「地域の皆様から信頼され、必要とされる企業でありたい」という想い
永森様
伯和グループは広島県を中心に島根県・鳥取県など中国地区3県で多角的に事業を展開しており、従業員数1,229名の企業でございます。
事業内容と致しましては、アミューズメント事業部を中心に、飲食事業、ホテル事業、フィットネス事業、フラワーアレンジ事業、不動産事業など、さまざまな事業を展開しております。
「伯和ビクトリーズ」誕生に込められた想い
永森様
「伯和ビクトリーズ」は、地元の皆様への想いから誕生したチームです。
実業団の野球チームを持つのは費用がかかり、運営するのは大変です。元々、他の企業にあった野球部が廃部になることが決定し、当時の東広島商工会議所の会頭が「この東広島市に皆が一体となって応援できる市民球団を作りたい。地域に貢献してもらえないか。」と、伯和グループにお願いに来られたそうです。「地域の皆様に喜んでいただけるなら」と、廃部が決定していた企業の野球部を伯和グループが引き受けることになり、2005年に「伯和ビクトリーズ硬式野球部」という実業団の社会人野球チームが誕生致しました。
社会人野球には都市対抗野球大会と社会人野球日本選手権大会という、いわゆる「2大大会」と言われる全国大会があります。伯和ビクトリーズ硬式野球部の戦績と致しましては、まず都市対抗には8回中国地区代表として本大会に出場し、2012年にはベスト8に進出しています。日本選手権には6回本大会に出場し、2006年にはベスト8、2015年にはベスト4まで進出しています。
過去には2名、東京ヤクルトスワローズにプロ野球選手を輩出しております。
コンピテンシー診断をスポーツ界でも活用するという、初の試み
永森様
ミイダスの担当の方からコンピテンシー診断について「ある職務において優秀な成果を発揮する人の行動特性」が分析できる診断だというお話を伺ったとき、「仕事とスポーツ、関連性があるのではないか?何か関連性があれば、今後スポーツ界でも活用され、さまざまなところで役立てられるのではないだろうか。」そんな可能性を感じました。
選手一人ひとりの能力や行動特性が分かれば、どのように鍛えればもっと良い選手になるのかが分かるのではないか。技術的な部分だけではなく、選手の考え方や行動特性を見ながらトレーニングをしていけば、さらに早い段階から優れた選手を育成できるのではないかと思いました。
それで、野球部の監督、選手、コーチ26名と人事のスタッフもコンピテンシー診断を受けさせていただきました。
「ストレス要因」のチェックで、選手達のストレス管理も可能に
内山監督
これまでも、チーム全体として「厳しい環境の方が良いというような、追い込まれたいタイプの選手が多い」と思っていましたが、実際『ぬるま湯体質』にストレスを感じるという選手が多かったですね。
さらに高く評価している選手の特徴として、「厳しいプレッシャーや時間制限がある中でもしっかりと結果を出せる」という傾向がありました。それが顕著に現れていたのが『ハードスケジュール』。プレッシャーや時間制限の中での仕事を強いられることにストレスを感じにくいという共通点がありました。
一方で、そのような厳しい状況をストレスに感じやすいという選手もいることが分かりました。
永森様
自分も内山監督同様、元伯和ビクトリーズの選手でした。社会人野球は環境自体がなくなることもあり、一年一年が勝負という厳しい世界です。
選手達は基本的に午前中それぞれ仕事をして、午後から野球の練習をします。限られた練習時間の中で普段はコツコツと練習し、試合に出た時にいかに結果を出すかが求められる。そういう意味では、強いプレッシャーや厳しい時間制限が常に強いられている環境と言えます。『ハードスケジュール』にストレスを感じにくい選手の評価が高いというのは納得です。
自分は監督ではありませんが、『変化と混沌』にストレスを感じやすいバッテリーが多い傾向があるという結果を見て、最初「これはまずいのではないか?」と思いました。急激な変化や予測できない不確かな状況に置かれることにストレスを感じるという事ですが、試合は「変化と混沌の連続」ですからね。
でも…考えてみると、ピッチャーには自分が投げたいタイミングというものがあります。そんなピッチャーを待たせてはいけないんです。ちょっとした状況の変化にストレスを感じやすい。相手に邪魔されたり、環境を変えられたらストレスに感じるんですよね。そういうピッチャーの繊細なところを野手が敏感に察知し、気配りしてあげられないといけないと現役の時から思ってきたので、納得しました。
内山監督
本当に今、選手達に関して思うところがあって。一人ひとりのストレス要因を見ると「やっぱそうだったんだなぁ」と気付かされました。「可哀想なくらい追い込んでいたな…もう少し楽にしてやろうかな。」とか接し方を考えるきっかけになりました。選手達のストレス要因を見ながら対応していく事で、ある程度ストレスをコントロールできるのではないかと思います。
強いチーム、優れた選手に求められるパーソナリティを分析
内山監督
多くの選手は仕事で、緊張するような事を任せられても全然余裕、という感じです。何しろ野球のプレッシャーは半端じゃないですからね。それもあってか、チーム全体として『プレッシャーへの耐力』の数値が高めでした。
また、試合中の表情や雰囲気の差は選手によって多少ありますね。チームのため、試合に出ている選手のためにと雑用などができる選手もいれば、ベンチでふてくされている選手もいる。だからパーソナリティの『人あたり』や『チームワーク』の数値の差を見て、面白いなぁと思いました。
ここまで実際に野球の世界に残れる人ってごく少数しかいないので、十分良い選手なんですけどね、皆。それでも、大企業のようにエリート選手を採用するのは難しいのが現実です。
そういった厳しい中で、大企業のチームを倒していかないといけないわけですから、『チームワーク』を重視していかないと、なかなか勝てないと感じています。今後チームとしてさらに強化していきたい部分ですね。
「野球馬鹿」では限界があると思います。野球もビジネスと同じで、客観的な観察力や分析力が必要だと思います。一瞬の勝負の中で頭をどう切り替えるか、仮説をどう立てるか。例えば、守備の際「ピッチャーが変化球を投げた時には、打球がこのあたりに来るか。でもこういうパターンもあるかもしれない。」と予測しながら守る。しかも自分だけではなく周囲への気遣いも欠かせません。
パーソナリティでは『ヴァイタリティ』『チームワーク』はもちろん、『状況適応力』や『統率力』なども優れた選手の核になる能力と言えると思います。
自分は選手達と野球ではなく、新入社員研修で接していました。その時に「チームを引っ張っていけるだろう」と思った選手のコンピテンシーを見ましたが、先程言った4つの項目の数値が高かったですね。研修の時に感じていたことの裏付けにもなりました。
「社会人野球チームならでは」の、コンピテンシー診断活用法
選手の育成・コミュニケーションに活用
内山監督
ポジションが変わったら能力を発揮し始める人もいます。うちのマネージャーもそうですね。チームの管理をするという役割を担うマネージャーになったら能力を発揮し始めた。キャッチャーとしても活躍しています。周りを見られる選手になり、今では最も重要な選手に成長しました。このように環境の変化が選手の成長に影響を与える事もあります。
選手達のストレス要因を見て「ストレスを倍増させていたな、プレッシャーを感じる部分を求めていたな」と気付きました。選手への接し方に関しては「この辺を注意すれば相手にストレスを与えないのかな」と、留意するようにしています。
あとは、選手がプレッシャーに感じているところから敢えて外してあげるなどの工夫で、選手達のパフォーマンスが向上するのでは?と思います。試行錯誤しながら、環境作りにも活かしたいですね。
また、選手の評価にも活用したいです。オフシーズンに入ったら選手と面談する機会を設ける予定です。もっとコンピテンシーの事を勉強して、選手達に良いアドバイスができればと思っています。
永森様
選手一人ひとりに対して、「こういうところにストレスを感じるんだ」という事が分かれば、ケアしてあげられますよね。技術的な事じゃなく、ちょっとした所属選手への気配りなどに繋がると思います。目に見えなかった部分が可視化できる。面白いですね。
今後データが増えればポジションに応じた特性や傾向なども分かって、さらにさまざまな場面でコンピテンシー診断が活用できると思います。
引退選手のその後にも活用
内山監督
野球はいつまでもできるわけではないです。
ですから今後、コンピテンシー診断結果を「引退後も会社で活躍できる人材かどうかを見極める判断材料のひとつ」として活用したいと考えています。引退後も会社で活躍してくれる選手が増える事を期待しています。
永森様
コンピテンシー診断には職務適性が分かる項目もありますから、当社の事業内容の中から適性が高い職種を勧めたり、アドバイスをしたりもできますね。
普段はスポーツクラブなど、サービス系の職種で働いている選手がほとんどです。実際には適性の高い職種にサービス職が当てはまる選手が多かったので、「今の職種が合っている」という裏付けにもなりました。
今後引退選手にも「サービス業の適性が高いぞ」など、具体的でモチベーションが上がるような話ができますよね。
本当に良い組織を作るために。課題解決に向けた挑戦は続く
内山監督
伯和ビクトリーズの今年のスローガンは「One Soul」。
現在は、「都市対抗に出場する」という自分達の目標に向かって、一戦一戦熾烈な闘いを繰り広げているところです。普段、仕事は皆それぞれ違う部署で分かれていますが、野球をやっている時は魂を一つにして頑張ろうという熱い想いがあります。
一方で、引退後会社に残る選手が非常に少ないという課題があります。今後コンピテンシー診断結果を参考に、選手達とのコミュニケーションを重ねながら課題解決につなげたいです。
伯和グループ全体が「One Soul」「One Team」となれば、さらに良い組織になれると思っています。
永森様
僕は元々高校時代からずっと野球のポジションはショートでした。「ショートが試合を支配しなければいけない。だから細部にわたって気配りをするべきだ」という「ショート論」みたいなものを持っていました。そういう戦略的な感覚があるかないかというのは、今回選手達や自分のコンピテンシー診断結果を見て、明確に現れていると思いました。
パーソナリティの中でも特に『統率力』のある選手を増やす。それが課題だと思うんですよね。先程監督も言ったように大企業のチームではないので、スキルが高い選手ばかりを集めるのは難しい。中小企業のチームが大企業のチームに勝つためには、他のメンバーの動きに注意を払い、自分からコミットしてメンバーにやる気を起こさせることができるような選手が必要だと思います。
今後もコンピテンシー診断を人材育成や採用などにも活用し、チームはもちろん伯和グループ全体としても、本当に良い組織を作っていきたいと思っています。
2020年9月18日取材