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管理監督者とは?認められるための要件や管理職との違いを解説

管理監督者とは、経営者と一体的な立場の者を指し、経営に関する重要な職務を担います。

管理職=管理監督者と捉えられがちですが、必ずしも両者が同一とは限りません。管理職の中でも一定の要件を満たす場合に管理監督者とみなし、管理職とは異なる待遇で扱います。

この記事では、管理監督者の定義や労働条件などについて解説します。「名ばかり管理職」問題や判例なども取り上げますので、トラブル回避の参考になさってください。

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管理監督者の定義と役割

笑顔の壮年
管理監督者とは、経営者とほぼ同じ立場で経営に関わる者のこと。管理監督者は労働基準法に規定される「労働時間」や「休憩」、「休日」に関する制限を受けません。

労働時間の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務を担うため、一般労働者に適用されるルールが管理監督者に対しては一部除外されるのです。

具体的には、休憩や出退勤のタイミングが個人の裁量に任されていたり、賃金面で立場にふさわしい待遇を受けたりといった扱いが許されます。

管理監督者と認められるための4つの要件

黒板とチェックマーク
経営者と一体的な立場にある管理監督者。では「経営者と一体的な立場」とは何でしょうか。

その人が管理監督者とみなされるかどうかは、会社内の職位や役職名だけでは判断されません。以下4つの観点で見た実態が「経営者と一体的な立場」と言えるかで判断します。
  • 職務内容
  • 責任と権限
  • 勤務態様
  • 待遇
それぞれ見ていきましょう。

職務内容

厚生労働省の通達では、管理監督者の職務内容について次のように規定しています。
「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること」
引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために |厚生労働省

「重要な職務内容」とは何か、以下に例を挙げます。
  • 経営会議への参加
  • 部門全体の統括
  • 経営戦略の企画・立案
  • 昇格や昇給、賞与といった労働条件の決定
  • 採用や解雇 など
ただし、上記の職務についているからと言って、管理監督者に該当するとは限りません。
  • 経営会議に参加して、どの程度の発言力や影響力を有しているか
  • 事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか
  • 部門全体を統括するとはいえ、どの程度権限が委ねられているか
など、実態に即して、管理監督者の要件を満たすかを判断します。

責任と権限

厚生労働省の通達では、管理監督者の責任と権限について次のように規定されています。
「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを 得ない重要な責任と権限を有していること」
引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために |厚生労働省

管理監督者には、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。たとえば下記のような権限です。
  • 採用・解雇・人事考課などの人事権限を有している
  • 部下の勤務割等の決定権を持つ
  • 経営者不在時の代行権限を担う 
肩書きがあっても、事案について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎなかったりといった場合には管理監督者とはみなされません。

責任・権限の面でも、実態が管理監督者の要素を満たすかを判断するわけです。

勤務態様

勤務態様については次のように規定されています。
「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること」
引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために |厚生労働省

管理監督者は自分自身の勤務に自由裁量を持つ必要があります。経営上の判断や対応には、厳格な時間管理はなじまないためです。

そのため管理監督者の勤務態様は下記のようにあるべきとされています。
  • 始業・終業時刻などが、就業規則で決められた所定労働時間に拘束されない
  • 遅刻や早退をしても、減給やマイナス評価されるといったことがない
  • 厳格な時間管理をされない など
建前として勤務時間に関する自由裁量が許されていたとしても、実態として自由裁量がない場合には管理監督者としてはみなされません。

たとえば下記のようなケースは、管理監督者として裁量が委ねられていたとは認められません。
  • 営業時間中は店舗に常駐しなければならない
  • アルバイトの人員が不足する場合に店長自ら従事しなければならず長時間労働が避けられない など
続いて管理監督者の待遇について確認しましょう。

待遇

「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」
引用:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために |厚生労働省

管理監督者はその地位にふさわしい待遇を受けている必要があります。職務の重要性から、給与や賞与、役職手当等、その待遇において、一般労働者と比較して相応である必要があるのです。

後ほど詳しく解説しますが、管理監督者になると残業代が支払われません。

残業代を考慮すると、一般労働者と賃金に差がなかったり、管理監督者となる前の給与額より収入が下回ったりといった場合には、仮に裁判になった際に「管理監督者」と認められない可能性もあります。

このように労働基準法における「管理監督者」は、企業にとって要件がかなり厳しいため、中小企業の管理職が該当するケースは極めて稀と言えるでしょう。

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【関連記事:コンピテンシー診断とは?ツールの使用方法や導入事例も解説

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管理監督者と管理職の違いは?

悩む先輩社員と後輩社員
管理監督者と管理職の違いについて確認しましょう。混同される傾向がある言葉ですが、両者の定義は全く異なります。

まず、管理職には法律上の定義はありません。会社それぞれが就業規則に定めるものであり、法律上の定義はないのです。

対して、管理監督者は労働基準法41条2号にその定義が定められています。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e−Gov法令検索

監督もしくは管理の地位にある者には、労働基準法における労働時間、休憩および休日に関するルールを適用しないと定めています。この規定により、管理監督者には残業代を支払う必要がなく、自分の裁量で始業終業時間を決めるといったことが許されるわけです。

冒頭で解説した通り、管理職=管理監督者ではありません。管理職の中でも、経営者と同じ立場にある管理職が管理監督者と言えます。管理職の中でも労働時間や休憩、休日のルールが適用される管理職とルールが適用されない管理監督者がいるわけです。

以下の記事では管理職の役割について詳しく解説しています。

【関連記事:管理職の役割とは?求められるスキルや管理職候補を育成する流れ

管理監督者の取り扱い

ハートを持つビジネスマンと硬貨
管理監督者になると、労働時間や休暇、各種手当といった取り扱いが変化します。一般労働者と共通する部分があれば、管理監督者特有の扱いも存在します。

下表に管理監督者の労務管理上の取り扱いについてまとめました。
管理監督者の取り扱いに関する一覧表
管理監督者の取り扱いに関して、とくに特徴的な内容を取り上げて解説します。

残業代・休日手当はない

管理監督者に残業代を支払う義務はありません。そもそも管理監督者は、所定労働時間の枠にとらわれず業務を行う性質があるためです。

同時に地位にふさわしい待遇を受けている前提があるため、残業代の支払いは不要とされています。また労働基準法上の休日に関するルールが適用されないため、休日手当の支払いもありません。

有給休暇・深夜手当は支給される

管理監督者も一般の労働者と同様に、有給休暇を取得する権利があります。付与日数等の条件も一般労働者と変わりません。

また、先に述べたように労働基準法上、管理監督者に対しては残業代や休日出勤手当を支給する義務はありません。しかし深夜労働に対する割増賃金については、支給する義務があります(労働基準法第37条第4項)。

条文では、原則として午後10時から午前5時までの労働に対しては、25%以上の割増賃金を支払わなければならないとしています。

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)|e-Gov法令検索

以下の記事では欠勤と有給休暇の違いについて解説しています。

【関連記事:欠勤とは?類義語との違いや給与への影響などを解説

過半数代表者にはなれない

過半数代表とは、労働組合がない企業が労使協定を締結する際に労働者を代表する者を指します。労働者の意見を取りまとめ、提言する役が過半数代表者です。

管理監督者はこの過半数代表者になれません。なぜなら管理監督者は経営者と一体的な立場にあり、「労働者を代表する」とは考えられないからです。

管理監督者が過半数代表者になっては、労使間の公平性を維持できなくなってしまいます。そのため労働基準法施行規則6条の2第1項第1号で管理監督者は過半数代表者の対象外であると明確に規定されているのです。

過半数代表者は労使協定を締結する場面だけでなく、就業規則の制定・変更に際しても携わります。したがって管理監督者は就業規則の変更などについても関われません。

ただし過半数代表者の選定においては、管理監督者も投票や発言が認められています。

過半数代表者については以下の記事でも触れています。

【関連記事:36協定とは?メリット・デメリットや書式について解説

遅刻・早退控除はできない

一般労働者が遅刻や早退をした場合には、働いていない時間分の賃金が控除されます。一方、管理監督者には原則、遅刻・早退控除が行われません。

出退勤時間も管理監督者の裁量に委ねられており、労働時間の制限がないためです。

仮に遅刻や早退によって賃金控除しては「労働時間を制限している」状況になってしまいます。過去の判例において、遅刻早退控除は管理監督者性を否定する要素とされているため、適用するべきではないとされているのです。

欠勤控除は可能

遅刻・早退控除はできませんが、管理監督者に対しても欠勤控除は行えます。管理監督者は労働基準法第41条2項により、労働時間や休憩、休日に関する規定の適用外とされています。

しかしこれは日単位の出勤を免除するものではありません。

そのためノーワーク・ノーペイの原則に基づき、就業日に労働しなかった場合には管理監督者に対しても欠勤控除が可能です。

仮に年次有給休暇(年休)を取得した場合は欠勤控除は発生しません。年休を取得せずに欠勤した場合には、一般労働者同様に、労務提供の義務を果たせていないため、欠勤控除が適用されます。

以下の記事では、遅刻・早退・欠勤時の計算方法について解説しています。

【関連記事:欠勤とは?類義語との違いや給与への影響などを解説

管理監督者をめぐるトラブル例|名ばかり管理職問題

パソコン画面にびっくりマーク
管理監督者に起こりやすいトラブルに「名ばかり管理職」問題があります。

「名ばかり管理職」とは、管理監督者を拡大解釈して「管理職だから残業代を支払う必要はない」と、不当に割増賃金の支払いを免れるケースのことです。

管理職だからと言って必ずしも管理監督者に該当するとは限りません。にもかかわらず、条文を悪用する事例が大きな社会問題となりました。

名ばかり管理職問題で最も有名な判例が「日本マクドナルド事件」です。同社の店長は、自分が労働基準法41条2項の管理監督者として扱われているのは違法であると、訴えを起こしました。

同社店長の勤務実態は管理監督者と認められる待遇ではなかったのです。
  • 店長と非管理職の賃金に相応の差があるように見えるものの、人事評価の結果次第では金額が逆転することがあった
  • 残業代が支給される非管理職と残業代が出ない店長の賃金がほとんど変わらなかった
こういった実態を判断した結果、肩書き上は管理職であっても労働基準法の労働管理の適用除外となる「管理監督者」の要件は満たしていないと認められたわけです。

裁判所は会社に未払い残業代の支払いを命じ、和解が成立しています。

参考:労働事件 裁判例集 (通称:日本マクドナルド割増賃金請求)|裁判所

参考:なぜ「名ばかり管理職が生まれるのか」|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

こういったトラブルを防ぐために、現状、管理監督者になっている人材がいる場合には、その待遇が適正かどうかを確認しましょう。職務内容や責任と権限、勤務態様や待遇を総合的に判断し、必要に応じて改善する姿勢が求められます。

以下の記事では「名ばかり管理職」の増加原因について詳しく解説しています。
【関連記事:働き方改革による管理職へのしわ寄せとは?「名ばかり管理職」増加の原因と対策を解説

管理監督者配置における注意点|適切に運用するために

空背景と指さす手
管理監督者配置におけるトラブルを防ぐために、会社がなすべき2つの対応について解説します。
  • 就業規則への明記
  • 管理監督者の労働時間管理
それぞれ見ていきましょう。

就業規則への明記

具体的にどの職位にある従業員を管理監督者とするのか、就業規則に明記しましょう。労働基準法の条文をそのまま引用するケースがありますが、それではどの職位の者が管理監督者かわかりません。

例として以下のように定義しておきましょう。
(管理監督者の定義・待遇)
第◯条
次の職位の者を管理監督者とする
1. 職位名
2. 職位名
管理監督者については、第◯章に定める「所定労働時間」「始業・終業時刻」「休憩時間」「休日」並びに「時間外労働・休日労働」に関する規定は適用しない。

管理監督者に対しては、賃金規定に従って管理職手当を支給する
参考:久保田慎平『経営者のための現場で本当に使えるリアル 就業規則・社内規定 人事労務の超プロが教える55の実践ルール集』(Kindle版 位置No.745)

管理監督者の労働時間管理が必要

管理監督者には労働時間や休日の概念がないとはいえ、会社側は管理監督者の労働時間の把握管理は必要です。仮に休みなく働いたとしても違法にはなりません。しかし、会社には労働者に対する安全配慮義務があります。

管理監督者と言えど、過重労働は健康を損なう原因となります。過労死ラインとされる月80時間以上の残業が続くなどといったことは、管理監督者でも避けるべきです。

また深夜就労に対する割増賃金の支払いの観点から、管理監督者であったとしても労働時間の把握や管理は行う必要があると言えます。万一、長時間労働となった場合には、労働安全衛生法に基づき医師による面接指導等の健康管理にかかる措置が必要となる場合があるため、心得ておきましょう。

下記の記事ではオーバーワークについて詳しく解説しています。
【関連記事:オーバーワークとは?仕事での意味や原因、企業ができる7つの対策を解説

管理監督者の定義を正しく理解してトラブルを防ごう

ビルの前に佇む男女
管理監督者は管理職の中でもごく限られた一部の者を指します。以下4つの要件を満たす者が管理監督者としてみなされます。
1. 経営者と一体的な立場で仕事をしている
2. 経営者から重要な責任と権限が委ねられている
3. 始業・終業時刻などが自由で、勤務時間について厳格な制限を受けていない
4. 管理監督者の地位にふさわしい待遇を受けている
管理監督者に該当するかどうかは肩書きや職位だけで判断されません。その社員の実態が上記4要件を満たすか否かを判断します。

4つの要件に当てはまらない人には、残業代や休日手当の支払いが必要です。

知らず知らずのうちに「名ばかり管理職」として扱っていたといった事例も見受けられます。会社側としては、従業員から訴えられるリスクを回避する意味でも、
  • 労働基準法をしっかりと理解する
  • 就業規則に明文化する
  • 社内管理職の定義、管理監督者の定義をハッキリさせる
といった対応が求められるでしょう。

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