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コングロマリットとは?異業種統合の仕組みとその魅力を解説

異業種の企業が統合して形成される「コングロマリット」。変化の激しい時代において、この経営形態が新たな注目を集めています。

多角化による安定した収益基盤の構築や、事業間のシナジー効果など、その魅力は計り知れません。しかしその一方でリスクも存在します。

本記事ではコングロマリットの仕組みと、成功のカギとなるポイントを詳しく解説していきます。

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コングロマリットとは?意味を簡単に解説

鉛筆
コングロマリットとはビジネスの文脈では、異なる業種の複数の企業が経営統合して形成された企業グループを指します。一つの企業体のなかに、さまざまな事業分野を抱える企業を「コングロマリット」と呼ぶのです。

そもそも、コングロマリットという言葉は、英語の「conglomerate」に由来しています。言葉のルーツをたどると、ラテン語の「conglomeratus」に行き着きます。

もともとは地質学の分野で「小石や礫が集まってできた岩石」を指す言葉でしたが、それが転じて、ビジネスの世界で「異種の企業が寄り集まってできた複合企業体」を表すようになりました。

コングロマリットが注目されている背景

近年、企業経営を取り巻く環境は大きく変化しています。VUCA時代と呼ばれる今日では、市場の変化が激しく、先行きの予測が困難です。このような状況下で、多くの企業がコングロマリット化による事業の多角化を選択しています。

その主な目的は以下2点です。
  • 新しい収益源の確保
  • 新しい経営戦略の開発
現在の主力事業だけでは将来的な成長に不安を抱える企業が増えています。そのため、成長が期待できる新規事業に進出し、収益基盤の強化を図ります。

また、従来の経営戦略が通用しにくくなるなか、異なる事業分野への進出で新しい市場機会を見出す企業も少なくありません。

このように不確実性の高い経営環境において、コングロマリットは企業の成長と生存戦略の重要な選択肢となっています。

以下の記事ではVUCAについて詳しく解説しています。
【関連記事:VUCAとは?求められる能力や生き抜くための組織づくりのポイントを紹介

コングロマリット経営のメリット

メリット
コングロマリット経営には以下3つのメリットがあります。
  • リスク分散になる
  • シナジー効果を期待できる
  • 中長期的な成長戦略を描ける
それぞれ見ていきましょう。

リスク分散になる

コングロマリット経営の場合、ある事業が不調でも、ほかの事業が好調であれば全体の収益を安定させられます。そのため、経済の変動や市場環境の変化に対しても耐えられるでしょう。

例えばコロナ禍においては、飲食店など特定の業種に依存していた企業は収益へのダメージが多い傾向にありました。一方でほかの事業も展開していた企業は、被害が多少緩和されたケースが散見されています。

いざという時に一つの事業がダメージを受けても、ほかの事業が安定していれば企業の存続が可能になるのです。

以下の記事ではリスクヘッジについて詳しく解説しています。
【関連記事:リスクヘッジとは?ビジネスシーンにおける意味や使い方、例文などを紹介

シナジー効果(相乗効果)を期待できる

異なる事業間でシナジー効果を生み出せる点もメリットの一つです。例えば、三菱グループでは「三菱」という共通ブランドを活用し、自動車から銀行、不動産まで幅広い業種で顧客の信頼を獲得しています。

また、グループ内で自動車ローンや法人向けサービスを相互に提供し合うことで、各事業の強みを掛け合わせた新たな価値創造が可能になります。

このようにコングロマリットでは、リソースやノウハウの共有を通じて、単独企業では得られない競争優位性を実現できるのです。

中長期的な成長戦略を描ける

コングロマリット経営では、将来を見据えた成長戦略を立てやすい特徴があります。その主な理由は以下の3つです。
  • 複数の事業からの安定した収益基盤を持っている
  • さまざまな業界の最新動向を把握できる
  • 幅広い経験を持つ人材を育成できる
異なる事業からの収益があるため、将来性のある分野へ余裕を持って投資できます。また、さまざまな業界の動向を把握できることで、新しいビジネスチャンスを見つけやすい点も利点です。

さらに複数の事業を経験できる環境により、幅広い視野を持った人材も育ちやすくなります。

このようにコングロマリット経営では、資金力・情報力・人材という3つの経営資源を効果的に活用することで、短期的な業績にとらわれることなく、将来を見据えた成長戦略を描けるのです。

コングロマリットのデメリット

デメリット
一方コングロマリット経営には、以下のデメリットも起こり得るため注意が必要です。
  • 経営の複雑化
  • 企業価値の低下(コングロマリット・ディスカウント)
  • ガバナンスの低下
それぞれ解説します。

経営の複雑化

統一的な戦略を立てる難しさに課題があります。各事業部門が直面する市場環境や経営課題が大きく異なるため、グループ全体の方向性を定めるのに時間がかかってしまうのです。

また事業間の調整にも多くの労力が必要です。部門間での利害調整や意思決定の過程が複雑になり、経営のスピードが低下してしまう恐れもあります。

企業価値の低下

多角化戦略が裏目に出ると、シナジー効果が期待通りに発揮されず、各事業間で足を引っ張り合う状態になる場合もあります。企業全体の収益性が低下し、最終的には株価にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。

複数の事業を展開できる一方で、主力事業に経営資源を集中させるのが難しくなるケースもあります。その影響で競争力が低下すれば、市場や投資家からの評価は下がり、株価の下落を招きかねません。

ガバナンスの低下

多様な事業を持つコングロマリットでは、取締役会や監査役が各事業の詳細に目が行き届かず、監視機能が弱まる恐れがあります。その結果、不正行為や品質低下といった問題が発生するリスクが高まる可能性もあります。

経営陣はガバナンス強化の対策やグループ内のコミュニケーションの取り方を入念に講じる必要があるでしょう。

このようにコングロマリット経営にはメリット・デメリットがありますが、それらは企業価値にも大きな影響を与えます。

以下の記事ではガバナンスについて詳しく解説しています。
【関連記事:ガバナンスの意味を解説!コーポレートガバナンスの強化方法や成功事例も

コングロマリットによる企業価値への影響

コングロマリットが企業価値に与える影響は、主にプレミアムとディスカウントという2つの側面から考えられます。

コングロマリット・プレミアム

コングロマリット・プレミアムとは、異なる業種や事業を統合することで企業価値が向上し株価が上昇する現象のことです。グループ企業間では、技術やノウハウの共有により業務効率が高まり、営業活動も活発化します。

その結果、以下のような好影響が期待できるでしょう。
  • 顧客との関係強化
  • 事業分野拡大による収益力向上
  • 多彩な人材による組織力強化
  • 設備・技術・ノウハウの共有化
これらの相乗効果によりグループ全体の競争力が向上し、持続的な成長への道が開かれるのです。

コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・ディスカウントは、多角化経営を行う企業の株価が実際の価値より低く評価される現象のことです。本来は事業ごとに個別評価されるべき株価が、全事業を一括評価する過程で本質的な価値を失います。

複数の事業部門を独立会社として運営すれば、個々の価値は高まります。しかし一企業としての評価では株価が割安になる傾向が強まるのです。

事業数の増加は運営の複雑化を招き、部門間の連携もおろそかになります。企業全体の価値低下により、市場競争力の弱体化の恐れもあるでしょう。

その結果、株価下落や資金調達の困難化など、経営上の重要課題が発生する可能性もあるのです。

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コングロマリットの主な手法

チェス
コングロマリットの手法は主に以下の3つです。
  • 買収
  • 合併
  • 資本提携
それぞれ解説します。

買収

買収とは、他社の事業や企業の経営権を取得することです。コングロマリット戦略の中心的な手法と言えます。
他社を買収することで企業は、迅速に新しい市場や事業領域に参入できます。これにより、既存の事業とのシナジー効果を生み出し、競争力を高められるのです。
買収には、100%の株式を取得して完全子会社化するケースと過半数を取得して子会社化するケースがあります。

合併

合併とは、複数の会社を1つに統合することです。合併には吸収合併と新設合併の2種類があります。
吸収合併では、1社(存続会社)がほかの会社(消滅会社)を吸収し、その全ての権利と義務を引き継ぎます。消滅会社の人的資源やノウハウを活用できるため、生産性の高い経営とコスト削減が期待できるのがメリットです。
一方、新設合併は、複数の会社が合併して新たな会社を設立する方法です。

資本提携

資本提携は企業同士が互いに株式を持ち合い、業務面や資金面で協力し合う手法です。この手法では互いに独立性を保ちながらも、ノウハウやリソースを共有できます。

買収に比べて必要な資金が少なくて済むため、リスクを抑えつつ新たな事業機会を模索する際に有効と言えるでしょう。

コングロマリットを成功させるポイント

握手
コングロマリットを成功させるには、以下3つのポイントを抑える必要があります。
  • 目標と戦略を明確にする
  • リスク管理を徹底する
  • 中長期的な視点を持つ

目的と戦略を明確にする

統合の目的を明確にし、全員で共有しましょう。目的が明確であれば、重要な判断もスムーズに進められます。部署や会社を超えた協力も生まれやすくなるでしょう。

同時に、具体的な戦略の立案も欠かせません。複数の会社が一緒になると、業務プロセスや人の配置、システム環境の整備など、多くの調整が必要です。会社の文化や仕事の進め方が違っても、準備を万全にすれば混乱は避けられます。

お互いの良いところを活かし合えば、より大きな成果が期待できるでしょう。

リスク管理を徹底する

適切なリスク管理がなければ、逆に企業価値の低下や経営の不安定化を招く可能性があります。
リスク管理においてとくに重要なのは以下4点です。
  • 企業文化や経営方針の違いに上手く対応する
  • 事業間の連携を円滑に進める計画を立てる
  • 多様な事業を効率よく管理する体制を整える
  • 将来を見据えた経営計画を作る
コングロマリットが成功するかどうかは、リスク管理にかかっていると言えます。

中長期的な視点を持つ

会社の形を大きく変える際は、すぐには成果が出ないものです。異なる業種に進出しても、はじめは各事業の良い面を活かしきれないこともあるでしょう。

しかし、将来を見据えて粘り強く取り組む姿勢が大切です。楽天グループの例を見てみましょう。

最初はネットショッピングの会社でしたが、以下のように次々と新しい事業を始めました。
  • クレジットカード
  • 銀行
  • 携帯電話
  • 旅行予約 など
一見バラバラに見えるこれらの事業も、時間をかけて「楽天経済圏」という独自の強みを生み出しています。このように各事業が補い合う関係を作るには、5年、10年という長い目で見た戦略が必要です。

焦らず着実に進めることで、他社には真似できない強みが育っていくのです。

※楽天経済圏とは、楽天が展開するさまざまなサービスを「ポイント」でつなぎ、顧客を囲い込むビジネスモデルです。
参考:楽天の事業|楽天グループ株式会社

日本のコングロマリットの企業事例

指差し確認
日本国内のコングロマリット企業の事例を確認しましょう。以下2社の事例を紹介します。
  • ソニーグループ株式会社
  • 楽天グループ株式会社

ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社は、日本を代表するコングロマリット企業の一つです。エレクトロニクス、エンターテインメント、金融など多岐にわたる事業を手がけています。

1946年に設立され、現在は東京都港区に本社を構えています。大手エンターテインメント企業としての地位を確立しました。

ソニーの強みは、多様な事業間でのシナジー効果にあります。エンターテインメント事業(音楽、映画、ゲーム)は相互に関連し合い、新たな収益機会を生み出しています。

多角的な事業展開と革新的な技術開発を通じて、日本を代表するコングロマリット企業として、今後も大きな成長が期待できるでしょう。

参考:ソニーグループ株式会社

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、1997年に三木谷浩史氏によって設立されました。当初はインターネットショッピングモール「楽天市場」の運営からスタートし、その後、積極的なM&A戦略により事業を大きく拡大しています。

現在では、以下のような多岐にわたる事業を展開しています。
  • Eコマース
  • フィンテック
  • モバイルサービス
  • デジタルコンテンツなど
楽天の強みは「楽天エコシステム」と呼ばれる相互に連携したサービスにあります。顧客は一つのIDで複数のサービスを利用でき、「楽天ポイント」を通じてさまざまサービスを横断的に利用できるのです。

この仕組みにより、新規顧客の獲得コストを抑えられ、顧客は長期的にサービスを使い続けられます。
さらに楽天は「AI-nization」プロジェクトを推進しています。AI技術を活用した業務効率化や顧客体験の向上に注力しているのです。

事業全体で集められたデータをもとにした意思決定で、新たなビジネスチャンスの創出につなげています。
参考:楽天の歴史|楽天グループ株式会社

その他の多角化戦略

会議中
コングロマリットは多角化戦略の一つですが、ほかにもさまざまな多角化戦略があります。ここでは、それらの戦略についても見ていきましょう。
  • 水平型多角化戦略
  • 垂直型多角化戦略
  • 集中型多角化戦略
  • 事業ポートフォリオ転換戦略

水平型多角化戦略

水平型多角化戦略とは、企業が現在持つ技術や経営資源を活用し、それらと関連性の高い新商品やサービスを開発、既存市場に投入することで事業領域を広げていく手法です。

この戦略には2つの利点があります。既存の技術やノウハウを活用できるため、新規事業の立ち上げにかかるリスクやコストを低減できます。加えて、関連性の高い市場への参入により、顧客基盤や販売チャネルの共有を通じて効率的な事業運営が可能となります。

垂直型多角化戦略

垂直型多角化戦略とは、企業が現在の事業と関連性の高い分野で、川上(供給側)や川下(販売側)に事業を拡大していく戦略のことです。

例えば、自動車メーカーが部品の製造に乗り出したり、外食チェーン店が食材の生産を始めたりするのが垂直型多角化の例です。

この戦略の目的は、既存事業で培った技術やノウハウを活かして新たな市場を開拓し、競争力を高めることにあります。また、事業間のシナジーを生み出すことで、コスト削減や品質管理の向上が期待できます。

集中型多角化戦略

集中型多角化戦略とは、企業が持つ技術やノウハウを活かして、関連性の高い新市場に進出する経営手法のことです。例えば、カメラメーカーが培ってきたフィルム技術を応用し、医療機器市場に参入するようなケースが該当します。

この戦略の目的は、既存の経営資源を有効活用しつつ、新たな収益源を開拓することにあります。自社の強みが活きる分野に進出することで、シナジー効果によるコスト削減や競争力の向上が期待できます。

また、特定の事業への依存から脱却し、リスク分散を図ることも狙いの一つです。

事業ポートフォリオ転換戦略

事業ポートフォリオ転換戦略とは、企業が持つ様々な事業を見直し、最適な組み合わせを選択することで、市場の変化に適応し、持続的な成長を目指す経営手法です。

この戦略では、成長性と収益性の高い事業に資源を集中させる一方で、競争力の低い事業からは撤退するといった選択が行われます。そのために、各事業の強みや弱み、市場での位置づけなどをデータに基づいて分析し、客観的な意思決定を行うことが重要です。

ここまで、コングロマリットや多角化戦略について見てきましたが、ほかの企業形態とはどのような違いがあるのでしょうか。次は、コングロマリットとほかの企業形態を比較してみましょう。

ほかの企業形態との比較

コングロマリットとほかの企業形態との違いを確認します。
  • コンツェルン
  • トラスト
  • コンビナート
  • カルテル

コンツェルン

コンツェルンとは、法律上は独立している複数の企業が資本関係によって結びつき、実質的に一つの企業集団として機能する組織形態です。持ち株会社や中心企業を頂点とするピラミッド型の支配構造を持ち、傘下の企業は異なる業種にまたがっています。

カルテルやトラストと異なり、産業の多角化が特徴です。日本では戦前の三井・三菱などの財閥がその代表例です。

トラスト

トラストとは、同じ業界の企業同士が手を組んで一つの大きな企業グループを作り、市場を支配しようとする経営形態です。トラストができると、企業間の競争が減り、価格や生産量を自由にコントロールできるようになります。

これは消費者にとって不利益になることが多いため、多くの国で法律によって規制されています。

コンビナート

コンビナートとは、同じ地域内で複数の企業が協力し、原材料の調達から製品の製造まで一貫して行う大規模な工業地帯を指します。企業同士が隣接しているため、原料や製品の輸送コストを削減し、生産効率を高められる利点を持つ形態です。

例えば石油コンビナートでは、原油を輸入する港湾施設、原油を精製する石油精製企業、石油化学製品を製造する石油化学企業などが集まっています。これらの企業が協力し、原油の輸送や精製、製品の製造までを効率的に行います。

カルテル

カルテルとは同業者間で価格や生産量について取り決めを行い、競争を制限する協定のことです。市場を独占する状態となるリスクがあり、不当な取引制限の一つとして禁止されています。

多角化で広がるビジネスの可能性

笑顔の女性
本記事では、コングロマリット経営の仕組みと成功のポイントを紹介してきました。異業種の企業を統合することで得られるリスク分散やシナジー効果は、VUCA時代を生き抜く強力な武器となります。

一方で、経営の複雑化やガバナンスの課題もあり、成功には明確な目的設定と戦略、そして徹底したリスク管理が不可欠です。ソニーや楽天などの事例が示すように、長期的な視点を持って取り組むことが、コングロマリット経営成功のカギと言えるでしょう。

そして、このような多角的な事業展開を成功させるうえで、最も重要な要素の一つが「人材」です。

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