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メンターとは?制度の導入で得られる効果やデメリット、成功のポイントを解説

近年、多くの企業でメンター制度の導入が進んでいます。上司よりも近い立場の先輩社員が後輩社員をサポートするメンター制度は、早期離職の回避や社内コミュニケーションの活性化に効果的です。

しかし、なかにはメンター制度を導入したものの期待した成果が得られず、制度そのものを廃止する企業も存在します。

そこで本記事では、メンター制度の概要と、制度導入で期待できる効果やデメリットについて紹介します。メンターに向く人材の特徴や、メンター制度の導入プロセス、成功させるポイントなども詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。

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メンターとは、どんな人?役割や注目される背景を解説

メンターの男性社員
「メンター」とは、自身の経験やキャリアを手本として、新入社員や若手社員にアドバイスやフィードバックを行う存在のことです。似た言葉に「ロールモデル」がありますが、ロールモデルが単なるお手本であるのに対し、メンターはマンツーマンの対話(メンタリング)によって積極的に指導対象とかかわります。

メンターによって人材育成を図る制度を「メンター制度」と呼び、ある調査によると「約半数の企業で取り入れられている」という結果が出ています。

ここでは、次の6つの観点からメンターへの理解を深めましょう。
  • メンター制度の概要
  • メンターの意味や語源
  • 上司とメンターの違い
  • メンターとメンティーの違い
  • メンター制度とOJT制度の違い
  • メンタリングとコーチングの違い

メンター制度の概要

メンター制度とは、中途採用を含む新入社員を有用な人材へと育成するための制度です。オンボーディング施策の1つに位置づけられます。

一般的には新入社員や若手の育成で用いられますが、女性管理職の育成で取り入れている企業もあります。
 
直属の上司ではない先輩社員を新入社員の相談役として配置し、サポートを促すのがメンター制度の基本形です。違う部署の人材がメンターとして配置されることが多いため、業務の相談というよりも、会社組織における精神的なサポートの意味合いが強いです。

メンター制度によって新人社員が抱える仕事や人間関係の悩みをすくい上げ、問題解決や成長支援ができれば、これらを原因とした早期離職やモチベーション低下を防止できます。

なお、メンター制度以外のオンボーディング施策についてはこちらの記事をご一読ください。

【関連記事:オンボーディングとは?意味や導入による効果を紹介】

メンターの意味や語源

「メンター」の言葉には「良き指導者・助言者」という意味があります。

語源は古代ギリシャ時代にまでさかのぼり、長編叙事詩『オデュッセイア』に登場する「Mentor(賢者メントール)」の名が言葉の由来とされています。

賢者メントールは王様に信頼される存在で、戦いに勝利するための助言をするほどの関係だったそうです。王様が遠征に出かける際には、王子の教育を任されていました。手厚いサポートを受けた王子にとって、賢者メントールは良き指導者であり、理解者でもあったのです。

賢者メントールの果たした役割から、現在の「メンター」の言葉につながっています。

上司とメンターの違い

メンターと上司を混同する方もいるかもしれませんが、両者は異なる存在です。主な違いは下記のとおりです。
  • 上司:同じ部署に属する人。業務の指示・指導をする人
  • メンター:他部署の人。会社や仕事の悩みなどの相談にのったり他部署とのつながりをつくるきっかけになったりする人
後述しますが、メンターになる人は他部署でかつ年齢が近いほうが望ましいです。メンター制度を導入することで、新入社員・中途社員が抱えがちな下記のような悩みの解決につながります。

「入社したばかりで仕事のことを相談できる人がほとんどいない」
「同じ部署の人には相談しにくい悩みがある」
「そもそも他部署でどのような人が働いているのかほとんど知らない」

このような悩みを放置すると、新人のメンタル不調や早期離職につながる恐れがあります。そこでメンター制度を導入することで、悩みを相談したり他部署の人と交流する機会を持てたりするため、上記のリスクを抑えやすくなります。

なお、新人社員のコンディションを把握する方法として「ミイダス組織サーベイ」の活用もおすすめです。簡単なアンケートを定期的に実施するだけで社員のコンディションを把握できるうえ、今どのような行動を取るべきか分析できます。サービス詳細は下記をご確認ください。

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メンターとメンティーの違い

メンター制度において、相談役の先輩社員を「メンター」、サポートを受ける新入社員を「メンティー」と呼びます。メンター制度では、メンターがメンティーに対して定期的に面談を設け、1on1の対話でメンティーの成長を促します。

メンターには、直属の上司や同部署の先輩社員ではなく、メンティーと利害関係が薄い他部署に所属し、かつメンティーと年齢の近い先輩社員を配置するのが一般的です。メンター、メンティー双方の心理的負荷を下げ、本来の目的を達成しやすくするためです。

メンター制度では、メンターとメンティーの信頼関係を築くことが重要なポイントといえます。そのため、メンティーが気負いなく話せる関係を築けそうなメンターを選出します。
 
なお、前述したとおり、メンティーは新卒の新入社員とは限りません。むしろ、中途採用の社員にこそ、メンター制度の必要性は高いといえます。同期がいない中途入社の社員は孤立しやすい環境にあるからです。

メンター制度とOJT制度の違い

メンター制度と似たものとして、OJT制度(On the Job Training制度)があります。エルダー制度とも呼ばれるこの制度では、新入社員に担当の先輩社員が付いて業務に関する指導を行います。
メンター制度:他部署の先輩社員が付いて、精神的なサポートをメインに行う
OJT制度:同部署の先輩社員が付いて、実務面やスキル面でのサポートをメインに行う
上司ではなく先輩社員がサポートに付く点はメンター制度と同様ですが、OJT制度の目的はあくまで業務に必要な知識やスキルの教育です。

実務とは無関係の精神的・心理的なサポートまで含めるメンター制度とは、サポート範囲が異なる点に留意してください。

メンタリングとコーチングの違い

「メンタリング」と「コーチング」も似ている用語の1つです。
メンタリング:メンターが良きロールモデルとなり、メンティーの課題を解決するためのアドバイスをする。精神的なサポートが中心。

コーチング:目標達成のためにコーチが社員の能力を引き出し、主体的な行動を促す。精神的なサポートのほか、実務やスキル面の支援も行う。
このように、メンタリングとコーチングは、対話の内容やサポートの範囲が異なります。混同しやすい言葉ですが、それぞれの役割は違うため、適切な使い分けをしましょう。

ここまで、メンターとはどんな人なのか、制度の概要や背景などをお伝えしました。次の項目では、メンター制度の導入で期待できる効果を解説します。

メンター制度が注目される背景

メンター制度の導入を検討する企業が増えている背景には、下記の要因が挙げられます。
  • 終身雇用制度の崩壊
  • 会社への帰属意識の希薄化
  • 価値観の多様化
  • 労働環境の多様化
各要因について詳しく解説します。

終身雇用制度の崩壊

メンター制度が普及した要因の1つが、終身雇用制度の崩壊です。終身雇用制度とは、企業の倒産といった問題がなければ企業側は従業員を雇い続ける、日本の雇用慣行のことを指します。

今までは入社さえしてしまえば基本的に解雇されることはなく、定年まで同じ会社で働き続けられる可能性が非常に高かったです。しかし、経済成長の停滞などに起因する終身雇用制度の崩壊により、転職は以前より一般的なものになりました。

大手企業側も「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言するなど、会社が定年まで雇用を守ることが薄れつつあります。そもそも長期的な視点で会社が存在し続けていけるのかといった見通しが怪しくなっている企業もあります。

このような要因から転職への抵抗感が薄れたことで、年功序列の時代には当たり前に存在していた「自分の数年先を行くロールモデル」を見つけるのも難しくなりました。

そこで新人を円滑に社内へ迎え入れるため、社内で気軽に相談できる人(メンター)が求められるようになり、メンター制度が注目を集めています。

会社への帰属意識の希薄化

メンター制度が普及した要因の1つに、会社への帰属意識の希薄化が挙げられます。帰属意識が希薄化している原因は3つあります。

1.転職に対する抵抗意識が薄いこと
2.副業を解禁する流れがあること
3.働き方が多様化していること

政府は2017年に、16〜29歳の男女に向けて転職に関する意識のアンケートを実施しました。その結果、転職に否定的な声は全体の2割程度だとわかり、転職を容認する意識が広まっていることが伺えます。
転職に関する意識調査のグラフ
引用:特集 就労等に関する若者の意識|厚生労働省

また近年では、会社のほかに仕事をする副業(復業)もブームです。実際、一部の大手企業でも副業を解禁するなど会社側も容認する流れが確認できます。

また働き方が多様化し、リモートワークも普及するなかで、新入社員が「気軽に相談できる先輩社員」と出会う機会が減少したことで、帰属意識を醸成しようにも難しい状況もあります。

このような背景があるため、帰属意識の希薄化が進んでいるのです。そこで会社への帰属意識を高めるために、メンター制度の導入が注目されています。

価値観の多様化

「プライベートを充実させたい」「必ずしも出世したくない」など、多様な価値観を持った若者が増えている現状に対応するためにも、メンター制度は注目されています。

平成30年度の「子供・若者白書」によると、仕事よりも家庭やプライベートを優先したいと答えた若者の割合が増加していることがわかりました。
「仕事と家庭・プライベート(私生活)とのバランス」のグラフ
引用:平成30年度版子供・若者白書(概要)|内閣府

仕事を第一に頑張る人も存在しますが、一方でプライベートや家庭のことを重視する人が増えている事実にも向き合う必要があります。そこでメンター制度を導入し、個々が大切にしている価値観を理解し共有する機会を持つことが重要です。

もちろんメンターとメンティーの2人だけの問題で終わらせず、会社としても従業員の価値観を尊重した働き方改革が求められています。働く人の価値観については下記の記事もご一読ください。


【関連記事:働く人の価値観は変化している?活躍人材を見抜くの特徴や採用方法を紹介】

労働環境の多様化

メンター制度が注目されている背景の1つに、労働環境の多様化が挙げられます。

たとえば2020年の新型コロナウイルス感染拡大を機に、リモートワークを導入する企業が増えました。2023年現在では出社を再開する企業も出てきていますが、一方でリモートワークのまま業務を続行したり、出社とリモートワークのハイブリッドで対応したりする企業もあります。

他にも、副業(復業)に取り組んでいる社員もいます。実際、副業を希望している人は増加傾向です。
「副業を希望している故障者数の変化」のグラフ
引用:副業・兼業の現状1|厚生労働省

勤務形態や副業など働き方が多様になることは、個人のニーズに応じて柔軟に働きやすくなったというメリットがあります。一方で会社への帰属意識や社内の人間関係が希薄化するなど、デメリットもあるのです。

このような多様化した労働環境において、社員の孤立による離職を防ぎ、企業で長期的なキャリアプランを描く相談役として、メンターという存在が必要とされています。

メンター制度の導入で得られる4つの効果

メンターと面談する女性社員
メンター制度の導入で、どのような効果が期待できるのでしょうか。

厚生労働省の調査(複数回答)によれば、メンター制度の直接的な効果として以下のことを実感する企業が多いようです。
  • メンターの人材育成意識の向上(65.3%)
  • メンティーの定着率の向上(47.5%)
  • 部門や職種をまたがるコミュニケーションの活性化(47.5%)
参考:厚生労働省「ロールモデルの育成およびメンター制度の導入に関するアンケート調査

ここでは、上記アンケートの結果を踏まえ、メンター制度導入で直接的・間接的に得られる4つのメリットを紹介します。

1.新入社員の定着率が向上する
2.部門・部署間のコミュニケーションが活性化する
3.経験学習サイクルの実践になる
4.メンター自身の成長につながる

1.新入社員の定着率が向上する

メンター制度の導入によって、新入社員の定着率向上が期待できます。

企業文化や組織の常識に不慣れな新入社員は、業務以外にも悩みを抱えやすいものです。しかし、職場の人間関係が構築できていないため、気軽に悩みを打ち明けられる相談相手がいない場合もあります。

そこで、相談しやすい先輩社員をメンターとして配置できれば、メンティーが一人で抱えていた悩みや不安・不満を解消する一助になります。結果として、職場に馴染めないことが原因となる早期離職の防止につながるのです。

2.部門・部署間のコミュニケーションが活性化する

OJT制度やエルダー制度では同部署の先輩社員が新入社員を教育します。一方、メンター制度では他部署の先輩社員がメンターとなるのが一般的です。

日常業務ではあまりかかわりのない社員同士が交流するため、部門・部署間のコミュニケーション活性化が期待できます。社内のコミュニケーション不足が解消すれば、新人教育だけのメリットにとどまらず、組織全体の活性化にもつながっていくでしょう。

また、近年はリモートワークの普及によって、社員間のコミュニケーション機会も減少しています。メンター制度を活用すればオンラインでも面談や対話の機会が増え、交流を重ねることで企業に愛着を持てていない新入社員の帰属意識向上にもつながるのです。

3.経験学習サイクルの実践になる

メンター制度では、メンターとメンティーが対話する面談を定期的に設定します。

メンティーは、メンターとの面談を通じて悩みや不安を相談するとともに、経験を通じて学んだ内容を言語化するプロセスが習慣化されます。メンターに対して自分の言葉で語れるようになるだけでなく、内省のためにも非常に有効な方法です。

うまくいかなかったこと・うまくいったことを自分の言動とリンクさせて意味付けをし、自分なりの解決策や対策を実践するという「経験学習」のサイクルが自然とできあがるのです。
 
このサイクルが定着すれば、同様の悩みが生まれた際にもメンティー自ら解決できるように変化するでしょう。メンター制度によって、メンティーの成長の加速が期待できます。

4.メンター自身の成長につながる

メンター制度で成長が期待できるのはメンティー側だけではありません。メンティーを支援しサポートする過程で、メンターを務める先輩社員の成長も期待できます。
 
「メンティーの問題を解決し成長させるにはどうすれば良いか」を意識して面談を重ねるため、マネジメントや人材育成のノウハウ・コツを自然と習得できます。
 
こうした側面から、新人教育だけでなく、次期リーダー候補や管理職候補の育成にも寄与すると考え、メンター制度を導入している企業も少なくありません。

メンター制度の導入で企業が得られるメリットを紹介しました。多数のメリットがある一方で、デメリットになる部分もあります。続いてメンター制度の導入前に知っておきたい、デメリットを見ていきましょう。

メンター制度における3つのデメリット

悩んでいる会社員
さまざまなプラスの効果が期待できる一方で、「メンター制度には意味がない」といった意見があるのも事実です。実際、一度はメンター制度を導入したものの、デメリットによって制度を廃止した企業も少なくありません。

メンター制度の成功には、導入によって発生しがちな問題を理解し、対策を盛り込むことが重要です。

ここでは、メンター制度導入のハードルとなるデメリットについて紹介します。

1.メンターによって効果に差が出る
2.メンターの負担が増える
3.メンターとメンティーの相性が悪いと逆効果になる

それぞれ見ていきましょう。

1.メンターによって効果に差が出る

メンターとなる先輩社員の人柄やコミュニケーション能力によって、メンタリングの効果に差が出やすくなります。

メンターの業務状況やメンタリングへの姿勢によって、多少のばらつきが出るのは仕方ありません。しかし、あるメンティーは手厚くサポートされる一方で、別のメンティーにはほとんど面談がないとなれば、不公平感につながってしまうでしょう。

メンターとなるのに特別な資格は不要ですが、
  • 事前研修やマニュアルの策定を行う
  • メンタリング状況を第三者がヒアリングする
など、メンターの質のばらつきを抑える施策が不可欠です。

2.メンターの負担が増える

通常業務にプラスしてメンティーのサポートを行うため、メンターの負担が増大する点もメンター制度のデメリットです。

なかにはOJT制度の役割を含めてメンター制度を導入する企業もあります。その場合、メンターはメンティーの業務のサポートまで担うことになるのです。また、メンタル面のサポートには深刻な相談も少なくないため、メンター自身が負荷を抱えてしまうケースもあるでしょう。

メンターの仕事内容を事前にメンター本人とその上司に説明し、理解を得ておく必要があります。

3.メンターとメンティーの相性が悪いと逆効果になる

メンター制度では、メンターとメンティーの信頼構築がカギとなります。よって、双方の相性が非常に重要です。

「年齢が近いから」「同じ大学の出身だから」などの表面的な理由だけでメンターに選出してしまうと、ミスマッチ発生のリスクが高まります。

コミュニケーションがうまく取れない状態で運用を続けても、メンター制度の効果は得られません。それどころか職場への不信感や悩みが深くなり、メンティーの早期離職を招いてしまうリスクがあります。

定期的にメンターとメンティーの組み合わせを変更したり、コンビの解消を申請できたりといったミスマッチ対策が必要になるでしょう。

またメンターとメンティーのマッチングを行う際は、「ミイダス」のようなアセスメントツールを活用し、客観的な分析に基づいて相性の良い組み合わせを選出するのも有効です。

アセスメントツールについては、こちらの記事をご参照ください。

【関連記事アセスメントツールとは?5つの導入メリット・選び方の3つのポイントなどを完全解説】

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良いメンターとは?メンターに求められる7つの適性やスキル

さまざまなタイプの社員たち
メンターに資格や特別な能力は不要ですが、誰にでもメンターが務まるわけではありません。

メンターに選出する人材には、どのような適性やスキルが求められるのでしょうか?良いメンターに求められる適性やスキルを7つ紹介します。

1.相手への理解を深める傾聴力
2.相手の話を引き出す質問力
3.対等な関係を構築できる力
4.秘密を守る口の堅さ
5.フィードバックのスキル
6.組織や仕事に関する知識・経験
7.人材育成に対する意欲

1つずつ解説していきます。

1.相手への理解を深める傾聴力

まず重要なのが、メンティーの話を熱心に聞ける傾聴力です。

傾聴力とは、相手の感情や思考を深く理解するスキルのことです。メンターとして、メンティーの話に興味を持ち、理解しようとする姿勢と言い換えても良いでしょう。

とはいえ、メンターに高度な傾聴力は必要ありません。
  • メンティーの話に共感する
  • まずは肯定的に受けとめる
  • 適度に話をまとめる
上記のポイントに注意して、メンティーが話しやすい雰囲気作りができる人材がメンターに適しています。

2.相手の話を引き出す質問力

メンティーの話をより深掘りできる質問力も、良いメンターの条件の1つです。

何らかの不満や不安を抱えていても、メンティー自身がそれをうまく言語化できていないケースもあります。「最近、仕事で困ったことはある?」といったオープンクエスチョンからはじめ、YES・NOで答えられるクローズドクエスチョンを混ぜつつメンティーの話を引き出すスキルが必要です。

ただし「なぜ?」「どうして?」を繰り返すと、詰問と取られて相手を萎縮させてしまいます。質問でうまく話を展開できるコミュニケーション能力が求められます。

3.対等な関係を構築できる力

メンターとメンティーは上司と部下の関係ではありません。そのため、気軽に悩みを打ち明けられる対等な関係をつくる必要があります。

メンターには、信頼関係を構築しやすいコミュニケーション力や人柄が重要です。
  • 心理的に安心できる
  • スムーズなコミュニケーションが取れる
  • 気軽に話しかけやすい
  • 相手によって態度を変えず、平等に対応できる
  • 上司や他の先輩社員の悪口を言わない
  • 一緒に悩み、解決の方向へ導ける
ほんの小さなことかもしれませんが、上記ができない社員がいるのも事実です。信頼関係を構築できるメンターの人選が求められます。

4.秘密を守る口の堅さ

メンターは、メンティーのプライベートにかかわる悩みを打ち明けられるときもあります。したがって、メンターにはメンタリングで聞いた内容を漏らさない口の堅さが必須です。

メンターを信頼して話した内容を上司や他の先輩に口外されたとなれば、メンティーが離職するきっかけにもなりかねません。

事前研修や説明で守秘義務の重要性を伝えることも大切ですが、そもそも他人の秘密を気軽に話すような人材は、メンターには不向きといえます。

5.フィードバックのスキル

メンタリングは、メンティーに共感するだけでなく、客観的な視点からのフィードバックも必要です。前向きなアドバイスや、次につながるフィードバックができれば、メンティーのモチベーション向上や成長を促せます。

とはいえ、メンターは上司ではありません。上から目線での指導や、叱責と受け取られるようなフィードバックは不要です。あくまで先輩社員として、フラットな立場からメンティーの良かった点や、改善が必要な点を伝えることが大切です。

メンティーの成長に寄り添いつつも、客観的な視点を維持できるスキルが求められます。

フィードバックの手法については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事:フィードバックとは?意味や重要性、効果的に実践するためのテクニックを紹介】

6.組織や仕事に関する知識・経験

メンターはメンティーのお手本となる存在のため、当然ながら会社や組織に関する知識と経験が必要です。

例えばメンター制度導入の目的が女性管理職の増加であれば、メンターは管理職を担っている女性社員となるでしょう。また、中途採用で入社した社員の定着を図りたいときは、実際に活躍している中途採用者がメンターに最適であるはずです。

同じ企業に属していても、経験しなければわからない物事は多々あります。マニュアルや資料からは見えてこない実態をメンティーに伝えることも、メンターの重要な役割の1つです。

メンターには、メンティーの一歩先をいく経験や知識が求められます。

7.人材育成に対する意欲

「後輩の成長をサポートしよう」
「悩みがあったら相談にのってあげよう」

このように、人材育成に対する意欲を持っているかどうかもメンターを選ぶうえで大切です。メンターとの交流を通じてメンティーの成長を促すことも、メンター制度を導入する目的の1つだからです。

人材育成に積極的ではない人をメンターに選んでしまうと「話は聞くけれどアドバイスはしてくれない」となりかねません。他部署で年齢が近いからといった理由だけで選ばず、人材育成に対する意欲があるかどうかも事前に確認しましょう。

なお、人材育成について課題を抱えている場合は下記も参考にしてください。

【関連記事:人材育成の課題とは?5つの解決策と成功事例を解説】 

ここまで、メンターに求められるスキルや適性を7つ解説しました。次は、メンターにはどのような役割が期待されているのか見ていきましょう。

メンター制度に期待されること

メンター制度に期待されることは主に下記の3つです。

1.メンター自身の成長
2.メンティーの心理的安全性の向上
3.部署間の交流促進

どういうことか、詳しく解説します。

メンター自身の成長

メンター制度の導入によって、メンター自身の成長を促す効果が期待できます。たとえばメンティーに対するアドバイスを考えることで、自分の考えや認識が整理されていき、メンター自身の成長につながったり新しい気づきを得るきっかけになったりするのです。


また将来、上司になったとき、部下が悩むポイントを想像しやすくなります。メンターの経験を活かせば、部下へ寄り添ったフィードバックができるようになるなどスキル向上が期待できます。

フィードバックの重要性や注意点については下記で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

【関連記事:フィードバックとは?意味や重要性、効果的に実践するためのテクニックを紹介】 

メンティーの心理的安全性の向上

メンター制度の導入によって、メンティーの心理的安全性が高くなる効果が期待できます。

心理的安全性とは、職場で質問したりミスをしたりしても罰せられる心配が無く、安心感がある状態のことです。メンティーの心理的安全性が高い状態であれば「部署内で言いにくいこともメンターなら言いやすい」と、悩みを抱えにくくなります。

部署間の交流促進

部署間の交流促進につながりやすい点も、メンター制度に期待されていることです。

メンターとメンティーの交流がきっかけで、他部署への理解を深める機会になります。また交流が進めば部署間で協力して進めなくてはいけない仕事が発生した場合、すぐに取りかかりやすくなるメリットもあります。

ここまで、メンター制度に期待されることをご紹介しました。では、さまざまな人材がいるなかで、どのような人材にメンターを付けたほうが良いのでしょうか。メンターを必要とするメンティーの条件を見ていきましょう。

メンターを付けたほうが良いメンティーの条件

メンティーの対象となりうる社員の一例は以下のとおりです。
  • 入社したばかりの新卒・中途社員(主に入社1~3年目程度)
  • 仕事をするうえで心理的な不安を抱える社員
  • 新任管理職
とくに入社したての社員は、職場環境や業務内容に慣れていないため不安を抱えがちです。不安を解消し、職場に早く慣れてもらうためにも、メンターのサポートがあると良いでしょう。

また、仕事上の不安がある社員や新任管理職などを対象とするのも有効です。気軽に相談できる相手がいたり、ロールモデルとなる先輩がいたりするとプラスの効果を発揮します。

入社年数にとらわれず、メンタリングによって成長が見込める場合には、積極的なサポートを実施してはいかがでしょうか。

次の項目では、メンター制度を成功に導くポイントを4つの視点から解説します。

メンター制度の導入を成功させるポイント

人差し指を立てている手の模型
メンター制度は、導入すれば必ず成功するとは限りません。メンター制度を導入したものの、十分な効果を得られなかったという企業もあります。

メンター制度の導入を成功させるには、導入前の枠組み作りや、人材育成に前向きな組織風土の形成が大切です。

ここでは、メンター制度の導入を成功に導くためのポイントを4つご紹介します。
  • 人事部門が主導でメンター制度を推進する
  • 経営層による積極的な情報発信
  • メンターのサポート体制を整える
  • ガイドラインや運用ルールの策定
それぞれ見ていきましょう。

人事部門が主導でメンター制度を推進する

「導入します」と宣言しただけでは、どんなに良い制度であってもうまく進みません。

メンター制度が実施されるうえで、もっとも重要な役割を担うのが人事部門です。メンター制度の推進チームを設置するなど、うまく現場と連携しつつ、人事部門主導で制度を運用しましょう。
 
また、導入時にはメンター制度の浸透が不可欠です。メンター制度の導入目的を明確にしたうえで、制度導入の土台作りを行います。
  • 経営幹部に情報発信してもらうための情報提供
  • メンター研修の用意
  • マニュアルの準備 など
また、メンターの選出やメンティーとのマッチング、面談といった仕組みも、土台作りと並行して整備します。

経営層による積極的な情報発信

メンター制度導入の意義や目的が浸透すれば、社員全体の理解が深まり、より意欲的に制度に取り組む環境が整います。

そこで重要なのが、経営層によるトップダウンの情報発信です。

メンター制度導入は、少なからず現場の社員に負担をかけるため、管理職層の理解と納得が不可欠です。よって、経営会議や管理職ミーティングで積極的にメンター制度について取り上げ、どう会社の利益につながるのか経営層から発信してもらう必要があります。

経営層や管理職層がメンター制度の意義を共通認識として持っておけば、全社的に制度の定着が図れます。

メンターのサポート体制を整える

メンター制度の導入で懸念されるのが、メンターとして選出された社員に負担がかかってしまう点です。

メンターが通常業務に追われていると、下記のようなことが起こります。
  • メンティーとの面談の時間を作っても、具体的な相談や課題解決しないまま終わってしまう
  • メンティーへのサポートに手が回らず、制度が形骸化してしまう
このように制度が活用できない事態に陥りかねません。

メンターを任せる社員の業務量を調整するなど、上司の理解とサポートが不可欠です。

また、メンティーからの相談を受けるなかで、メンター自身が悩んでしまうときもあるはずです。そのようなときにメンターが気軽に相談できる仕組みも必要になります。

ガイドラインや運用ルールの策定

ガイドラインや運用ルールの策定も、メンター制度の成功には欠かせません。

例えば、次のようなルールが考えられます。
  • 相談内容に関する守秘義務の徹底
  • 面談は業務時間内に実施する
  • メンタリングの頻度は◯か月に1回とする
  • メンティーの課題を第三者へ引き継ぐ場合は、本人の許可を取る
  • メンターからの叱責や命令は行わない
メンターに相談した内容でメンティーに不利益があれば、メンター制度そのものが機能しなくなる恐れがあります。メンティーが安心して制度を利用できるよう、人事部門が中心となってルールを作り上げる必要があります。

ここまで読んで「メンター制度をどう設計したらいいか」と悩む方もいるのではないでしょうか。次の項目では、メンター制度設計のプロセスを6つのステップに分けて解説します。

【6ステップ】メンター制度の設計プロセス

導入プロセスで悩む社員たち
メンター制度の導入プロセスは以下のとおりです。ここでは6つのステップに分けて手順を解説します。

1.メンター制度の目的を明確にする
2.実施体制を構築する
3.メンターとメンティーをマッチングする
4.メンター・メンティー双方に事前研修を実施する
5.定期的な面談(メンタリング)を実施する
6.振り返りと改善を行う

1つずつ、詳細を見ていきましょう。

1.メンター制度の目的を明確にする

まず、自社でメンター制度を導入する目的を明確にします。「新卒・中途社員の定着率の向上」「社内コミュニケーションの活性化」など、企業によって目的はさまざまです。

「なぜメンター制度が必要なのか」といった目的が定まっていないと、その後の運用も難航する可能性があります。

たとえば「若手社員の離職を少しでも防ぎたい」「部署間の風通しを良くしていきたい」といった目的が挙げられます。

目的を明確にしたうえで、次のステップに進みましょう。

2.実施体制を構築する

メンター制度を導入するための枠組み作りや運用ルールなどの整備も重要です。メンター制度を成功させるには、人事部門だけではなく、経営層やメンティーが所属する部署の上司・社員などの理解と協力が必要不可欠です。

なぜならメンターは他部署の人が担当するもので、勤務時間の一部も割かれます。そのため、他部署はもちろん会社全体の協力がないと、そもそもメンター制度の導入・運営が難しいです。

また前述したとおり、メンター対象の事前研修の実施やマニュアルの準備、メンターのサポート体制を構築するなどの土台づくりも重要になります。詳しくは「メンター制度の導入を成功させるポイント」をご一読ください。

3.メンターとメンティーをマッチングする

メンターとメンティーを選出し、マッチングを行います。

メンター制度を成功させるにあたり、メンターとメンティーの相性は重要な要素です。相性の悪い組み合わせを作ってしまうと、メンター制度が逆効果になるリスクがあります。

マッチングの方法は、おおまかに次の2つに分けられます。
  • アサインメント方式:それぞれの社員の経歴や行動特性、思考の傾向を見極めて人事部門が選出
  • ドラフト方式:複数のメンター候補のなかから、メンティーの希望をもとに選出
しかし、実際にメンタリングしてみなければ見えない相性もあります。メンタリング期間を短くしたり、途中でメンターを変更できる仕組みを作ったりと、マッチングが失敗しても軌道修正できるような制度設計をしておきましょう。

また、とくに新入社員をサポートするメンター側については、適性をよく見極めておきたいところです。新入社員がスムーズに企業へなじめるかどうかは、上司やチームメンバーとの相性はもちろん、メンターの質によっても大きく左右されます。

コンピテンシー診断などの適性検査を活用し、メンターに適した特性を持つ社員の選出に役立てましょう。

メンターの選出と任命には、人事異動の考え方が応用できます。人事異動や配置については、こちらの無料お役立ち資料もご活用ください。

【お役立ち資料】適切な人事異動・配置をするための方法とは

4.メンター・メンティー双方に事前研修を実施する

メンターとメンティーをマッチングしたら、すぐに面談(メンタリング)を開始するのではなく、双方に事前研修を行います。
 
メンター制度の目的を伝え、メンタリングの具体的な方法やルールをあらかじめ確認しておくことで、スムーズに実施できます。

またメンター研修では、メンタリングに必要なスキルや心構えを教育するほか、メンタリングを通じて起こったトラブル事例の共有も有効です。トラブルへの対処方法を事前に身に付けてもらうことで、実際に発生したときも早期に人事部門が介入し、解決が可能です。

5.定期的な面談(メンタリング)を実施する

メンター・メンティーの研修が完了したら、定期的なメンタリングを実施します。

面談のテーマや進め方は、人事部門が作成したガイドラインを参考にしてもらうとスムーズです。面談の実施状況を把握するため、メンター・メンティーそれぞれから報告を求めるようにします。
 
また、実施期間中には、メンター同士・メンティー同士でのミーティングの機会を設け、情報交換を行うのもおすすめです。メンタリングがうまくいった事例や課題などを共有し、メンタリングの質向上を促進しましょう。

なお、メンター制度の実施期間は、半年〜1年といった例が多く見受けられます。期間を設定しないメンタリングは、メンターの負担が大きくなってしまいます。

メンタリングの期間や頻度は、事前にメンター・メンティー双方と上司にきちんと共有することが大切です。

6.振り返りと改善を行う

実施期間が終了したら、メンター・メンティー双方にアンケートやヒアリングを行います。良かった点や改善すべきポイントを振り返り、次期のメンター制度の改善に活用しましょう。

また、メンター制度の導入前後で離職率などを測定し、客観的に成果を見るのも大切です。

メンター制度の目的は導入ではなく、制度による定着率の向上や女性管理職の育成などのはずです。メンター制度の効果が表れなかった場合は、制度やマッチングに不備があったのか、給与や待遇といったメンター制度では関与できない部分が原因なのかを分析・考察します。

とは言うものの、メンターとメンティーそれぞれにヒアリングやアンケートを実施し、分析・考察するのは業務工数がかかるものです。そこで、ミイダスの「組織サーベイ」の活用をおすすめします。

組織サーベイは、毎月簡単なアンケートを実施することで、社員のコンディションや今とるべきアクションなどが把握できる機能です。データの収集や分析に必要な負担を減らしつつ、社員の状態を確認したい方は、ぜひご活用ください。

【ミイダスが提供する「組織サーベイ」の詳細はこちら】

メンター制度の設計プロセスを6つのステップに分けて解説しました。次は面談(メンタリング)の進め方について解説します。

面談(メンタリング)の進め方

面談(メンタリング)の進め方について順に解説します。

1.メンティーの話をしっかりと聞く
2.相手の意見を受け入れて共感する
3.話の内容を整理する
4.質問を通じて気づきのきっかけを与える

各段階で何をすべきか、注意すべき点などを見ていきましょう。

メンティーの話をしっかりと聞く

メンティーの話に耳を傾けることが大切です。まずは雑談から入ってみると、その後の会話もスムーズに進めやすくなるためおすすめです。

ただし無理に話を聞き出そうとしないよう注意しましょう。話を引き出そうとするあまり質問がしつこくなると、メンティーも話しにくくなってしまいます。

メンタリング実施前に目的を再確認しておきましょう。

相手の意見を受け入れて共感する

メンティーの話を聞き終わったら意見を受け入れて、可能なかぎり共感しましょう。否定から入るとメンティーが相談しにくくなってしまうからです。

最後までメンティーの話を引き出したうえで言葉を受け入れ、共感することを心がけましょう。

話の内容を整理する

話を聞き終わったら、メンティーから聞いたことを整理しましょう。「それってつまり〇〇ということかな?」と自分の言葉で言い換えて、状況を整理すると理解が進みます。

またメンティーも「自分の話を理解してもらえている」と安心しやすくなります。

質問を通じて気づきのきっかけを与える

メンティーに伝えたいことを直接伝えるのではなく、まずは「〜した方が良いのでは?」など、相手が気づきを得るきっかけとなるような言葉をかけましょう。

いきなり答えを教えたり「〇〇しろ」など命令したりするのは御法度です。

メンター制度のよくある失敗例

メンター制度のよくある失敗例を3つご紹介します。

1.メンターを適当に選んでいる
2.継続的に改善を行わない
3.十分な時間が確保されていない

各失敗例について詳しく見てみましょう。

メンターを適当に選んでいる

メンター制度のよくある失敗例の1つが、メンターを適当に選んでしまうことです。

たとえば同じ部署の人をメンターにしたり、上司がメンターを兼任したり、「年齢が近いから」「3年目だから」など機械的に選出したりするパターンが挙げられます。

メンターは誰でも良いという訳ではなく、適性のある人に任せる必要があります。どのような人にメンター適性があるかは「良いメンターとは?メンターに求められる7つの適性やスキル」をご確認ください。

継続的に改善を行わない

メンタリング実施後に継続的な改善を行わないのも、メンター制度のよくある失敗パターンです。

メンタリングは実施して終わり、というものではありません。メンタリングを実施した結果、どのような効果があったのか、改善点はあるのかといった検証を継続的に行う必要があります。

継続的な改善を行わなければ現状の問題点に気付きにくくなり、メンター制度が形骸化してしまう恐れもあります。PDCAサイクルを回して継続的に改善を行いましょう。PDCAサイクルを活用するメリットや失敗例などは下記で解説しているため、参考にしてください。

【関連記事:PDCAサイクルとは?基本知識、古いと言われる理由、成功事例などを解説】

十分な時間が確保されていない

メンタリングに十分な時間を確保できていないパターンも、メンター制度のよくある失敗例です。「業務で忙しい」「急用が入った」とメンタリングがスキップされたり時間を短縮したりすると、メンター制度そのものが形骸化してしまいかねません。

メンター制度を導入するときはメンター・メンティーともに業務量やスケジュールを調整し、メンタリングの時間を優先的に確保しましょう。そのためには生産性の向上が求められます。

下記では生産性を向上させる方法やよくある問題点などを解説しています。メンタリングの時間を確保するには生産性向上が欠かせないため、ぜひ参考にしてください。

【関連記事:生産性向上とは?企業ができる具体的な取り組みを解説!】 

ここまで読んで「メンター制度の他社事例も知りたい」「成功事例を知って、自社の制度設計に役立てたい」と思う方もいるのではないでしょうか。

続いて、メンター制度の導入・運用が成功している企業の事例を紹介します。

メンター制度を導入して成功した企業事例3選

にこやかに会話するメンターとメンティーのイメージ
メンター制度を導入している企業は多数ありますが、ここでは以下の企業に注目して事例を紹介します。
  • トヨタコネクティッド株式会社
  • 富国生命保険相互会社
  • 株式会社資⽣堂
1つずつ見ていきましょう。

【事例1】トヨタコネクティッド株式会社

新卒新入社員研修の一環として、メンター制度を導入しています。会社全体で新入社員を受け入れる取り組みの1つです。

先輩社員がメンターとなり、新入社員が社内で居場所をつくれるように支援しています。

入社1年目の新卒社員の1人は、経験豊富で仕事や生活面など何でも相談できるメンターに出会えたとのことです。初めてのことも多く、不安なときもあったそうですが、メンターからの親身なアドバイスが心強かったと話しています。

「失敗を恐れず、まずはやってみればいいよ」というメンターの言葉に、何度も励まされたそうです。

参考:TCの働き方|人材育成新卒社員インタビュー

【事例2】富国生命保険相互会社

富国生命保険相互会社では、新入社員の孤独感を軽減するためにメンター制度を導入しています。原則、入社4年目の主任昇格者全員がメンターの対象です。これからマネジメントする機会が増える社員に人材育成の場を提供し、成長の促進につなげています。

率直に何でも相談できる環境にするために、メンティーの職種や事業所とは関係のない先輩社員がメンターになるように組み合わせているそうです。

また、メンター自らが企画してメンティーの職場まで会いに行ったり、食事会を開いたりといった自主的な活動も行われているのが特徴。10か月間のメンター期間を通して、新入社員だけではなく、メンター自身の成長にもつながっているそうです。

以前はメンターを社員から公募し、モチベーションが高く、積極的にメンティーと関わりたい人材が選ばれたことでも注目を集めました。各メンターにシニアメンターがサポートに付いて、チームとして動いていたこともあったそうです。

同社のメンター制度は時代と共に形を変えつつも、組織全体で人を育てていく風土づくりに貢献しています。

参考:事例 No.169 富国生命保険

【事例3】株式会社資⽣堂

化粧品メーカー資生堂が2017年から導入したのが、一風変わった「リバースメンター制度」です。一般的なメンター制度の発想を逆転させ、若手社員がメンター、エグゼクティブオフィサーや部門長などの役職者がメンティーとなります。

世代や立場を越えた、双方向のコミュニケーションを促進する目的で制度化されました。2017~2021年の間に、累計684名の社員が同制度に参加しています。

同制度では、メンターになる社員が部門長クラス以上の推薦で選ばれ、1年をかけて3~6回のディスカッションが行われます。その中から、実務で改善すべき課題が浮き彫りになったことも多いそうです。

実際にメンターの発案によって、社内外でのSNSツールの活用や生産現場との課題共有のきっかけなどが生まれています。

同制度を推進することで、若手社員と役職者の間に接点が生まれ、お互いに触れることのなかった考えや視点を得られているそうです。役職者から事業の意思決定や考え方について話してもらうことで、若手社員の人材育成にもつながっています。

参考:多様なプロフェッショナル人財三つの効果を生むリバースメンター制度

メンター制度を導入して成功している企業事例を3つ紹介しました。自社におけるメンター制度の設計に他社事例のエッセンスを取り入れてみてください。

続いて、メンター制度を設計する人事担当者や、メンターに選ばれた先輩社員におすすめしたい書籍を紹介します。

メンター制度の導入・運用に役立つ、おすすめ書籍3選

ここで紹介したい書籍は、以下の3冊です。
  • メンタリング入門
  • メンタリング・マネジメント―共感と信頼の人材育成術
  • 傾聴のコツ: 話を「否定せず、遮らず、拒まず」
1つずつ紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

メンタリング入門

メンターに向けて、メンタリングの方法を解説する本です。メンティーの年代や性別ごとの接し方や制度を導入する方法などが書かれています。

「わかりやすい入門書」という評価を得ているため、初めてメンターを担当する人やメンタリングの基礎を知りたい方におすすめしたい1冊です。メンター制度を設計する人事担当者も読んでみると参考になるでしょう。

参考:Amazon|『メンタリング入門』,渡辺 三枝子・平田 史昭  著,日本経済新聞出版

メンタリング・マネジメント―共感と信頼の人材育成術

メンターがどのような考え方で行動していけばいいのか「見本」「信頼」「支援」の行動基準に沿ってノウハウを解説しています。メンタリング実践のノウハウが具体的に書かれていて、参考になる1冊です。

メンター自身が読むのはもちろん、メンター制度の導入で組織の生産性を最大限に引き上げたいと考えている人事担当者や、管理職にもおすすめです。

参考:Amazon|『メンタリング・マネジメント―共感と信頼の人材育成術』,福島 正伸 著,ダイヤモンド社

傾聴のコツ: 話を「否定せず、遮らず、拒まず」

メンターに必要とされるスキルの1つに、メンティーの話を聴く「傾聴力」があります。メンターの内容に限定した本ではありませんが、聴く力を高めたうえでメンティーとの信頼関係を構築したい方におすすめです。

効果的に傾聴するための心がけや、ちょっとした演出なども紹介されています。傾聴の入門書としてご活用ください。

参考:Amazon|『傾聴のコツ: 話を「否定せず、遮らず、拒まず」』,金田 諦應 著,三笠書房

メンター制度に関するよくある疑問

メンター制度に関するよくある疑問を3つご紹介します。

1.メンターって意味ない?うざい?
2.メンティーのプライベートまでメンターは踏み込むべき?
3.メンターに必要な資格ってある? 

各疑問について解説していきます。

メンターって意味ない?うざい?

「メンター制度ってそもそも意味ないのでは?」
「メンターがうざい。メンタリングの時間が苦痛」

このような言葉を見聞きすることがあります。上記の声が社内から聞こえてきた場合は、メンター制度が正しく運用できているかどうか再点検しましょう。

メンターとの時間が苦痛、うざいといった声がある場合、メンターの選出ミスが疑われます。メンターは誰でも良いわけではなく、他部署の人でできるだけ年齢が近いほうが望ましいです。また傾聴力や質問力といったスキルも必要になります。

詳しくは「良いメンターとは?メンターに求められる7つの適性やスキル」をご確認ください。

メンティーのプライベートまでメンターは踏み込むべき?

「プライベートの相談まで対応してあげるべきだろうか?」と悩んでいる声も見聞きします。メンター制度はあくまで会社内の仕組みではありますが、差し支えがなければプライベートの相談にのっても問題はありません。

ただし「プライベートの悩みまで積極的に聞いてあげよう」と私生活のことばかり話題に挙げていると、メンティーが不快になったり場合によってはハラスメントに該当したりする恐れがあります。

プライベートのことは「メンティーが相談してきたらできるかぎり対応する」という姿勢で臨むのが無難です。

メンターに必要な資格ってある?

「メンターになるから資格を取得する必要があるのだろうか」と悩む方もいますが、メンターになるための特別な資格は必要ありません。

そもそもメンターの公的資格はなく、民間団体の資格がいくつか存在します。もしメンター制度について理解を深めるのであれば、各自チェックしてみるのがおすすめです。

ただし「資格があるから良いメンターになれる」わけではないことを覚えておきましょう。

「ミイダス」で効果的なメンター制度を実施

「ミイダス」活躍要因診断の画面
メンター制度は、新入社員の定着率の向上や社内コミュニケーションの活発化に役立つ制度です。

新たに社員を採用しても早期離職が続いてしまうといった悩みを抱える企業は、メンター制度導入を検討してみてはいかがでしょうか。

32万7,000社(2022年2月現在)が導入する完全定額制のアセスメントリクルーティングサービス「ミイダス」なら、メンター制度の導入に際して以下の活躍要因診断が活用できます。
  • 社員の特性を分析できる「コンピテンシー診断」
  • コンピテンシー診断の結果をもとに仕事での成長を促す「E-Learning」
  • 仕事での意思決定の質を高める「バイアス診断ゲーム」
  • 日々の社員の変化を捉える「組織サーベイ」

「ミイダス」なら社員同士の相性を分析してマッチング

メンター制度の成功には、メンターとメンティーのマッチングが重要です。

「ミイダス」のコンピテンシー診断では、
  • パーソナリティ
  • 職務適性
  • ストレス要因
  • 相性の良い上司・部下のタイプ(上下関係適性)
  • マネジメント適性
などの41項目から社員の行動特性や思考の傾向を分析。メンターに向いている人材の選出や、相性の良いメンター・メンティーのマッチングに役立てられます。

また、活動要因診断の1つであるバイアス診断ゲームでは、「フレーミング効果」や「サンクコスト効果」など、全22項目から社員の認知バイアスを分析できます。

認知バイアスとは、直感や思い込み、経験といった先入観によって合理的ではない意思決定をしてしまう心理現象です。認知バイアスは多かれ少なかれ誰しも持っていますが、自身の認知バイアスを把握する機会はあまりありません。

「ミイダス」のバイアス診断ゲームは、メンターが自身の認知バイアスを把握し、メンティーに対して客観的な視点を保つ手助けになります。

メンティーのコンピテンシー診断と組み合わせれば、より適切なアドバイスやアプローチが実現できます。

メンター・メンティーのコンディションもリアルタイムで把握

「ミイダス」組織サーベイの画面
さらに「ミイダス組織サーベイ」を併用すれば、メンター・メンティーのコンディションをリアルタイムに把握できます。
ミイダスの組織サーベイでは、5分で完了する簡単なアンケートを定期的に実施し「組織」や「人間関係」といった社員のストレス要因を6つのカテゴリに分けてレポート化。

社員の今のコンディションが見えるため、メンターのサポートの質向上や、メンターの負担が増えすぎていないかのチェックに役立てられます。

【お役立ち資料「部下のモチベーションを把握する、その方法とは」】

メンター制度の効果を最大限引き出すために、ぜひ「ミイダス」の導入をご検討ください。

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