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ワーキングプア|働く貧困層の実態と解決への道筋

ワーキングプアとは、働いているのに生活に困窮する人々を指す言葉です。非正規雇用の拡大や雇用の短期化などを背景に、近年日本社会において大きな問題となっています。

本記事ではワーキングプアの実態や背景にある構造的な問題について、わかりやすく解説します。企業ができるワーキングプア問題の解決策も解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

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ワーキングプアとは

はてな
ここでは、ワーキングプアの定義や収入の目安、生活実態について解説します。

ワーキングプアの意味・定義

「ワーキングプア」とは、「働く貧困層」を意味する言葉です。仕事をしているのに十分な収入が得られず、生活に困窮する労働者を指します。

2006年に放送されたNHKスペシャル『ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない』をきっかけに、この問題の認知度が高まりました。

ワーキングプアの特徴は、努力して働いているにもかかわらず、基本的な生活費を確保するのが難しい状態にあることです。ワーキングプアが生じる背景には非正規雇用の増加や雇用環境の変化などがあり、現代社会における深刻な問題となっています。

参考:NHKスペシャル ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~|NHKアーカイブス

ワーキングプアの収入の目安

ワーキングプアの収入基準には、明確な定義はありませんが、一般的に以下4通りの基準で判断されることが多いです。
  • 年収200万円以下
  • 年収192万円未満
  • 生活保護水準以下の収入
  • 月収17万円以下・手取り13万円前後
最も広く認識されているのは「年収200万円以下」という基準です。一方、厚生労働省の調査資料に基づいて「年収192万円未満」の就労者をワーキングプア層として位置づける見方もあります。

月収17万円(手取り13〜14万円程度)は、東京都内での一人暮らしの最低生活費とほぼ同水準です。この金額を下回ると基本的な生活維持が難しくなります。ただし、地域によって生活コストは大きく異なるため、収入の目安にも地域差があることを考慮しなければなりません。地方では生活費が低い分、同じ収入でも生活のゆとりに差が生じます。

重要なのは、フルタイムで働いているにもかかわらず、十分な所得を得られずに貧困状態に陥っている就業者をワーキングプアと指すという点です。

参考:非正規労働者データ資料(修正)|厚生労働省

ワーキングプアの生活実態

日々の生活費を切り詰めながら暮らすワーキングプアの生活は、非常に厳しいものです。医療費を節約するために病気になっても受診を先延ばしにする人もいます。

また食費を削るため、安価なインスタント食品や炭水化物に偏った食生活を送るケースも珍しくありません。

金銭的困窮に加え、精神的・社会的な問題も深刻です。連合・連合総研の調査によれば、収入不足が慢性的なストレスを引き起こしていると言います。交友関係を維持する経済的余裕がないため、次第に社会から孤立する傾向も見られるそうです。

このような困難は、個人の生活の質を著しく低下させるだけでなく、企業にとっても、心身の健康問題による生産性低下というリスクをもたらします。

人事担当者は適正な賃金設定や効果的な福利厚生の提供を通じて、従業員が安心して働き続けられる環境づくりを進める努力が求められるでしょう。

参考:ワーキングプアに関する連合・連合総研共同調査研究報告書〜困難な時代を生きる120人の仕事と生活の経歴

日本のワーキングプア問題の現状

統計データをもとにワーキングプアの現状を客観的に見ていきましょう。

令和4年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者5,078万人のうち、年間給与が200万円以下の人は1,042万人で全体の約20%を占めています。つまり、給与所得者の5人に1人がワーキングプアに該当する可能性があるのです。

とくに注目すべきは性別による格差です。男性の場合、年収200万円以下の層は給与所得者全体の9.6%(約280万人)にとどまりますが、女性では同じ年収層が全体の35.5%(約762万人)を占めています。このデータから、女性がワーキングプアに陥りやすい現状が明確に浮き彫りになっています。

【男性】
年収区分人数(千人)割合(%)
100万円以下9823.4
100万円超200万円以下1,8186.2
【女性】
年収区分人数(千人)割合(%)
100万円以下3,00314.0
100万円超200万円以下4,61521.5
一部抜粋:令和4年分 民間給与実態統計調査 23ページ|国税庁

参考:令和4年分 民間給与実態統計調査 23ページ|国税庁

ワーキングプアが発生した要因

佇む男性
ワーキングプア(働いているのに貧困状態にある人々)が日本で増えてきた背景には、3つの大きな変化があります。

非正規雇用の拡大と男性・若年層への浸透

まず1つ目は、「非正規雇用が広がった」ことです。以前は主に女性がパートとして働くことが多かったのですが、1990年代以降、男性や若い人たちの間でも非正規雇用(派遣やアルバイトなど)が増えました。この背景には、企業のコスト削減戦略が大きく影響しています。

多くの企業が正社員の採用を抑え、より低コストで雇用調整がしやすい非正規雇用を選ぶようになったのです。とくに若年層では景気悪化の影響で新卒採用が減少し、アルバイトなどの非正規雇用から正社員への道が狭まっています。

バブル崩壊後、景気回復の時期があっても、新しく生まれた仕事の多くは低収入の非正規雇用でした。そのため、働き口は増えたものの、低収入の仕事が大部分を占めるようになったのです。

雇用の短期化・断片化

2つ目は「雇用が短期化した」ことです。昔の非正規雇用は、長く同じ職場で働けることもありましたが、最近では「日雇い派遣」のように短い期間だけ働く形が増えています。

これにより「この先どうなるか見通しが立たない」「職場で人間関係が作れない」といった問題が生まれています。「派遣さん」と呼ばれるだけで名前も覚えてもらえないような働き方が増えているのです。

正社員・非正規の区別を超えた低所得問題

3つ目は、「正社員と非正規の境目があいまいになった」ことです。正社員になれば安心というわけでもなくなり、正社員でも低収入の人が増えています。逆に非正規でもフルタイムで働く人も増えました。

正社員並みの時間働いているのに、給料は正社員よりずっと少ないという非正規労働者が多くなっています。つまり、日本の働き方が大きく変わり、「働いていても生活が苦しい」という状況が広がっているのです。

これは個人の努力だけでは解決できない、社会全体の問題になっています。

ワーキングプア問題が企業にもたらすリスク

NGマークを示す男性
ワーキングプア問題は、従業員だけでなく企業にもさまざまなリスクをもたらします。ここでは、主なリスクを3つ紹介します。

従業員の定着率低下

低賃金の職場では社員の離職率が高まり、採用・育成コストが膨らみます。ワーキングプアの従業員は、より良い収入や待遇を求めて転職せざるを得ないためです。

企業は採用・研修への投資を繰り返す必要に迫られ、これが経営基盤を揺るがす要因となるでしょう。また、人材の頻繁な入れ替わりはチームワークを弱め、組織内の知識やノウハウの蓄積を妨げます。

結果として、企業の長期的な成長と競争力が損なわれる懸念が生まれるのです。

業務の生産性低下

低賃金は従業員の集中力と意欲を奪い、企業の生産性を直接的に低下させます。 ワーキングプア状態の従業員は、経済的な不安や健康上の問題を抱えやすいため、業務に十分な集中力を発揮できません。

長時間労働や複数の仕事の掛け持ちによる疲労の蓄積は、業務効率や創造性を著しく低下させます。

さらに、キャリアアップや専門性向上の機会が限られるため、スキル開発も停滞しがちです。このような状況は、個人の問題にとどまらず、企業全体の生産性向上を妨げる深刻な要因となるでしょう。

企業の社会的評価への影響

従業員の処遇が不十分な企業は社会的評価を大きく損ない、ビジネスにも悪影響を及ぼします。ワーキングプア問題を抱える企業は、従業員を大切にしていないという印象を世間に与え、社会的責任を果たしていないと見なされるのです。

とくに近年では、消費者の社会的意識が高まっており、企業の労働環境や従業員待遇が商品購入の判断材料となるケースが増えています。さらに、優秀な人材の採用が困難になったり、取引先との関係に支障をきたしたりするなど、企業の成長や存続にも関わる深刻な問題につながる可能性もあるでしょう。

ワーキングプアに陥りやすい職業

悩める男性
ワーキングプアに陥りやすい職業には、以下のような職種が挙げられます。
  • 飲食
  • 販売
  • 警備
  • 建設
  • 製造
  • 清掃
  • 介護・福祉など
とくに男性の場合、建設業や製造業における日雇い労働の割合が高く、不安定な雇用環境が見られます。自立支援センターを通じて就職したケースでは、週6日勤務で1日11時間労働、月収15万円という状況も見られました。

これらの職業は一般的に非正規雇用が多く、給与も低い傾向にあります。特別な専門知識やスキルを必要としないため、労働市場での競争が激しく、賃金水準が押し下げられやすい状況です。

企業の人事担当者は、これらの職種や属性に配慮した人事政策を検討することが重要です。たとえば、社内のキャリアパスを明確化し、スキルアップの機会を提供することで、低賃金層の従業員の収入向上を支援できます。また、育児・介護との両立支援や柔軟な勤務形態の導入により、女性社員のキャリア継続を促進し、ワーキングプア予防につなげられるでしょう。

参考:ワーキングプアに関する連合・連合総研共同調査研究報告書〜困難な時代を生きる120人の仕事と生活の経歴

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企業が取り組むべきワーキングプア対策

ワーキングプア問題は社会構造が強く絡んでいますが、問題を解決するためには企業側の取り組みも重要です。ここでは、企業が実施すべき具体的な対策を紹介します。

適正な賃金を設定する

市場調査をしっかり行い、同業他社と比べて競争力のある賃金を設定しましょう。地域や業種ごとの相場を把握して、定期的に見直すことが大切です。

これは人材確保だけでなく、従業員のやる気アップにもつながり、ワーキングプアを防ぐ第一歩となります。

従業員のスキル向上とキャリア形成を支援する

研修や資格取得の支援は、従業員の成長につながるだけでなく、会社の生産性も高めます。

キャリアパスを明確にすれば、長く働きたいと思ってもらえるでしょう。スキルアップは賃金アップにつながり、ワーキングプアからの脱出を助けます。

【関連記事:キャリアデザインとは?必要な理由や支援するメリット・デメリットを解説

給与以外の福利厚生を充実させる

​​福利厚生の充実は、従業員の満足度を高めるだけでなく、企業の魅力向上にもつながります。健康診断、メンタルヘルスケア、子育て支援など、様々な福利厚生で従業員の生活を豊かにできるでしょう。

フレックスタイムやテレワークなど、柔軟な働き方を取り入れることで、仕事と生活のバランスも良くなります。

従業員の副業・兼業を許可する

副業・兼業を認める方針は、従業員の収入アップに効果的です。複数の収入源があれば経済的な安定につながり、心の余裕も生まれるでしょう。

また、企業が副業を支援すれば、従業員は新しいスキルや経験を積むチャンスを得られます。企業側としても、従業員が外部で得た知識や多様な視点が社内に取り入れられ、新しいアイデアやイノベーションを生み出す可能性が広がるでしょう。

【関連記事:副業禁止を解禁するには?メリット・デメリットや解禁方法、企業の実例を解説
【関連記事:スラッシャーとは複業時代の人材戦略|受け入れメリットと企業事例

ワーキングプア問題解決に向けて活用可能な公的支援

笑顔の若い男性
ワーキングプア問題の解決に向けて、企業が活用できる公的支援を紹介します。

キャリアアップ助成金

厚生労働省が提供する「キャリアアップ助成金」は、非正規労働者の正社員化や処遇改善に取り組む企業を支援します。正規雇用を増やしながら企業の成長も促進できるでしょう。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

働き方改革推進支援センター

厚生労働省が設置する「働き方改革推進支援センター」では、「賃金引き上げに活用できる国支援制度を知りたい」「非正規雇用労働者の待遇を改善したい」と悩む事業主向けに、相談を受け付けています。

就業規則の作成方法、賃金規定の見直し、労働関係助成金の活用など、幅広い内容について社会保険労務士などの専門家が無料でアドバイスを行うため、相談してみると良いでしょう。

参考:働き方改革推進支援センターのご案内|厚生労働省

ワーキングプア問題の解決に向けて

リッチ・プア
ワーキングプアは、働いているにもかかわらず生活に困窮する労働者を指し、日本では年収200万円以下が一つの目安とされています。企業にとって、ワーキングプア問題は従業員の定着率低下や生産性への悪影響、社会的評価の低下といったリスクにつながります。

対策としては、以下の施策が効果的です。
  • 市場調査に基づく適正な賃金設定
  • スキルアップ支援
  • 充実した福利厚生の提供
  • 副業・兼業の許可
政府も企業向けの助成金・補助金制度や従業員支援のための公的制度を整備しており、これらを活用することで対策コストを軽減できます。最低賃金引き上げに対応するためには、生産性向上策と組み合わせた経営戦略の見直しも重要です。

組織サーベイでワーキングプアの課題を可視化

従業員の働きがいと生活の質を高めるために、ミイダスの組織サーベイをぜひご活用ください。

ワーキングプアは低賃金や不安定な雇用環境など、さまざまな要因が複雑に絡み合った問題です。しかし、組織サーベイを通じて従業員の声に耳を傾けることで、その解決の糸口が見えてきます。

組織サーベイでは、給与満足度や職場環境に対する評価など、ワーキングプアにつながる可能性のある課題を把握可能です。加えて、従業員のモチベーションやエンゲージメントの状況も確認できるため、仕事へのやりがいや組織へのコミットメントを高めるための施策立案に役立ちます。

ワーキングプア対策は一朝一夕では解決できない難しい問題ですが、組織サーベイを継続的に実施し、PDCAサイクルを回すことで、着実に改善を進められます。従業員一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、充実した生活を送れるような組織づくりを、組織サーベイを活用して実現しませんか。

ワーキングプアのない社会の実現に向けて、ぜひ一緒に取り組んでいきましょう。

【関連記事:ミイダス組織サーベイとは?使い方の流れや導入事例を紹介

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