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人材アセスメント

認知バイアスとは?身近な具体例と種類一覧・対策を簡単に解説

認知バイアスとは、私たちが意思決定をするときに、先入観や思い込み、直感などによって非合理的な判断をしてしまう心理傾向のことです。

認知バイアスは誰にでも起こりうる現象ですが、ビジネスにおける判断や日常生活での選択など、さまざまな場面で判断ミスを引き起こす原因となります。

本記事では、認知バイアスの意味を簡単に解説したうえで、身近な具体例、知っておきたい15種類の一覧、効果的な対策まで紹介します。正しく理解することで、より良い意思決定につなげましょう。

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認知バイアスとは?

認知バイアスのある人のイメージ
「認知バイアス」とは、人間が意思決定をするときに、思い込みや先入観によって合理的でない判断をしてしまう心理傾向を指します。おもに心理学の分野で使われる用語で、「アンコンシャスバイアス」や「偏見」と言い換えられることもあります。

関連記事:アンコンシャスバイアスとは?職場での例や企業ができる対処法を解説

認知バイアスが生まれる背景には、脳の省エネ機能が関係しています。

人間の脳は日々膨大な情報を処理しており、すべてをゼロから検討していては疲弊してしまいます。そこで、過去の経験が使えそうな場面では、経験則で素早く結論を出す仕組みが発達したのです。

この仕組みによって、迅速な意思決定ができるようになった一方で、思い込みによる誤った判断もしやすくなりました。

認知バイアスは脳の機能によるものなので、完全にはなくせません。誰にでも起こりうるものだと認識しましょう。

認知バイアスの注意点

認知バイアスを放置すると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
  • 判断ミスが増える
  • 偏った評価をしてしまう
  • 柔軟な対応ができなくなる
認知バイアスが強い場合、重要な情報を見落としたり、非合理的な判断を行ったりしがちです。たとえば採用活動で「この大学出身者は活躍している人が多いから採用しよう」「この業界出身者は前回すぐ離職したから見送ろう」といった主観的な基準で判断すると、自社に合った人材を逃してしまうおそれがあります。

また、特定のグループや個人に対する固定観念が強化され、偏見や不公平な評価を生む原因にもなるでしょう。さらに、新しい情報や変化を受け入れにくくなり、組織の成長を妨げてしまいかねません。

認知バイアスが強い人の特徴

認知バイアスは誰にでも起こりますが、以下のような特徴がある人ほど、バイアスが強く働きやすい傾向があります。
  • 自分の意見を曲げない人
  • 感情に左右されやすい人
  • 新しい挑戦や変化を避ける人
  • 自分の情報の偏りに気づかない人
自分の意見を曲げない人は、自分の考えを過信して他者の意見を聞き入れにくくなり、自分に都合の良い情報ばかりを集めてしまいがちです。感情に左右されやすい人は、冷静な判断が難しく、好きな人や信頼している人の意見を高く評価しすぎてしまいます。

新しい挑戦や変化を避ける人は、過去のやり方に固執しがちで、臨機応変な対応が苦手です。また、自分の情報の偏りに気づかない人は、周りの意見を聞かずに独断で決めてしまう傾向があります。

これらに当てはまる場合でも、認知バイアスを自覚し、適切な対策を取ることで影響を軽減できます。

日常で起こる認知バイアスの具体例

認知バイアスは日常生活のさまざまなシーンで発生しています。身近な買い物を例に見てみましょう。

<買い物での例>
  • 「商品の良い口コミを見て安心する」→ 確証バイアス
  • 「日用品はいつも使っているものを選ぶ」→ 現状維持バイアス
  • 「好きなインフルエンサーがおすすめしていたので購入する」→ ハロー効果
  • 「効果を実感できないが、せっかく買ったので使い続ける」→ サンクコスト効果
  • 「みんなが買っている商品を選ぶ」→ バンドワゴン効果
このように、私たちは日常的に認知バイアスの影響を受けています。次項では、ビジネスでも起こりやすい代表的な認知バイアスについて見ていきましょう。

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知っておきたい認知バイアス一覧(15選)

さまざまな認知バイアスを持つ人たち
認知バイアスにはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な15種類の認知バイアスについて、例を交えて紹介します。

1. 確証バイアス

確証バイアスとは、自分の思考や願望を裏付ける情報ばかり集め、反対意見や否定的な情報を軽視してしまう心理傾向を指します。
<例>
・新しい施策の反対意見を無視し、賛成意見ばかり集める
・「この候補者は良さそう」と感じた後、面接で良い点ばかりに注目する
ビジネスでは、判断の根拠となる情報が偏り、誤った意思決定につながるリスクがあります。特に採用活動では、第一印象が良ければその評価を確証する情報ばかりに注目してしまい、客観的な判断ができなくなる場合があります。

関連記事:【具体例あり】確証バイアスとは?発生原因から弊害、対策を解説

2. 現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、現状を「安定」と捉え、変化することを嫌う心理傾向を指します。
<例>
・「今のやり方で十分」と組織改革の提案を却下する
・新しい採用手法の導入を「今のままで問題ない」と拒否する
組織全体で現状維持バイアスが強くなると、市場の変化に対応できなくなったり、新しいツールや制度の導入が進まなくなったりするかもしれません。採用においては「今までのやり方でいい」と、非効率な選考プロセスを続けてしまうおそれがあります。

関連記事:現状維持バイアスとは?起こる原因や外し方を解説

3.フレーミング効果

フレーミング効果とは、同じ情報でも表現や焦点の当て方を変えただけで、判断まで変わってしまう心理傾向を指します。
<例>
・「2人に1人が効果を実感」と「50%の人は効果なし」で受ける印象が異なる
・「経験豊富」と「転職が多い」で候補者への評価が変わる
ビジネスでは、数字の見せ方によって意思決定を左右することがあります。人材採用においても、候補者の経歴を「3社での経験がある」と見るか「3回転職している」と見るかで、評価は大きく変わるでしょう。

4.サンクコスト効果

サンクコスト効果とは、すでに投資したコストや時間にこだわり、損する可能性が高くても投資や事業を止められなくなる心理傾向を指します。コンコルド効果とも呼ばれます。
<例>
・成果が出ない事業を「ここまで投資したからもったいない」と続ける
・面接を重ねた候補者を「時間をかけたから」と採用してしまう
サンクコスト効果に陥ると、経営判断でも採用プロセスでも大きな損失につながるおそれがあります。重要なのは、過去の投資ではなく今後の見通しで判断することです。

5.現在志向バイアス

現在志向バイアスとは、将来の利益よりも目の前の利益を優先してしまう心理傾向を指します。
<例>
・人材育成への投資を「今は余裕がない」と先送りする
・将来性より即戦力を重視しすぎて、若手採用の機会を逃す
現在志向バイアスが強いと、投資判断や人材の配置転換といった将来を見据えた決定ができなくなります。採用では、即戦力ばかりを求めて将来性のある若手人材を見逃したり、長期的に重要な育成への投資を避けたりしがちです。

関連記事:現在志向バイアスとは?採用活動における問題点と対策について解説

6.正常性バイアス

正常性バイアスとは、都合の悪い情報を軽視して「自分は大丈夫」だと思い込む心理傾向です。
<例>
・市場の変化を「うちには関係ない」と軽視する
・優秀な社員の離職サインを「まさか辞めないだろう」と見過ごす
ビジネスにおいては、市場の変化や競合の脅威といった兆しを見逃し、対応が遅れるかもしれません。人事の現場では、社員の離職サインや組織の問題を「うちは大丈夫」と軽視し、深刻な事態を招くことがあります。

関連記事:正常性バイアスとは?ビジネスシーンでの具体例や対処法を解説

7.生存者バイアス

生存者バイアスとは、成功者の意見を重視し、それ以外の失敗者の意見を軽視する心理傾向を指します。
<例>
・成功した一部の事例だけを見て戦略を立てる
・「自分はこの方法でうまくいった」と部下にも同じやり方を強要する
ビジネスでは、運の要素が強い成功事例を参考にして失敗したり、「自分ができたから他の人もできる」と無理な要求をしたりしがちです。採用選考においても、過去の成功パターンにこだわり、異なるタイプの優秀な人材を逃してしまうケースがあります。

8.内集団バイアス

内集団バイアスとは、自分が所属する集団のメンバーのほうが、別集団のメンバーよりも優れていると思い込む心理傾向です。集団への帰属意識が強いほど、この傾向が強まります。「内集団びいき」とも呼ばれます。
<例>
・自部署のやり方が正しいと信じ、他部署の提案を聞かない
・自分と同じ出身校や前職企業の候補者を、無条件に高く評価する
自部署や自社を過大評価し、他部署や他社の意見を軽視すると、協力関係が築けなくなるリスクがあります。ひどい場合は差別意識につながり、職場環境の悪化や多様性の欠如を招くこともあるでしょう。

9.ハロー効果

ハロー効果とは、対象の一部の特徴に引っ張られて、全体的な評価まで変えてしまう心理傾向を指します。
<例>
・有名大学出身というだけで「優秀だ」と評価する
・外見や話し方がいいと、実務能力も高いと判断してしまう
ハロー効果が働くと、一部の目立つ特徴で人物全体を判断しかねません。面接では、学歴や外見、話し方といった要素だけで「優秀だ」と判断し、実際の能力や適性を見極められないケースもあります。本人の実力と無関係な要素に引っ張られないよう注意が必要です。

関連記事:ハロー効果とは?人事・採用における意味や事例・対策をわかりやすく解説

10.ツァイガルニク効果

ツァイガルニク効果とは、完了したタスクよりも、未完了のタスクや中断された活動のほうが記憶に残りやすいことを指します。
<例>
・未完了のプロジェクトが気になり、他の業務に集中できない
・選考中の候補者ばかり気になり、新入社員のフォローが手薄になる
マーケティングでは「続きはWebで」といった手法で活用されますが、これがネガティブに働くこともあります。ビジネスでは未完了のタスクが気になって集中力が削がれ、採用では選考途中の候補者のほうが気になって既に採用した人材のフォローが疎かになりがちです。

関連記事:ツァイガルニク効果とは?具体例や仕事効率を高める対策を解説

11.ダニング・クルーガー効果

ダニング・クルーガー効果とは、スキルや知識が不足しているにもかかわらず、自分の能力を過大評価してしまう心理傾向です。
<例>
・新しい業務を「すぐ終わる」と判断したが、実際は大幅に時間がかかる
・未経験の分野で「自分ならできる」と過信して失敗する
ダニング・クルーガー効果によって、経験の浅い社員が「簡単にできる」と判断して失敗したり、管理職が専門外の分野で的外れな指示を出したりするリスクがあります。採用面接では、候補者が自身のスキルを過大評価していないか確認しましょう。

12.自己奉仕バイアス

自己奉仕バイアスとは、成功は自分の能力のおかげと考え、失敗は外的要因のせいにする心理傾向を指します。
<例>
・プロジェクト成功時は「自分の実力が発揮できた」と考える
・失敗時は「体調が悪かった」「周りの協力が足りなかった」と考える
自己奉仕バイアスが強いと、失敗から学ぶ機会を逃し、チーム内の信頼関係を損ねる可能性があります。特に人事評価では、自己評価と他者評価に大きなギャップが生まれがちです。

13.後知恵バイアス

後知恵バイアスとは、結果を知った後に「最初から予見できた」と考えてしまう心理傾向のことです。
<例>
・部下が失敗した際に「こうなることは最初からわかっていた」と言う
・離職者について「あの時から怪しいと思っていた」と後から言う
「やっぱり失敗すると思った」と部下を突き放したり、離職者について「採用時からわかっていた」と振り返ったりすると、適切なフォローや選考プロセスの改善機会を逃してしまいます。

14.スポットライト効果

スポットライト効果とは、自分の行動や外見に対して、実際以上に他人から注目されていると感じる心理傾向を指します。
<例>
・自分自身の成果を「周囲が高く評価しているはず」と過信する
・面接での質問を「候補者に悪い印象を与えた」と気にしすぎる
小さなミスを過度に気にして自信を失う一方、自分の成果や判断への注目度を過大評価することもあります。採用担当者も面接での質問を気にしがちですが、実際には周囲はそれほど注目していません。

15.バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多くの人が支持しているものに対して、さらに支持する人が増えていく現象を指します。
<例>
・「他社も導入しているから」という理由だけで新システムを採用する
・人気の候補者に評価が集中し、他の優秀な候補者を見落とす
多数派の意見や人気に流されると、本質的な判断ができなくなります。「他社も使っているから」という理由だけでツールを選んだり、採用で人気候補者ばかりに目が向いて、優秀な人材を逃したりするかもしれません。

認知バイアスの対策方法

認知バイアスの対策について話し合う人たち
認知バイアスは誰にでも起こるものです。では、バイアスに振り回されずに適切な意思決定を行うにはどうすればよいのでしょうか。実践できる3つの対策方法を紹介します。

客観的データに基づいて判断する

認知バイアスに意思決定が左右されるとき、私たちは先入観や経験則、直感に頼って判断してしまいがちです。採用では「有名大学卒だから優秀だろう」「運動部経験者だから体力があるだろう」のように、本人の実際の能力とは異なる部分で判断するケースがあります。

そこで、客観的な事実やデータを分析し、それに基づいて判断する習慣をつけることが重要です。人事領域では、適性検査やアセスメントの導入が効果的な対策となるでしょう。

関連記事:適性検査とは?活用シーンや導入するメリット、弱点を解説
関連記事:アセスメントでできることとは?採用・人事評価・人材配置での活用について解説

また、人材のパーソナリティを見極める際は、行動特性や思考の傾向を客観的データに基づいて診断する「コンピテンシー診断(特性診断)」もおすすめです。

他者の視点を積極的に取り入れる

自分とは異なる意見を重視することも、認知バイアスの回避につながります。人間には確証バイアスがあり、無意識に自分の意見を補強する情報を探しがちです。そのため、意識的に反対意見を持つ人と議論を交わし、視野を広げることが欠かせません。

少数派の意見にも耳を傾ける土壌は、近年注目されるダイバーシティ経営においても重要です。組織として多角的な視点で物事を検討することにもつながるでしょう。

関連記事:ダイバーシティとは?企業が取り組むメリットや注意点、推進ポイントを解説

認知バイアスについて学ぶ

認知バイアスについて学ぶことも有効な対策です。その仕組みを知ることで「今バイアスがかかっているかも」と客観的に自分を観察しやすくなります。認知バイアスに関する書籍も多く販売されているため、積極的に読んでみると良いでしょう。

また、自分の思考の癖を知ることも大切です。診断テストやワークショップなどを活用して自分のバイアスの傾向を把握しておくと、意思決定の際に冷静に判断できるようになります。

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本記事では、認知バイアスの意味や種類、対策方法などについて解説しました。

認知バイアスは誰にでも起こるものですが、客観的データの活用や他者の視点を取り入れることで、より適切な意思決定が可能になります。

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