明することも検討してください。
9.適切な管理・経過観察を行う
運用開始後は、適切に運用されているかどうか確認することが大切です。勤務時間が設定どおりになっているか、とくに導入当初は細かく確認しましょう。
また、変形労働時間制を導入すると残業代の計算が煩雑になります。勤怠管理や給与計算のソフトが変形労働時間制に対応しているか確認し、非対応の場合は更新を検討してください。
従業員はもとより、給与や労務の担当者は制度を完璧に理解していないと、ミスが起きがちです。定期的に研修を行うなどして徹底しましょう。
また、変形労働時間制を導入すると残業代の計算が煩雑になります。勤怠管理や給与計算のソフトが変形労働時間制に対応しているか確認し、非対応の場合は更新を検討してください。
従業員はもとより、給与や労務の担当者は制度を完璧に理解していないと、ミスが起きがちです。定期的に研修を行うなどして徹底しましょう。
自社でフレックスタイム制を導入する際の流れ続いて、フレックスタイム制を導入する際のフローをご紹介します。
1.導入の目的やメリットを確認する
2.対象者を決定する
3.清算期間や労働時間を決定する
4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
6.従業員への周知、適切な管理を行う
こちらもそれぞれの工程を見ていきましょう。1.導入の目的やメリットを確認する
フレックスタイム制を導入すると、従業員は個々の実情に合わせてより柔軟な働き方ができるようになるというメリットがあります。求人の際に企業にとって大きなアドバンテージとなるうえに、従業員の満足度も高まる効果が期待できます。さらに時間外勤務を減らす効果もあります。
一方で、企業側にとっては労務管理がより複雑になるというデメリットがあります。またサービス業や製造現場など、フレックスタイム制の導入が向いていない業種もあります。
一度導入すると、制度を廃止する際には大きな反発が出ることが予想されます。フレックスタイム制の導入にあたっては、目的やメリットを整理してよく検討しましょう。2.対象者を決定する
フレックスタイム制は、全従業員に一斉に適用する必要はありません。フレックスタイム制に適した部署や業務内容の従業員に対象を絞って導入することもできます。あらかじめ対象の範囲をある程度確定しておくと、その後の流れがスムーズになります。
先輩からの指導が必要な新入社員なども、一定期間は制度の対象外とするのも有効です。3.清算期間や労働時間を決定する
フレックスタイム制は、あらかじめ働く時間(総労働時間)を決めたうえで、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定できる制度です。
この総労働時間は、就業規則で定める「清算期間」ごとの数字となります。そのためフレックスタイム制を導入するにあたっては、清算期間とその期間中の総労働時間を決定する必要があります。総労働時間は、法定労働時間の枠内に収める必要があります。清算期間は、最大3カ月です。
また総労働時間と関連して、年次有給休暇を計算する際などの基準となる1日の標準労働時間も確定させます。4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
フレックスタイム制では、いつ出社/退社してもよい時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず勤務しなければならない時間帯「コアタイム」を規定します。たとえば、以下のように設定します。
午前6時~午前10時:フレキシブルタイム
午前10時~午後3時:コアタイム(うち1時間休憩)
午後3時~午後8時:フレキシブルタイム
コアタイムを設定せず、全時間帯をフレキシブルタイムにすることも可能です。5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
フレックスタイムを導入する場合、就業規則への明記と労使協定の締結の両方が必要です。
記載が必要なのは、対象者の範囲や清算期間、総労働時間、1日の標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯です。
労使協定の労働者側の代表は、過半数の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を民主的な方法で立てます。
また清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定を届ける必要があります。1カ月以内の場合は提出不要です。6.従業員への周知、適切な管理を行う
導入が決まったら、できるだけ早い段階で従業員に周知します。フレックスタイム制は、従業員一人一人が労働時間や制度に対して高い意識を持つことが求められます。就業規則や労使協定で定めた内容を、掲示などの定められた方法で周知するのに加え、できるだけわかりやすい方法で説明するよう心掛けましょう。
またフレックスタイム制を導入すると、労務管理や残業代の計算が複雑になります。担当者が制度をしっかりと把握するとともに、対応した労務管理システムや給与計算システムの導入でミスを未然に防ぐのがおすすめです。変形労働時間制を導入する際の注意点変形労働時間制を導入する際の注意点は以下のとおりです。- 労働日数は年280日が限度である
- 労働時間に上限がある
- 連勤日数にも上限がある
- 時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
労働日数は年280日が限度である
「1年単位」で対象期間が3カ月を超える場合、労働日数に上限があります。対象期間が1年間なら、労働日数は最大で280日と定められています。3カ月超1年未満の場合は『280×対象期間中の日数÷365(閏年は366)』で計算します。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。労働時間に上限がある
変形労働時間制は1週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日や1週間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。ただし「1年単位」と「1週間単位」では、1日の労働時間は最大10時間に制限されています。さらに「1年単位」の場合はこれに加えて、1週間の労働時間も最大52時間の規定があります。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。連勤日数にも上限がある
連続で勤務できる日数にも制限があるため、注意が必要です。「1年単位」では原則として6日が上限で、特定期間に限り12日が上限となります。特定期間の長さや回数に定めはありませんが、「対象期間のうち相当部分を特定期間にする」のは法の趣旨に反するため認められません。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
変形労働時間制は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を弾力的に調整できる制度です。そのため労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、必ず残業代(時間外勤務手当)を支払わなければならないというわけではありません。
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」- 本来設定した1日の労働時間が8時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1日の労働時間が8時間以下の場合、8時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間以下の場合、40時間を超えた分
- 対象期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
「フレックスタイム制」- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
よくある質問最後に、変形労働時間制に関するよくある質問にQ&A形式でご紹介します。Q.36協定の締結は必要?
労働者に時間外労働や休日をさせる場合、労使間で「36協定」と呼ばれる協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。Q.1週間の法定労働時間は40時間?44時間?
1週間の法定労働時間は原則として40時間です。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。Q.「1週間単位」はどのような事業場が導入できる?
「1週間単位の非定型変形労働時間制」は、導入できる事業場が限定されています。①小売業、旅館、料理店および飲食店で、②労働者数30人未満であること─が条件です。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。変形労働時間制のメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。
1.導入の目的やメリットを確認する
2.対象者を決定する
3.清算期間や労働時間を決定する
4.フレキシブルタイム・コアタイムを決定する
5.就業規則の整備、労使協定の締結、労基署に提出する
6.従業員への周知、適切な管理を行う
こちらもそれぞれの工程を見ていきましょう。
一方で、企業側にとっては労務管理がより複雑になるというデメリットがあります。またサービス業や製造現場など、フレックスタイム制の導入が向いていない業種もあります。
一度導入すると、制度を廃止する際には大きな反発が出ることが予想されます。フレックスタイム制の導入にあたっては、目的やメリットを整理してよく検討しましょう。
先輩からの指導が必要な新入社員なども、一定期間は制度の対象外とするのも有効です。
この総労働時間は、就業規則で定める「清算期間」ごとの数字となります。そのためフレックスタイム制を導入するにあたっては、清算期間とその期間中の総労働時間を決定する必要があります。総労働時間は、法定労働時間の枠内に収める必要があります。清算期間は、最大3カ月です。
また総労働時間と関連して、年次有給休暇を計算する際などの基準となる1日の標準労働時間も確定させます。
午前6時~午前10時:フレキシブルタイム
午前10時~午後3時:コアタイム(うち1時間休憩)
午後3時~午後8時:フレキシブルタイム
コアタイムを設定せず、全時間帯をフレキシブルタイムにすることも可能です。
記載が必要なのは、対象者の範囲や清算期間、総労働時間、1日の標準労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの具体的な時間帯です。
労使協定の労働者側の代表は、過半数の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を民主的な方法で立てます。
また清算期間が1カ月を超える場合には、管轄の労働基準監督署に労使協定を届ける必要があります。1カ月以内の場合は提出不要です。
またフレックスタイム制を導入すると、労務管理や残業代の計算が複雑になります。担当者が制度をしっかりと把握するとともに、対応した労務管理システムや給与計算システムの導入でミスを未然に防ぐのがおすすめです。
変形労働時間制を導入する際の注意点は以下のとおりです。
- 労働日数は年280日が限度である
- 労働時間に上限がある
- 連勤日数にも上限がある
- 時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
労働日数は年280日が限度である
「1年単位」で対象期間が3カ月を超える場合、労働日数に上限があります。対象期間が1年間なら、労働日数は最大で280日と定められています。3カ月超1年未満の場合は『280×対象期間中の日数÷365(閏年は366)』で計算します。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。
1日の労働時間が短い業種であっても、労働日数はこの規定を超えることはできないため注意が必要です。必ず確認しましょう。
労働時間に上限がある
変形労働時間制は1週平均の労働時間が40時間を超えない範囲で、1日や1週間の労働時間を弾力的に調整できる制度です。ただし「1年単位」と「1週間単位」では、1日の労働時間は最大10時間に制限されています。さらに「1年単位」の場合はこれに加えて、1週間の労働時間も最大52時間の規定があります。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。
「1カ月単位」や「フレックスタイム制」では、1日や1週間における労働時間の上限値は特に規定されていません。
連勤日数にも上限がある
連続で勤務できる日数にも制限があるため、注意が必要です。「1年単位」では原則として6日が上限で、特定期間に限り12日が上限となります。特定期間の長さや回数に定めはありませんが、「対象期間のうち相当部分を特定期間にする」のは法の趣旨に反するため認められません。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。
その他の3制度では、休日を1週1日または4週4日以上設定するよう定められています。4週4日を採用し、最後の1週間に4連休を設定した場合には、24連勤まで認められます。ただし安全衛生のためにも過度の連勤は控えるべきでしょう。
時間外勤務手当の支給が必要になるケースがある
変形労働時間制は「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を弾力的に調整できる制度です。そのため労働時間が「1日8時間・週40時間」を超えたからといって、必ず残業代(時間外勤務手当)を支払わなければならないというわけではありません。
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」
ただしそれぞれの制度における所定労働時間を超えた場合は、残業代の支払いが必要です。残業代の支払いが求められるケースの一例は以下のとおりです。
「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」
- 本来設定した1日の労働時間が8時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1日の労働時間が8時間以下の場合、8時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間超の場合、その労働時間を超えた分
- 本来設定した1週間の労働時間が40時間以下の場合、40時間を超えた分
- 対象期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
「フレックスタイム制」
- 清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた分
よくある質問最後に、変形労働時間制に関するよくある質問にQ&A形式でご紹介します。Q.36協定の締結は必要?
労働者に時間外労働や休日をさせる場合、労使間で「36協定」と呼ばれる協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。Q.1週間の法定労働時間は40時間?44時間?
1週間の法定労働時間は原則として40時間です。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。Q.「1週間単位」はどのような事業場が導入できる?
「1週間単位の非定型変形労働時間制」は、導入できる事業場が限定されています。①小売業、旅館、料理店および飲食店で、②労働者数30人未満であること─が条件です。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。変形労働時間制のメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。
変形労働時間制を導入する場合でも、前章で解説した残業代を支払わないといけないケースは時間外労働にあたり、36協定がなければ会社側は時間外労働を命ずることはできません。
そのため時間外労働や休日労働を命ずる可能性がある場合は、36協定の締結と届出が必要です。36協定の締結・届出をせずに時間外労働などを命令した場合は、労働基準法に規定された罰則が科される恐れがあります。
ただし「特例措置対象事業場」と呼ばれる特定の事業場では、法定労働時間を44時間に緩和する特例が適用されます。対象となるのは「常時10人未満の労働者を使用する、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業」です。
なお特例措置対象事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば小売店の場合、社員数が10人以上でも店舗の労働者数が10人未満であれば特例の対象となります。
なお「1年単位」や「1週間単位」の変形労働時間制を採用した場合は、特例措置対象事業場であっても法定労働時間は1週間40時間として扱われます。
なお、事業場は店舗や施設ごと(場所的概念)で決定されるため、たとえば労働者数50人の企業が従業員数10人の小売店を開いた場合、その小売店で1週間単位の非定型変形労働時間制を導入することは可能です。
本記事では、変形労働時間制について解説しました。ご紹介したとおり、変形労働時間制は企業側と労働者側、それぞれにメリットとデメリットがあります。メリットが大きいと判断した場合は変形労働時間制を導入し、より効率的な企業運営を目指しましょう。