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イノベーション人材とは?意味や採用・育成方法を解説

予測の難しいVUCAの時代と呼ばれる現在。日本では、世代交代や人口減少の問題も指摘されています。そのような中でも企業が成長を続けるためには、イノベーションが欠かせません。

そこで、イノベーションを起こす存在として期待されているのが「イノベーション人材」です。

本記事ではイノベーション人材とは何か、定義や種類、活用方法などを解説しています。イノベーション人材について理解を深めたい方はぜひ最後までお読みください。なお企業が成長を続けるには、イノベーション人材を含めた「優秀な人材」を採用することが肝要です。

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イノベーションとは

イノベーションの文字
イノベーションとはモノやサービス、組織体制や仕組み、プロセスなどに対して新しい観点や技術を組み入れて、物事の形や方法だけでなく別の意味付けを行うなど、組織や社会に新たな価値をもたらして変化を与えることです。

かみ砕いて説明すると、「まったく新しいモノやサービスを生み出すこと」や「古いものを新しい方法で再生産すること」がイノベーションとなります。たとえば電球の発明は「まったく新しいモノを発明した」という意味でイノベーションといえるでしょう。
またスマートフォンの発明は「電話やカメラ、パソコンの再生産」とも捉えられるため、イノベーションといえます。

具体的なイノベーションの定義や注目される背景について、詳しくみてみましょう。

イノベーションの定義

「イノベーション(innovation)」は、「更新する、新しくする」という意味を持つラテン語の”innovare”が語源と言われています。日本語では「技術革新」と翻訳されますが、イノベーションは技術だけに起こるものではありません。

オーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを「新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産すること」と定義しました。

少し抽象的に考えてみると、技術だけでなく新しい仕組みや価値観、考え方などを取り入れた革新すべてがイノベーションとも捉えられます。たとえば会議の時間を十分に取れないことに悩んでいる人が、社内の報連相の仕組みを変えることにより、参加が必要な会議そのものを減らすこともイノベーションと言えるでしょう。

イノベーションという言葉について理解を深めたい方は、ぜひ下記記事も参考にしてください。
【関連記事:イノベーションとは?種類や成功事例をもとにわかりやすく解説

イノベーションが注目される背景

日本国内でイノベーションが注目される背景として、以下の7つが挙げられます。
  • 人手不足
  • 持続的な収益確保の必要性
  • レッドオーシャン化
  • 国内市場の限界
  • VUCAの時代
  • 新技術の活用
  • シェア文化の発展

人手不足

少子高齢化の影響で、日本では人手不足が問題となっています。その上、残業規制の影響もあり、足りない労働力を残業で補うことも難しくなっています。

日本の人事部『人事白書2021』によれば、3年前と比較したフルタイム正社員の月間総労働時間数は、過半数の企業で減少しています。特に従業員数の多い企業では労働時間の減少傾向が強く、働きやすさを高めて従業員の流出を防ごうとしている意図が伺えます。
フルタイム正社員の月間総労働時間の変化
(出典:日本の人事部『人事白書2021』)

残業時間を減らしつつ生産性の維持・向上にはイノベーションが必要です。
  • 不要な会議、業務の削減
  • 機械化、IT化を通じた業務の効率化 など
上記のような取り組みを通じて、既存業務の再構築(イノベーション)が求められます。

持続的な収益確保の必要性

テクノロジーの進化や世界情勢の変化も著しい現代においては、現在は安定的に売上がある企業でも、この先何年も経営が安定し続ける保証はありません。

そこで一度ローンチした商品・サービスを見直してアップデートしたり、新たな市場を開拓したりして収益が安定的に確保できるよう、イノベーションが求められます。

レッドオーシャン化

企業は昔から収益安定のために競合や市場の動きを観察し、策を講じてきました。

しかし、日本国内をはじめとする先進国では特に、人々が物質的に満たされ、市場が成熟しています。その結果、単に「新しいプロダクトを提供する」だけでは売上が見込めないケースが増えているのです。
たとえばスマートフォンはいまや年代を問わず多くの人が保有しており、安価で質の良いものも登場しています。スマートフォンの性能向上も頭打ちに近づいており、古いモデルでも長く利用できるようになったため新しい商品が売れにくいです。

このように競合が多数存在している、いわゆるレッドオーシャンの市場で商売を行う場合、価格競争に巻き込まれやすくなります。その結果、高いクオリティを求められるにもかかわらず十分な収益を得られにくいといったマイナスの要素も多くあります。

そこでイノベーションを行って既存製品に新しい付加価値を与え、自ら競合他社がほとんど存在しないブルーオーシャンを作り出していくことが重要です。競争が激しくない分野で商売を行えば、効率良く収益を上げやすくなるからです。

国内市場の限界

日本において売上をあげることが難しいと思われる場合でも、海外では勝ち残れることもあります。

海外進出を図る場合、プロダクトを相手国の状況に合わせて変える必要があるほか、販路や売り方、PRの仕方など、マーケティングや営業の戦略も変える必要があります。

イノベーションによって海外進出の仕組みを整えることができれば、タイミングや相手国ごとに柔軟な対応をでき、グローバル市場で優位に立てる可能性が上がります。

VUCAの時代

現代は「VUCAの時代」と呼ばれるほど変化が激しく、将来への不確実性が増しています。このような時代において、既存の製品やサービスにこだわった商売を続けることは、変化に取り残されるリスクが高くなってしまうでしょう。

そこで必要になるのがイノベーションです。たとえばレンタルビデオやCDを取り扱っていた会社が事業の方針転換を行い、服や雑貨のリユース市場に参入する。このようなイノベーションを行うことが、企業を存続させるうえで重要です。

新技術の活用

イノベーションを起こすなら新技術を活用することをおすすめします。

インターネットの進化をはじめ、スマートフォンの登場、近年ではAIが話題になっています。このような新技術は業務を効率化させる可能性があり、イノベーションの役に立つものです。たとえばテレワーク勤務を導入して全国各地から人材を採用できる状態にすることが挙げられます。

また新技術は既存の市場を奪うこともあります。たとえばスマートフォンが登場した結果、ガラケーを利用する人は現在ほとんどいません。ガラケー向けにサービスを提供していた会社の場合、うまくイノベーションを起こして事業の方針転換を行えなかった場合、倒産してしまいかねません。

このように、新しい技術を積極的に取り入れていくことはイノベーションを起こしやすくなるだけでなく、既存の自社ビジネスの陳腐化を防ぐことにも役立ちます。

シェア文化の発展

近年は「シェア」や「サブスク」といった言葉を見聞きする機会が増えました。これは企業がイノベーションを起こすことにも役立っています。

モノを多くの人と共有する「シェア」は、企業活動の合理化や新しいビジネスモデルの登場を促しました。たとえば場所をシェアできる「レンタルスペース」「コワーキングスペース」、古いものを個人間で売買できる「フリマアプリ」、乗り物をシェアできる「ライドシェア」「シェアサイクル」といったビジネスが現れました。

また音楽や動画などを定額制で利用できる「サブスク」も、新しいビジネスモデルの1つとなっています。従来であれば「購入するかしないか」の2択であったものが、新たに「シェアする」という選択肢が登場したのです。その結果、たとえば自転車を販売していたお店がシェアサイクル事業に参入するなど、企業がイノベーションを起こしやすくなったといえるでしょう。

このような理由から、企業がイノベーションに注目するようになりました。次は「イノベーション人材」について詳しく解説します。

イノベーション人材の能力や種類とは?

イノベーション人材のイメージ
イノベーション人材とは、イノベーションをもたらす存在として期待される人物のことです。企業活動においてイノベーションの力が期待される中、イノベーション人材を求める企業も増えています。

本項では、イノベーション人材の有する能力やイノベーション人材の種類について解説します。

イノベーション人材が持っている能力


「イノベーション人材」と一口に言ってもさまざまなタイプが存在しますが、有する能力には共通点があると考えられています。

イノベーション人材が持っている能力として、一般には以下の内容が挙げられます。
  • 分析力・課題抽出力
  • コミュニケーションスキル・受援力
  • 協調性
  • 問題解決能力・指導力
  • 忍耐力・胆力
  • 情熱・意欲・モチベーション

分析力、課題抽出力

分析力や課題中出力は、物事を分析し、本質を見抜き、整理して課題を洗い出す能力のことです。

イノベーションを起こすには、現状を知り、適切な策を講じる必要があります。市場の様子や技術開発の状況、社会情勢などの情報を収集し、取りまとめ、根拠に基づく課題抽出をスムーズに行うことが求められます。

同じ物事に触れたとき、より本質的な部分に目を向け、タイミングを逃さず課題設定ができる人はこの能力が高いと言えるでしょう。

コミュニケーションスキル・受援力

イノベーションは一人では起こせないものであり、周囲の力を借りる必要があります。人的ネットワークを構築し、人を巻き込まなければなりません。

周りの人から支援を受け続けるために報連相を取りこぼしなく行うこと、感謝を伝えたり期限を守ったりすることで信頼を構築することも、この力に含まれます。

アイデアの可能性や魅力を周囲に伝えて周りの人を「手伝いたい」という気持ちにさせて支援を受ける力がある人は、コミュニケーションスキル・受援力が高いと考えられます。

協調性

コミュニケーションスキルと似ていますが、チーム内の関係性維持・役割分担を行うという点で協調性も重要なスキルです。

イノベーションを起こすにはある程度の期間が必要です。その瞬間だけ相手に対して都合の良い振る舞いをするのではなく、自らの役割や相手の能力に応じて仕事を分担したり、関係性を維持したりすることが求められます。

マネジメントを行う立場であるかないかにかかわらず、チーム内の人間関係を大切にする力は、イノベーション人材の必須能力と言えるでしょう。

問題解決能力・指導力

課題設定だけでなく、問題解決能力や指導力もイノベーションを起こすうえで極めて重要です。

新しいことに取り組む際に問題を放置して自らのミッションだけを機械的に進めるようでは、イノベーション人材とはいえません。仮に成果物ができあがったとしても当初の目的を逸脱してしまうことも考えられます。

また問題解決をする過程で、メンバーに根気強く指導を行わなければならない場面も出てきます。イノベーション人材には本来の目的に立ち戻り、必要な指導や役割の再定義を行うなど「問題解決をするためにどうすればよいか」を考えられる力が必要です。

忍耐力・胆力

イノベーションを起こす過程では、前例のないことに取り組む機会も多く訪れます。既に円滑に動いている場合とは異なり、些細なトラブルや不具合が生じることも珍しくありません。また芳しい結果が出ることばかりではなく、成果が上がらないことに対して焦りを感じることもあるかもしれません。

またイノベーションを創出する過程では、たくさんのトライアンドエラーが求められます。何度も失敗するなかで、ひたすら改善を繰り返しイノベーションを起こそうと粘り続けるには強い忍耐力・胆力が必要です。

このような厳しい状況でも耐える力や「大丈夫、なんとかなる」と前向きに考えられる力、難しい課題にチャレンジする胆力も、イノベーション人材に求められるスキルです。

情熱・意欲・モチベーション

困難があっても「なんとしても成し遂げたい」と思える情熱や、内発的動機づけがあることも重要です。

自らの目指す世界観があり、それを導くためにイノベーションが必要であると考えるなど、イノベーションを起こすこと自体の目的を持っている存在は、意欲を失うことなくイノベーションを起こすために取り組み続けられる可能性が高いと言えます。

イノベーション人材の能力とコンピテンシー

イノベーション人材の持つ能力は、コンピテンシーとも通じる部分があります。

コンピテンシーとは、ハイパフォーマーに共通する行動特性や思考特性のことです。たとえば自社の営業職で活躍している人に共通する特徴として「聞き上手」が挙げられる場合、これがコンピテンシーとなります。

ただし組織や部署によって求める能力が異なるため、求められるコンピテンシーも異なります。たとえば営業職では「聞き上手」な人が求められても、経理職では「一人で丁寧に作業を行える人」が求められるケースがあります。

このようにコンピテンシーを活用することで、活躍する人の特徴に当てはまる人材を配置し、会社全体のパフォーマンスの底上げにつながります。しかしハイパフォーマーがどのようなコンピテンシーを持っているのか、直感的に見極めることは難しいです。そこでおすすめなのがコンピテンシー診断ツールです。

コンピテンシー診断ツールを用いることで、自社のハイパフォーマーがどのような力を持っているのか分析できます。

コンピテンシー診断について知りたい方は、以下の記事もご一読ください。
【関連記事:コンピテンシー診断とは?導入事例や使用方法も解説

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イノベーション人材の種類

ハーバード・ビジネス・スクールの教授も務めたクリステンセン氏などによるThe Innovator’s DNAの研究によれば、イノベーション人材には3つのタイプがあるとされています。
  • プロデュースが得意なタイプ
  • デザインが得意なタイプ
  • 技術の評価・実装が得意なタイプ

プロデュースが得意なタイプ

イノベーション人材の中でも、プロジェクトマネジメントや全体のコーディネートを行う担当に最適の人材です。

チームや会社、業界の外部環境・内部環境を理解し、分析して課題を抽出する力があります。メンバーの役割分担や意思決定を首尾よく行い、イノベーションを成功させるリーダーとなる存在です。

チームの統括を行い、必要な場面では指導力を発揮することも求められるでしょう。

デザインが得意なタイプ

ひらめきや発想に長けており、自らアイデアを出してチームに活気を与え、イノベーションの最初から最後まで周囲を巻き込むことができる人材です。

奇抜なアイデアを出すだけではなく、協調性・コミュニケーションスキルを発揮してチーム内外のコミュニケーションを行い、イノベーションに必要な関係を維持する存在です。

プロダクトそのもののアイデアだけでなく、周囲の協力を得るための作戦のデザイン、いわゆるコミュニケーションデザインも重要な役割のひとつと言えるでしょう。

技術の評価・実装が得意なタイプ

アイデアや企画の状態から、具体的なプロダクトの創出に至る過程で言語化・具現化することを得意とする人材です。ITや各種専門的技能・ツールを活用し、企画を実現可能な状態に成長させます。

このタイプのイノベーション人材は、実際にプロダクトを作り上げるだけでなく、競合のプロダクトを分析し、技術レベルの評価を行う場面でも活躍します。改革や施策のコストパフォーマンスを吟味するなどのイノベーションの準備段階でも力を発揮するでしょう。

単にテクニックを持っているだけでなく、メンバーの着想を汲み取り、見通しを立てたうえで成果物を完成させる実行力が求められます。

企業別の「フィットするイノベーション人材」

さまざまなオフィスビル
イノベーション人材を活用したいと考える場合、前項で挙げたタイプであればどのような人材を採用しても良い、というわけではありません。

どのようなイノベーション人材がフィットするかは、企業規模や風土によっても、また成長フェーズやタイミングによっても異なります。

本項では、自社に合ったイノベーション人材を集め、配置するために気をつけたいポイントを解説します。なおイノベーション人材に限らず社員の適切な人材配置を成功させたいとお考えの方は、下記からダウンロードできるお役立ち資料もぜひご覧ください。

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企業規模や風土による違い

イノベーション人材の登用・配置において、企業規模や企業のカラーは大きく影響します。
従業員数が数十人規模の企業と数千人規模の企業、老舗企業とスタートアップ企業とでは、組織を統制するルールや意思決定の方法、一人ひとりの発言や行動が会社に与えるインパクトの強さ、スピード感などが異なるからです。

イノベーションは組織に変化をもたらすため、変化に対する耐性や与えたい変化の強さによって、どのような人物を重点的に配置するかを決めます。

たとえば従業員数が多く伝統ある企業で入念な合意形成や根回しをするほうが望ましい場合、プロデューサータイプのイノベーション人材が中心となり、じっくりと腰を据えて取り組むことが好ましいでしょう。

逆に変化の激しいスタートアップ企業では、企画力や発想力のあるデザイナータイプを積極的に登用し、アグレッシブに提案を行うことが求められやすいです。

成長フェーズによる違い

同じ企業でも、タイミング次第では重点的に配置すべきイノベーション人材が異なる場合があります。
そのときにもたらしたい効果、イノベーションの目的をよく吟味して、配置を考えるとよいでしょう。

たとえば、業績は良いものの市場が成熟しつつあるタイミングであれば、外部にも積極的に発信でき、新しい発想を続けられるデザイナータイプのイノベーション人材が成果をあげることが期待できます。

他方で、株式上場を控えている段階や業績が悪化してリソースが減っているときであれば、市場における信頼の引き上げや限られた資金とマンパワーを効率よく使いながらイノベーションを起こすことが求められます。その場合はマネジメントが得意なプロデューサータイプに加え、技術を無駄なくミスなく使い、生産性をアップさせる技術者タイプが大きく貢献するでしょう。

タイミングと現状把握

その時々の会社や人材の状況によっても、どのようなイノベーション人材を採用・配置するかに影響が生じます。組織全体の人材が同じようなタイプばかりになると、革新的な取り組みよりも現状維持を重視することにつながる場合があり、一見うまくいっているように見えても注意が必要です。

状況に応じて必要な人材を引き入れると同時に、チームのバランスを損なわないよう、多様性のある組織を作ることがイノベーション創出にも効果を発揮します。

組織のメンバーが現在どのような状態にあるかを定期的に把握するためには、
  • 1 on 1の面談を行う
  • メンター制度を導入する
  • アンケートやヒアリング調査を行う
などの方法があります。

またミイダスの組織サーベイのように、モニタリングを容易にするツールを導入する企業も増えています。このようなツールを積極的に活用することで現状把握の手間を削減し、従業員のエンゲージメントを高めることもできます。

タイミングによってはイノベーション人材の配置が人事異動と重なることもあります。イノベーション人材の活用に絡めて組織の体制変更を行うこともあるため、ぜひ下記記事もぜひご覧ください。
【関連記事:組織変更に伴う人事異動を成功させるには?時期やポイントなどを解説

社内でイノベーション人材を育成するポイント

研修を受けている社員
ここからは社内でイノベーション人材を育成するためのポイントについてご紹介します。
  • 求める人物像を明確化する
  • 社内の人事制度・組織体制を見直す
  • 社風を見直す
  • 多様な人材を登用する
  • 外部の人材やサービスを活用する
  • 社員の副業を認める
上記のポイントを意識し、うまく社内でイノベーション人材を育てましょう。それぞれ詳しく解説します。

求める人物像を明確化する

まずはどのようなイノベーション人材を求めるのか明確にしましょう。上述したように、イノベーション人材には「プロデュースが得意なタイプ」「デザインが得意なタイプ」「技術に強いタイプ」の3種類に分けられます。

そのうえで、どのようにイノベーション人材を育成するのか方針を明確にすることも大切です。
  • どのようなスキルが必要になるのか
  • いつまでにどのような状態まで成長してほしいのか
  • 育成するため具体的にどう指導を行うのか
上記の点を考えることで、求める人物像が明確になるだけでなく具体的な育成のロードマップも形成できます。

社内の人事制度・組織体制を見直す

社内体制を見直すことも、イノベーション人材を育成するうえで重要です。
  • 年功序列を前提としている組織体制
  • 能力があっても若いと出世できない人事制度
上記のような社内体制は、必ずしも悪いものではありません。ただしイノベーション人材を育てる土壌としては、あまり望ましくないものです。イノベーションを行うには、柔軟性やバイタリティがある人材が求められるため、必然的に若い人が選ばれやすくなるからです。

若くても能力がある人が出世して権限がある状態にできる組織体制にならなければ、仮にイノベーション人材を育てても社内で力を発揮できなくなってしまうでしょう。

社風を見直す

社内でイノベーション人材を育成・活用するなら社風の見直しも重要です。せっかくイノベーション人材を登用しても、社風の問題からイノベーションが進まないリスクがあるからです。

たとえば新しいチャレンジに消極的で保守的な社風の場合、会社としてイノベーションを促進しようとしても、社員が抵抗するかもしれません。社風を変えることは簡単ではありませんが、企業のトップが自ら旗を振ることが大切です。

一例を挙げると、会議で若手に積極的に発言してもらう、部署を越えた社内交流を促す機会を設ける、失敗しても責めずにチャレンジを称賛する。このようなことをトップ自らが取り組むことで、社員に改革の本気度が伝わり、イノベーションが発生しやすい社風に変わる可能性があります。

多様な人材を登用する

生い立ちや性別、国籍など多様な背景を持つ人材を登用することも、イノベーション人材を育てるうえで大切です。

イノベーションを起こすには、既存の常識や枠組みにとらわれない新しい発想が必要です。そこで、さまざまな背景をもつ人が集まる組織にすることで、これまでにないアイデアが生まれやすくなるのです。

たとえば日本人男性ばかりが正社員や要職に就く会社であれば、女性や外国人材を正規雇用したり出世させたりすることで、女性目線やグローバルな観点から意見がでてくるようになるでしょう。こうして、新しいイノベーションが生まれやすくなるのです。

ただし、正規雇用で多様な人材を採用するのはコスト的に厳しい場合もあるでしょう。このような場合は、外部のサービスを活用するのがおすすめです。

外部の人材やサービスを活用する

外部の人材やサービスを活用するのも、イノベーション人材を育てるうえで大切です。

たとえば採用に関する課題を解決できるイノベーション人材を育てるなら、プロの知見を持った採用代行や人事コンサルの活用が考えられます。これらの外部サービスから最新の採用手法やノウハウを学ぶことで既存社員が成長し、イノベーションを起こしてくれるでしょう。

社員の副業を認める

新しい知見を得てイノベーションを生むために、社員の副業を認めるのもおすすめです。他社で仕事をすることで、自社で働くだけでは得られないスキルや業務系ケイン、考え方、ノウハウなどを得られる可能性があります。

たとえば人事・採用に強い社員が副業で本業と同じような仕事を行う場合、他社の良いところや改善点を客観的に観察できるでしょう。視野も広くなり、副業を通じて学んだことが「本業でも活かせるかも」といった気づきを得ることもあります。

労務管理の観点から、会社として副業を認めるのは難しいと感じる方もいるかもしれません。しかし社員の成長を促してイノベーション人材を育てるという意味では、この機会に副業を認めるかどうか検討してはいかがでしょうか。

イノベーション人材を活用するためのステップ

イノベーションを起こすステップ
イノベーション人材を活用するためには、自社の状況を適切に見極め、順を追って取り組みを進める必要があります。

自社に合うイノベーション人材を見出し、活用するには、以下の手順で取り組むと良いでしょう。
1. イノベーションを起こす目的の整理・確認
2. プロジェクトメンバーの選出・アサイン
3. 内部環境・外部環境の把握
4. 人事状況の詳細分析
5. コンピテンシー分析・コンピテンシーモデルの作成
6. コンピテンシーモデルに基づく人材の再評価
7. コンピテンシーモデルによる人材の育成・採用
8. イノベーションの状況確認
9. 継続的な人材マネジメント

1. イノベーションを起こす目的の整理・確認

まず、イノベーションを創出する目的や必要性を確認します。
経営課題を確認し、経営陣がどのようなビジョンを掲げているかヒアリングしましょう。

ほとんどの場合においてイノベーションは単年度で創出できるものではないため、中長期的な方針を把握し、中期経営計画との齟齬が出ないようにイノベーションの創出やイノベーション人材の活用を進める必要があります。

ここで確認したイノベーションを起こす目的は、人事計画全体にかかわる重要なものです。人事担当者全員に共有しましょう。

2. プロジェクトメンバーの選出・アサイン

次に、イノベーション人材を活用するプロジェクトを立ち上げる準備を行います。プロジェクト化は必須ではありませんが、人材育成にも関係するため、人事担当者以外にも各現場から協力を得られる体制を整えることが重要です。

どのようにプロジェクトを進めるのかを想定して、必要な人材を集めていきます。この時点で、プロジェクトメンバー全員がイノベーション人材の要件に当てはまる必要はありません。とはいえ、イノベーション人材への理解がある人物がプロジェクトリーダーになることが好ましいでしょう。

3. 内部環境・外部環境の把握

プロジェクトメンバーが揃ったら、会社の内部環境と外部環境を調査します。

内部環境の把握とは、会社の「ヒト・モノ・カネ・情報」の概観をつかむことです。各部門のメンバー構成や現状の業務内容、役割分担、設備や財務状況など、各種資源を紐解いていきます。

外部環境とは、業界内、国内情勢、海外情勢、消費者の動向などを指します。市場や競合のプロダクトと動きを把握するだけでなく、一般的な時事問題、トレンドの理解も含まれます。企業により内容は異なりますが、たとえば、感染症の拡大による事業へのインパクトや国際情勢の変化による貿易への影響などを把握しておくとよいでしょう。

4. 人事状況の詳細分析

手順3で把握した情報をもとに、人事データや具体的な事情についてより深く分析する必要があります。

世代交代の予定や勤務状況、生産性、各従業員の特性、部署・チームごとの従業員構成などを整理し、可視化します。

ツールを導入しない場合は手間がかかりますが、どのようなイノベーション人材を何人配置するのか決めるうえで重要な分析事項なので、慎重に行いましょう。

5. コンピテンシー分析・コンピテンシーモデルの作成

既に社内にイノベーション人材と考えられる人物がいれば、その人物の行動特性を分析します。
分析したあとは、判明した行動特性のうち、重視するものを挙げてコンピテンシーモデルを作成しましょう。

社内にイノベーション人材がいない場合は、他のハイパフォーマーを分析し、前述の「イノベーション人材が有する能力」に当てはまる項目に重きをおく方法や、外部のイノベーション人材を分析対象にする方法もあります。

行動特性やコンピテンシー診断の方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
【関連記事:行動特性とは?意味や活用メリット、コンピテンシー診断導入例を解説

ハイパフォーマーの活用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事:ハイパフォーマーとは?特徴や分析方法、離職を防ぐ方法を徹底解説

6. コンピテンシーモデルに基づく人材の再評価

コンピテンシーモデルを作成したら、それにしたがって社内の人材を再評価していきます。通常の人事評価とは異なり「イノベーション人材の発掘」という目的で評価すると、普段の評価ではわからないことが判明する場合もあるからです。

この時点で「イノベーション人材」あるいはイノベーション人材になれる可能性があると判断された人物には、期待する役割や内容を伝え、イノベーションの創出に向けて協力を仰ぎましょう。育成や教育が必要な場合は、会社やその人に合った方法を取り入れます。

コンピテンシー評価について興味のある方は、下記の記事も併せてご確認ください。
【関連記事:コンピテンシー評価とは?導入方法や評価項目を解説

7. コンピテンシーモデルによる人材の育成・採用

社内の人材をコンピテンシーモデルに近づけるための人材育成や、足りない人材の採用を行います。

行動特性は後天的に身につけられる部分もあるため、効果的に教育を行えばイノベーション人材を育成できます。

新規採用を行う場合、自社にとってどのタイプのイノベーション人材が必要かを十分に考え、それに当てはまる特性をもつ人物にアプローチしましょう。

コンピテンシーと人材育成との関係性については、下記記事もご一読ください。
【関連記事:コンピテンシーを人材育成に取り入れるメリットや導入方法、注意点を解説

8. イノベーションの状況確認

人が揃ったら、PDCAサイクルを回すために適宜状況確認を行います。イノベーションの目的達成のために必要な人材育成や採用、現状のメンバー構成等に課題が見つかった場合は対処します。

イノベーションは明確な製品・サービスを作り上げるだけでなく、業務上の仕組みを変えたり、意味付けを変えたりすることも含まれます。新たなプロダクトができあがっていないからといって、イノベーションが起こっていないとは限りません。ヒアリングや細かな変化の情報共有などを通じ、状況を確認できる仕組みをもつことも大切です。

9. 継続的な人材マネジメント

成果物ができあがらないイノベーション創出の場合、イノベーション人材やチーム全体がモチベーションを失わないよう、定期的なフォローアップが重要です。

定期的に状況把握をする仕組みをもつことで、各メンバーの状況把握と早めの問題対処ができます。また、組織全体のアンバランスや小さな問題に気づき、トラブルシューティングを行えるメリットがあり、PDCAサイクルを回すうえで重要な取り組みのひとつです。

優秀なイノベーション人材がモチベーションを維持するためにも、サーベイツールや面談などでフォローアップできる体制を整えるとよいでしょう。

イノベーション人材の活用に必要な企業側のマインドセット

商談中のビジネスマン
最後に、イノベーション人材を活用するうえで心がけたい企業側のマインドセットについてご紹介します。せっかくイノベーション人材を育てて活用しようと準備しても、企業側の考え方や組織の体質が従来のままだと、うまくイノベーションを起こせないリスクがあります。
  • 環境の変化を意識する
  • リスクを取ってチャレンジする
  • 社員の心理的安全性を確保する
  • 中長期的に腰を据えて取り組む
  • 継続的にPDCAを回す
  • 適切な投資を行う
上記の点を意識して、イノベーションを起こしやすい組織体質になりましょう。

環境の変化を意識する

市場環境の変化を意識することが、イノベーション人材を活用するうえで大切です。上述したように、現代はVUCAの時代と言われるほど不確実性が高まっています。そのため市場環境の変化を察知できるよう日頃からこまめに情報収集を行い、必要があれば適切に行動することが求められているのです。

イノベーション人材を育成する場合、市場環境に変化があったら育成方針を変更する必要があるでしょう。イノベーション人材を活用する場合も、市場環境の変化に合わせたアウトプットを求める必要があります。

リスクを取ってチャレンジする

リスクに対する許容度を高めることも、イノベーション人材を活用するうえで大切なことです。イノベーションを起こすには数多くの失敗を経験するでしょう。そのため、企業側もチャレンジに対する失敗をある程度は許容する筆があります。

失敗を認めない姿勢をとり続けてしまうと、せっかくイノベーション人材を登用できてもチャレンジがしにくくなり、失敗の責任を取るという形で離職につながることもあるでしょう。

社員の心理的安全性を確保する

心理的安全性とは、組織や集団の中で自分の考えを安心して発言できる状態のことを指します。心理的安全性が低い職場では「安易な発言をすると怒られる」「揚げ足を取られてしまう」と身構えてしまい、自由に意見を言いにくくなってしまうでしょう。

しかし、イノベーションを起こすためには前例にとらわれない自由な発想が必要です。心理的安全性を確保することは、イノベーション人材を活用するうえで必須といえます。心理的安全性の詳細は下記記事で解説しておりますのでご一読ください。

【関連記事:心理的安全性とは?意味や組織へのメリット・高め方を解説【人事必見】

中長期的に腰を据えて取り組む

イノベーションを生むための取り組みは中長期的な視点で考える必要があります。組織でイノベーションを起こそうとすると、求められる内容にもよりますが、ある程度腰を据えて取り組む必要があるからです。

たとえば「採用業務の抜本的な見直し」という課題に対してイノベーションを起こそうとすると、業務フローや使用するツールの見直しから必要になり、時間がかかります。短期間で成果を挙げようと焦ってしまうと、かえって生産性が低下してしまいかねません。

イノベーション人材を活用するなら、短期的に成果を求めすぎないよう企業側は心がけましょう。

継続的にPDCAを回す

うまくイノベーションを起こして成果を挙げるには、継続的にPDCAを回すことが大切です。

「あたらしいイノベーションを生み出せたから」「大きな成果を挙げられたから」といって継続的な効果検証を行ってしまうと、成果が出たのは最初だけで中長期的に見るとイマイチだった、というケースが発生してしまいかねません。

イノベーションは1回起こせば終わり、というケースは少ないです。継続的にPDCAを回すことが、より大きなイノベーションの創出につながるでしょう。

適切な投資を行う

イノベーション人材を活用するうえで大切なのが、適切な投資を惜しまないことです。

使える予算や機材が限られているなかでも素晴らしいイノベーションが発生する場合もありますが、やはり人・物・金・情報に投資できると成功する可能性も高まります。

たとえば「採用選考の精度を上げたい」「採用のミスマッチを減らしたい」という場合、人材アセスメントツール「ミイダス」のようなツールの導入を検討しましょう。

イノベーション人材の活用のためにツールを味方につけよう

ツールを活用するビジネスパーソン
イノベーション人材を活用するなら準備段階から実運用に至るまで、ところどころで情報収集や分析が必要です。

人の手に頼って作業を行うと大変な手間がかかるだけでなく、作業者の判断を介するためにバイアスがかかる問題もあります。

そこで「ミイダス」のようなアセスメントツールを活用すれば、それらのデメリットを解消できます。

「ミイダス」ならイノベーション人材の採用・育成・配置に役立つ

ミイダスの画面
「ミイダス」は437,342社(2024年1月時点)が導入するアセスメントリクルーティングサービスです。
採用に役立つだけでなく、人材の特徴や適性、組織の現状を分析でき、今いる社員のマネジメントや育成にも貢献するツールです。ミイダスには独自の活躍要因診断という機能があります。

コンピテンシー診断では、活躍する社員やイノベーション人材を41の項目から分析し、自社やそのチームに必要なイノベーション人材のコンピテンシーモデルを簡単に作成できます。

コンピテンシー診断の内容を用いて社風や現在のチームにフィットしやすい人材を分析し、可視化できる「フィッティング人材分析」の機能もあります。採用だけでなく、イノベーション人材を採用したり、異動させたりする場合のミスマッチを回避するためにも重要な機能です。

ミイダスにはコンピテンシー診断を受験した求職者が20万人以上登録しており、フィットする人材に自動でアプローチすることも可能です。1,733もの項目から重視する特徴を絞り込んで検索することもできます。また、各々の思考や意思決定の特性をつかむことができる「バイアス診断ゲーム」は、意思決定の質を高めたり、自らの認知バイアスを意識することで生産性を高めたりする効果もあります。

さらに「ミイダス組織サーベイ」は、現状把握とタイミングを逃さないフォローアップのために有用な機能です。社員に定期的なアンケートを実施し、一人ひとりの社員の状態と組織全体の状態を把握します。イノベーションを創出するには時間がかかり、モチベーションが維持しづらいタイミングや、特定の社員に負担がかかってしまいやすい場面もあります。

組織サーベイは一人ひとりの状況把握だけでなく、会社全体、チーム全体の概況を把握するのにも役立ちます。メンバーのパワーバランスが崩れている兆候に早く気づけた場合、必要な人材を補う人事異動や新規採用、組織体制の変更など、会社として必要な策をいち早く打つこともできます。

イノベーション人材を活用し、イノベーションを創出したいとお考えの方は、ぜひミイダスにご登録ください。いまなら「コンピテンシー診断」が30名まで無料でご利用いただけます。


【1分で登録完了】組織の特徴や活躍する人材の特定をミイダスで始める

ミイダスは自社にフィットする人材を特定してアプローチできる
「アセスメントリクルーティング」採用ツールです。

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