「また、問題を起こすなんて……」
日々、従業員の規律違反や問題行動に頭を悩ませている人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。問題行動を放置し続ければ、職場環境は悪化の一途をたどり、他の従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。
そのような状況を打破し、健全な職場を取り戻すための重要な手段、それが「懲戒」です。
本記事では、人事担当者が直面する「懲戒とは何か」という基本的な疑問から、具体的な処分の種類、適切な実施手順や注意点まで幅広く解説します。
問題を起こす社員への対応に苦慮されている人事担当者にとって、本記事が労働管理における羅針盤となることを願います。
健全な職場環境の維持は、企業の持続的な成長に不可欠です。ミイダスでは、その阻害要因の一つとなる企業内ハラスメントの実態について調査した資料を無料で配布しています。
経営者・役員200名と、部下が3名以上いる中間管理職(部長・課長相当)200名を対象とした本調査では、実際に起きた事例も多数収録。問題社員への対応を考える上で、ハラスメント対策は避けて通れない重要なテーマです。ぜひ、組織内のリスク把握と対策にご活用ください。
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目次
懲戒の概要

まずは「懲戒」の概要を確認しましょう。
懲戒とは「企業における制裁措置」
「懲戒」とは、従業員の就業規則違反に対して企業が講じる制裁措置です。単なる罰則ではなく、組織の秩序維持と再発防止を目的とする労働管理上の措置が「懲戒」です。
適切な懲戒処分は問題行動を起こした従業員に責任を自覚させるだけでなく、全従業員に「ルールは守るべきもの」といった明確なメッセージを伝えます。
また、公平な懲戒制度の運用は従業員の会社への信頼感を高める効果もあります。
問題を放置すれば、職場環境の悪化や他の従業員のモチベーション低下を招きかねません。そのため、適切な懲戒は健全な職場環境維持に不可欠と言えます。
適切な懲戒処分は問題行動を起こした従業員に責任を自覚させるだけでなく、全従業員に「ルールは守るべきもの」といった明確なメッセージを伝えます。
また、公平な懲戒制度の運用は従業員の会社への信頼感を高める効果もあります。
問題を放置すれば、職場環境の悪化や他の従業員のモチベーション低下を招きかねません。そのため、適切な懲戒は健全な職場環境維持に不可欠と言えます。
懲戒の3つの目的
企業が従業員に対して行う懲戒のおもな目的は、以下の通りです。
第一に、健全な企業秩序を維持することです。従業員一人ひとりがルールを守ることで、組織全体の安定につながります。
第二に、問題行動を起こした従業員への戒めと再発防止です。懲戒処分を通じて、自身の行為が許されないものであったと認識させ、再び同様の行為を行わないように促します。
第三に、問題行動を未然に防ぐ抑止効果です。懲戒処分が全社員に周知されることで、同様の問題を起こさないようにしようという意識づけができます。
これらの目的を達成することにより、企業全体の風紀が整い、従業員が安心して業務に取り組める環境が醸成されるのです。
第一に、健全な企業秩序を維持することです。従業員一人ひとりがルールを守ることで、組織全体の安定につながります。
第二に、問題行動を起こした従業員への戒めと再発防止です。懲戒処分を通じて、自身の行為が許されないものであったと認識させ、再び同様の行為を行わないように促します。
第三に、問題行動を未然に防ぐ抑止効果です。懲戒処分が全社員に周知されることで、同様の問題を起こさないようにしようという意識づけができます。
これらの目的を達成することにより、企業全体の風紀が整い、従業員が安心して業務に取り組める環境が醸成されるのです。
懲戒処分の種類とレベル

企業が従業員に対して行う懲戒処分は、その内容と程度によっていくつかの段階に分類できます。人事担当者には、各処分の意味合いと影響を正確に理解し、適切な判断が求められます。
戒告
戒告は、口頭または書面で従業員に注意を与え、将来の行動を戒める処分です。比較的軽い処分とされていますが、一般的に戒告処分を受けた従業員は、人事評価において不利に扱われるものと言えます。
注意指導を繰り返し、それでも改善されない場合に懲戒処分の入口として実施される処分です。
注意指導を繰り返し、それでも改善されない場合に懲戒処分の入口として実施される処分です。
譴責(けんせき)
譴責(けんせき)は、従業員に反省を促すため始末書の提出を求め、厳重注意する処分です。戒告よりも一段重い処分とされています。
多くの場合、戒告は「口頭注意」、譴責は「書面反省(始末書提出)」という違いがあり、この点が重さの差となっています。
多くの場合、戒告は「口頭注意」、譴責は「書面反省(始末書提出)」という違いがあり、この点が重さの差となっています。
減給
減給は従業員の賃金を減額する処分です。労働基準法第91条に定められた制限に則って減給額を決めます。
【減給額の制限内容】
【減給額の制限内容】
- 一回の減給額は平均賃金の日額の半額以内
- 総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内
(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
引用:労働基準法 第91条|e-GOV
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
引用:労働基準法 第91条|e-GOV
出勤停止・自宅謹慎
出勤停止は、一定期間従業員の就労を禁止する処分であり、ノーワークノーペイの原則に則り、当該期間の賃金は支給されないのが一般的です。
戒告や譴責などの処分を科してもなお改善されない場合に、さらに重い処分として科されます。
戒告や譴責などの処分を科してもなお改善されない場合に、さらに重い処分として科されます。
降格
降格は、従業員の等級や役職を下げる処分であり、通常は基本給や役職手当などの減額を伴います。従業員にとっての不利益がさらに大きい処分であるため、懲戒権の濫用と評価されるリスクも高い処分です。
諭旨解雇
諭旨解雇は、懲戒解雇の次に重い処分です。
懲戒解雇に相当する行為があった従業員に対し、会社の情状酌量として退職届の提出を求めます。従業員がこれに応じた場合は自己都合退職として扱われ、退職届の提出がない場合には、懲戒解雇となります。
諭旨解雇による解雇者の退職金に関する法的な決まりはありません。企業の判断に委ねられますが、退職金の全額もしくは一部不支給とする規定を、就業規則に設けるのが一般的です。
懲戒解雇に相当する行為があった従業員に対し、会社の情状酌量として退職届の提出を求めます。従業員がこれに応じた場合は自己都合退職として扱われ、退職届の提出がない場合には、懲戒解雇となります。
諭旨解雇による解雇者の退職金に関する法的な決まりはありません。企業の判断に委ねられますが、退職金の全額もしくは一部不支給とする規定を、就業規則に設けるのが一般的です。
懲戒解雇
懲戒解雇は、最も厳しい懲戒処分であり、重大な不正行為や就業規則の著しい違反があった場合に適用されます。
通常、使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも解雇日の30日前に予告をしなければなりません。この解雇予告をせずに労働者を解雇する場合には、解雇予告手当を支払う必要があります。
しかし、懲戒解雇においては、所轄労働基準監督署長の認定を受けることにより、解雇予告手当なしに即時解雇が可能です。また、懲戒解雇の場合は退職金が不支給となるのが一般的です。
通常、使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも解雇日の30日前に予告をしなければなりません。この解雇予告をせずに労働者を解雇する場合には、解雇予告手当を支払う必要があります。
しかし、懲戒解雇においては、所轄労働基準監督署長の認定を受けることにより、解雇予告手当なしに即時解雇が可能です。また、懲戒解雇の場合は退職金が不支給となるのが一般的です。
懲戒処分の対象と事例

ここでは、懲戒処分の対象となる具体的な事例をいくつか紹介します。
勤務態度不良(無断欠勤・遅刻・早退など)
勤務態度不良とは、正当な理由なく、従業員として求められる基本的な勤務規律から逸脱した行為のことです。具体的には以下の行為が該当します。
- 無断欠勤
- 遅刻・早退
- 職務怠慢
- 業務指示への不従順
- 頻繁な私用外出 など
このような行為に対しては、企業は就業規則に基づき、注意や指導を重ねながら、段階的な懲戒処分を行えます。重要なのは指導の記録を残し、安易な放置を避けることです。
放置した場合、使用者が黙認していたとみなされ、懲戒処分が無効となるおそれがあります。
放置した場合、使用者が黙認していたとみなされ、懲戒処分が無効となるおそれがあります。
経歴詐称
入社時に学歴や職歴、犯罪歴などの重要な経歴を偽って申告した場合、経歴詐称として懲戒処分の対象となります。ただし、経歴詐称として認められるのは、採用判断に影響を与えるような重要な事項に限られると解釈されています。
たとえば、最終学歴を詐称していたケース(神戸製鋼所事件)では、懲戒解雇を有効と判断しました。
参考:神戸製鋼所事件(大阪高裁昭和37年5月14日判決)|裁判所
たとえば、最終学歴を詐称していたケース(神戸製鋼所事件)では、懲戒解雇を有効と判断しました。
参考:神戸製鋼所事件(大阪高裁昭和37年5月14日判決)|裁判所
ハラスメント行為
職場におけるハラスメント行為は、健全な職場環境を損なう重大な問題です。ハラスメント行為も懲戒処分の対象となります。
部下への暴言・威圧行為による減給処分や、懇親会後のセクシュアルハラスメントによる減給処分など、ハラスメント行為に対する懲戒処分事例は少なくありません。
参考:【参考】懲戒処分の事由別処分事例|人事院
ハラスメントに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事:ハラスメントとは?定義や判断基準、起きた場合の対応方法を解説】
部下への暴言・威圧行為による減給処分や、懇親会後のセクシュアルハラスメントによる減給処分など、ハラスメント行為に対する懲戒処分事例は少なくありません。
参考:【参考】懲戒処分の事由別処分事例|人事院
ハラスメントに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事:ハラスメントとは?定義や判断基準、起きた場合の対応方法を解説】
機密情報の漏えい・紛失
会社の大切な情報が外部に漏れたり、紛失したりといった問題は、企業にとって深刻な懲戒事由です。顧客データや技術情報、企業の秘密などを守ることは社員の重要な義務であり、就業規則にもしっかり記載すべき項目です。
処分を決める際は、漏れた情報の重要度(たとえば主力商品の技術情報など)や故意か過失かといったポイントを確認しなければなりません。意図的に重要情報を持ち出した場合は解雇も含めた厳しい処分になるケースがありますが、単なるミスの場合はより軽い処分にして、再発防止を重視する対応もあります。
情報漏洩は会社の評判や業績に大きな傷をつける可能性があるため、適切な対応が求められます。
処分を決める際は、漏れた情報の重要度(たとえば主力商品の技術情報など)や故意か過失かといったポイントを確認しなければなりません。意図的に重要情報を持ち出した場合は解雇も含めた厳しい処分になるケースがありますが、単なるミスの場合はより軽い処分にして、再発防止を重視する対応もあります。
情報漏洩は会社の評判や業績に大きな傷をつける可能性があるため、適切な対応が求められます。
業務命令違反
会社や上司からの業務命令に正当な理由なく背く場合も、懲戒処分の対象となります。具体例は以下の通りです。
- 出勤命令・残業命令・出張命令・配置転換命令など、業務に関する上司や会社の指示に従わない
- 会社のマニュアルや業務手順に従うよう指示されているのに従わない
- 始末書の提出や報告書の作成などの命令に応じない など
業務命令違反が懲戒処分の対象となるかどうかは、違反の程度や正当な理由の有無などを総合的に考慮しなければなりません。適切な処分を行うためには、個々の状況を多角的に評価することが重要です。
私生活上の重大非行
原則、私生活上の非違行為は、通常は企業の懲戒処分の対象とはなりません。私生活は本来、労働契約や企業秩序の直接の範囲外にあるためです。
しかし従業員の非行が重大であり、企業の名誉や信用を著しく損なう場合や、企業活動に支障を生じさせる場合には、懲戒処分の対象となります。
鉄道会社社員が電車内での痴漢行為を繰り返した事例では、会社側の懲戒解雇を妥当と認めると同時に、退職金も全額不支給とされました。
参考:小田急電鉄事件(東京高裁平成15年12月11日判決)|裁判所
しかし従業員の非行が重大であり、企業の名誉や信用を著しく損なう場合や、企業活動に支障を生じさせる場合には、懲戒処分の対象となります。
鉄道会社社員が電車内での痴漢行為を繰り返した事例では、会社側の懲戒解雇を妥当と認めると同時に、退職金も全額不支給とされました。
参考:小田急電鉄事件(東京高裁平成15年12月11日判決)|裁判所
業務上横領・着服
会社の金銭を不正に取得する横領や、会社の備品を窃盗・転売する着服といった行為も、明白な懲戒事由に該当します。これらの行為は、会社の財産を侵害するだけでなく、従業員間の信頼関係を大きく損なうため、厳しく対処する必要があります。
懲戒処分を行う手順

従業員に対して懲戒処分を行うには、適切な手続きを踏むことが不可欠です。手続きの不備は、懲戒処分の無効につながるだけでなく、企業イメージの低下や法的トラブルを招くおそれもあります。
ここでは、懲戒処分を行う際の基本的な手順を解説します。
ここでは、懲戒処分を行う際の基本的な手順を解説します。
STEP 1:事実関係の調査・確認
まず、懲戒事由に該当する事実があったかどうかを、徹底的に調査し確認します。本人や関係者から聞き取り、時系列や状況などを詳細に把握することが重要です。
不十分な事実確認に基づいて懲戒処分を行うと、後々の裁判で無効とされるだけでなく、名誉毀損となる可能性もあります。そのため慎重に進めなければなりません。
客観的な証拠を収集し、当事者の主張が食い違う場合には、とくに慎重な事実認定が求められるでしょう。
不十分な事実確認に基づいて懲戒処分を行うと、後々の裁判で無効とされるだけでなく、名誉毀損となる可能性もあります。そのため慎重に進めなければなりません。
客観的な証拠を収集し、当事者の主張が食い違う場合には、とくに慎重な事実認定が求められるでしょう。
STEP 2:就業規則を確認する
次に、社内に有効な就業規則が存在するかどうか、問題となった行為に対する懲戒処分の種類や程度が明確に規定されているかを確認します。懲戒事由とその処分内容が就業規則に定められていない場合、原則として懲戒処分できません。
「服務規律を乱したとき」「会社の規則・命令に違反したとき」のように、就業規則の懲戒事由は抽象的なものでも差し支えありませんが、処分内容は具体的に明記されている必要があります。
「服務規律を乱したとき」「会社の規則・命令に違反したとき」のように、就業規則の懲戒事由は抽象的なものでも差し支えありませんが、処分内容は具体的に明記されている必要があります。
STEP 3:理由の告知・弁明の機会付与
懲戒処分の実施にあたっては対象となる従業員に対して、処分内容を明確に告知する必要があります。
- 処分日
- 懲戒処分の理由
- 処分の種類と程度
- 就業規則上の根拠条文 など
その上で必ず、従業員に弁明の機会を与えなければなりません。従業員の権利を保護し、手続きの公平性を担保するために非常に重要です。
弁明の機会もまた就業規則に則った方法で進めます。就業規則にとくにその方法に関する定めがなければ、どのような方法でも構いません。
従業員の主張を真摯に受け止め、処分内容の検討に反映させることが、後のトラブル防止につながります。
弁明の機会もまた就業規則に則った方法で進めます。就業規則にとくにその方法に関する定めがなければ、どのような方法でも構いません。
従業員の主張を真摯に受け止め、処分内容の検討に反映させることが、後のトラブル防止につながります。
STEP 4:懲戒処分の内容検討・決定
収集した事実関係の調査結果と従業員の弁明内容を踏まえ、懲戒処分の内容を慎重に検討します。以下の要素を総合的に考慮して決めましょう。
- 問題となった行為の性質や程度
- 従業員の過去の行為
- 企業秩序への影響 など
必要に応じて、弁護士や社会保険労務士などの専門家の意見を参考にし、公正かつ客観的な判断を下すことが求められます。感情的な判断や過去の事例との不均衡がないように注意が必要です。
STEP 5:本人へ書面による正式通知・公表
決定した懲戒処分を書面で本人に通知します。通知書には、懲戒処分の種類、処分の理由、就業規則上の根拠条文などを明記します。
本人に確実に通知するために、面談時に手渡しするか、郵送する場合には内容証明郵便や配達記録が残る方法を用いましょう。
再発防止の観点から、社内に処分内容を公表することも有効です。ただし、懲戒処分の公表が名誉毀損であるとして、会社に損害賠償を命じるケースもあります。
公表に際しては以下のポイントに注意しましょう。
【懲戒処分公表の留意点】
本人に確実に通知するために、面談時に手渡しするか、郵送する場合には内容証明郵便や配達記録が残る方法を用いましょう。
再発防止の観点から、社内に処分内容を公表することも有効です。ただし、懲戒処分の公表が名誉毀損であるとして、会社に損害賠償を命じるケースもあります。
公表に際しては以下のポイントに注意しましょう。
【懲戒処分公表の留意点】
- 証拠に基づく客観的事実のみ公表する
- ハラスメント事案では被害者のプライバシーに配慮する
- 社内のみの公表とし、社外への情報提供は行わない
- 掲示は当日限りにする
- 対象者の氏名や詳細な内容は公表しない
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懲戒処分に関連する法律

ここまで懲戒処分の種類や対象事例、実施手順について解説してきましたが、これらの制度はすべて法律に基づいています。人事担当者として知っておくべき懲戒に関する法的枠組みを見ていきましょう。
労働基準法第89条9号
労働基準法第89条9号は、懲戒処分を行う上での法的根拠となる重要規定です。この条文では、企業が就業規則に懲戒の種類および程度を明確に記載するよう義務付けています。
懲戒処分は必ず就業規則に基づいて実施する必要があり、規則に明記されていない事由での処分は法的に無効となります。
そのため、人事担当者は自社の就業規則における懲戒規定の内容を十分に確認し、適切に整備されているかを定期的に見直すことが重要です。
懲戒処分は必ず就業規則に基づいて実施する必要があり、規則に明記されていない事由での処分は法的に無効となります。
そのため、人事担当者は自社の就業規則における懲戒規定の内容を十分に確認し、適切に整備されているかを定期的に見直すことが重要です。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
引用:労働基準法 第89条9号|e-GOV
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
引用:労働基準法 第89条9号|e-GOV
労働契約法第15条
労働契約法第15条は、企業の懲戒権に対する法的制約を定めた条文です。この規定では、就業規則に懲戒事由が明記されていても、その処分が「客観的に合理的な理由」を持ち「社会通念上相当」と認められるものでなければ無効になると定めています。
この条文は、使用者による過度に厳しい処分や恣意的な懲戒から労働者を保護する機能を果たしています。つまり、就業規則の形式的な要件を満たすだけでなく、処分の内容自体が実質的に妥当であることを条件として求めているのです。
この法理は、労使間の権利バランスを保つ重要な法的基盤となっています。
この条文は、使用者による過度に厳しい処分や恣意的な懲戒から労働者を保護する機能を果たしています。つまり、就業規則の形式的な要件を満たすだけでなく、処分の内容自体が実質的に妥当であることを条件として求めているのです。
この法理は、労使間の権利バランスを保つ重要な法的基盤となっています。
(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
引用:労働契約法 第15条|e-GOV
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
引用:労働契約法 第15条|e-GOV
懲戒処分を下す際の注意点

従業員に懲戒処分を科す際には、いくつか抑えるべきポイントがあります。懲戒処分が無効となったり、法的トラブルに発展したりする可能性もあるため、注意が必要です。
人事労務担当者は、以下の点を十分に理解し、適切な対応を心がける必要があります。
人事労務担当者は、以下の点を十分に理解し、適切な対応を心がける必要があります。
就業規則どおりに進める
懲戒処分を行う際は、決められた手順に沿って進めることが最も重要です。就業規則に定められた手続きを省略せずに行いましょう。
懲戒委員会の開催や労働組合との協議など、各ステップを確実に実施することで、後々のトラブルを防げます。事実調査では当事者や関係者からの話だけでなく、メールやチャットなどの客観的な証拠も集め、一方の言い分だけで判断しないよう注意しましょう。
またとくに重要なのは従業員の弁明機会の確保です。形式的な対応ではなく、真摯に耳を傾け、その内容を文書化しましょう。公正な判断材料となります。
こうした適切な手続きの積み重ねが、会社と従業員の信頼関係を維持し、法的にも有効な懲戒処分につながるのです。
懲戒委員会の開催や労働組合との協議など、各ステップを確実に実施することで、後々のトラブルを防げます。事実調査では当事者や関係者からの話だけでなく、メールやチャットなどの客観的な証拠も集め、一方の言い分だけで判断しないよう注意しましょう。
またとくに重要なのは従業員の弁明機会の確保です。形式的な対応ではなく、真摯に耳を傾け、その内容を文書化しましょう。公正な判断材料となります。
こうした適切な手続きの積み重ねが、会社と従業員の信頼関係を維持し、法的にも有効な懲戒処分につながるのです。
懲戒処分の相当性と平等性を保つ
懲戒処分の内容は、社会通念上、相当でなければなりません。就業規則と照らし合わせ、問題となった行為を以下の観点から総合的に判断しましょう。
- 違反行為の悪質性
- 企業が受けた損害の程度
- 従業員の反省の有無
- 過去の同様の事案における処分例 など
軽微な違反行為に対する重すぎる懲戒処分は、懲戒権の濫用と判断され、処分が無効となる可能性があります。相当性を確保するには、行為の内容を正確に把握するだけでなく、以下の点を考慮し、しくみを整えておく必要があります。
- 会社としての指導状況
- 管理体制の問題点
- 行為者の職種や地位
- 勤続年数 など
会社の運営体制にも問題がなかったか、考慮しましょう。
また、同様の行為に対しては、従業員間で平等な処分を行うことも求められます。
また、同様の行為に対しては、従業員間で平等な処分を行うことも求められます。
二重処罰の禁止
同一の行為に対して、二重に懲戒処分を科すことは原則として禁止されています。たとえば、ある従業員の行為に対して一度懲戒処分を行った後、「処分が軽すぎた」などの理由で、再度より重い懲戒処分を行うことは認められません。
これは、従業員の法的安定性を保護する観点から重要な原則です。したがって、懲戒処分の内容を決定する際には、事実関係を十分に検討し、適切な処分を選択する必要があります。
これは、従業員の法的安定性を保護する観点から重要な原則です。したがって、懲戒処分の内容を決定する際には、事実関係を十分に検討し、適切な処分を選択する必要があります。
懲戒解雇でも、解雇予告手当の支払いが必要な場合がある
懲戒解雇を行う場合でも、原則として30日前の予告または30日分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。これは一般的に誤解されがちな点です。
懲戒解雇で即時解雇するには、「労働者の責に帰すべき事由」について労働基準監督署から解雇予告除外認定を受ける必要があります。この認定がない場合は、懲戒解雇であっても解雇予告手当の支払い義務が生じます。
また、退職金についても注意が必要です。就業規則で懲戒解雇の場合は退職金不支給と定めていたとしても、裁判所は「過去の功績を全て無にするほどの著しい背信行為」があった場合に限って全額不支給を認める傾向にあります。軽微な非違行為では、減額支給が相当とされることが多いのです。
このように、懲戒解雇においても法的な制約があるため、解雇予告手当と退職金の取り扱いについては、安易な判断を避け、専門家に相談するなど慎重な対応が求められます。
懲戒解雇で即時解雇するには、「労働者の責に帰すべき事由」について労働基準監督署から解雇予告除外認定を受ける必要があります。この認定がない場合は、懲戒解雇であっても解雇予告手当の支払い義務が生じます。
また、退職金についても注意が必要です。就業規則で懲戒解雇の場合は退職金不支給と定めていたとしても、裁判所は「過去の功績を全て無にするほどの著しい背信行為」があった場合に限って全額不支給を認める傾向にあります。軽微な非違行為では、減額支給が相当とされることが多いのです。
このように、懲戒解雇においても法的な制約があるため、解雇予告手当と退職金の取り扱いについては、安易な判断を避け、専門家に相談するなど慎重な対応が求められます。
「懲戒」にまつわるQ&A

ここでは、懲戒処分にまつわる、よくある質問とその回答をまとめました。
懲戒免職と懲戒解雇の違いは?
懲戒免職と懲戒解雇は、どちらも最も重い懲戒処分ですが、適用される対象が異なります。懲戒免職は、主に公務員(国家公務員や地方公務員)に対して行われるもので、そのルールは国家公務員法や地方公務員法などの法令によって定められています。
一方、懲戒解雇は、民間企業の従業員に対して行われる最も重い懲戒処分です。労働基準法など解雇に関する一定のルールはありますが、その範囲内であれば、会社が独自に懲戒解雇の内容を就業規則で定められます。
つまり、公務員には懲戒免職、民間企業の従業員には懲戒解雇が適用されると理解しておくと良いでしょう。
一方、懲戒解雇は、民間企業の従業員に対して行われる最も重い懲戒処分です。労働基準法など解雇に関する一定のルールはありますが、その範囲内であれば、会社が独自に懲戒解雇の内容を就業規則で定められます。
つまり、公務員には懲戒免職、民間企業の従業員には懲戒解雇が適用されると理解しておくと良いでしょう。
懲戒解雇と普通解雇の違いは?
懲戒解雇と普通解雇は、どちらも会社が従業員との労働契約を解除する解雇ですが、その理由と従業員に与える影響が大きく異なります。懲戒解雇は、従業員が企業秩序や職場規律に著しく違反した場合に行われる制裁処分です。
【懲戒解雇事由の例】
【懲戒解雇事由の例】
- 横領
- 贈収賄
- 重大なハラスメント
- 情報漏洩 など
一方普通解雇は、労働契約上の義務不履行を理由とする解雇です。
【普通解雇事由の例】
【普通解雇事由の例】
- 能力不足
- 著しい業務怠慢
- 重要な経歴詐称
- 度重なる無断欠勤 など
解雇の種類については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【関連記事:解雇規制とは?現状やメリット・デメリット、規制緩和の現状などを解説】
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事実関係を調査する際、どのような証拠を収集すればいい?
従業員の非違行為に関する事実関係を調査する際には、客観的な証拠である物的証拠と、関係者の証言である人的証拠の両面から収集することが重要です。
【物的証拠例】
【物的証拠例】
- 問題となった行為に関するメールやチャットの記録
- 勤怠記録
- 財務書類
- 防犯カメラの映像
- 業務に関する電子データ など
これらの証拠は、客観的に事実を示すものとして重視されます。一方、人的証拠の例は以下の通りです。
【人的証拠例】
【人的証拠例】
- 本人の自白
- 上司や同僚からのヒアリング記録
- ハラスメント事案における被害者の診断書やメモ など
懲戒処分を決定する前に従業員へ出勤停止命令はできる?
懲戒処分の内容を決定する前の調査段階において、会社は従業員に対して有給での自宅待機、つまり出勤停止を命じることが可能です。これは、懲戒処分としての「出勤停止」とは異なり、業務命令の一環として行われるものです。
事実関係を慎重に調査するために、一時的に職場から離れてもらうことも可能です。ただし、この自宅待機命令は、問題の性質や調査の必要性に応じて、合理的な範囲内で行われるべきでしょう。
軽微な問題であれば数日程度、重大な問題であれば調査に時間を要することもあります。
参考:『解雇・雇止め・懲戒 Q&A』弁護士 丸尾拓養(著)P. 204
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参考:『解雇・雇止め・懲戒 Q&A』弁護士 丸尾拓養(著)P. 204
適切な懲戒制度の運用を

本記事では、企業秩序の維持と再発防止を目的とする「懲戒」について、その定義から具体的な処分の種類、注意点に至るまでを幅広く解説しました。
懲戒処分は、従業員の就業規則違反に対して企業が科す制裁であり、処分内容は以下7つに分類されます。
懲戒処分は、従業員の就業規則違反に対して企業が科す制裁であり、処分内容は以下7つに分類されます。
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 戒告 | 口頭または書面による注意。人事評価で不利に扱われる可能性。 |
| 譴責(けんせき) | 始末書の提出を求め、厳重注意。戒告より一段重い処分。 |
| 減給 | 賃金の減額。労働基準法に減給額の上限規定あり。 |
| 出勤停止・自宅謹慎 | 一定期間の就労禁止。原則として当該期間の賃金は支給されない。 |
| 降格 | 等級や役職を下げる処分。通常、基本給や役職手当の減額を伴う。 |
| 諭旨解雇 | 懲戒解雇相当の行為に対し、退職届の提出を勧告。応じない場合は懲戒解雇。 |
| 懲戒解雇 | 最も重い処分。重大な不正行為や就業規則の著しい違反に適用。解雇予告手当なしに即時解雇となる場合や、退職金が不支給となることが多い。 |
懲戒処分を下す際には、以下4つのポイントに注意が必要です。
- 正当な手続きを踏むこと
- 懲戒処分の相当性と平等性を保つこと
- 二重処罰の禁止
- 懲戒解雇であっても解雇予告手当の支払いが必要となる場合がある
手続きの不備や不当な処分は、法的トラブルに発展する可能性があるため、慎重な対応が求められます。
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